異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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テラ宙域編 4章

第5話 とりあえず煽って行く方向で

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 一通りA.A.S制作をする為の準備作業が完了した。
 人体から取得した、様々なデータをコンピューターに入力し、後は完成を待つばかりである。

 早く完成しないかと正秀は、今か今かと待ちわびているのであった。

 「ミーチェさん、まだかい?」

 「そんなすぐには完成しないわよ。まだ数時間はかかるから明日にでも取りに来るといいわ」

 「ええ!? そんなにもかかるのか……」

 「スイも早く欲しいのです」

 「そうだねー。俺もスイタンクを早く見たいかも」

 「なんだよ、スイタンクって……」

 「戦車に変形できるようにした」

 「マジかよ…… スイちゃんが可愛そうだろ……」

 「カッコイイってば」

 「カッコイイのです」

 「……って、スイちゃんどんなのか見てないだろ……」

 「見なくてもタメツグ様が作ってくれたのです。カッコイイに決まってます」

 「そうだよー」

 「……ほんとかよ」

 三人がA.A.Sの話題で盛り上がっている時だった。

 「そろそろ行く。さようなら」

 そう言って、ユーナは部屋から出て行こうとした。

 「ユーナちゃん、何処に行くんだ?」

 「もうすぐ戦闘宙域」

 「あっ…… 部屋で艦長が誰かと話してた魔獣の討伐ってやつか?」

 「うん。それじゃ」

 「おれもスーツが完成したら助けに行くぜ」

 「…………」

 ユーナは少しだけ笑うと、そのまま何も言わずに出て行ってしまった。

 「なあ、ミーチェさん」

 「何かしら?」

 「ユーナちゃん大丈夫だよな?」

 「あなた方が気にすることではないわ……」

 「……俺は大丈夫かって、聞いたんだぜ」

 「そうね…… 情報だと魔獣はAAAクラスらしいわ。前々回のユーナちゃんだけが生き残ったのがAクラス。つまりそういうことね」

 正秀はどういうことかと訊きたかった。
 だが、答えは既に分かっている。
 生存確率など殆ど無いのだと……

 「くそっ……」

 「ねー、エンジェルってのは何人居るの?」

 唐突に為次は訊いた。

 「通常は9人よ。3人で1個小隊で、それが3個小隊ってことね」

 「ふーん」

 「だけど前の戦闘で第二小隊の2人が居なくなったの。多分、ユーナの第一小隊から2人まわして、ユーナは単独任務になると思うわ」

 「なんでユーナだけ?」

 「あのは珍しく生き延びてきたのよ。戦闘においては艦長も認める程にね」

 「それが今回はヤバ目って、ことなんか」

 「そうね」

 「くそっ、どうにかならないのか!?」

 「まー、まー、落ち着いてよ。マサ」

 「あ? 何か考えでもあるのか?」

 「俺達で助けてあげよう。にひひぃ、そうしよう」

 為次は嫌らしい笑いをしながら正秀に向かって言った。

 「助けるって…… お前そんな顔してないぞ……?」

 「細かいことは、いーの、いーの。よし、ブリッジに行こう」

 「何考えてるかしらねーが、助けに行くってなら…… まあ」

 三人はブリッジへ行くのでラボを後にしようとした。

 「待って」

 ミーチェに呼び止められる。

 「なんすか?」

 「あの…… ユーナは艦長と親しいわ」

 「そすか」

 「生き残っているぶん長いのよね。昔はよく笑うだったのよ。でもね、仲間の…… 無残な最後を見ている内に、あまり笑わなくなったわ…… 今では感情があるかすらも……」

 「へぇ」

 「艦長は何かと気にかけてはいるのだけどね」

 「分かった」

 そう言い残し為次は部屋をでる。
 続けて正秀とスイも後を追うのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 ―― ブリッジ入り口前

