異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第86話 石人その2

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 為次がアクセルを踏み込むと、エンジンが唸りを上げ黒煙を吐き出す。
 回転数が1500rpmを超えたところで一気にハンドルを回すと、左右の履帯は互いに反対方向へと動き始める。
 レオパルト2はその重量をものともせず、素早くその場で方向転換をする超信地旋回で正面にゴーレムを捕らえるのであった。

 「マサ、砲撃はできるの?」

 立ち上がる程度には動けるようにはなった正秀だが、まだ体がダルくて元気いっぱいとはいかない。
 そのことを為次は少々心配していた。

 「おう、それくらいなら楽勝だぜ」

 「うい」

 「それじゃあマサヒデ、またドカーンと一発やってちょうだい」

 「おうっ、任せな」

 「まてまて、待つんだ、マサ」

 「何よタメツグ、もったいぶってるの?」

 「違うよ、無駄弾撃たないでって」

 「岩ぐらい抜けるだろ」

 「んもぅ、さっきあいつらの戦闘見てたでしょ!」

 「見てたぜ、中々の迫力だったな、俺だって回復すりゃぁな」

 「違う、そうじゃない」

 「ん?」

 脳筋思考でしかゴーレムを見ていなかった正秀。
 為次は仕方なく戦闘の状況を説明するハメになるのだ。

 「えっとねぇ……」

 その内容はこうであった……

 冒険者はゴーレムに対して、魔道士1人につき戦士1人または2人をワンセットとして戦っている。
 魔道士に関しては、闘魔道士と聖魔道士のどちらも居るようだ。
 そして、その戦い方なのだが、魔道士がなんらかの魔法をかけると同時に戦士が斬り込む流れとなっているのが見て取れた。
 それは多分、敵のバリアを解除する為に魔法を唱えているのではないかと思う。
 実際タイミングのズレた斬撃を見ると、あのドラゴン同様に光の波紋が発生していた。
 更にはバリアそのものは直ぐに回復するのであろう、逐一攻撃のたびに魔法をかけているのだから。

 「ってことだよ、つまり、バリアがあるなら砲撃も意味無しってね」

 「なるほど、アイツもシールド持ってるのか」

 「バリアね」

 「バリアって何?」

 「マジックシールドのことだぜ、マヨーラ」

 「ふーん」

 あまり興味の無さそうなマヨーラだが、為次はバリアに拘る。

 「バリア」

 「んでマヨーラ、為次の言ってることは確かなのか?」

 「ええそうよ、アンチシールドでマジックシールドを一瞬だけ壊すのよ」

 「一瞬だけなのか?」

 「強力な魔獣は常にマジックシールドを張ってるのよ、だから破壊した直後にしかダメージが与えられないわ」

 「なるほどな、為次の言う通りか……」

 「でも、レオならシールドごと攻撃できるんじゃないの? だからマサヒデ達はレッドドラゴンを倒せたんじゃ?」

 「残念ながら違うぜ、口の中にぶち込んだら、たまたま吹っ飛ばせただけだぜ」

 「あら、そうなの残念」

 「戦車砲が効かないなら、お手上げだぜ」

 「いや…… マヨはアンチシールドとやらは使えるの?」

 「あたしを誰だと思ってるのよ、当然使えるわ」

 「それなら、聖魔導士は何やってんだ?」

 闘魔導士と聖魔導士は同じ魔法を使えないっぽいので、為次は訊いてみた。
 言われて正秀も疑問に思う。

 「確かに、なんだろうな?」

 「聖魔導士はディスペルマジック、魔法解除を使ってるのよ」

 「なるへそ、バリアを破壊するのと解除するの違いってとこか」

 「そんなとこね」

 「では新たなる作戦と行きますか」

 「何か考えでもあるのか? 為次」

 「その名も、愛のラブラブツインアタック大作戦!」

 「あら、タメツグの割には素敵な名前じゃないの」
 
 「ふふ、では聞くが良い」

 為次の作戦内容はこうであった……

 冒険者達の攻撃方法は、敵のシールドを無効化したと同時に戦士の攻撃を加えると言うものだ。
 無効にできるのは一瞬だけの為に、息の合った2人または3人で攻撃を仕掛けている。
 ならばこちらも同じことをすれば良いだけである。
 マヨーラがアンチシールドを放ったと同時に砲撃をすれば、中身は只の岩である。
 撃破は容易なはずだと。

