異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第87話 石人その3

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 満点の星空に浮かぶ大小2隻の魔導飛行艇。
 そのうち大型の1隻はサイクスの所有する王宮飛行艇である。
 甲板の上ではアノ連中が、まだポンタ周辺での戦闘を眺めていた。

 「あいつら街をぶっ壊してやがって、何やってんだまったく」

 街を壊されてご立腹の貞宗だが、スレイブにとっては他人事に過ぎない。
 ニヤリとしながら横目で貞宗を見ていた。

 「レオの攻撃力は相変わらずってとこだな。ははっ」

 「それでも、マジックシールドを撃ち破るまでは行きませんわ」

 ターナはわざとらしい困り顔で言った。
 それを見たクリスは旦那を促す。

 「そろそろ、私達も行った方が良ろしくありませんか?」

 「そうですわ、サダムネならシールドごと斬れるではありませんの」

 「しかしなぁ…… ターナよ、そうは言うが本体があの岩の塊じゃ…… 水谷ならいいかも知れんが」

 「ゴーレムはちょっとやり過ぎだと思うわぁん、ねぇターナ」

 「まったくニクミの言う通りだ、何考えてだターナ。ファーサだけじゃ足らねぇのかい?」

 「あら、なんのことかしら? それにファーサの民は魔神の加護を拒んだ愚か者ですわ。魔神の力なくして、魔獣と戦うなど無謀にも程があると思いませんこと?」

 「ったく、とぼけやがってよ…… それにあの奴隷の娘だ、ライトブレードをふりまわしてたぞ、何者だ?」

 「直接本人に聞いた方がよろしいのではなくて?」

 「ふんっ、ここに居ても埒が明かねぇな、クリス行こうか」

 「はい。それでは皆さん、ご機嫌よう」

 クリスは一礼をすると貞宗と共に甲板を後にし、接舷された小型の飛行艇へ向かおうとした。
 別れ際にニクミが話し掛けてくる……

 「サダムネちゃん、アレのエレメンタルストーンにはスクロールが仕込んであるわ」

 その言葉に貞宗は足を止め振り返える。

 「……そうかい」

 「だから心配しないでちょうだい」

 「ま、精々使わせないように頑張ってくれよ」

 「ふっ、スレイブよ。そういうセリフは俺に勝ってからの方が、いいんじゃないのか?」

 「なんだと、てめぇ……」
 
 「じゃあな」

 そう言いながら、スレイブに背を向け手を振る貞宗。

 「ちきしょー! 何者なんだよお前らは! マサヒデの力もおかしいだろ! なんだよありゃぁ?」

 「スレイブちゃん、落ち着いて……」

 「お前もタメツグの野郎もイカれやがるぜっ! 気功士はよっ!」

 叫ぶスレイブを後にし、貞宗は小型の飛行艇に乗り込むのであった……

 ※  ※  ※  ※  ※

 その頃……

 レオパルト2はバックしてた。
 いわゆる後退であり、バックでしている分けではない。

 「そんな説明要らないわよ、バカじゃないの?」

 マヨーラに怒られたが気にしない。
 ゴーレムがこちらをチラ見するので、ちょっと離れることにしたのだ。

 レオパルト2は後進で40kmくらいスピードが出る。
 10式に至っては、前進後進ともに70kmは出せるが、レオパルト2は40kmちょいだ。
 ちょっと遅い。

 「着いた、こんなもんかな」

 初めの位置から更に数百メートル離れた所で停まった。

 「これだけ離れれば、あいつニブそうだから大丈夫ね、きっと」

 マヨーラは言った。

 「デカいからな」

 「そうねマサヒデ…… それで、これからどうするの?」

 「どうすんだ? 為次」

 「うーん……」

 為次はしばし考えた、おおむね30秒くらい。

 「ピコーン!」

 閃いたらしい。

 「お! 閃いたようだな」

 「自分で効果音は言うのね……」

 「んで、どうすんだ?」

 「ふふっ、聞いて驚け」

 「早く教えなさい」

 「えっとねぇ……」

 為次の次なる作戦こうであった………

 まず正秀が大剣を持って、キューポラから大剣の刃の部分だけを上に突き出す。
 そして、そのままゴーレムに向かって走行し近づく。
 そこでゴーレムが戦車を踏み潰そうと踏んだとこで、すかさずマヨーラがアンチバリアを唱える。
 これならば、シビアに攻撃と魔法を同時に仕掛ける必要は無い。