 「はぁ…… はぁ…… やっと着いた」

 「意外と遠かったぜ」

 「迷ってたからね……」

 ラボを出てからブリッジに向かったつもりだった。
 当然、艦上部にあるだろうと上へと適当に行ってみた。
 しかし、無い。
 結構、探したが見つからなかったし、誰かに聞こうも全然人が居ない。

 なんとか途中で見つけた端末にアクセスすることで、ようやく艦の全貌が分かった。
 確かに外から見た時は、艦橋らしきものは無かった。
 ブリッジはシャトルのように艦前方に配置されていたのだ。

 そんな訳で、なんやかんとウロウロしていたら30分ぐらが過ぎていた。

 「よし、入るわ」

 「開くのか?」

 「さあ? これかな? ポチッ」

 プシュー

 扉の横にあるボタンを押したら自動ドアが開いた。
 どうやらロックされていないようだ。

 重要な区画に鍵すら付いていないとは不用心だなー

 などと為次は思いながらも、元気一杯で入室する。

 「アイちゃん! 話は全部聞かせてもらったんだよ!!」

 「なんでシムリちゃんのマネしてんだよ……」

 ブリッジのクルーが一斉にこちらを振り向く。

 「誰がアイちゃんだ! こらっ!!」

 艦長は振り返りながら怒鳴るように叫んだ。

 「艦長…… それより部外者の立ち入りを注意した方が……」

 こそっとメイは囁いた。

 「分かっている、バカ者が! メイは前を向いていろ!」

 「は、はいっ!」

 メイだけ怒られると、皆は関係ない振りをしながら自分の仕事に戻る。

 「なんの用だ!? 戦闘中だぞ」

 「なんだ、もう始まってんのか?」

 正秀は正面に見える広大な宇宙を見た。
 艦長は戦闘中と言ったが何も見えない。
 只、きらめく星々が静かに輝いているだけである。

 「ユーナちゃんは? 無事か?」

 「貴様らの心配するとこではない」

 「そう言われてもな……」

 心配そうな正秀を横目に為次はニヤニヤしている。

 「まー、まー、アイちゃん。そうカッカしないで」

 「アイちゃん言うなと、何度言えばっ」

 「ま、ちょこっと聞いた話なんだけどね。此の度このたびの魔獣は強いらしいじゃない? 前回はもちろん前々回よりも」

 「ん? タメツグは何が言いたいのだ?」

 「大したことじゃないよ。手練のユーナもこれで喰われて居なくなっちゃうねーって」

 「お、おい…… 為次……」

 「貴様…… もう一度言ってみろ」

 「んー? 聞こえなかったのかなぁ?」

 「…………」

 艦長は無言で立ち上がると、為次の胸ぐらを掴んだ。
 ナノマシンによって戦士と同等の力を得ているのだろう。
 そのまま片手で軽々と持ち上げる。

 「うげげ…… 苦しいかも……」

 「タメツグ様? ポーション飲みますか?」

 スイは苦しそうな主にヒールポーションを差し出すも、別に怪我をしている訳じゃない。
 掴まれた首元が苦しいだけだ。

 「スイ…… 違う、そうじゃないかも……」

 「はう?」

 「御託はいい、言いたいことがあるならハッキリ言え」

 「俺達ぐぇ…… 助けてあげる…… うおぇ」

 「助けるだと?」

 ドサッ

 正秀に向かって為次を投げ飛ばした艦長。
 なんとか受け取ってもらうも、座り込んでしまう。

 「ゲホッ、ゲホッ、はぁ…… 死ぬかと思ったわ」

 「貴様らに何ができる? スーツも持たず、あんな鉄屑しか持たぬ奴らにな!」

 為次はノソノソと立ち上がる。

 「じゃあさ、俺達が魔獣を倒したらどうする?」

 「戯言を」

 「ユーナに直接聞いてみようか、助けが欲しいのかってさ」

 「ふんっ、メイ! ユーナの回線とクローズアップしろ」

 「は、はいