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異世界編 1章
第56話 能力
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ターナは30年前の出来事を話してくれた。
しかし、正秀はどうにも要領を得ない。
だから、ターナに話しの続きをせがむのであったが……
「では、話しの続きをしましょう」
「何があったんだよ、気になるぜ」
「でも、その前に……」
「なんだ? なんだ?」
「そう、焦るなよ」
スレイブは言った。
「だって、気になるんだぜ?」
「ふふっ、まずはタメツグに何か食べさせたらどうかしら?」
見ると、為次はソファーに座っているものの、抱きつかれているスイにもたれ掛かってフラフラしている。
しかも、なんだか目の焦点が合っていない。
そんな、為次を見た正秀は言う。
「なあマヨーラ、やっぱりさっきの生肉を突っ込んどこうぜ」
「そうね、そうしましょ」
「ちょ……」
マヨーラは再び生肉を拾い上げるると、為次の口にグリグリと押し付けるのだ。
「ほら、食べなさい」
「ぐぉ…… もっとまともな飯は無いのか……」
「タメツグのくせに、何を贅沢言ってるの」
「そうだぜ、お前が食わないと話が進まないだろ」
「ほら、マサヒデもああ言ってるじゃない」
「くそ、お前ら……」
流石に見かねたターナは言う。
「ま、まあ…… 宿屋の店主に言えば食事を出してくれますわ」
「それだと、時間がかかるぜ」
「それに、そんなのタメツグには勿体ないわよ」
「もういい、お前らには頼まん」
為次はそう言うと、立ち上がろうとするが……
スイが邪魔だ。
退かそうにも、どうにも力が入らない。
「スイ、ご飯食べに行くからちょっと退いてよ」
「うー、離れたくないのです」
「ご飯食べないと死んじゃう」
それを聞いたスイは慌てて立ち上がる。
「はぅ!? 大変です! 私が直ぐにご主人様の食事を持って来ます」
そして、パタパタとフロントの方へと行ってしまった。
「それじゃ、スイちゃんが戻って来るまで話しの続きを……」
「そう焦るものではありませんわ、マサヒデ」
「そう言われてもなぁ、やっぱり気になるぜ」
「それなら、あたしが行ってさっさと持って来てあげるわ」
そう言ってマヨーラもフロントの方へと行ってしまった。
それを見た為次は、すごく不安だ。
もはや何を食べさせられるのか分かったものではない。
だから、上手く動かせない体をなんとか立ち上がらせる。
「はぁ…… はぁ…… 心配すぐる、俺も行く」
為次もヨタヨタとフロントの方へと言ってしまうのであった。
皆がフロントへ行ってしまうので、正秀は少々不満そうである。
「なんだよ、あいつら」
「ちゃんとお話しはしますから、少し待ちましょう? マサヒデ」
「ふぅ…… 仕方ないか……」
「ところで、マサヒデ」
「ん? どうした? スレイブ」
「あれから、必殺技はどうなった?」
「ああ、必殺滅殺撲殺斬だな!」
「あ、ああ……」
「アレから練習して、もうバッチリだぜ」
「そうか、そいつは良かった」
口では良かったと言うものの、スレイブはどことなく悔しそうであった……
正秀は、そんなスレイブの僅かな表情を見逃さない。
「どうかしたのか?」
「ん? いや、なんでもない」
「なんでもないってことは無いだろ、俺がどれだけ為次と一緒に居ると思ってるんだ?」
「タメツグが関係あるのか?」
「あの子は、あまり本心を出したがらないのですわ。そうでしょう? マサヒデ」
「おう、そうだぜターナ、とにかくめんどくさい奴だからな。俺が見てやらないと、一人で腐っちまうんだよ。アイツは」
「ふっ、そうか……」
「それで、どうかしたのか?」
「いや…… 本当になんでもないんだ」
