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異世界編 1章
第45話 依頼その1
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―― 神殿内部 ……3階
そのフロアの増殖プラントにターナとスレイブは居た。
正秀と為次が生命の加護を受ける為に向かった祭壇への通路の途中にある部屋だ。
「思ったより、早く育ってしまいましたわ……」
ターナは目の前にある大きな培養ポッドを見ながら、困った様子で呟いた。
それは、ガラスのような透明な素材で作られた円柱状の入れ物であり、緑色の液体で満たされている。
液体の中には、謎の生物が眠るように漂っていた。
「心配は要らないよ母さん、いざとなれば僕も戦うよ」
「スレイブ…… あなたを危険な目に合わせる分けには行かないわ。あなたには次の私を創るという、大切な役目がありますもの」
「それは知っているよ。でも、彼らだけに任せる分けにも行かないよ」
「それは、そうですけれど…… 今回はサダムネにも手伝ってもらうのよ?」
「サダムネはともかく、新しく来た二人は毎日遊んでばかりだ。マサヒデは鍛えれば少しは役に立つかも知れないけど、タメツグは……」
「あら、タメツグがどうかしまして?」
「彼はダメだ、どう見ても役に立ちそうにない」
「ふふ、そうかしら? レッドドラゴンを倒したのはあの二人よ。それに、サーサラを捕まえたのはタメツグですわ」
「確かに母さんの言う通りだけれど、それは彼らの陸上艇のおかげだよ」
「そうね…… あの陸上艇なら…… ふふ、楽しみですわ……」
「母さん……」
「とにかくあの二人にはポンタへ行ってもらうわ。そろそろサダムネにもやる気を出してもらわないとですの」
「そうだね」
「少し急いだ方がいいみたいですわね、別荘に行きますわよスレイブ」
「はい、母さん」
そして、ターナとスレイブは増殖プラントを出ると神殿を後にする。
そんな2人を謎の生物は、まるで見送るかのように薄っすらと目を開くのであった……
※ ※ ※ ※ ※
ターナとスレイブが別荘へと向っていたその頃……
正秀はターナの別荘を借家として借りているその庭で朝の稽古をしていた。
昨日、少年おっさんに大剣の指南を受け、戦士という職業に俄然やる気を出していたのだ。
「はぁりゃっ!」
ブオンッ
「とおぅっ!」
ブンッ
「とりゃー!」
ブンブン
正秀は謎のかけ声を発しながら、大剣を振り回している。
その直ぐ近くでマヨーラが正秀を眺めていた。
昨夜、晩ご飯を作っていたら遅くなったので泊まっていたのだ。
「どうだ? どれがいいと思う?」
正秀はマヨーラに訊ねた。
「え? どれって?」
「かけ声だよっ、剣を振ったときの」
「え? えっと……」
マヨーラは困った、ぶっちゃけそんなことはどうでもいい。
そもそも、正秀を見ていただけなので、かけ声まで聞いてない。
仕方ないので、とりあえず考えてみる。
意味が分からないわ、それを私に聞くのね……
そもそも、聞いてなかったのよ……
でも、ここで返答を間違えたらマイナスポイントになるわ。
がんばれ、私。
などとマヨーラは思っていた。
「そ、そうね…… どれも素敵だと思うわ。マサヒデならどんなかけ声でもカッコイイわよ」
とりあえず無難な返答をするマヨーラ。
これなら完璧ね、ついでにカッコイイとか言っちゃったし、うふふ。
とか思ってる。
「そうか、確かにマヨーラの言うように、どれも捨て難いよな」
「ええ、そうでしょっ」
「しかしだな…… やはりコレと言った一番カッコイイのが最高だぜ。こう、剣を振った時の斬撃が決まったら、それ相応のかけ声ってのが必要だぜ」
「そうね……」
「どれも選び難いのは分かるが、その中でも一番イイのはどれだろうな? マヨーラ」
「えっと……(くっ、意外としつこいわね。とりあえず適当に選ぶしかないわ、聞いてなかったけど)」
「なーどれがいい?」
「最初のとかどうかしら? マサヒデの剣捌きを表しているようで素敵だわ」
「最初のか……」
