異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 3章

第127話 単磁極環その3

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 コントロールルームにはすぐに辿り着けた。
 食堂からは差ほど離れてはいなかったし、格納庫以外の人が行けるエリアは外見と比べて少ないからだ。
 ワームホールの設置が主な役目であり、人が滞在する施設ではないのだろう。

 「つい……」

 「着いたぜ」

 「あっ、ちょ……」

 セリフを取られた為次は嫌そうな顔で正秀を睨んだ。
 しかし、盗人猛々しい野郎はニヤニヤしながらこちらを見ている。

 プシュー

 「ほら、開いたぜ。入ろうぜ」

 「……はいはい」

 「ここの扉って、どれも勝手に開くのね」

 部屋へ入る際にマヨーラは自動ドアを不思議そうに見ていた。

 「自動ドアはともかく鍵とかもしてないね」

 「こんな所、誰も来ないだろ」

 「いやまあ、そうなんだけど……」

 「ほら、あんた達も早く入りなさい」

 何故か、指揮ってるマヨーラ促され皆も中に入ると、前方にはガラス越しに宇宙が見える。
 もっとも素材がガラスなのかは定かではないが。

 周囲には空中投影用の操作パネルがいくつも並んでいる。
 所々には埋め込み式のモニターや操作パネルも設置してあった。

 「こ、これは……」

 コントロールルームを見渡す為次の目は輝いていた。
 見るからに宇宙船のブリッジのような場所だからだ。
 男子ならば誰しもが憧れる宇宙船。
 その船内を彷彿させるビジュアルにワクワクが止まらない。

 「うっひょー! ひゃぁぁぁー!」

 奇声を上げて駆け出す為次。
 あっちっこちの操作パネルを見ては、また別のを見ようとウロウロしている。

 「お、おい。為次」

 「うわー、なんだろこれ? カッコいいなぁ」

 「ちょっとぉ…… あんまりはしゃがないでよ。恥ずかしいわねぇ」

 「これとか何につかうんだろー?」

 「タメツグ様が楽しそうだと私まで楽しくなるです」

 「おお、あっちのアレはなんだろ? 赤く点滅してるねー」

 今の為次には皆の声は届かない。
 乗り物大好きっ子にとって1秒たりとも目を放したくない場所なのだ。

 「よーし、片っ端から動かしてみよーっと」

 「下手に弄るとマズくないか?」

 「大丈夫だって」

 手当たり次第に端末を起動させた。
 自分の周りには、これでもかと言わんばかりにスクリーンが表示される。

 「じゃ、俺の席はここね」

 シートが3つ備え付けてある。
 為次は窓際中央に操縦桿らしき物が設置してある席へと座った。

 「どれから見よっかなー」

 所狭しと表示されているスクリーンを見ながら悩む。
 それ以外にも、赤く点滅している設置型コンソールも気になる。
 何もかもが好奇心の対象だ。

 「うーん…… 為次の奴は、しばらくほっといた方がいいかな」

 「そうね」

 「それじゃあ、俺達は他の部屋でも探索するか」

 「いいわね! タメツグはほっといて行きましょ!」

 「スイちゃんはどうする?」

 「私は……」

 スイはチラリとマヨーラを見ると、血走った目でこちらを睨め付けている。
 正秀と二人っきりにしろと、無言の圧力がひしひしと伝わってきた。

 「わ、私はタメツグ様と一緒に居るです」

 「そうね! それがいいわ、そうなさい!」

 「はう」

 「よし、二手に分かれて行動だな。行こうぜマヨーラ」

 「ええ! (ナイスよスイ)」

 これは予想外であった。
 思いもよらぬ為次の行動に、図らずも正秀と一緒に館内デートをすることになったから。
 スイに目配せをすると、ウキウキでコントロールルームを出て行くマヨーラであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 通路へと出た正秀とマヨーラ。
 左右を見るも、同じ壁や天井が続いているだけだ。

 「何処へ行く?」

 「まだ行ってないとこがいいわね。あっちにしましょ」

 先程来た方向と反対を指すマヨーラ。

 「おう」

 早速、歩き出す正秀だがマヨーラに呼び止められる。

 「ねぇマサヒデ。ちょっと……」

 「ん? どうした?」

 「あ、あの……」

 見ると頬を染めうつむきながらモジモジしている。

 「?」

 「そ、その…… 知らないとこだし迷子になると困るでしょ」

 「そんなに広くないし大丈夫だろ」

 「大丈夫じゃないのよ! 大丈夫だと困るのよ!」

 「お、おう……?」

 「その…… て、て、手を繋いであげるわっ」

 正秀はニコリと笑うとマヨーラの手を取る。

 「ああ、サンキューな」

 「う、うん」

 二人は仲良く並んで歩き出した。
 少し前まではウンコ臭い車内でイライラMAXで発狂気味のマヨーラだったが、今は違った。
  ちょっと気持ち悪かったけど、美味しい焼き魚定食を食べて、好きな人と手を繋いで歩く。
 ここが、宇宙に浮かぶ絶海の孤島でも、そんことは関係無い。
 いつも楽しそうに話す通りすがりの人々と、すれ違うだけの日々とは違う。

