異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第68話 回収

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 正秀と為次はしばし、おたわむれをしていたのだが、もう止めた。
 特に中身の無い下らない話で言い合いをしていても仕方ないからだ。
 それよりも、さっさと戦車を修理しないことには、どうしようもないのだ。

 そんな分けで、正秀は履帯をハメようとレオパルト2を持ち上げようとするのだが……

 「せーの、どっこい……」

 「ちょっと待てーい」

 車体を持ち上げようとする正秀を為次は慌てて止めた。

 「なんだよ?」

 「マサが持ち上げて、誰が履帯をハメんの?」

 「お前がハメればいいだろ?」

 「流石に、そんな力は無いって…… 俺、戦士じゃないし」

 「だよな……」

 「では、私がつばい様を持ち上げるです」

 「え、スイが? 大丈夫なの?」

 「やってみるです」

 そう言いながらスイは転輪に手を掛けると持ち上げようとする。

 まだ、魔法の効果で軽くなっているとはいえ、1トン近い重量はある。
 どう見ても少女の華奢な腕では無理っぽい。

 「いや、流石にスイちゃんには……」

 正秀が言おうとした時だった。

 モリ モリ モリ……

 戦車の片側が地面から離れ浮いた。

 「うぉ、すげぇ……」

 華奢な少女が戦車をもち上げる様に為次は驚いた。

 「スイちゃん、力持ちだな」

 「戦闘ポーションが、まだ効いてるのかな?」

 「もう、ポーションの効果はないです」

 「そ、そうすか。反重力効果が続いてるにしてもスゲーな」

 「あっ、そうだったか」

 為次の言葉に正秀はようやく気が付いた。
 レオパルト2にリバースグラビティを付与したままであったことを。

 「それで、こんなに吹っ飛んじままったのか」

 「あ? 今頃……」

 「いや、悪りぃ、悪りぃ」

 「まったく…… と、言っても変なとこもあるしね」

 「変なとこ?」

 「まだ、よく分かんないけどリバースグラビティがちょっとね……」

 「そうか…… まあいい、そんじゃ今のうちに直すか」

 「無理にやんないでよ」

 「分かってるって」

 正秀は垂れ下がっている履帯を掴むと、転輪の溝に慎重にハメる。
 本来、履帯が外れた時は、こんなに簡単には直せない。
 下手すれば、専用の車両に助けてもらったり、他の車両に引っ張ってもらう必要がある。
 しかし、この異世界での魔法のお陰で、いとも簡単に直せたのだ。

 「スイちゃん、もう降ろしていいぜ」

 「慎重にね、慎重に」

 「はいです」

 スイはゆっくりと戦車を降ろす。

 「治ったです」

 「うん」

 「もう大丈夫なの?」

 特にやることの無いマヨーラは訊くが、忙しいので誰も答えない。

 「反対側はどうなんだ?」

 「土に埋もれて分かんないから、あっちも持ち上げてよ」

 「はいです」

 皆は戦車の反対側に周り込むと、スイが車体を持ち上げるのを見守る。

 モリ モリ モリ……

 土の中から出て来た履帯部分は、特に問題無いようである。
 運良く履帯は外れたり切れてたりはしていなかった。

 「大丈夫っぽいね」

 「ふぅ…… 助かったぜ」

 「良かったわね、マサヒデ」

 「スイ、もう降ろしていいよ」

 「はいです」

 スイはゆっくりと戦車を降ろした。

 「じゃ、ちょっと動かしてみる」

 「そうだな、他には問題無いのか? 為次」

 「……んー」

 「どうした? まだ、どっか壊れてるのか?」

 「あー…… APU補助動力装置が動かん」

 「!? マジか?」

 「何度か始動させようとしたけど、うんともすんとも言わん」

 「ああ、それで機嫌悪かったのか」

 「……うん、……まぁ」

 「悪かったな、為次」

 「もういいよ、それより動かしてみる」

 「おう」

 為次は運転席に潜り込むと、アクセルをゆっくりと踏み込んでみる。
 すると、履帯が回り始めるのだが……
 履帯がズルズルとその場で回るだけで、車体が前に進まない。
 泥中では重すぎて、スタックすることもあるが今は逆に軽すぎて接地圧が低いのだろうか?
 レオパルト2は地面を掘るだけだ。

 「はう、つばい様は穴掘り名人なのです」

 「そ、そうだな、スイちゃん……」

 「なんなの、まだ動かないの」

 いくら足搔あがいても脱出できないレオパルト2。
 流石に、このまま前後運動とかやって頑張ったところで無駄っぽいので、為次は諦めた。

 「おーい、マサぁ」

 「おう」

 「ダメだわ、持ち上げて運んでよ」

 「おう、そうだな。スイちゃん、こっち側を持ち上げてくれ、俺は反対側を持つから」

 「はいです」

 正秀は車体の反対側に回り込む。

 「じゃあ、スイちゃんせーので持ち上げるぞ」

 「はいです」
 
 正秀とスイは、転輪部分に手を掛ける。
 エンジンがかけっぱなしなのでちょっと、危ない気もするがまあいい。

 「いくぞ! せーの!」

 「うんしょなのです!」

 「そりゃ!」

 二人が持ち上げると、戦車は土の中からモリモリと出て来る。
 それは、元居た世界ならば目を疑う光景であろう。

 「よーし、このまま前に持ってくぞ」

 「はいです」

 土にハマって動けなかったレオパルト2。
 二人が持ち運んで、穴の中から草原へと運んで行った。
 おかげで、難無く脱出できたのでした。

 「終わったぞ、為次」

 「うい」

 「おう……」

 「じゃあ、動かしてみるわ」

 「今度は大丈夫だろ」
 
 為次は再びアクセルをゆっくりと踏み込んでみる。
 すると、レオパルト2はゆっくりと前進を始めた。
 それから、為次は速度を上げてみたり、左右に曲がったり、超信地旋回したり、色々と試してみた。

 「どうだ?」

 「大丈夫そう」

 「ふぅ、助かったぜ」

 「つばい様、治ったですか?」

 「壊れたとこもあるけど、今のとこ大丈夫っぽいかも」

 「まだ、どっか痛いですか……」

 「まあ、ポンタに行ってからかな」

 「ああ、俺達の陸上艇に似たやつか」

 「そうそう、もしかしたらサダムネなら整備できるかも」

 「だといいんだがな」

 「とにかく、動くんなら戻りましょうよ。眠くなってきたわ」

 「そうだなマヨーラ。そうするか」

 そして、三人もレオパルト2に搭乗すると、キャンプ地へ戻るのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 あれから、キャンプ地へ戻る途中に、散乱した食料と大剣を回収して戻って来た。
 食料品は、サイクス出発前にどうやって積んだのだろうか?
 散乱したのを全部拾ったが、全部は上手く積載できなかった。
 仕方ないので、一部は残して行くことにしたのだ。

 一方、正秀は大剣を拾うと、さっきまでケンカしてたことなど忘れて楽しそうに振り回していた。
 お気に入りの大剣であるが実戦経験はまだ無い。

 そんなこんなでキャンプ地に戻って来た。
 そして、皆は疲れたのであろう……
 早々にテントへと入るのであった。

 「今日は、色々あって疲れたな」

 正秀は言った。

 「散々な1日だったわ」

 「あたしもよ、バカに裸見られるし」

 「私も見られたです」

 「ほんとか!? 為次」

 「わざとじゃないってば……」

 「ニヤニヤしてたくせに」

 「はぁ? それどころじゃなかったし。毛も生えてないんだから、そんなに恥ずかしがらんでも」

 「ぎゃーーーーー! アホ! バカ! 何言ってんのよ!」

 「そ、そこまで見たのか!?」

 「マサヒデも変な想像しないでよ!」

 「あっ、わ、悪りぃ……」

 「ま、そんなパイパンは置いといて……」

 ゴスッ!

