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異世界編 3章
第137話 翌朝
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―― 翌日
「どうどう? 凄いでしょクリスさん!?」
「本当ね、どんな汚れでも拭くだけで落ちるわ」
「まだまだ、沢山あるのです」
皆は朝食を食べ終わると女性達は掃除をしていた。
貞宗邸はイフリートによる被害は無かったが、クリスにとって毎日の日課である。
そこへ、お土産に持って返ってきたスーパー雑巾をマヨーラが自慢してるのだった。
野郎どもといえば、リビングで食後のお茶である。
お茶ではあるが、ほぼコーヒー近い飲み物だ。
何を使って淹れたのか分からないので、コーヒーっぽいものとしか言いようが無い。
「隊長さん、翻訳できたっスか?」
「ああ、終わったぞ。専門用語は流石にどうしようもなかったがな」
「あ、はい」
早くくれと言わんばかりに手を出す為次。
出発前に渡したタブレットで、超次元振動弾の詳細内容の翻訳である。
「部屋にある、後でな」
「んー」
為次のお友達であるタブレットを早く返してほしかった。
沢山あるゲーム機は自宅のコーポに置いたままなので、こちらの世界にはスマホとタブレットしか友達が居ない。
「まあいいか…… にしても、ターナとスレイブが魔獣退治に参戦とはビックリだは」
「ターナがどうしてもと言うからな……」
「仕方ありませんわ、スレイブ。とても手におえる相手ではありませんでしたわ」
「まあ、確かにサダムネも役に立ちそうもなかったしな」
「なんだと…… 俺より弱いくせして、よくそんなことが言えたものだな」
「ああ!? ならもう一回勝負するか?」
「やめなさいスレイブ」
「チッ」
「それよりモノポールリングでのことを教えてもらえると助かりますわ」
ターナとスレイブも一緒にお茶を飲んでいた。
他にもニクミが居る。
昨日は貞宗宅で泊まっていた。
王宮魔導艇が大破したせいで、すぐにはサイクスに帰れなかったからだ。
それにモノポールリングの話も聞きたかったのもある。
だけども、皆は疲れていたし戦闘による消耗も激しかったので、翌日に話すことになった。
なにより、スイが怒っていたので為次はお話どころではなかったのだ。
「つばい様は重いのです! タメツグ様は全然スイを迎えに来ないのです!」などと言いながら為次に迫っていた。
そんなこんなで早目の就寝となり、今朝は皆も起きるのが早かった。
「んで、何から話すんだ? 全部話すのか?」
正秀は言った。
「なんだよ、話せないこともあるのか?」
スレイブに言われて、チラリと為次を見る正秀。
「どうなんだ? 為次」
「うーん…… 多少の心配もあるよねぇ。ターナの目的と反する情報を得て、ナノマシンがどう作用するかだし。マインドジェネレーターの無い状態だとバグる可能性とかもあるかもだし……」
「わたくしの目的……?」
「とはいえニクはある程度の情報は持ってるんでしょ?」
「タメツグちゃん…… そう ……ね」
「何があった? 船長だろ、なんらかの機密情報みたいなんあるでしょ」
「やっぱりそうなのね…… 私が船長…… あれに書いてあることは事実なのね」
「ニクミ様? アレとはなんですの?」
「昨日言ってた航海日誌あたりかな」
「流石、タメツグちゃんね…… その通りよ」
「何処まで書いてあった?」
「おいタメツグ、ニクミ様に言葉遣いがもう少しなんとかならねぇのか?」
「スレイブ…… ニクは王族なんかじゃないよ。言ったでしょ、船長だって。調査船のね」
「なんだと!」
「いいのよスレイブちゃん、タメツグちゃんの言う通りよ」
「ニクミ様……?」
「母星テラの出港から初めての転生までが綴ってあるわ」
「ってことは、目新しい情報はバハムートを堕としてからの内容かなぁ。なんで救援も呼ばずにこの星に留まることなったのか…… ま、それもターナのワガママかもだけど」
「山崎よ…… もう少し分かるように話せないのか?」
「あーはい、そうっスね。つってもこれを見たほうがいいかも」
と、ポケットからスマホを取り出す為次。
「んーでも画面がちっちゃいから、やっぱタブレットを持って来てほしいかも」
「しょうがねぇなぁ…… おーい! クリスっ」
貞宗に呼ばれ掃除中のクリスがパタパタとやって来る。
「何かしら?」
「すまないが部屋からタブレットを持って来てくれないか? 山崎のやつだ」
「……あなた、掃除の途中なんですよ。それくらい自分で取りに行って下さい」
それを聞いたターナは少し笑いながら言う。