「なんだよ、らしくないな……」
「…………」
そんな不器用な男2人の会話にターナは呆れ顔で言う。
「はぁ…… 本当に世話の焼ける子達ばかりね…… ふふっ」
自分まで子ども扱いされたスレイブは釈然としない。
「なんだよ、ターナまで」
「いいですわ、私が教えてあげますわよ」
「お、おい、ターナ……」
「別にいいいじゃありませんの、どうと言うことではありませんわ」
「い、いや…… でもな……」
「スレイブは必殺技が使えないだけですの」
「くそっ……」
「はぁ? なんだそりゃ?」
「もういいだろ」
「だって、あの必殺技はスレイブが教えてくれたんだぜ?」
「チッ……」
あの時……
為次が上級国民区画へ一人で遊びに行っている時だ。
正秀はスレイブに稽古をつけてもらった。
まずは、大剣の基本的な扱い方や振り回し方を教えてもらい、手合わせなどをした。
それが終わるとスレイブは「マサヒデならもっとスゲー攻撃ができるぜ」と言った。
もちろん正秀は、「是非、教えてくれ」とせがんだ。
しかし、その内容はとても簡素なものであった。
ただ「大剣を上に構え全神経を集中し、力いっぱい振り下ろして地面を叩き付けろ」と、それだけだった。
正秀は意味が分からなかった。
だが、凄腕の剣士であるスレイブが言うのだから間違いは無いだろうと思い、何度も大剣振り下ろした。
幾度ともなく大剣を振り続け、次第に剣だけに集中するようになった。
そして……
神経が極限までに研ぎ澄まされたと感じた時。
ついに、正秀は必殺技を修得したのだ!
その威力は凄まじく、離れた大木をも薙ぎ払った。
そう! それこそ必殺滅殺撲殺斬が完成した瞬間であった!
だから、正秀は訳が分からなかった。
必殺技を教えてくれた本人が、必殺技を使えない……
「どう言うことだ?」
「それは、タメツグに試したのと同じことですわ」
「は?」
「ターナ、もういい。俺が説明する」
「そうですのスレイブ、分かりましてよ」
「なあマサヒデ、自分の必殺技はどんな理屈でできたと思う?」
「理屈? あれだろ、スゲー力で地面を叩くと衝撃波が出るんだろ。違うのか?」
「地面を叩いただけで、衝撃波が出ると思うか?」
確かにスレイブの言う通りである。
「うむむ……(言われてみれば、指向性を持った衝撃波って…… そんなの出る分けがねーよな。でも、実際に俺はできるんだが……)」
正秀は不思議そうに考えた。
「ま、そう深く考えるな。俺も分かんねーからよ」
「スレイブでも分からないって……」
「いいから、ちょっと聞きな」
そして、スレイブは能力について少し話してくれるのだ……
この世界には生命の加護による能力の種類は3つある。
肉体そのものを強化し、凄まじい力と身体能力をもった『戦士』。
体内のマナを使用し、エーテルを操作することによって魔法を使う魔道士。
尚、魔道士には3種類ある。
エーテルをエネルギーに変換し具現化させる『闘魔道士』。
対象物に魔法を直接作用させる『聖魔道士』。
何かに魔法を付与する『戦魔道士』だ。
そして、残った『気功士』となるが、これがイマイチ不明な存在らしい。
もっとも、それについては正秀も前に聞いた覚えがあるので、少しは知っていた。
よく分からない気功士であるが、どうやら現在はサダムネという前例があり、なんらかの力を使うことは間違いないそうだ。
戦士が物理的な肉体の力を使うのはまあいいが、それでも尋常ではない力は謎だ。
次に、魔道士はマナと呼ばれる森羅万象の力を使うらしい。
ぶっちゃけこれも気功士並に良く分からない力である。
世界にあり溢れた力であるらしく、世界の存在する力であり、自然の理だとターナが補足した。
そして、気功士だが、これはサダムネから聞いた話で、スレイブも真偽は定かではないが、なんでも『気』という人の意志の力を使うそうだ。
「意志の力だって?」