正秀はもう一度大剣を振りながら叫ぶ。
「はぁりゃっ!」
「…………」
「どうだ?」
「す、凄いわ、素敵よマサヒデ」
「うーん、だけど何となくイマイチな感じがするぜ……」
「うぅ……(なんなの一体? もうそれでいいじゃない)」
「しっくり来ないぜ?」
「そうかしら? 気合の入った素晴らしいかけ声だと思うわ」
「そうかな?」
「そうよ、それにしなさい!」
「しかしな…… どうも、しっくりこないと言うか……」
「それでいいの(もう! 煮え切らないわねっ)」
そんな2人が、どうでもいいことでイチャイチャしている時であった。
「何やってんだ? お前ら」
ターナとスレイブがやって来た。
スレイブは手に大きな箱を抱えている。
「スレイブ! それにターナも」
マヨーラには正に渡りに船であった。
謎のかけ声選択に付き合わされるのは、たまったものではない。
まだ、マヨーラは正秀の変な感性へ対する対応を知っていなかったのだ。
だから、ターナとスレイブが来たことで、ようやく話題が変えれるとマヨーラは安心したのである。
「どうしたの? こんな朝から」
マヨーラは2人に駆け寄った。
「ちょっと、用事があってな」
「ふーん」
「それより、なんでマヨーラがここに居るんだ?」
「あの…… えっと、それはね……」
それを聞いていた正秀も近づいて来る。
「ああ、それなら昨日晩飯を作ってもらってたんだ」
「マヨーラが料理を作ったのか? 珍しいこともあるもんだな」
「別にめずらしくないわよ! 失礼ねまったく」
「へーそうかい。ま、それはどうでもいいんだが」
「どうでもいいって……」
「それより、マサヒデ達に用があって来たんだが」
「ん? 俺達か? なんだ?」
「まあ、話はターナから聞いてくれ」
「おはよう、マサヒデ、マヨーラ」
「おう、おはようだぜターナ」
「おはよ」
「で、朝からどうしたんだ?」
「ええ、あなた方が、また悪さをしていないかと気になりまして……」
ターナは2階の適当に板が打ち付けられている部屋へと目線を向ける。
先日、正秀が大剣と一緒に突っ込んで行った部屋だ。
一応は修理してあるが、どう見てもボロボロである。
「あっ(くっ、何故だ? 何故ターナは2階を見ているんだ? 俺の修理は完璧なはずだ、バレるはずがない。多分)」
「どうかしまして? マサヒデ」
「べ、べ、べ、別に悪しゃ、悪さなんでじでないぜ」
あからさまに言動がおかしい正秀。
「じゃあ、あの2階のぶっ壊れた部屋はなんだよ」
スレイブの放った、その言葉は正秀にとって衝撃的であった!
完璧な修理だと思い込んでいたのに一瞬でバレてしまったのだから。
最早、叫ばずにはいられい。
「うぉぉぉぉぉぅ! 何故だ! 何故バレたんだ!」
正秀は絶叫した。
「見ればわかるだろ」
「一目でわかりますわ」
「バレないと思ってたのね……」
正秀は愕然とし、跪く。
もう、観念するしかなかった。
「くそう……(俺も男だ、ピンチの時こそ決めるのが男ってもんだぜ)」
そして……
「分かった…… 俺が破壊したんだ…… この大剣でな!」
そう言いながら正秀は突如立ち上がり、大剣を天にかざすのだ。
大剣が朝日に照らされ、眩しく輝く。
その光景は、魔王を倒した勇者の如く壮大であり神々しかった。
などと、正秀は勝手に思い込み悦に浸っている……
「ふっ(決まったぜ)」
「ところでマサヒデ、今日はあなた方に依頼があって来たのよ」
ターナは正秀の間抜けなポーズをスルーして本題に入った。
「そうなんですか」
「なんで急に敬語になるのよ…… マサヒデ」
「依頼を受けてくれるなら、あの2階の件は見なかったことにしても、よろしくてよ」
「是非、話を聞かせて頂きたい」
「…………」
マヨーラは呆れて正秀を見ていた。
「分かりましてよ…… では、スレイブ」
呼ばれたスレイブは手に持っていた箱を差し出してきた。
「なんだこの箱は?」
「これを届けて欲しいのですわ」
「この箱を? 箱の中身はなんなんだ?」
「エレメンタルストーンだぜ」
「エレメンタルストーン……」
スレイブは箱を開けると、中を正秀に見せた。