「それくらいですの…… それでしたらわたくしが持って来ましょう。貞宗の為にね、ふふっ」
「あら、ターナ様がそうおっしゃるなら仕方ありませんね。神官様のお手を煩わせる分けにはいきません。ズボラな夫の面倒を見るのも妻の勤めですから」
「忙しいのではありませんの? お気になさらなくていいですわ」
「大丈夫です、私が取ってきます」
「なら初めから、そうおっしゃればよろしくて?」
「夫婦の問題ですから、お気遣い無く」
睨み合う両者。
貞宗は心なしか挙動不審になっている。
「お、お…… あー…… 山崎。コーヒー美味いだろ?」
「え? 今それっスか」
「隊長、大丈夫ですか? なんだか汗が凄いですが」
「ぐ…… お、俺はトイレに行きたい気分だ。コーヒーは利尿作用があるからな。うん、そうだそうだ」
そう言って貞宗は立ち上がるとトイレとは反対方向へと向う。
どうやら自分の部屋の方へと行くみたいだ。
「隊長さん、トイレそっちじゃないっスよ」
「あ、ああ…… ついでにお前のタブレットを取りに行こうとな」
「はぁ、反対方向がついでなんスね」
「このっ……(それ以上は喋るんじゃねぇ山崎)」
「…………」
夫の様子を見たクリスは黙って掃除へと戻ってしまった。
為次を睨む貞宗がだ、嫌らしい笑みを返されるだけだ。
「にひぃ」
「こいつは……」
「チッ……」
そんな様子をスレイブは複雑な気分で見ているだけであった……
……………
………
…
少し待つと貞宗はタブレットを片手に、すぐに戻って来た。
どうやらトイレには行っていないらしい。
「ほらよ」
と、為次に渡した。
「どもっス」
早速、スマホと繋げてファイルをコピーし始める。
無線による通信なので少々遅いが、皆はコーヒーっぽいのを飲みながら静かに待った。
「できた」
「何を見せる気なんだ?」
正秀はタブレットを覗き込むように訊いた。
「ターナの緊急通信だよ。流石に転送はできんかったから直撮りしといた」
「わたくしの……… 緊急通信? ですの?」
「そんなの撮ってたのか」
「うん。他にもめぼしいのを幾つか」
「へー」
為次はコップをテーブルの真ん中辺りに動かして、タブレットを立て掛けた。
それを見ようと正秀と為次以外の4人は画面が見える位置へと移動する。
広いリビングで大人達が身を寄せ合う状況は滑稽だが、仕方がない。
スマホよりは画面が大きいものの、個人で使う物だからやっぱり小さいのだ。
貞宗が少年の姿なのがせめてもの救いだ。
なんだか3人家族に変態が絡んでいるようにも見える。
「じゃあ再生するよ」
「ああ、いいぞ」
返事をする貞宗だが、為次より先に再生ボタンをタップしてしまった。
「あ、ちょ……」
動画が流れる……
「あら、これってわたくしですわ」
「でも、なんだか雰囲気が違うわぁん」
「おい、静かにしろ」
貞宗に注意をされて、皆は食い入るように見始めるのであった……
……………
………
…
ターナの映像が終わったところで、為次は再生を止めた。
当然、皆はモノポールリングで見たときと同じような疑問を持つ。
アンカーやサーガなどの固有名詞が分からない。
「なんだこれは……」
「わたくしは何を焦っているのかしら?」
「おいタメツグ、分かるよう説明しな。マサヒデでも構わねーけどよ」
「んま、そりゃそーだよね。では順番に……」
タブレットを弄り、撮ってきた写真を表示させながら説明を始める為次。
惑星テラの周辺宙域に発生した宇宙魔獣の対策に、ここアクアへとやって来たこと。
試作した魔獣の暴走により母船を失い、なんらかの理由で帰らずに、この島で留まっているところまで。
ナノマシンに関すること以外は概ね話したのであった。
もちろん、分からない固有名詞に関しても可能な限りは説明した。
「と、まあ、そんなとこだね」
「宇宙戦争とか、まるでSF映画みたいだな」
「っスね」
「帰らない理由ってのはなんだ? 母船が無くなって帰れないだけなのか?」
貞宗は訊いた。
「さあ、俺も知らないっス」
「馬鹿野郎、そこまで調べてこい」
「いや…… その必要はないっスよ」
「はあ? どういうことだ?」
「それは船長…… ダラス船長に聞いた方が早いよ。ね、ニク」
と、為次はニクミに視線を移した。
「…………」
何かを考え込むように黙っている。
皆も何も言わなかった。
少し待つと、ようやくニクミは口を開く。
「タメツグちゃんの言う通りよ…… ターナ。あなたのワガママね……」
「!? ニクミ…… 様…… 何をおっしゃって……?」
「ニクミよ、聞かせてくれるな?」
「ええ…… サダムネちゃんには、もっと早く話しておくべきだったわね……」
ニクミが話そうとした、その時であった。
突然、車庫へ通じる扉がバーン! と開いた!