 マヨーラに殴られた。

 「痛い……」

 「まったく、いい加減にしなさいよ。タメツグ」

 「で、置いといてなんだ?」

 「うん、移動中に主砲が撃てないのはキビシイね」

 「確かに、ずっと軽いままじゃ困るぜ」

 「直ぐに魔法が解除できればいいけど、そんな魔法無いのかな?」

 「魔法解除なら、ディスペルマジックがあるです」

 「おお、ターナが使ったアレか」

 為次はサーサラさんを捕まえた時のことを思い出した。
 しかし、マヨーラは呆れて言う。

 「ほんとバカね……」

 「え? なんで? マヨ」

 「この中で、ディスペルが使えるのはスイだけよ」

 「うん。じゃあ、スイでいいじゃない」

 「あのね…… スイは戦魔導士なのよ」

 「知ってる」

 「全然、分かってないわね」

 「え、なんで?」

 「しょうがないわね。いい、よく聞きなさいよ」

 そう言いうとマヨーラは説明してくれるのだ。

 マヨーラの説明によると、戦魔導士は付与魔法しか使えない。
 もちろん、それは皆も知っていた。
 問題はそこからである。

 付与魔法は魔法を直接発動させることはできない。
 あくまで対象物に魔法の効果を与えるだけである。
 更に聖魔導士と闘魔導士の魔法では付与効果が違うそうだ。

 聖魔導士の魔法は付与した物を使用することでその効果を発揮する。
 例えばヒールの魔法を水に付与すれば水の怪我が治るとか、そんな意味不明なことにはならない。
 あくまでヒールの付与された水を使用すること。
 つまり、飲むことでその効果が発揮されるのだ。

 対して闘魔導士の魔法は対象物にその効果を直接与える。
 これまた例えると、剣にライトニングボルトを付与すれば電気を帯びた剣となり電撃剣となる。
 電撃を帯びた剣で人を殴っても、殴られた人が電気人間なる分けじゃない。

 それらを踏まえてリバースグラビティは闘魔導士、ディスペルマジックは聖魔導士が使えることに問題があるのが理解できよう。
 リーバースグラビティは戦車そのものを軽くしてくれるのでいいが、ディスペルマジックを戦車に付与した場合、戦車そのものにはその効果が発動しないのだ。
 ディスペルマジックのかかった戦車を他の魔法に突っ込ませることで、初めてその効果が発動するのだ。
 戦車に付与されたリーバスグラビティを解除はしてくれない。

 と、そんな感じらしい……

 「と、いうわけよ。分かった?」

 「ふむふむ」

 正秀は微妙に分かっていない感じだ。

 「じゃあさ、ディスペルポーション作って、ぶっかければいいじゃん」

 「あのね…… この陸上艇って凄く重いって言ってなかった? タメツグ」

 「うん、60トン以上はあるよ」

 「それだけの物に付与した魔法を、その小瓶でどんだけ解除できると思ってんのよ」

 「ふむふむ」

 正秀は微妙に分かっていない感じだ。

 「あー、なるへそ。そういうものなんだ……」

 「そう言うものなのよ」

 「ふむふむ」

 正秀は微妙に分かっていない感じだ。

 「残念、マヨが聖魔導士だったら良かったが」

 「つまり、残念ってことだな。ふむふむ」

 「マサ……」

 「マ、マサヒデには難しかったかしら……」

 「ねぇスイ」

 為次はスイに声を掛けようとしたが……

 「むにゃ、むにゃ」

 寝ていた。

 「スイちゃん寝てるな」

 「うん」

 「じゃあ、俺達も寝るか」

 「じゃあ、あたしはマサヒデの隣……」

 マヨーラが言おうとした時であった……

 「どうでもいいが、為次とマヨーラちょっと臭うぞ」

 正秀は遠慮なく言ってしまった。

 「ぎゃーーーーー!!」

 「ああ、ネチョネチョを被ったから」

 「ネチョネチョ?」

 「もう嫌ぁぁぁ!」

 結局、マヨーラと正秀は両端で一番離れて寝ることになってしまった。
 マヨーラが泣く泣くそうさせたのだ。

 あわただしかった1日が終わる。

 夜もけて行くのであった…… 
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