異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第88話 石人その4

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 つい今しがたまで、正秀と為次は痴話喧嘩をしていた。
 冒険者集団に榴弾をブチ込んでしまった責任を、押し付け合っていたのだ……
 だけど、ちょっと疲れたし、なんとなく虚しい感じもするので、今は落ち付いてた。

 「なあ為次」

 「んー、何ぃ?」

 「そろそろ帰って、一杯呑まないか」

 「あーいいね、賛成」

 「あんた達は何言ってんのよ、ゴーレムはどうするの?」

 ゴーレムは今だ健在であった。
 しかし、砲弾を喰らったお腹が痛いのだろう。
 穴の開いてしまったお腹を抱えながら、「グォォォ、グォォォ」と苦しんでいる。
 しかも時々、吐血をするかのように口から泥みたいな液体を吐き出しているのだ。
 そして、その足元では傷付いた冒険者達が同様に苦しんでいた。

 「攻撃したら被害者が増えそうだし、シャルとシムリ回収して帰ろうよ」

 「そうだな。為次の言う通りだ、それがいいぜ」

 「さっきまでヤル気は、どうしたのよ……」

 「なんかゴーレムも苦しそうだし、ほっといたら死ぬるかも」

 「それに口から変なん液体吐いてて気持ち悪いぜ」

 「んだんだ、キモイから帰ろう」

 「マサヒデが帰るなら、あたしも帰るけど……」

 「ダメなのです!」

 帰ろうと話していると、突然スイが叫びだした。

 「ゴーレムは倒さないとダメなのです! 私一人でも倒します!」

 「どうしたのスイ? 急にビックリするじゃない。もう寝なさいよ」

 眠いスイだが、この戦いを引き下がる分けにはいかなかった。
 どうしてもゴーレム討伐を果たさなければならない。
 なぜなら、あるじのパンツがかかっているのだ!
 何がなんでも、新しい使い古しのパンツを手に入れたいのです。

