異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第55話 昔話

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 宿屋の食堂でたむろする皆は、とても清々せいせいしていた。
 あの、鬱陶うっとうしい肉屋のおっさんが帰ったからである。
 はっきり言って邪魔であった……

 「さてと…… 邪魔者も帰ったことだし…… 何か食わせてよー」

 「ほら、食べなさい」

 マヨーラは再び生肉を為次に食べさせようとするのだ。

 「くそっ、このクソガキはパンツも性格も黒いのかよ」

 「はぁ!? なんですってー! もう一度言ってみなさい!!」

 「もーうるさいなー、分かったから騒がないでよ。マヨ」

 「あんたが、ケンカ売ってるんでしょ!」

 「あーはいはい、色々と話があるからね、あまり騒ぐと叩き斬るかも」

 「こんのぉ! あんた一体何様の……」

 「黙りなマヨーラ」

 突如、スレイブはマヨーラの甲高い声を遮った。

 「な、何よ、スレイブまで……」

 「俺の右腕を斬り落としたのはタメツグだ」

 「え!? う、ウソ…… スレイブ、あんた何を言って……」

 「本当なのか!? 為次っ!」

 正秀も知らなかったらしく、驚いていた。

 「別にどうでもいいことだよ」

 「どうでも良くないだろ!」

 「ねぇマサ、俺は3日間寝てたんだよね?」

 「あ、ああ、そうだぜ……」

 「その間にスレイブやターナから何も聞いてないの?」

 「魔獣が現れて、為次達を襲ったから退治したとは聞いたぜ……」

 為次はチラリとスレイブを見るが黙っている。

 「…………」

 「そう…… なんだ」

 今度はターナを見るが……

 「…………」

 「ところで、なんでここにスレイブとターナが居るの?」
 
 為次はターナを見ながら訊くが目を逸らされてしまい、何も言おうとはしない。

 「…………」

 「なんでって…… 為次、お前を心配して毎日来てくれてたんだぜ」

 「へー、俺を殺そうとした人がねぇ……」

 「ちょっとぉ、タメツグ何を言ってるの?」

 「まだ、寝ぼけているのか? 為次」

 ターナとスレイブはなんだか気まずそうだ。

 「「…………」」

 為次は抱き付いているスイの頭を撫でながら言う。

 「スイ、俺が寝てる間に何もされなかったか?」

 「何もされませんでしたよ」

 「そっか……」

 「なぁ、為次。どういうことか説明してくれないか?」

 「説明ね…… むしろこっちが説明して欲しいくらいだよ」

 そう言いながら、今度はスレイブを見た。
 すると、ようやく話し始める。

 「まあなんだ、悪かったとは思ってるぜ」

 「殺そうとして、悪かったとか言われてもねぇ……」

 「そうでもしないと、お前は本気を出さないだろ? 違うか?」

 「別に…… 俺みたいな奴が本気とか出しても、しょうがないでしょ」

 「だが、実際には俺以上の力が出せた。それは事実だぜ」

 「……はぁ」

 「あら、スレイブ、負けを認めるのかしら?」

 ターナはスレイブに向かって言った。

 「ぐっ…… そ、それは……」

 「なんだ? 為次はスレイブと戦って勝ったのか?」

 「ウソでしょ…… このバカがスレイブに……」

 「いや…… 死にそうになったのは俺で、勝った負けたのそんなレベルじゃないんだけどね」

 「チッ、嫌味にしか聞こえねぇな。タメツグがまともに剣術を修得してたら、俺のほうがあっさり殺られてたかもな」

 「ん? 剣で戦ったのか為次? 銃も使わずに?」

 「だって、取られたもん」

 「取られた?」

 「ああ、それでしたら、お返し致しますわ」

 ターナはポーチからデザートイーグルを取り出し、為次に渡そうとした。
 しかし、為次はなんだか不満そうな顔をし、受け取ろうとしないのだ。

 「どうしました? タメツグ」

 「違うもん」

 「え? 違いませんわ。これは間違いなく、あなたが異世界から持ってきた武器ですわよ」

 「そうじゃなくって……」

 正秀もデザートイーグルを受け取らない為次を不思議に思う。

 「なんだよ、それは為次のデザだろ?」

 「違いまして?」
 
 為次はターナのおっぱいを指しながら言う。

 「あそこに入ってたはずだもん」

 「…………」

 ターナは黙って胸を両腕で隠した。 
 それを聞いたスイは、突然に為次の頬を思いっ切りつねり始めるのだ!

