異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第104話 魔導機関

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 なんだか微妙な雰囲気の昼食も終わり、車庫へと集まる烏合の衆。
 戦車を宇宙へと打ち上げる為だ。
 クリスとスイはお片付けなので、残りの4人が戦車の前でたたずんでいた。

 「こうして近くで見ると、意外に大きいわね」

 「おう」

 「並べてみると、10ヒトマルも小型っていう割にはデカイね」

 為次は横にある10式と見比べてみた。

 「車体の大きさは、レオと差ほど変わらんからな」

 「うん」

 広い車庫には10式戦車とレオパルト2が並べて駐車してある。
 その車庫は整備工場を兼用しており、様々な設備が備えてある。
 戦車用のピットにリフトや天井クレーンに溶接機まである。
 壁際には多種多様の工具が備えてある工具棚も見受けられた。

 「それにしても、凄い設備ですね」

 「ああ、殆どが魔法で動いているがな」

 「魔法で…… ですか」

 「そうだ、この車庫自体に魔道機関が備えてある。後はスクロールシステムによって応用を効かせ、それぞれの機材を動かしている」

 「スクロールシステム?」

 聞き慣れない言葉に為次は訊いてみた。

 「まっ、俺が勝手にそう呼んでいるだけだがな」

 貞宗の説明によると、スクロールシステムとはエレメンタルストーンをエネルギー源とした制御される部分のことらしい。
 通常のスクロールは紙や動物の皮に、魔法言語でかれた魔法を蓄積されたマナで発動させるアイテムだ。
 しかし、スクロールに蓄積できるマナには限りがあるし、使用する魔法によっては紙などでできているので破れたり燃えたりと、意外に脆い。
 それ故に、1回使用すれば使えなくなる使い捨てなのだ。

 「そういや、俺達ってスクロールも使えないんだよね」

 「そうだな、発動には僅かだが魔力マナが必要だからな」

 「俺にはジャスプリがあるから必要ないぜ」

 「きゃっ、流石マサヒデね」

 「おう」

 そこで考えたのが、鉄板に魔法を彫り込んでしまう方法らしい。
 繰り返し使えるようにと鉄板スクロールにはマナを蓄積させずに、エレメンタルストーンより送り込む。

 「紙でも鉄板でも俺達は使えないんじゃ……」

 為次は言った。

 「だから、それを使えるようにしたんだ」

 「まじすか」

 「俺にはジャスプリがあるから使えなくても問題ないぜ」

 「そうよね、マサヒデと言えばジャスプリよね」

 「おう」

 「マサ……」

 「水谷よ……」

 まず、エレメンタルストーンから魔力を送る為に、魔力伝達魔法がみっしりとき込まれたチューブで鉄板スクロールと繋げる。
 次にチューブの中間に制御スクロールを挟み込み、それに発動マナを絶えず送り込むことによって常に発動状態にしておくのだ。

 「なるへそ、最初から発動していればいい分けか」

 「その通りだ」

 「よく分からないが、俺にはジャスプリだぜ」

 「素敵なマサヒデなら、やっぱりジャスプリよね」

 「おう」

 「マサ……」

 「水谷よ……」

 制御スクロールには特定の条件によって、指定された鉄板スクロールにかれた魔法を任意の力で発動させる魔法がかれており、コントロールパネルとして使用する。
 尚、特定の条件とは指定した箇所に触れるとか、一定の時間が経過した時など、その名の通り制御に適した行動による任意の条件である。
 もっと簡単に言えば、ダンジョンを探検していたら光ってる石があったので、触れたら扉が開いちゃった的な、よくあるアレだ。

 「ふむふむ、つまり制御スクロールを持って操作すればいいってことか」

 「山崎…… こう言うのは好きなんだな、目がキラキラしているぞ」

 「うん、まあ」

 「俺はジャスプリに目がキラキラするぜ」

 「あたしは、マサヒデに目がキラキラするわ、って、きゃぁ」

 「マサ……」

 「水谷よ……」

 エネルギー源であるエレメンタルストーン。
 魔法を実行する鉄板スクロール。
 制御用のコントロールスクロール。
 これらを組み合わせて、動力としたのが魔導機関であるそうだ。

 「それで、それで、魔導艇はどうやって動かしてるんスか?」

 「色々試したんだが、結局ジェットエンジンにした」

 「え!? アレってジェットエンジンで飛んだり走ったりしてるんですか?」

 大剣にしか興味が無さそうな正秀だったが、ジェットエンジンと聞いて驚いた。
 そう簡単に作れる物ではないから。

 「いや多分、マサが思ってるのと違って、エイブラムスとかに使ってるやつでしょ」

 「あぁ、ガスタービンエンジンみたいな感じだぞ」

 マヨーラには何を言っているのか全然分からない。

 「えいぶらむす? がすたびん……?」

 M1エイブラムス。
 米軍の使用する主力戦車である。
 レオパルト2や10式のディーゼルエンジンとは違い、ジェットによってタービンを回すガスタービンエンジンが動力となっている。

 「さっぱりだわ」

 「よその国のレオみたいなものだ」

 「ふーん」

 このエンジンは小型でパワーも非常に強く、とても優れている。
 しかし、燃費が悪く操作レスポンスが遅いという欠点も持ち合わせる。
 特に燃費が最悪で、停車しているだけで燃料バカ食いなのだ。
 しかも、超うるさい。
 こんなモノを京都でアイドリングさせれば住民が発狂待ったなしダ!