「そうだな、魔法が世界を存在させる力なら、『気』とは生命を存在させる力なのかも知れない」
「ふー、なんだか頭がイカレそうだぜ」
「それでだな、気功士は昔にも居たらしいのだが、今では殆ど当時の情報は残ってない。その後も加護を受ける際に気功士を選んだ奴も居たが、どれもこれも無能力者ばかりだったのさ」
「ふむ」
「そんな訳さ、後は分かるだろ?」
「ん? 何がだ?」
「…………」
スレイブは黙ってターナを見た。
「マサヒデ…… いい? 気功士は謎の力を使える能力者なのは理解できまして?」
「ああ、バッチリだぜ」
「では、情報の無い過去の気功士を除くと、サダムネ以外はその能力を使うことはできなかった。それも理解できまして?」
「ああ、そうだな、それもバッチリだが為次も能力を使えるんだろ?」
「その通りですわ」
「おう」
「では、今まで能力の使えなかった人々とサダムネとタメツグの違いは分かりまして?」
「んん? 違いって…… この世界に昔居た奴のことなんて俺は知らないぜ。ま、強いて言えば、タメツグもサダムネもこの世界の人間じゃないってことかな…… あ、俺もか」
「じゃあ、もう分るだろ」
スレイブは言った。
「え? なんだ? 異世界から来た人間なら気功士の能力を使えるってことなのか?」
「そうだな」
「……それは分かったが、スレイブが必殺技を使えないのとなんの関係が……」
ターナとスレイブは黙って正秀から目を逸らす。
「「…………」」
「あっ!」
正秀はようやく気が付いた……
スレイブは自分に稽古をつけてくれたのではない。
只、試されただけなのだと。
異世界から来たと言う理由だけで、気を扱うことができるのではないか? と。
「試したのか?」
「ああ、そうだぜ。正直悔しかった……」
「…………」
「お前らは俺以上の力を扱える……」
「…………」
「タメツグが加護を受けた直後に能力を発揮したのを見た時は、信じたくなかった……」
「…………」
ドンッ!!
「こんなふざけた野郎が俺より強くなるのかってよ!!」
スレイブはテーブルを叩きつけながら叫んだ!
「スレイブ……」
「あら、スレイブ…… マサヒデの前では意外と素直なのね。ふふっ」
「俺は誰よりも強くなって守りたいんだよ、お母さんを……」
「え?(お母さん?)」
「まあ、スレイブったらそんなに私のことを…… うふっ」
「ええっ?(お母さん? 私のこと?)」
ターナはスレイブを抱き寄せると、優しく頭を撫でてあげるのであった……
しかし、正秀はどうにも要領を得ない。
だから、ターナに話しの続きをせがむのであったが……
「では、話しの続きをしましょう」
「何があったんだよ、気になるぜ」
「でも、その前に……」
「なんだ? なんだ?」
「そう、焦るなよ」
スレイブは言った。
「だって、気になるんだぜ?」
「ふふっ、まずはタメツグに何か食べさせたらどうかしら?」
見ると、為次はソファーに座っているものの、抱きつかれているスイにもたれ掛かってフラフラしている。
しかも、なんだか目の焦点が合っていない。
そんな、為次を見た正秀は言う。
「なあマヨーラ、やっぱりさっきの生肉を突っ込んどこうぜ」
「そうね、そうしましょ」
「ちょ……」
マヨーラは再び生肉を拾い上げるると、為次の口にグリグリと押し付けるのだ。
「ほら、食べなさい」
「ぐぉ…… もっとまともな飯は無いのか……」
「タメツグのくせに、何を贅沢言ってるの」
「そうだぜ、お前が食わないと話が進まないだろ」
「ほら、マサヒデもああ言ってるじゃない」
「くそ、お前ら……」
流石に見かねたターナは言う。
「ま、まあ…… 宿屋の店主に言えば食事を出してくれますわ」
「それだと、時間がかかるぜ」
「それに、そんなのタメツグには勿体ないわよ」
「もういい、お前らには頼まん」