正秀とマヨーラは箱を覗くと、中には青く輝く綺麗な石と一枚の紙が入っている。
「青いな……」
当たり前の感想言う正秀。
「青いエレメンタルストーン…… 綺麗ね……」
「そうですの、高純度エレメンタルストーンですわ」
「へー、それで、この紙は?」
「手紙ですわ、サダムネ宛ですの」
「サダムネって、あの30年前の冒険者か?」
「ええ、彼が魔道艇を造っているのは前にも言いましたわ」
「ああ、そうだな」
「この高純度エレメンタルストーンは、魔道機関にうってつけですの」
「なるほど、それで、こいつをサダムネに届ければいいんだな」
「そうですの、お願いできるかしら?」
「確かポンタの街だったよな、遠いのか?」
「ええ、ここからだと徒歩で3日半と言った所かしら」
「徒歩でその位かかるなら距離で100キロ強ってとこか…… うーん……」
「もちろん、報酬も出しますわ」
「報酬はともかく、その距離だと俺が勝手に決める分けにもいかないな」
「なんだ? もしかして、タメツグが許可しないとダメなのか?」
スレイブは訊いた。
「そうだな…… レオを運転するのがあいつだからなぁ」
「あんな奴、無理矢理命令すればいいのよ。電撃でも食らわせれば言うこと聞くわよ」
「いやいや、ちょっと待て。一応アレでも仲間だからな」
「分かりましたわ。では一度タメツグにも聞いてみましょう」
「ああ、それじゃあちょっと呼んでくるぜ。ターナ達はロビーで待っててくれ」
「そうさせてもらうわ」
「早くしてくれよっ」
「おう」
そして、皆は別荘のロビーへと入り、正秀は為次を呼びに部屋へと向かった。
その頃、為次は部屋でまだ寝ていた、スイと一緒に。
昨日は寝不足のまま工場見学に行ったので、まだベッドの中だった。
しかし、為次は一人目を覚まし、スイの寝顔を見つめているのであった……
そのフロアの増殖プラントにターナとスレイブは居た。
正秀と為次が生命の加護を受ける為に向かった祭壇への通路の途中にある部屋だ。
「思ったより、早く育ってしまいましたわ……」
ターナは目の前にある大きな培養ポッドを見ながら、困った様子で呟いた。
それは、ガラスのような透明な素材で作られた円柱状の入れ物であり、緑色の液体で満たされている。
液体の中には、謎の生物が眠るように漂っていた。
「心配は要らないよ母さん、いざとなれば僕も戦うよ」
「スレイブ…… あなたを危険な目に合わせる分けには行かないわ。あなたには次の私を創るという、大切な役目がありますもの」
「それは知っているよ。でも、彼らだけに任せる分けにも行かないよ」
「それは、そうですけれど…… 今回はサダムネにも手伝ってもらうのよ?」
「サダムネはともかく、新しく来た二人は毎日遊んでばかりだ。マサヒデは鍛えれば少しは役に立つかも知れないけど、タメツグは……」
「あら、タメツグがどうかしまして?」
「彼はダメだ、どう見ても役に立ちそうにない」
「ふふ、そうかしら? レッドドラゴンを倒したのはあの二人よ。それに、サーサラを捕まえたのはタメツグですわ」
「確かに母さんの言う通りだけれど、それは彼らの陸上艇のおかげだよ」
「そうね…… あの陸上艇なら…… ふふ、楽しみですわ……」
「母さん……」
「とにかくあの二人にはポンタへ行ってもらうわ。そろそろサダムネにもやる気を出してもらわないとですの」
「そうだね」
「少し急いだ方がいいみたいですわね、別荘に行きますわよスレイブ」
「はい、母さん」
そして、ターナとスレイブは増殖プラントを出ると神殿を後にする。
そんな2人を謎の生物は、まるで見送るかのように薄っすらと目を開くのであった……
※ ※ ※ ※ ※
ターナとスレイブが別荘へと向っていたその頃……
正秀はターナの別荘を借家として借りているその庭で朝の稽古をしていた。
昨日、少年おっさんに大剣の指南を受け、戦士という職業に俄然やる気を出していたのだ。
「はぁりゃっ!」
ブオンッ
「とおぅっ!」
ブンッ
「とりゃー!」
ブンブン
正秀は謎のかけ声を発しながら、大剣を振り回している。
その直ぐ近くでマヨーラが正秀を眺めていた。