 そんだけ。

 「と、まあ、マサとマヨーラのラブラブコンビならば可能なはずだぞい」

 その作戦を聞いたマヨーラは感激していまい、頬を赤らめながらちょっと興奮気味だ。
 先程、為次を引っぱたいたことなど、どうでもよくなっていた。
 もっとも、感激したのはラブラブコンビの部分だけであるが。

 「キャー! 最高だわ! 素敵な作戦ねタメツグ、さっきあんたを叩いたのは許してあげるわぁ!」

 「ちょっと何言ってるか分かんない……」

 「作戦名はともかく、それならいけそうだぜ」

 「じゃあ後はよろ」

 「おっけー、スイちゃん試しに徹甲弾頼むぜ」

 「……はふぅー」

 「スイちゃん?」

 「むふぅ~、すはぁ~」

 「何やってるんだ?」

 マヨーラは横を向いて、呼んでも反応の無いスイを見ると……

 「クンカ クンカ すぅーはー」

 「ちょっとスイ……」

 スイは先程の戦闘で服の大半を焼失していた……
 流石に半裸では可哀想だと思い、為次はまた自分の上着のパーカーを貸したのだ。
 そして、大好きなあるじの上着を着たスイは大興奮である。
 シムリの監視によって為次との接触もままらなく、結構イライラしていた。
 そこへ為次の臭いが付いた上着を渡されたので、もう我慢できない。
 ひたすら臭いを嗅いでちょっとトリップ気味になっていた。
 よだれを垂らしながら悦に浸っていた……
 
 「バカスイ!!」

 ゴチンッ!
 
 マヨーラは杖でゴツンとスイの頭を小突いた。

 「いにゃっ!?」

 何事かとスイは辺りをキョロキョロする。
 しかし狭い車内だ、右横に呆れ顔のマヨーラが居るだけで何時もと変わりはない。

 だから再び……

 「クンカ クンカ……」

 「スイ! いい加減になさい!」

 「どうされました? マヨマヨ様」

 「どうしたじゃないわよ! 仕事よ! し・ご・と!」

 「なあマヨーラ、スイちゃん何やってるんだ?」

 「バカツグの服の匂い嗅いで、イッちゃってるのよ」

 「ああ、なるほどな……」

 「ちょっと意味分かんないんだけど……」

 困惑気味の為次を差し置いて、話は進む。

 「なあスイちゃんっ」

 「はい?」

 「ゴーレムを倒したら為次の新しいパンツやるぜ」

 「新しいのは要らないのです」

 「……そうだな、使い古しの脱ぎたてをやるぜ」

 それを聞いたスイは俄然やる気を出し呻る。

 「!? うおぉぉぉ!」

 「何を勝手なことを……」

 「前のパンツの匂いが、ほとんど無くなって困っていました」

 「まだ、持ってたのね……」

 「マサヒデ様! スイはお役に立ちますよ。ささ、何なりとご命令を!」

 「おう」

 「ちょ、待ってよ…… つか前の返して」

 為次のパンツを貰う確約をして、大興奮のスイ。
 もう居ても立ってもおられないので、狭い車内で右往左往する。
 尚、為次のパンツ返してはオール却下でスルーされた。

 「それじゃ、徹甲弾頼むぜ」

 「はいです」

 スイは後ろの防護扉を開けると、嬉々として装填をする。

 「装填です!」

 「了解、それじゃ行くぜマヨーラ」

 「ええ、分かったわマサヒデ」

 こうして、ようやくオペレーション愛のラブラブツインアタックが開始されるのであった。
 マヨーラは魔法の準備をする為に、ハッチから上半身を乗り出し杖を構える。
 正秀は照準装置を覗いて、ターゲットをサイトの中心へと捉える。

 「準備はいい? 行くわよマサヒデ」

 「おう、何時でもいいぜ」

 「喰らいなさい! あたしとマサヒデの初めての共同作業!」

 「はぁぁぁ…… ラブラブアンチシールドぉぉぉ!」

 ちょっと恥ずかしい名前で魔法を唱える。
 すると、謎の光がゴーレム目掛けて飛んで行く。
 光が当たる瞬間に正秀は射撃スイッチを押した。

 「ファイア」

 ドゴーン!!

