異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第57話 嫉妬

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 正秀がスレイブ達と楽しくおしゃべりしていたその頃。
 スイとマヨーラはフロントのカウンター越しに、店主を呼んでいた。
 為次のご飯を注文する為に……

 「すいませーん、誰か居ないのぉ!」

 「誰も居ないのです」

 「何処に行ったのかしら? 急いでるのに……」
 
 フロントには店主の姿が見えない……

 ホテルのフロント係りとは用がある時に限って居ないものである。
 もっともホテルならば、呼び出しボタンとかあるのでまだいいが、場末の旅館ともなれば最悪だ。
 婆さん一人しかおらず、しかも耳が遠いときたものだ。
 大音量でテレビを見ていようものならば、呼び出すことすら不可能である。

  とはいうものの、宿屋の店主はスイとマヨーラの呼び掛けに、フロントの奥の部屋からパタパタとやって来た。
 金髪ロングヘアーの似合う美人のお姉さんである。
 
 「はい、お待たせしましたー」
 
 「ちょっと、遅いわよ」

 どっかのおばさんのように、せっかちにマヨーラは言った。

 「どうなさいました?」

 「ご主人様に、ご飯を食べさせたいのです」

 「お食事ですね」

 「そうよ、早くしてちょうだい」

 「では、ご注文をお伺いします。用意できましたら、食堂にお持ちしますね」

 「あんたが持って……(くっ、こんな美女をマサヒデの前に連れて行くわけにはいかないわ)」

 どうやらマヨーラは勝手に嫉妬しているらしい。

 「結構よ、あたしが持って行くから早く作ってちょうだい」

 「そうですか…… では、ご注文を」

 「泥団子定食でいいわ、早くしてちょうだい」

 「えっと……」

 訳の分からない物を注文するマヨーラ。
 金髪美女店主は困惑気味だ。
 そこへ、上手く動かせない体をなんとか動かし、這いつくばって為次がやって来た。

 「ぐっ…… ハァハァ…… ふ、ふざけるな……」

 そう言いながら、息を切らしカウンターにもたれ掛かった。

 「ご主人様さまぁ」

 「あら、あんたも来たの?」

 今にも倒れそうな為次は、カウンターから摺り落ちそうになりながら言う。

 「お、お前らには頼らぬ」

 飯を自力で注文しようとする為次なのだが、顔を上げると目の前には金髪美女が居るのだ!
 女性が苦手な為次にとって、これはドッキリドッキン過ぎる!
 思わず顔を赤らめ目を逸してしまう。

 「あ、あの…… えへ、えへへ、お姉さんの手料理が食べたいなって……」

 「お客様も、お食事ですか?」

 そんな為次と金髪美女店主を見るスイは、ちょっと不愉快だ。
 なんか勝手に嫉妬している。

 「むー」

 「こいつの食事だけでいいわ、早くしてちょうだい」

 「泥団子定食でいいのです」

 「は、はい…… そうですか」

 「ぬぅ…… スイまで……」

 「そ、それでは、一応メニューを」

 そう言うと、金髪美女店主は為次の前にメニューを広げてくれる。

 「こんな奴にまともな食事をさせる必要ないのに」

 「そうなのです」

 「くそっ、お前ら……」

 為次はとりあえずメニューを見てみる。
 しかし、写真が載っていないのでイマイチどんな飯なの分からない。 
 仕方ないので適当に頼むのだ。

 「じゃあ、キャベツ炒め定食で」

 「はい、キャベツ炒め定食ですね」

 「そうです、隠し味にお姉さんの愛情たっぷりでお願いします」

 「……は、はい」

 それを聞いたスイは為次の後ろに回ると、抱き付きながら持ち上げる。

 「むー! ぐむー!!」

 「え? あ!? ちょ、スイ?」

 そして、そのまま食堂へと為次を持って行ってしまった……

 「スイ……」

 「あの……」

 「と、とにかく早く作ってちょうだい」

 「はい……」

 ゴンッ!!