昨夜、晩ご飯を作っていたら遅くなったので泊まっていたのだ。
「どうだ? どれがいいと思う?」
正秀はマヨーラに訊ねた。
「え? どれって?」
「かけ声だよっ、剣を振ったときの」
「え? えっと……」
マヨーラは困った、ぶっちゃけそんなことはどうでもいい。
そもそも、正秀を見ていただけなので、かけ声まで聞いてない。
仕方ないので、とりあえず考えてみる。
意味が分からないわ、それを私に聞くのね……
そもそも、聞いてなかったのよ……
でも、ここで返答を間違えたらマイナスポイントになるわ。
がんばれ、私。
などとマヨーラは思っていた。
「そ、そうね…… どれも素敵だと思うわ。マサヒデならどんなかけ声でもカッコイイわよ」
とりあえず無難な返答をするマヨーラ。
これなら完璧ね、ついでにカッコイイとか言っちゃったし、うふふ。
とか思ってる。
「そうか、確かにマヨーラの言うように、どれも捨て難いよな」
「ええ、そうでしょっ」
「しかしだな…… やはりコレと言った一番カッコイイのが最高だぜ。こう、剣を振った時の斬撃が決まったら、それ相応のかけ声ってのが必要だぜ」
「そうね……」
「どれも選び難いのは分かるが、その中でも一番イイのはどれだろうな? マヨーラ」
「えっと……(くっ、意外としつこいわね。とりあえず適当に選ぶしかないわ、聞いてなかったけど)」
「なーどれがいい?」
「最初のとかどうかしら? マサヒデの剣捌きを表しているようで素敵だわ」
「最初のか……」
正秀はもう一度大剣を振りながら叫ぶ。
「はぁりゃっ!」
「…………」
「どうだ?」
「す、凄いわ、素敵よマサヒデ」
「うーん、だけど何となくイマイチな感じがするぜ……」
「うぅ……(なんなの一体? もうそれでいいじゃない)」
「しっくり来ないぜ?」
「そうかしら? 気合の入った素晴らしいかけ声だと思うわ」
「そうかな?」
「そうよ、それにしなさい!」
「しかしな…… どうも、しっくりこないと言うか……」
「それでいいの(もう! 煮え切らないわねっ)」
そんな2人が、どうでもいいことでイチャイチャしている時であった。
「何やってんだ? お前ら」
ターナとスレイブがやって来た。
スレイブは手に大きな箱を抱えている。
「スレイブ! それにターナも」
マヨーラには正に渡りに船であった。
謎のかけ声選択に付き合わされるのは、たまったものではない。
まだ、マヨーラは正秀の変な感性へ対する対応を知っていなかったのだ。
だから、ターナとスレイブが来たことで、ようやく話題が変えれるとマヨーラは安心したのである。
「どうしたの? こんな朝から」
マヨーラは2人に駆け寄った。
「ちょっと、用事があってな」
「ふーん」
「それより、なんでマヨーラがここに居るんだ?」
「あの…… えっと、それはね……」
それを聞いていた正秀も近づいて来る。
「ああ、それなら昨日晩飯を作ってもらってたんだ」
「マヨーラが料理を作ったのか? 珍しいこともあるもんだな」
「別にめずらしくないわよ! 失礼ねまったく」
「へーそうかい。ま、それはどうでもいいんだが」
「どうでもいいって……」
「それより、マサヒデ達に用があって来たんだが」
「ん? 俺達か? なんだ?」
「まあ、話はターナから聞いてくれ」
「おはよう、マサヒデ、マヨーラ」
「おう、おはようだぜターナ」
「おはよ」
「で、朝からどうしたんだ?」
「ええ、あなた方が、また悪さをしていないかと気になりまして……」
ターナは2階の適当に板が打ち付けられている部屋へと目線を向ける。
先日、正秀が大剣と一緒に突っ込んで行った部屋だ。
一応は修理してあるが、どう見てもボロボロである。
「あっ(くっ、何故だ? 何故ターナは2階を見ているんだ? 俺の修理は完璧なはずだ、バレるはずがない。多分)」
「どうかしまして? マサヒデ」
「べ、べ、べ、別に悪しゃ、悪さなんでじでないぜ」
あからさまに言動がおかしい正秀。
「じゃあ、あの2階のぶっ壊れた部屋はなんだよ」
スレイブの放った、その言葉は正秀にとって衝撃的であった!