「バーン!! なんだよ! 話はすべて盗み聞きさせてもらったんだよ!」
「こ、こらシムリ。自分で盗み聞きなどと言うなと何度言えば…… はっ、皆、我が妹が申し訳ない」
例の姉妹がやって来た。
実際は結構前から来ていたが。
「げっ、シムリ……」
あからさまに嫌そうな顔をするスレイブ。
昨日は散々纏わり付かれて、流石に鬱陶しかったらしい。
そんなことはお構い無しに、ターナとスレイブの間に割って入りソファーに座った。
「おまたせなんだよ、スレイブさん。淋しかったでしょ」
「寂しくねーよ! 清々してたとこだ」
「スレイブさんは恥ずかしがり屋さんなんだね」
「ちげーよ!」
「スレイブ氏…… 妹をよろしく頼むぞ」
「何言ってんだよ! 知るかっ!」
困惑するスレイブを他所に、シムリは腕を取って寄り添っていた。
新しい彼氏に満足そうである。
皆はあまり関わりたくないと、何も言わなかった。
「スレイブちゃん、そろそろいいかしらぁ?」
「ニクミ様…… も、もちろんです……」
「シャルも座ったらどうだ?」
「ああ、そうさせてもらおう」
正秀に促されシャルもソファーへと腰掛ける。
それから、ニクミはゆっくりと話始めるのであった。
ダラス船長が書いた航海日誌の内容を……
「どうどう? 凄いでしょクリスさん!?」
「本当ね、どんな汚れでも拭くだけで落ちるわ」
「まだまだ、沢山あるのです」
皆は朝食を食べ終わると女性達は掃除をしていた。
貞宗邸はイフリートによる被害は無かったが、クリスにとって毎日の日課である。
そこへ、お土産に持って返ってきたスーパー雑巾をマヨーラが自慢してるのだった。
野郎どもといえば、リビングで食後のお茶である。
お茶ではあるが、ほぼコーヒー近い飲み物だ。
何を使って淹れたのか分からないので、コーヒーっぽいものとしか言いようが無い。
「隊長さん、翻訳できたっスか?」
「ああ、終わったぞ。専門用語は流石にどうしようもなかったがな」
「あ、はい」
早くくれと言わんばかりに手を出す為次。
出発前に渡したタブレットで、超次元振動弾の詳細内容の翻訳である。
「部屋にある、後でな」
「んー」
為次のお友達であるタブレットを早く返してほしかった。
沢山あるゲーム機は自宅のコーポに置いたままなので、こちらの世界にはスマホとタブレットしか友達が居ない。
「まあいいか…… にしても、ターナとスレイブが魔獣退治に参戦とはビックリだは」
「ターナがどうしてもと言うからな……」
「仕方ありませんわ、スレイブ。とても手におえる相手ではありませんでしたわ」
「まあ、確かにサダムネも役に立ちそうもなかったしな」
「なんだと…… 俺より弱いくせして、よくそんなことが言えたものだな」
「ああ!? ならもう一回勝負するか?」
「やめなさいスレイブ」
「チッ」
「それよりモノポールリングでのことを教えてもらえると助かりますわ」
ターナとスレイブも一緒にお茶を飲んでいた。
他にもニクミが居る。
昨日は貞宗宅で泊まっていた。
王宮魔導艇が大破したせいで、すぐにはサイクスに帰れなかったからだ。
それにモノポールリングの話も聞きたかったのもある。
だけども、皆は疲れていたし戦闘による消耗も激しかったので、翌日に話すことになった。
なにより、スイが怒っていたので為次はお話どころではなかったのだ。
「つばい様は重いのです! タメツグ様は全然スイを迎えに来ないのです!」などと言いながら為次に迫っていた。
そんなこんなで早目の就寝となり、今朝は皆も起きるのが早かった。
「んで、何から話すんだ? 全部話すのか?」
正秀は言った。
「なんだよ、話せないこともあるのか?」
スレイブに言われて、チラリと為次を見る正秀。
「どうなんだ? 為次」
「うーん…… 多少の心配もあるよねぇ。ターナの目的と反する情報を得て、ナノマシンがどう作用するかだし。マインドジェネレーターの無い状態だとバグる可能性とかもあるかもだし……」