 「スイちゃん、ヤケにヤル気だな」

 「ポンタの街を、街の皆様をスイが守るのです!」

 「守るっても、あのデカさの岩だし、とても切り刻めるもんじゃないよ。お手上げだね」

 為次は言った。

 「レオで攻撃したら、周りの冒険者にまた被害が及ぶしな」

 「それでも、倒さないとダメなのです!」

 「何そんなにムキになってるのよ」

 「倒さないとパンツが貰えないのです!」

 「……ああ、それね」

 「そんな約束もあったな……」

 「倒しても、あげないんだけど……」

 「そんなこと言わないで、あげればいいじゃないのタメツグ。減るもんじゃあるまいし」

 「いやいや減るでしょ!! あげたらむしろ無くなるよ! ノーパンだよ!」

 「細かい男ね…… まったく」

 「細かいとか関係無いし、そもそもスイは街を守る為に戦うんじゃなかったの!?」

 「そ、そ、それは…… もちろん街を守る為です! 守る為ですが…… パンツも守るのです!」

 「人や街はパンツのついでなのね……」

 「なあ為次、どうすんだよ?」

 「どうするも何も、倒したらパンツ取られるんでしょ。俺」

 「だな」

 「だったら、このまま帰るしかないじゃん」

 「それなら、次の作戦を考えましょ」

 「おう! やっぱ帰ったら面白くねーよな」

 帰ろうかなと思っていた正秀とマヨーラだったが……
 やはりパンツの成り行きの方が面白そうなので、急に帰宅は否定し始めた。
 スイに至っては俄然やる気だ。

 「いやいや、帰るって言ったでしょ、言ったよね!」

 「だから、それじゃ面白くないのよ」

 「それに、スイちゃんが可哀想だろ」

 「そうなのです。マサヒデ様の言う通りなのです」

 「俺の方が可哀想だよっ」

 「とにかく、次の作戦を考えなさいよタメツグ」

 「なんで俺が…… もー…… じゃあ砲弾に適当な付与魔法くっ付けて飛ばせばいいよ、はいはい」

 「なんだか投げ槍な態度だな、為次」

 「だいたい、エンチャント魔法でも魔獣には殆ど効果は無いわよ」

 「だったら、魔法以外のテキトーに…… あ……」

 為次は、また下らないことを思い付いてしまった。
 それは作戦などと呼べるものではなく、只の興味本位なのだ。
 だから、言うのを躊躇ためらうのだが……

 「なんか思い付いたのか? なー為次」

 「あ、いや…… 別に……」

 「なんだよ、教えろよ」

 「そうよっ、教えなさいよ」

 「大したことじゃないってば」

 「仕方ねーな…… ピコーン! 為次は閃いた。ほら、これでいいだろ」

 「何それ、もう訳分かんない」

 「今回はマサヒデが言うのね……」

 「もぅー、ほんとに、どーでもいいことなんだけどさ」

 「なんだなんだ?」

 「ナニナニ? 早く言いなさいよ」

 「あれだよ、さっきマヨとシムリが放ったメテオ。アレを砲弾に付与して撃ち込んだらどうなるのかな? って、そんだけ」

 「バカね、そんなの決まってるじゃない……? え? どうなるの?」

 マヨーラにも分からなかった。
 通常ならエンチャント効果による魔法属性武器であっても、対象がある程度強力な魔獣であれば、その武器で殴っても魔法は拡散してしまい、効果は薄い。
 聖魔道士の使う、肉体に直接作用する魔法が発動しても抵抗されてしまうのだ。
 しかし、メテオストライクは違った。
 例え魔法が効かなくとも、巨大な隕石はそこにあるはずだ。
 意味が分からなかった…… 岩を召喚する属性を持った武器とは?

 召喚属性の武器とはいったい……

 「どうなるんだ? マヨーラ」

 「え? あたし? えっと……」

 マヨーラも分からないので、スイに丸投げだ。

 「スイ! どうなるの!?」 

 「はう? 私ですか?」

 スイにも分からなかった…… が。

 「あ、……そうです! やってみれば分かるのです」

 「そ、そうね、実際に見た方が早いわ」

 「なるほどな」

 「まさか、マジでやんの?」

 「おう! 早速、頼むぜスイちゃん」

 「はいです…… と言いたいですが、スイ一人では無理なのです」

 「そうね、あたしが手伝ってあげるわ」

 「ありがとうございます、マヨマヨ様」

 「それじゃ、スイちゃん、マヨーラ、よろしくな」

 「はいです」
 
 スイは徹甲弾を車体の弾薬庫から一個取り出す。
 
 「これにしましょう、マヨマヨ様」
 
 「分かったわ、それじゃ早速」

 「待て、待て、待て、車内でやるんじゃない。外でやってよ」

 流石に車内で何が起こるのか分からないことをされては堪らないので、慌てて為次は止めた。

 「どうなるか、未知数だからな」

 「そうそう」

 「仕方ないわねぇ、スイ行くわよ」

 「はいです」

 スイとマヨーラは降車すると、車体前方の地面に砲弾を置き付与魔法をかける。
 為次も良く見える位置なので、興味深そうに見ていた。

 早速、スイとマヨーラは手を繋いで呪文を唱え始める。

 「「森羅万象を司いし精霊達よ、天空の彼方より彼の者を呼び寄せ、大いなる厄災と共にその比類なき力による劫火で焼き尽くす釁隙を現せ……」」

 魔法陣が形成され砲弾が光る。

 「「究極魔法! エンチャント・メテオストライク!!」」

 魔法を付与された砲弾を包み込む光は青白く、何とも言えない不気味な輝きを発していた。
 全体が光っている分けではなく、何か文字のような模様が浮かび上がる感じで明暗しながら光っている。

 「できましたです」

 完成した砲弾をスイは持ち上げるが……

 「うにゃにゃ、なんですかコレわぁぁぁー」

 「どうしたの? ちゃんと持ちなさいよ、スイ」

 「ネバネバするのです、気持ち悪いです」

 砲弾から片手を話すと、手にねっとりした何かが糸を引きながらくっ付いて来る。
 まるで素手で納豆をこねくり回しているかのようだ。

 「キモイね、服に付けないでよ俺のだから」

 「はい、気を付けますっ ……お、とととっ」

 言ったそばからスイは手を滑らせて、砲弾を落としそうになった。
 しかし、必死に掴んで抱きかかえたので落とさずには済んだのだが……

 「はうー、危なかったのです」

 「ちょ、スイ……」

 ネバネバが思いっ切り服に付いてしまった。

 「滑るのですコレ」

 「んもー、後でちゃんと洗濯してよ」

 「変な砲弾になっちまったな、さっさと撃ってしまおうぜ」

 「そうね、そうしましょ」

 「大丈夫かよ…… 詰らないのか? めっちゃ不安だわ」

 為次の不安を他所に、少女達は再び乗車すると砲撃準備に取り掛かる。
 マヨーラは特にすることも無いが、スイはアンチシールドも重複付与させてから粘っこい砲弾を砲尾から挿入する。