完璧な修理だと思い込んでいたのに一瞬でバレてしまったのだから。
最早、叫ばずにはいられい。
「うぉぉぉぉぉぅ! 何故だ! 何故バレたんだ!」
正秀は絶叫した。
「見ればわかるだろ」
「一目でわかりますわ」
「バレないと思ってたのね……」
正秀は愕然とし、跪く。
もう、観念するしかなかった。
「くそう……(俺も男だ、ピンチの時こそ決めるのが男ってもんだぜ)」
そして……
「分かった…… 俺が破壊したんだ…… この大剣でな!」
そう言いながら正秀は突如立ち上がり、大剣を天にかざすのだ。
大剣が朝日に照らされ、眩しく輝く。
その光景は、魔王を倒した勇者の如く壮大であり神々しかった。
などと、正秀は勝手に思い込み悦に浸っている……
「ふっ(決まったぜ)」
「ところでマサヒデ、今日はあなた方に依頼があって来たのよ」
ターナは正秀の間抜けなポーズをスルーして本題に入った。
「そうなんですか」
「なんで急に敬語になるのよ…… マサヒデ」
「依頼を受けてくれるなら、あの2階の件は見なかったことにしても、よろしくてよ」
「是非、話を聞かせて頂きたい」
「…………」
マヨーラは呆れて正秀を見ていた。
「分かりましてよ…… では、スレイブ」
呼ばれたスレイブは手に持っていた箱を差し出してきた。
「なんだこの箱は?」
「これを届けて欲しいのですわ」
「この箱を? 箱の中身はなんなんだ?」
「エレメンタルストーンだぜ」
「エレメンタルストーン……」
スレイブは箱を開けると、中を正秀に見せた。
正秀とマヨーラは箱を覗くと、中には青く輝く綺麗な石と一枚の紙が入っている。
「青いな……」
当たり前の感想言う正秀。
「青いエレメンタルストーン…… 綺麗ね……」
「そうですの、高純度エレメンタルストーンですわ」
「へー、それで、この紙は?」
「手紙ですわ、サダムネ宛ですの」
「サダムネって、あの30年前の冒険者か?」
「ええ、彼が魔道艇を造っているのは前にも言いましたわ」
「ああ、そうだな」
「この高純度エレメンタルストーンは、魔道機関にうってつけですの」
「なるほど、それで、こいつをサダムネに届ければいいんだな」
「そうですの、お願いできるかしら?」
「確かポンタの街だったよな、遠いのか?」
「ええ、ここからだと徒歩で3日半と言った所かしら」
「徒歩でその位かかるなら距離で100キロ強ってとこか…… うーん……」
「もちろん、報酬も出しますわ」
「報酬はともかく、その距離だと俺が勝手に決める分けにもいかないな」
「なんだ? もしかして、タメツグが許可しないとダメなのか?」
スレイブは訊いた。
「そうだな…… レオを運転するのがあいつだからなぁ」
「あんな奴、無理矢理命令すればいいのよ。電撃でも食らわせれば言うこと聞くわよ」
「いやいや、ちょっと待て。一応アレでも仲間だからな」
「分かりましたわ。では一度タメツグにも聞いてみましょう」
「ああ、それじゃあちょっと呼んでくるぜ。ターナ達はロビーで待っててくれ」
「そうさせてもらうわ」
「早くしてくれよっ」
「おう」
そして、皆は別荘のロビーへと入り、正秀は為次を呼びに部屋へと向かった。
その頃、為次は部屋でまだ寝ていた、スイと一緒に。
昨日は寝不足のまま工場見学に行ったので、まだベッドの中だった。
しかし、為次は一人目を覚まし、スイの寝顔を見つめているのであった……
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