 「いででで…… いひゃい、いひゃい、やめてスイ……」

 「むぎぎぎぃ」

 「スイちゃん……」

 「何やってんのよ、あんた達は……」

 「ご主人様が要らないなら、スイが預かるのです。むー」
 
 スイはターナからデザートイーグルを受け取ると、自分の胸元に入れてしまった。

 「ささ、ご主人様、必要な時はいつでもここから取り出して下さい。です」

 「え…… あ、うん…… また今度ね」

 「うー…… 今がいいのです!」

 「はい、ご遠慮します」

 「むー」

 スイはデザートイーグルを胸元に入れたまま、再び為次に抱き付く。
 しかし、どうにも銃が邪魔だ、為次におっぱいを押し付けれない。
 結局、為次に銃を返すとふて腐れながら、為次の匂いを嗅ぐことに専念するのであった……

 「それで、デザが無かったなら、どの剣を使ったんだ? まさかサバイバルナイフか?」

 「まさか」

 「じゃあこの木刀…… なワケねーか」

 正秀は持っていた為次の日本刀を差し出した。

 「木刀って……」

 「ん? 違うのか?」

 「そこんとこに継目があるでしょ」

 正秀は目を凝らして日本刀を見ると、確かに継目がある。
 そして、柄を持って引っ張ると刀身が姿を現した。

 「お、日本刀じゃないか、これ」

 「今まで分からんかったのか……」

 「こんな黒い木刀みたいな鞘だとは思わなかったぜ。ダサいな」

 「ぐふっ…… いいんだよ、元々買う予定も使う予定も無かったしぃ」

 「いや、悪りぃ、悪りぃ」

 「はいはい」

 「俺は嫌いじゃないぜ…… その剣」

 スレイブは言った。

 「そう……」

 「そんで、この刀でスレイブとやり合ったのか?」

 「どうだろうね」

 「なんだよ……」

 「タメツグは、あまり話したくなさそうですわね」

 「まあ……」

 「よろしくってよ。では、私が説明致しますわ」

 「ターナ……」

 「そうか、それじゃ、俺にも理解できるように話してもらうか」

 何故か正秀は得意げに言った。

 「ええ、分かりましたわ」

 そして、ターナは事の経緯を説明してくれる言い、昔話を始めるのだ……

 それは、30年前のことであった。
 サダムネが異世界からやって来た時のことである。
 彼は生命の加護を受けるのに、ずいぶんと悩んでいたらしい。
 いや、生命の加護を受けるのは直ぐに決めていたらしいのだが、職業を選ぶのに時間が掛かっていた。
 何をそんなに迷っていたのかはターナも知らないが、ようやく決めてターナの元にやって来たら気功士を選んだそうだ。
 もちろん、ターナはサダムネにも気功士は無能力者である旨は説明していた。
 それでも、彼は気功士を選んだ。
 その理由は、今でもターナは知らない。
 そして、生命の加護を受け終わったサダムネは、当然の如くなんの能力も持たない、永遠の命を手に入れただけの人であった。

 「優柔不断で無能力者か、為次みたいな奴だな」

 「ほんとそうね」

 「ぬぐぐぐ……」

 「黙って聞きな」

 しかし、とあることがキッカケで、彼は能力に目覚めることになる。
 それは、ある村に強力な魔獣が出現した時のことであった。
 その魔獣を討伐する為に、討伐隊が編成され出撃した。
 討伐隊には歴戦の勇者達が選ばれ、誰もが勝利を疑わなかった。
 だが余りにも強い魔獣の前に……
 討伐隊は成す術もなく、殺られていってしまったのである。