 鈍い音にマヨーラは振り返ると、スイは為次をドアの上枠にぶつけていたのであった。

 「何してるのよ……」

 ※  ※  ※  ※  ※

 為次はスイに運ばれ食堂に戻って来ると、そこではスレイブがターナに頭をナデナデされていた。
 しかし、額から流れ出る血が目に入ってよく見えない。

 「ぐぁ!? タ、タメツグ!」

 為次を見たスレイブは慌ててターナから離れた。

 「なんだ、もう戻って来たのか…… ってなんで血まみれなんだよ」

 「とにかく降ろしてー」

 「はい、ここまで来ればもう大丈夫なのです。むっふー」

 何が大丈夫なのか分からないが、とにかくソファーに為次を置きました。
 ついでに、為次の隣に座るのだ。

 「どうしたんだ? 為次」

 「とりあえず、何か拭く物を…… 血で前が見えん」

 「確か雑巾がその辺に」

 「ぬぅ……」

 「……どうぞですわ」

 為次は雑巾をスルーしてターナからハンカチを受け取り顔を拭いた。
 ようやく、目が開けられるようなったのでとりあえず一安心だ。

 「はぁ、ご飯の注文も命がけだお」

 「なんでだよ」

 「まあいいや、ところでさ」

 「なんだ?」

 「いや、マサじゃなくてターナ達に訊きたいんだけど」

 「何かしら?」

 「この世界って油は無いの?」

 「あぁ……」

 自分よりレオパルト2の心配をする為次に、正秀は意味不明な納得をした。

 「油ですか? もちろん有りますわ」

 「うそ!? マジで!?」

 「お料理に使いますからね」

 「……植物性油か動物性油かぁ」

 「それじゃ大量に手に入れるのは大変そうだな」

 「うん、1000リットル以上もかき集めるは……」

 尚、レオパルト2の燃料タンクは1160リッターだ。

 「それに、まともに精製できるとも思えないぜ」

 「確かに…… スラッジが溜まり過ぎるわ。ダメかも」

 「だな」

 「そんな大量の油をどうするんだ?」

 スレイブは訊いた。

 「前にも言ったと思うけど、レオには魔道機関が搭載されてないの」

 「そうだっけな」

 「うん、そんで代わりに油で動くの」

 「ああ…… それで……」

 何か思い当たる節がある様子のターナに正秀は訊く。

 「どうかしたのか? ターナ」

 「いえ、昔にもサダムネが来た時にも同じようなことを言ってましたの。しきりに、油を欲しがっていましたわ」

 「へー、それでどうしたの?」

 今度は為次が訊いた。

 「食物プラントで好きなだけ手に入ると教えましたわ」

 「「あっ!」」

 二人は顔を見合わせる。

 「そうか、その手があったか」

 「しかも、あれなら成分も変えれるわ……」

 「よかったな為次」

 「うぅ…… ありがとうターナ、これでレオのお腹も満たせるかも」

 「うふ、お役に立てて何よりですわ」

 「なぁ、為次」

 「ん?」

 「あの機械って皿やビンも作ってたよな?」

 「うん」

 「もしかしたら、火薬とかも……」

 「……マジか」

 「砲弾」

 「おぉ……」

 為次はパーフェクトステーキを作った時のことを思い出していた。
 あの時、食物管理魔法陣と呼ばれる操作パネルでステーキを作った。
 成分から分量まで事細かに調整して作ることができる。
 しかも、形や大きさまで指定することができ、それらを組み合わせることもできるのだ。
 また、食べ物だけではなく、それを入れる容器や器まで作れる。
 それは正、究極の3Dプリンターとも言うべきだろうか?
 もしかしたら、本当に砲弾まで作れるのではないかと思えてくる。

 「試す価値はあるかな……」

 「だろ?」

 「おいおい、お前ら何を企んでいるのか知らんが、また騒ぎを起こすなよ」

 「大丈夫だってスレイブ、ちょっと爆発物を作ってみたいだけだから」

 為次は言った。

 「それの、どこが大丈夫なんだよ!」

 と、そこへマヨーラが食事の乗ったトレーを持って来た。

 「あんまりバカやってマサヒデを困らせんるじゃないわよ。タメツグ」
 
 「おお、やっと来たか。腹ペコりんだぞ」

 「あの女が遅いのよ。ほら、さっさと食べなさい」

 為次の前にキャベツ炒め定食が置かれる。

 「あの美人店主か…… それなら遅れても文句は言えぬ」

 「うー! スイがご主人様のご飯を作り直してくるのです!」

 「ダメだ、これはあの人が俺の為に愛情を注いで作ってくれたのだ」

 「うにゅぅ! スイの方がもっと愛情をたっぷりに塗りたくって作るのです!」

 「変なものを塗るんじゃない……」

 「変じゃないです!」

 「もういい、とにかく食べよう。腹が減って行き倒れになりそうだわ」

 「むー……」

 そんなこんなで、ようやく為次は食事にありつけるのであった。

 「もぐもぐ、うまし」

 「なあ、この宿屋の店主ってそんなに美人なのか?」

 「んあ? 見てないの? もぐもぐ」

 「おう、俺達でお前を運び込んで、チェックインをターナがやってくれたからな」

 「それからも見てないの? もぐもぐ」

 「見かけなかったなぁ」

 「ふーん、もぐもぐ、もったいねー」

 「そうか…… んじゃ、ちょっと挨拶でもしてくるかな」

 そう言って、正秀は立ち上がろうとするのだが。

 「痛てててぇ……」

 マヨーラは正秀の隣に座って耳を引っ張りながら言う。

 「行かなくてもいいわ、ここに居なさい」

 「わ、分かったから耳を引っ張らないでくれ……」

 「タメツグ、あんたもこれ以上いらないこと言ったら、もう一度寝かすわよ」

 「は、はぃ……」

 結局、スイのジト目で睨まれる視線も痛いので、為次は大人しくキャベツ炒め定食を食べるのであった……
 黙って食べる為次は思う。

 レオにも早く腹いっぱい燃料入れてやらねば。
 なんとか目処めどがついて良かった、良かった。

 と……

 後、ついでに金髪美女の写真を撮っておけばよかった。

 などと、もぐもぐ……
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