 何時もの爆音を周囲に響かせると、徹甲弾が砲身から放たれ飛翔する。
 砲弾は寸分の狂いも無くゴーレムの胴体に着弾して……

 ガキィィィン!

 着弾箇所に光の波紋が広がる。
 シールドに弾かれた徹甲弾は街の防護壁へと飛翔し、破壊した……

 この徹甲弾は昔ながらの鉄の塊を飛ばすだけの砲弾である。
 成形炸薬弾と違い、当たってもメタルジェットを放出しない。
 また、翼安定徹甲弾のように装填筒にも入っていないので細くもない。
 日本で戦争が始まり、地上戦が主流となると砲弾の生産が急務とされた。
 そこで生産されたのが徹甲弾だ。
 鉄に火薬を詰めるだけの単純な物なので、価格が安く生産も早かった。
 重装甲相手には弱く、傾斜装甲にも弱いのだが、軽装甲相手には十分な威力を発揮できる。
 その為に大量に生産され、搭載数も多い。

 「あーあ、壊しちゃった」

 双眼鏡を除きながら、為次は呆れるように言った。

 「少しタイミングがズレたみたいだぜ」

 「最初だし仕方ないわ」

 「よし、次で決めるぜ」

 「そうね」

 「スイちゃんもう一発頼むぜ」

 「はいです」

 再び徹甲弾が装填される。

 「装填です」

 ……………
 ………
 …

 3発目の砲弾も弾かれた……

 弾かれた2発目も街の壁を破壊し、3発目に至っては街の高い建物を破壊していた。

 「どうしてよ……」

 「意外と難しいぜ」

 「全然ダメだね……」

 「パンツはまだですか!?」

 「つ、次こそっ! スイちゃん!」

 「はいで…… あう、無いのです……」

 後ろの即用弾薬庫の徹甲弾が無くなってしまった。
 レオパルト2には戦闘中に使用する即用弾薬庫が砲塔内部、スイの後ろに15発がある。
 それとは別に車体前方左側に27発の主弾薬庫があり、為次の直ぐ真横にある。
 合計で42発の砲弾を搭載する。
 当然だが砲塔を旋回させると、角度によっては車体側の砲弾をスイは取り出せない。
 車体弾薬庫から即用弾薬庫へ給弾するには、砲塔を右に90度くらい回して行う。

 「ちょっと待って下さい、今取り出しますので」
 
 スイは砲塔バスケットの隙間から、車体弾薬庫に手を伸ばし無理矢理に徹甲弾を取り出そうとするが為次に止められる。

 「もういいよ、スイ」

 「はう?」

 「これ以上無駄弾は撃ちたくないし」

 「む、む、無駄とは何よ無駄とはっ! あたしとマサヒデのラブラブアタックを邪魔する気なの!? そうなのね!」

 「ちょっと落ち着けマヨ」

 「落ち付いてるわよ!」

 と言うマヨーラは大興奮である。

 ゴーレムもさっきから、変な攻撃をされてチラチラとこっちを見るようになってきていた。
 相変わらず冒険者も無駄な攻撃をしつつ、数人程食べられてしまっているし……

 「どうすんだ? 為次」

 「うーん…… どうしよ……」

 「次こそはっ! 次こそなのよー!」

 「ゴーレムさんを倒さないと、パンツがなのですー」

 騒がしい車内で、どうしようかと為次は考える……

 あいつら全然ラブラブじゃないな……

 と……
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