為次はそう言うと、立ち上がろうとするが……
スイが邪魔だ。
退かそうにも、どうにも力が入らない。
「スイ、ご飯食べに行くからちょっと退いてよ」
「うー、離れたくないのです」
「ご飯食べないと死んじゃう」
それを聞いたスイは慌てて立ち上がる。
「はぅ!? 大変です! 私が直ぐにご主人様の食事を持って来ます」
そして、パタパタとフロントの方へと行ってしまった。
「それじゃ、スイちゃんが戻って来るまで話しの続きを……」
「そう焦るものではありませんわ、マサヒデ」
「そう言われてもなぁ、やっぱり気になるぜ」
「それなら、あたしが行ってさっさと持って来てあげるわ」
そう言ってマヨーラもフロントの方へと行ってしまった。
それを見た為次は、すごく不安だ。
もはや何を食べさせられるのか分かったものではない。
だから、上手く動かせない体をなんとか立ち上がらせる。
「はぁ…… はぁ…… 心配すぐる、俺も行く」
為次もヨタヨタとフロントの方へと言ってしまうのであった。
皆がフロントへ行ってしまうので、正秀は少々不満そうである。
「なんだよ、あいつら」
「ちゃんとお話しはしますから、少し待ちましょう? マサヒデ」
「ふぅ…… 仕方ないか……」
「ところで、マサヒデ」
「ん? どうした? スレイブ」
「あれから、必殺技はどうなった?」
「ああ、必殺滅殺撲殺斬だな!」
「あ、ああ……」
「アレから練習して、もうバッチリだぜ」
「そうか、そいつは良かった」
口では良かったと言うものの、スレイブはどことなく悔しそうであった……
正秀は、そんなスレイブの僅かな表情を見逃さない。
「どうかしたのか?」
「ん? いや、なんでもない」
「なんでもないってことは無いだろ、俺がどれだけ為次と一緒に居ると思ってるんだ?」
「タメツグが関係あるのか?」
「あの子は、あまり本心を出したがらないのですわ。そうでしょう? マサヒデ」
「おう、そうだぜターナ、とにかくめんどくさい奴だからな。俺が見てやらないと、一人で腐っちまうんだよ。アイツは」
「ふっ、そうか……」
「それで、どうかしたのか?」
「いや…… 本当になんでもないんだ」
「なんだよ、らしくないな……」
「…………」
そんな不器用な男2人の会話にターナは呆れ顔で言う。
「はぁ…… 本当に世話の焼ける子達ばかりね…… ふふっ」
自分まで子ども扱いされたスレイブは釈然としない。
「なんだよ、ターナまで」
「いいですわ、私が教えてあげますわよ」
「お、おい、ターナ……」
「別にいいいじゃありませんの、どうと言うことではありませんわ」
「い、いや…… でもな……」
「スレイブは必殺技が使えないだけですの」
「くそっ……」
「はぁ? なんだそりゃ?」
「もういいだろ」
「だって、あの必殺技はスレイブが教えてくれたんだぜ?」
「チッ……」
あの時……
為次が上級国民区画へ一人で遊びに行っている時だ。
正秀はスレイブに稽古をつけてもらった。
まずは、大剣の基本的な扱い方や振り回し方を教えてもらい、手合わせなどをした。
それが終わるとスレイブは「マサヒデならもっとスゲー攻撃ができるぜ」と言った。
もちろん正秀は、「是非、教えてくれ」とせがんだ。
しかし、その内容はとても簡素なものであった。
ただ「大剣を上に構え全神経を集中し、力いっぱい振り下ろして地面を叩き付けろ」と、それだけだった。
正秀は意味が分からなかった。
だが、凄腕の剣士であるスレイブが言うのだから間違いは無いだろうと思い、何度も大剣振り下ろした。
幾度ともなく大剣を振り続け、次第に剣だけに集中するようになった。
そして……
神経が極限までに研ぎ澄まされたと感じた時。
ついに、正秀は必殺技を修得したのだ!
その威力は凄まじく、離れた大木をも薙ぎ払った。
そう! それこそ必殺滅殺撲殺斬が完成した瞬間であった!