 「マサヒデ……」

 「ん?」

 「ありがとう」

 ターナやスレイブと一緒にいる時も、心は何処か砂漠にでも居るかのような感じだった。
 自分の居る世界は、まぼろしではないかと……

 「急にどうしたんだ?」

 「ううん。なんでもないわ」

 「……よし! 片っ端から部屋を覗いてみるかっ」

 「ええっ、そうしましょ」

 そんな分けで手当たり次第に扉を開けまくる二人。

 プシュー

 自動ドアが開いた。

 「ここはなんだ?」

 「寝室みたいね。ベットが3つあるだけね」

 「特には何もないな」

 「次の行ってみましょ」

 「おう」

 ※  ※  ※  ※  ※

 次の部屋にはメディカルルームと書かれたプレートが貼ってある。

 プシュー

 「あら、ここは神殿みたいね」

 生命の加護を受けた部屋と似たカプセルが1つ置いてあった。

 「メディカルルームだぜ」

 「何それ?」

 「怪我や病気を治すとこだぜ」

 「え? なんで、そんな部屋があるのかしら?」

 「そりゃ具合の悪いとこを治す為だろ」

 「ふーん、ヒールやキュアでいいのに。変なの」

 「これを作った連中は魔法が使えないってことだろ。多分」

 「そうなんだ」

 「次の行こうぜ」

 「ええ」

 ※  ※  ※  ※  ※

 この部屋のプレートには休憩室と書かれている。

 「休憩室だぜ」

 プシュー

 中には半円になったソファーと、それに合わせたテーブルが置いてあった。
 壁際には棚が設置してあり、グラスが並べてある。
 その横には如何にもドリンクが出てきそうな機械もあった。

 「殺風景な部屋ね」

 「どの部屋も必要最低限な物があるだけって感じだぜ」

 「そうね」

 「少し休憩していこうぜ。せっかくの休憩室だし」

 「ええ」

 マヨーラがソファーに座ると、正秀はグラスを取ってドリンクが出てきそうな機械に置いた。

 「マヨーラは何する?」

 「何って?」

 「飲み物が出ると思うんだが。多分」

 「何があるの?」

 正秀はドリンクが出てきそうな機械のメニューらしきボタンに触れる。
 すると、ズラズラと何か良く分からない一覧が出てきた。

 「ガリガリとグミグミとペコペコ…… なんだこりゃ?」

 文字は読めるが、まったく意味が分からない。

 「ふふっ。まあ、なんでもいいわ」

 「おう、それじゃパコパコとペコペコするぜ」

 ボタンに触れると置いたグラスに液体が注がれる。

 ジャー…… ジャー……

 結構な勢いで出てくる黄土色の液体だ。
 あまり美味しそうに見えない。
 そもそもドリンクベンダーと確定はしていないので、飲み物かも怪しい。

 「大丈夫なの……」

 「どうだろうな。もう1つも入れてみるぜ」

 「ええ」

 ジャー…… ジャー……

 灰色の液体だった。
 グラスを取ると匂いを嗅いでみる。

 「くんくん…… 大丈夫だろ。甘い匂いがするぜ」

 「そ、そう……」

 「マヨーラはどっちにする?」

 「どっちでもいいわ」

 「だよな……」

 いかにも怪しい液体を飲んでみる。
 ナニ味かは分からないが、とても美味しい。
 見た目とは裏腹に良い意味で期待を裏切られた感じだ。

 「意外と美味しいわね」

 「だな」

 「……マサヒデ」

 「おう」

 「…………」

 帰らないでほしいと言いたかった。
 ずっと一緒に居てほしいと言いたかった。
 だけど、その言葉を口に出すことはできなかった。

 ただ一言だけ……

 「ありがとう」

 と、呟いた。

 ……………
 ………
 …

 その後は他愛もない会話をした。
 それだけでマヨーラは楽しかった……

 ※  ※  ※  ※  ※

 あれから正秀とマヨーラは適当に部屋を回ったが、特にこれといって何もなかった。
 さほど広くはないし、簡易的な居住スペースなのであろう。
 ワームホールを設置後は無人で運用することが前提かも知れない。

 仕方ないのでコントロールルームに戻って来た。

 「戻ったわよ」

 「戻ったぜ、為次」

 「はい、お帰り」

 為次は何をする分けでもなく、ただ外を眺めていた。
 膝の上ではスイが寝ている。

 「何か分かったのか」

 「うん」

 「教えてくれよ」

 「うん……」

 「……為次?」

 返事をする為次だが、中々話そうとしない。

 「話したくないのか?」

 「そうじゃないけど……」

 「だったら、さっさと話しなさいよ」

 「えっとね。このリングは今は止まってるらしいよ。まあ、起動方法は分かったしシステムも問題無さそうだから使えるかも」

 「へー」

 「ふーん」

 「誰が止めたと思う?」

 「誰なんだ?」

 「……ターナだよ」

 「は?」

 「ターナもここに来たの?」

 「来たかどうかは定かじゃないけど、母船からロックしたみたい」

 「何言ってんの? タメツグは」

 「もっと俺達にも分かるように頼むぜ」

 「うん。アクアの連中が知りたがってた情報があった」

 「アクアって…… ああ、あの星の人達か」

 「そう…… なんだけど、正確には違うね」

 「どう違うんだ?」

 「知りたがってるのはテラから来た奴らってね」

 「うーん? 意味が分からないぜ」

 「それを見れば分かるよ」

 そう言って為次は赤く点滅しているボタンを指した。
 そこには緊急通信と表示されていた。

 「押してもいいのか?」

 「どぞ」

 正秀は何処か緊張した面持ちでボタンに触れた。
 すると、設置型のモニターに映像が映し出される。

 そこにはターナの姿があった……
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