 「装填したですよ」

 手に付いたネバネバを服で拭いながら伝えた。

 皆は周りの冒険者のことなど、どうでも良くなっていた。
 というか、すっかり忘れていた。
 既に興味は召喚属性の武器などと謎の攻撃に興味津々なのだ。

 「よしっ、それじゃ撃ってみるぜ」

 「マジで撃つのか……」

 「ちょっとドキドキするわね」

 正秀は狙いを定める。
 目標はゴーレムのお腹に開いた穴だ。
 手で穴を抑えているし、もごもごと動いているので狙い辛い。

 「ちょっと難しいぜ」

 「マサヒデならいけるわ、頑張って」

 「おう! こんなもんかな、喰らえ!」

 どぎゅーん!!

 微妙に音が変な発射音を響かせながら砲弾が発射された。
 飛翔速度はいつも通りな感じだ。
 真っ直ぐにゴーレム目掛けて飛んで行く。
 ゴーレムはその攻撃に気が付くものの、あまりの速度に対応のしようがない。
 お腹を隠そうとしたようではあるが、指の隙間からヌルリとお腹の穴に入ってしまった。

 ボギュ!

 鈍い音を立てながら着弾し、何か籠った感じの爆発を起す。

 ゴーレムの様子は変わらない……

 「ん…… 当たっんだが」

 「何も起こらないわね」

 「普通よりダメージ無さそうだね」

 しかし、変化は直ぐに起こった。
 ゴーレムが「むぎゅ? うごおおお」と呻きながら暴れだす。

 「お!? なんだ? なんだ?」

 正秀は興味深そうに射撃サイトを覗いている。

 ゴーレムの体が異様な変形を起こし始めた。
 ぶくぶくと岩の体に気泡が発生し始め、ドロドロと流れ始める。
 暴れて腕を振り回すも、糸を引きながら垂れ落ちる。
 まるで巨大なスライムのように全身が、ねっとりとした岩になっていく。

 「わお、超キモイ」

 最初は乗り気ではなかった為次も、異様な光景に興味深々になっていた。

 「なんか、溶けて行くわね」
 
 周りの冒険者達も唖然とその光景を見ている。
 何が起こったのかさっぱり分からないのだ。

 それから暫く、皆は無言でドロドロになっていくゴーレムを眺めているのであった。

 ……………
 ……
 …
 
 10分くらい経ったのだろうか……

 「変化しなくなったね」

 「だな」

 ゴーレムは茶色い縦長のスライムと化していた。
 未だ沸騰しているかの如く、体から気泡を出しグチュグチュと蠢いている。
 だが、それ以上の変化は無く、動く気配は無かった……

 「た、倒したの……?」

 「やりました! 倒したのです!」

 「マジか……」

 「どうなってんだ? 近寄ってみようぜ」

 「うん」

 レオパルト2は、茶色く気持ち悪い物体へと近づくのであった……

 ※  ※  ※  ※  ※

 ゴーレムがスライム化する様子をターナ達も眺めていた。

 「あ、あいつら倒したのか?」

 スレイブは驚いた様子で言った。

 「どうなのかしら……」

 「なんだか、凄いことになったわぁん、ゴーレムちゃん」

 「一応、終わったみたいですわ…… エレメンタルストーンを散布しましょうか」

 「そうねぇ、スクロール発動するわね、ターナ」

 「お願いしますわ、ニクミ様」

 ニクミが仕込んであったスクロールを発動させる。

 ドドドーン!!

 遠くに爆発音が轟く。
 ゴーレムの上半身…… 否、体かどうかも分からない……

 上半分くらいが吹き飛んだ。

 辺り一面にはゴーレムの体だったであろうモノが飛び散った……
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