 尚、キューポラとは展望塔の意味であり、車長が頭を出して周囲を確認し指揮をする場所である。
 車長ハッチと一体化している。
 しかし、無人砲塔の車両の場合、車長は電子光学装置で索敵を行うのでキューポラは無い。
 だから一概に キューポラ=車長ハッチ とも言えない。

 「ってな感じですな」

 「なるほどな、奴の体重を利用して脚の裏に剣を突き刺すのか」

 正秀は、とりあえず感心した。

 「そうそう、廊下に落ちている画鋲がびょうを踏んだ感じでね」

 「それで大丈夫なの? なんだか不安ね……」

 マヨーラは、あまり乗り気ではない様子だ。

 「そりゃもう完璧すぐる作戦だお。その名も、廊下で画鋲を踏んであ痛たたた大作戦!」

 「本気でやるつもりなの?」

 「当たり前でしょ。さあやろう、直ぐやろう」

 「足の裏に大剣を刺しただけで倒せるの?」

 「……え? あ、うん。大丈夫だってマヨ」

 「なあ、踏まれて車体は耐えてもサスとかイカれるんじゃないのか?」

 確かにアノ巨体の足裏に大剣を刺したとこで、倒せるどころか大したダメージを与えれるとは思えない。
 それに、正秀の言う通りレオパルト2へのダメージがヤバそうではある。

 なので……

 「うん、却下だは、この作戦はダメだ!」

 「え? 完璧じなかったの……?」

 「はぁ? 誰かそんなこと言った? 知らんよ」

 「さっきタメツグ、あんたが言ったじゃないの!」

 「んもぅ、マヨはヒステリックだなぁー」

 「ヒステリックさんなのです、もにゅもにゅ」

 「あんた達ねぇ…… スイまで何を…… って、ええ!?」

 スイを見たマヨーラはビックリ仰天した。
 何しろ、裸で為次のパーカーを抱きかかえながら、しゃぶっているのだ。

 「スイ! 何やってんのよ!?」

 「もにゅもにゅ、んふ?」

 「スイちゃんどうかしたのか?」

 そう言いながら、正秀は振り向こうとするのだが……

 ガシッ!

 マヨーラに頭を抑えられた。

 「見ちゃダメよ!」

 正秀の頭を抑える手に力が入る。

 「痛ててて、わ、分かったから、手を放してくれマヨーラ」

 「絶対見ちゃダメよ、分かった?」

 「お、おう……」

 「何を騒いでんのー?」

 「スイがあんたの上着をくわえているのよ…… 裸で」

 「もにゅもにゅ」

 「えっと、ちょっと意味分かんない……」

 「スイ、服がよだれでベトベトじゃないの。いい加減になさいよ」

 「もにゅー、眠いのです。そろそろ、ごしゅ…… タメツグ様と寝たいですぅ」

 「ああ、スイちゃん眠いのか…… 為次と一緒じゃないと寝れないし、しょーがないかな」

 「え? こいつらって一緒に寝てるの?」

 「スイちゃん、一人だと寝れないんだぜ」

 「つばい様の中なら一人でも寝れるです、つばい様の中はあったかいのです」

 「はぁ…… どうしようもないわね。まあ、バカ同士お似合いだわ、バカとバカで大バカ者ね」

 それを聞いた為次は何かを思い付いた様子だ。

 「バカとバカだと!?」

 「な、何よ……」

 「それだ!」

 ピコーン!