「わたくしの目的……?」
「とはいえニクはある程度の情報は持ってるんでしょ?」
「タメツグちゃん…… そう ……ね」
「何があった? 船長だろ、なんらかの機密情報みたいなんあるでしょ」
「やっぱりそうなのね…… 私が船長…… あれに書いてあることは事実なのね」
「ニクミ様? アレとはなんですの?」
「昨日言ってた航海日誌あたりかな」
「流石、タメツグちゃんね…… その通りよ」
「何処まで書いてあった?」
「おいタメツグ、ニクミ様に言葉遣いがもう少しなんとかならねぇのか?」
「スレイブ…… ニクは王族なんかじゃないよ。言ったでしょ、船長だって。調査船のね」
「なんだと!」
「いいのよスレイブちゃん、タメツグちゃんの言う通りよ」
「ニクミ様……?」
「母星テラの出港から初めての転生までが綴ってあるわ」
「ってことは、目新しい情報はバハムートを堕としてからの内容かなぁ。なんで救援も呼ばずにこの星に留まることなったのか…… ま、それもターナのワガママかもだけど」
「山崎よ…… もう少し分かるように話せないのか?」
「あーはい、そうっスね。つってもこれを見たほうがいいかも」
と、ポケットからスマホを取り出す為次。
「んーでも画面がちっちゃいから、やっぱタブレットを持って来てほしいかも」
「しょうがねぇなぁ…… おーい! クリスっ」
貞宗に呼ばれ掃除中のクリスがパタパタとやって来る。
「何かしら?」
「すまないが部屋からタブレットを持って来てくれないか? 山崎のやつだ」
「……あなた、掃除の途中なんですよ。それくらい自分で取りに行って下さい」
それを聞いたターナは少し笑いながら言う。
「それくらいですの…… それでしたらわたくしが持って来ましょう。貞宗の為にね、ふふっ」
「あら、ターナ様がそうおっしゃるなら仕方ありませんね。神官様のお手を煩わせる分けにはいきません。ズボラな夫の面倒を見るのも妻の勤めですから」
「忙しいのではありませんの? お気になさらなくていいですわ」
「大丈夫です、私が取ってきます」
「なら初めから、そうおっしゃればよろしくて?」
「夫婦の問題ですから、お気遣い無く」
睨み合う両者。
貞宗は心なしか挙動不審になっている。
「お、お…… あー…… 山崎。コーヒー美味いだろ?」
「え? 今それっスか」
「隊長、大丈夫ですか? なんだか汗が凄いですが」
「ぐ…… お、俺はトイレに行きたい気分だ。コーヒーは利尿作用があるからな。うん、そうだそうだ」
そう言って貞宗は立ち上がるとトイレとは反対方向へと向う。
どうやら自分の部屋の方へと行くみたいだ。
「隊長さん、トイレそっちじゃないっスよ」
「あ、ああ…… ついでにお前のタブレットを取りに行こうとな」
「はぁ、反対方向がついでなんスね」
「このっ……(それ以上は喋るんじゃねぇ山崎)」
「…………」
夫の様子を見たクリスは黙って掃除へと戻ってしまった。
為次を睨む貞宗がだ、嫌らしい笑みを返されるだけだ。
「にひぃ」
「こいつは……」
「チッ……」
そんな様子をスレイブは複雑な気分で見ているだけであった……
……………
………
…
少し待つと貞宗はタブレットを片手に、すぐに戻って来た。
どうやらトイレには行っていないらしい。
「ほらよ」
と、為次に渡した。
「どもっス」
早速、スマホと繋げてファイルをコピーし始める。
無線による通信なので少々遅いが、皆はコーヒーっぽいのを飲みながら静かに待った。
「できた」
「何を見せる気なんだ?」
正秀はタブレットを覗き込むように訊いた。
「ターナの緊急通信だよ。流石に転送はできんかったから直撮りしといた」
「わたくしの……… 緊急通信? ですの?」
「そんなの撮ってたのか」
「うん。他にもめぼしいのを幾つか」
「へー」