だから、正秀は訳が分からなかった。
必殺技を教えてくれた本人が、必殺技を使えない……
「どう言うことだ?」
「それは、タメツグに試したのと同じことですわ」
「は?」
「ターナ、もういい。俺が説明する」
「そうですのスレイブ、分かりましてよ」
「なあマサヒデ、自分の必殺技はどんな理屈でできたと思う?」
「理屈? あれだろ、スゲー力で地面を叩くと衝撃波が出るんだろ。違うのか?」
「地面を叩いただけで、衝撃波が出ると思うか?」
確かにスレイブの言う通りである。
「うむむ……(言われてみれば、指向性を持った衝撃波って…… そんなの出る分けがねーよな。でも、実際に俺はできるんだが……)」
正秀は不思議そうに考えた。
「ま、そう深く考えるな。俺も分かんねーからよ」
「スレイブでも分からないって……」
「いいから、ちょっと聞きな」
そして、スレイブは能力について少し話してくれるのだ……
この世界には生命の加護による能力の種類は3つある。
肉体そのものを強化し、凄まじい力と身体能力をもった『戦士』。
体内のマナを使用し、エーテルを操作することによって魔法を使う魔道士。
尚、魔道士には3種類ある。
エーテルをエネルギーに変換し具現化させる『闘魔道士』。
対象物に魔法を直接作用させる『聖魔道士』。
何かに魔法を付与する『戦魔道士』だ。
そして、残った『気功士』となるが、これがイマイチ不明な存在らしい。
もっとも、それについては正秀も前に聞いた覚えがあるので、少しは知っていた。
よく分からない気功士であるが、どうやら現在はサダムネという前例があり、なんらかの力を使うことは間違いないそうだ。
戦士が物理的な肉体の力を使うのはまあいいが、それでも尋常ではない力は謎だ。
次に、魔道士はマナと呼ばれる森羅万象の力を使うらしい。
ぶっちゃけこれも気功士並に良く分からない力である。
世界にあり溢れた力であるらしく、世界の存在する力であり、自然の理だとターナが補足した。
そして、気功士だが、これはサダムネから聞いた話で、スレイブも真偽は定かではないが、なんでも『気』という人の意志の力を使うそうだ。
「意志の力だって?」
「そうだな、魔法が世界を存在させる力なら、『気』とは生命を存在させる力なのかも知れない」
「ふー、なんだか頭がイカレそうだぜ」
「それでだな、気功士は昔にも居たらしいのだが、今では殆ど当時の情報は残ってない。その後も加護を受ける際に気功士を選んだ奴も居たが、どれもこれも無能力者ばかりだったのさ」
「ふむ」
「そんな訳さ、後は分かるだろ?」
「ん? 何がだ?」
「…………」
スレイブは黙ってターナを見た。
「マサヒデ…… いい? 気功士は謎の力を使える能力者なのは理解できまして?」
「ああ、バッチリだぜ」
「では、情報の無い過去の気功士を除くと、サダムネ以外はその能力を使うことはできなかった。それも理解できまして?」
「ああ、そうだな、それもバッチリだが為次も能力を使えるんだろ?」
「その通りですわ」
「おう」
「では、今まで能力の使えなかった人々とサダムネとタメツグの違いは分かりまして?」
「んん? 違いって…… この世界に昔居た奴のことなんて俺は知らないぜ。ま、強いて言えば、タメツグもサダムネもこの世界の人間じゃないってことかな…… あ、俺もか」
「じゃあ、もう分るだろ」
スレイブは言った。
「え? なんだ? 異世界から来た人間なら気功士の能力を使えるってことなのか?」
「そうだな」
「……それは分かったが、スレイブが必殺技を使えないのとなんの関係が……」
ターナとスレイブは黙って正秀から目を逸らす。
「「…………」」
「あっ!」
正秀はようやく気が付いた……
スレイブは自分に稽古をつけてくれたのではない。
只、試されただけなのだと。
異世界から来たと言う理由だけで、気を扱うことができるのではないか? と。
「試したのか?」
「ああ、そうだぜ。正直悔しかった……」
「…………」
「お前らは俺以上の力を扱える……」
「…………」
「タメツグが加護を受けた直後に能力を発揮したのを見た時は、信じたくなかった……」
「…………」
ドンッ!!
「こんなふざけた野郎が俺より強くなるのかってよ!!」
スレイブはテーブルを叩きつけながら叫んだ!
「スレイブ……」
「あら、スレイブ…… マサヒデの前では意外と素直なのね。ふふっ」
「俺は誰よりも強くなって守りたいんだよ、お母さんを……」
「え?(お母さん?)」
「まあ、スレイブったらそんなに私のことを…… うふっ」
「ええっ?(お母さん? 私のこと?)」
ターナはスレイブを抱き寄せると、優しく頭を撫でてあげるのであった……
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