 為次は閃いた。

 「お? なんか閃いたのか?」

 「今度は効果音付きなのね……」

 「今度は完璧だぞい、さすが俺様」

 「また下らない作戦だと承知しないわよ」

 「ふふっ、再び聞いて驚け!」

 「早く教えなさい」

 「バカとバカが合わされば大バカ者になる、それならば」

 次なる作戦はこうであった……

 砲弾にアンチバリアを付与すりゃええんじゃ、と。

 「どやっ?」

 「なるほど、その手があったか」

 正秀は、とりあえず感心した。

 「バカの割にはいい案じゃないの、それならスイが寝る前にさっさとやりましょ」

 「おう、そうだぜ」

 「名付けて、小学校の休み時間に画鋲をコマの代わりにして遊んでたら指に刺さった大作戦!」

 「中々に寂しい小学生時代だな」

 「うぐっ……」

 こうして、オペレーション小学校の休み時間に画鋲がびょうをコマの代わりにして遊んでたら指に刺さったが開始される。
 スイは無理矢理ベトベトのパーカーを着せられ、装填手の仕事をさせられる。
 今回の砲弾は貫通もできて爆発もする、多目的対戦車榴弾を使用することになった。
 そして、アンチシールドの付与された砲弾が装填された。

 「そんじゃ、撃つぜ」

 「少し離れ過ぎだと思うけど、大丈夫なの?」


 マヨーラの問いに正秀は照準装置を覗きながら答える。

 「距離433メートル、近いくらいだぜ」

 「そうなの、意外と飛んで行くものなのね」

 「これも成形炸薬弾だから、距離あんま関係ないけどね」

 「ふーん」

 「もう撃っていいか?」

 「いいわよ」

 「どぞ」

 「画鋲発射!」

 射撃スイッチをポチっと押した。
 爆音と同時に、夜の大草原を閃光が走る。
 動きの遅いゴーレムはそれを避けるすべを持たない。
 レオパルト2の放った砲弾は寸分の狂いも無く着弾すると、アンチシールドによってマジックシールドが無効化される。
 それと同時に被弾したお腹にメタルジェットが流し込まれ、周囲には大爆発が広がるのだ。
 轟音を鳴り響かせ、辺り一面には砕けた岩が飛び散って行く。

 とんでもないことをしてしまった……

 為次はともかく、正秀はそのことを知っているはずであった。

 だが、やってしまったのだ……

 それを見ていた三人は言葉も出ず、唖然とするしかなかった。

 「「「…………」」」

 「もう寝てもいいですか?」

 榴弾と砕けた岩で、ゴーレムの周囲は弾丸の雨あられと化した。
 近くに居た冒険者集団は阿鼻叫喚である。
 体じゅうから血を流し呻き苦しんでいる者や、手や足を失い戦うことも逃げることもできずに、ただ泣き叫ぶ者が幾人も見て取れた。

 しかも、ゴーレムのお腹には小さな穴が開いているだけだ。
 小さいと言っても、人から見れば大きな穴だが、巨大なモンスターにとっては小さな穴に過ぎない。
 それでも、体内は破壊されたのだろうか? ゴーレムは「うごごごごぎぃ!」と苦しそうに叫んで悶えていた。

 人もモンスターもそこは地獄絵図であった……

 「あ、あ、あれだ、効いてるみたいだぜ、な? な?」

 動揺の隠せない正秀。

 「冒険者にも効いてるみたいだけどね……」

 「次も撃てばとどめを刺せるだろ、な? な?」

 「冒険者にはとどめを刺しちゃったけどね……」

 「なんだよ為次! 俺か!? 俺が悪いのかっ!?」

 「撃ったのはマサだからねぇ」

 「ふざけんなよっ、作戦を考えたのは為次だろ!」

 「俺は案を出しただけで、可否は車長の責任でしょ」

 「はぁぁぁっ?」

 「あ、正秀さんは車長代理だったはず。うん、確かそのはず」

 「きったねーぞ為次! こんな時だけ車長にすんなよ!」

 「1話から砲手兼、装填手兼、車長さんがんばってーって言ってあるじゃん」

 「なんだよ、1話って…… 1話って意味分かんねーぞ!」

 そんな言い争う正秀と為次に呆れながら、マヨーラは思うのであった……

 画鋲ってなにかしら?

 と……
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