 「あー、あそこは炎天下でエンジン切って数時間も車内待機させるからね」

 「うむ、道も狭いうえに市バスに煽られるからな」

 「他府県にまで行って、名古屋走りするからですよ……」

 「うむ」

 「とにかくそこは、怖い場所なのね」

 「うむ」

 だが、貞宗の開発した魔導機関によるジェットエンジンは、もっと環境に優しい。
 なんと燃焼室を持たないのだ。
 魔法によって直接、空気の噴流を作り出しタービンへと流し込むようになっている。
 まさに魔法のエンジンと言えるだろう。

 「と、まあ、魔道機関とは、そんなものだな」

 「うぉぉぉ、すげぇ、流石は隊長さんっス!」

 「このスクロールシステムを使って、レオにロケットを装着する分けだ」

 「エアジェットも姿勢制御には使えそうだね」

 「宇宙でもジェットだけで、いいんじゃないのか?」

 「それでもいいが、なにせ60トンの質量だ、よりパワーのあるロケットの方が安心だろう?」

 「うん、うん」

 「確かに強い方がカッコイイですね!」

 「さっぱりだわ」

 とりあえず魔導機関の概要は理解できた。
 マヨーラだけはイマイチ分かっていない様子だが、魔法の作製が仕事なので特に問題はないだろう。
 後は実行に移すのみだ。
 
 「んじゃ、そろそろ始めようよ」

 「何からするんだ?」

 正秀は訊いた。

 「とりあえず、魔法を使う部分を見せてほしいわ。じゃないと、作業が進まないわよ?」

 「ではパワーパックの取り外しとバラしからだな」

 「そっスね」

 「その前に食料を降ろそうぜ」

 「ああ…… うん」

 レオパルト2には未だ食料が積みっぱなしであった。
 サイクスを出る時に、ニクミが買って来たやつだ。
 湖畔で大量にバラ撒き、砲塔上のは襲撃時にゴブリンに食わせた。
 それでも、狭い車内は沢山残っている。

 「なんか、めんどくさいね」

 「なんだって、こんなにも大量に持って来たんだ……」

 貞宗は呆れて、車内を覗き込んだ。

 「食べるのは得意だから」

 「じゃあ今直ぐ全部食えよ、口に詰め込んでやるぜ」

 「んふぅ……」

 「ぼやいてないで、さっさと始めるぞ」

 「はい」

 「はいはい」

 「頑張ってね」

 「マヨも手伝ってよ」

 「嫌よ」

 「んも……」

 こうして、レオパルト2の改造作業が始まった。
 食料の積み降ろしは、激しく面倒な作業かと思われた。
 しかし、正秀の戦士パワーのおかげではかどった。
 殆ど一人で作業を終えてしまったのだ。
 そんな化物みたいな力に為次は驚きつつも、超便利屋さんだなと思い、作業は程々に眺めるだけにしたのだった。

 「よし、これで最後だぜ」

 ポイと最後の肉の塊を放り投げる。

 戦車の周りは食料だらけだ。
 邪魔にならなければ、それで良いとの理由で手当たり次第に投げ飛ばしておいたから。

 「ご苦労だったな水谷」

 「このくらい、朝飯前ですよ」

 「やっぱりマサヒデは頼りになるわぁ、誰かさんと違って」

 「いやいや、俺も頑張ったし」

 「あら? あたし為次だなんて言ったかしら? それとも自覚があるのかしらぁ? ニヒヒヒィ」

 「ぬぐぐぐ……」

 「お前らほんと仲がいいな」

 正秀は言った。

 「違うっ」

 「違うわよっ」

 そんな悔しがっている為次を横目に、正秀は砲塔へと飛び乗る。

 「そんじゃ回すぜ」

 「うい」

 車長席に潜り込むと、砲塔を操作する。
 レオパルト2のパワーパックへとアクセスするには、砲塔を横に90度回さなければならない。
 砲塔の後頭部が異様に長く、車体後部にあるパワーパックの蓋に覆い被さっているからだ。

 ウィィィーン

 砲塔を回し終わり、車長ハッチから正秀が身を乗り出した。

 「どうだ? こんなものか?」

 「いいだろう」

 「おけおけ、じゃ開けるわ」

 砲塔横の増加装甲を開き、邪魔にならないようにする。
 そして、専用の棒みたいなのを蓋に引っ掛け、クルクル回すと徐々に開き始める。

 「うんしょ、うんしょ」

 為次が頑張って回し開くと、そこにはMTU社製のMB 873ka-501エンジンを搭載したパワーパックが顔を出す。
 これこそ、60トン以上もあるレオパルト2を1500馬力のパワーによって、軽快に走行させることができる心臓部なのだ。
 尚、このエンジンの名前はネットで検索してコピペしたやつなので多分あってるはずだ。
 
 「開いた」

 貞宗は開いた蓋の中を覗き込む。

 「これが適当な説明のなんとかってエンジンか」

 「っスね」

 「サダムネは何を言っているの?」

 「気にしないでくれ、マヨーラ」

 「えぇ、そうねマサヒデ、そうするわ」

 「こいつをクレーンで吊るして引っこ抜けばいいんだな」

 「なんなら、俺が持ち上げますよ。へへっ」

 「ちょっと待ってよ」

 「どうした? 山崎」

 「このまま抜いて大丈夫っスか?」

 「……どうだろうな?」

 「分からないぜ」

 「無理矢理引っ張ったら壊れそうなんだけど」

 「ふむ……」

 「それにさ、潜水できるってもシール処理必要でしょ」

 「当たり前だ」

 「どこを処理するんっスか? このまま宇宙行ったら空気漏れるよ」

 「ふむ……」

 「分からないぜ」

 「えー……」

 作業を始めようとした矢先、困難にぶち当たる3バカ。
 どうしていいものかと、途方に暮れる。

 無理な改造を魔法で無理矢理解決する。

 それは、前途多難であることは間違いなさそうな雰囲気であった……
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