 「生命力の高い、この世界の人間を殺したのか…… やばいぜ」

 「ヒールポーション飲めばいいのに」

 「死んだ人間にヒールが効く分けないでしょ、バカじゃないの? あ、バカだったわね」

 「ぐぬぬぬ……」

 「黙って聞きな」

 そして、3回目の討伐隊を編成する際のことだった。
 一般の冒険者による勇士を募った。
 2回目の討伐隊も無残な敗北を期し、打つ手が無くなったからだ……
 無論、能力を持たないと思われていたサダムネはその編成には入らなかった。
 だが彼は、とある1人の魔道士の女性を追いかけ、後から陸上艇で討伐に向かってしまったのだ。

 「きゃぁ、なんだか素敵ね、そういうのって…… ね、マサヒデ」

 「お、おう」

 「安心するんだ、マヨを追いかける奴なんて居ないから」

 「はぁ!? なんですってー!」

 「黙って聞きな」

 しかし、3回目の討伐も凄惨なものであった。
 手練の冒険者達も次々と倒され、またもや討伐は失敗かに思われた。
 そんな僅かに生き残った冒険者達が半ば諦めかけていた頃である。
 サダムネは遅れて到着すると、果敢に一人魔獣へと立ち向かって行った。
 彼は乗ってきた陸上艇で砲撃を加えたが、マジックシールドにはばまれ魔獣にダメージを与えることができなかったそうだ。
 しかし、それでも彼は諦めなかった。
 陸上艇を降りると、貧相な剣1本でたった一人、魔獣へと挑んだ。

 「死に行くようなものだぜ」

 「なんて、無謀な人なの……」

 「頭、狂っとるわ」

 「黙って聞きな」

 その時、サダムネに勝算があったのかは分からない。
 なぜ彼が無謀にも、飛び出して行ったのだろうか?
 それは一重に、追いかけて行った彼女を助けたかっただけなのだろうと……
 事実、その女性はサダムネが到着した時には、既に瀕死の重傷であり一刻も早くヒールをかけてやる必要があった。
 だが、その時点ではサダムネはまだ能力を持っていなかった。
 そんな彼が魔獣に斬りかかった所で、返り討ちに合うのは、誰の目にも当然のように映った。

 ターナは30年前の出来事を思い浮かべながら、そう語るのだ……

 「でもね、その時、奇跡が起こったのですわ」

 奇跡という言葉に為次は胡散臭そうに思う。

 「奇跡?」

 「そうですわ、彼もまた重症を負い倒れた。そして、彼女も既に虫の息でしたの」

 「……やばいぜ」

 「うーん…… 奇跡って、そん時に能力発動ってとこかな?」

 「その通りですわ、タメツグ。そして、サダムネは見事に魔獣を倒した…… それは言うまでもないかしら? ふふっ」

 「奇跡ねぇ……」

 「いえ…… もしかしたら奇跡ではなく、必然だったかも知れないですわね」

 「必然?」

 今度は正秀が訊き直した。

 「これは私の憶測ですが、もしかしたら彼は知っていたのかと……」

 「死にそうになったら、魔獣を倒せるって?」
 
 為次は訊いた。

 「死にそう…… それは少し違うのかも知れませんわ」

 「よく分からないぜ」

 正秀はだんだん意味が分からなくなってきた様子だ。

 「心身共に極限の状態になった時に、その能力を発揮できるのではないかと私は思いますの」

 「ん? 心身共に極限って…… まさか……」

 「そのまさかですわ、タメツグ」

 「どういうことだ? 俺にも分かるように教えてくれよ」

 「俺で試したのか?」

 「そうなるのかしら? うふふっ」

 為次はターナの話を聞いて、ようやく自分を襲った理由が少し分かった気がした。
 だが、正秀は為次が襲撃された時のことを聞かされていないので、よく分からない。
 だから、どうにも腑に落ちないのだ。

 「おいおい、俺にも理解できるようにって頼んだはずだぜ」

 「分かっていますわ、マサヒデ」

 「頼むぜ、ターナ」

 「では次に、この前のスレイブと為次が戦った時のことを話しましょうか」

 そして、ターナは話を続けるのであった…… 
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