為次はコップをテーブルの真ん中辺りに動かして、タブレットを立て掛けた。
それを見ようと正秀と為次以外の4人は画面が見える位置へと移動する。
広いリビングで大人達が身を寄せ合う状況は滑稽だが、仕方がない。
スマホよりは画面が大きいものの、個人で使う物だからやっぱり小さいのだ。
貞宗が少年の姿なのがせめてもの救いだ。
なんだか3人家族に変態が絡んでいるようにも見える。
「じゃあ再生するよ」
「ああ、いいぞ」
返事をする貞宗だが、為次より先に再生ボタンをタップしてしまった。
「あ、ちょ……」
動画が流れる……
「あら、これってわたくしですわ」
「でも、なんだか雰囲気が違うわぁん」
「おい、静かにしろ」
貞宗に注意をされて、皆は食い入るように見始めるのであった……
……………
………
…
ターナの映像が終わったところで、為次は再生を止めた。
当然、皆はモノポールリングで見たときと同じような疑問を持つ。
アンカーやサーガなどの固有名詞が分からない。
「なんだこれは……」
「わたくしは何を焦っているのかしら?」
「おいタメツグ、分かるよう説明しな。マサヒデでも構わねーけどよ」
「んま、そりゃそーだよね。では順番に……」
タブレットを弄り、撮ってきた写真を表示させながら説明を始める為次。
惑星テラの周辺宙域に発生した宇宙魔獣の対策に、ここアクアへとやって来たこと。
試作した魔獣の暴走により母船を失い、なんらかの理由で帰らずに、この島で留まっているところまで。
ナノマシンに関すること以外は概ね話したのであった。
もちろん、分からない固有名詞に関しても可能な限りは説明した。
「と、まあ、そんなとこだね」
「宇宙戦争とか、まるでSF映画みたいだな」
「っスね」
「帰らない理由ってのはなんだ? 母船が無くなって帰れないだけなのか?」
貞宗は訊いた。
「さあ、俺も知らないっス」
「馬鹿野郎、そこまで調べてこい」
「いや…… その必要はないっスよ」
「はあ? どういうことだ?」
「それは船長…… ダラス船長に聞いた方が早いよ。ね、ニク」
と、為次はニクミに視線を移した。
「…………」
何かを考え込むように黙っている。
皆も何も言わなかった。
少し待つと、ようやくニクミは口を開く。
「タメツグちゃんの言う通りよ…… ターナ。あなたのワガママね……」
「!? ニクミ…… 様…… 何をおっしゃって……?」
「ニクミよ、聞かせてくれるな?」
「ええ…… サダムネちゃんには、もっと早く話しておくべきだったわね……」
ニクミが話そうとした、その時であった。
突然、車庫へ通じる扉がバーン! と開いた!
「バーン!! なんだよ! 話はすべて盗み聞きさせてもらったんだよ!」
「こ、こらシムリ。自分で盗み聞きなどと言うなと何度言えば…… はっ、皆、我が妹が申し訳ない」
例の姉妹がやって来た。
実際は結構前から来ていたが。
「げっ、シムリ……」
あからさまに嫌そうな顔をするスレイブ。
昨日は散々纏わり付かれて、流石に鬱陶しかったらしい。
そんなことはお構い無しに、ターナとスレイブの間に割って入りソファーに座った。
「おまたせなんだよ、スレイブさん。淋しかったでしょ」
「寂しくねーよ! 清々してたとこだ」
「スレイブさんは恥ずかしがり屋さんなんだね」
「ちげーよ!」
「スレイブ氏…… 妹をよろしく頼むぞ」
「何言ってんだよ! 知るかっ!」
困惑するスレイブを他所に、シムリは腕を取って寄り添っていた。
新しい彼氏に満足そうである。
皆はあまり関わりたくないと、何も言わなかった。
「スレイブちゃん、そろそろいいかしらぁ?」
「ニクミ様…… も、もちろんです……」
「シャルも座ったらどうだ?」
「ああ、そうさせてもらおう」
正秀に促されシャルもソファーへと腰掛ける。
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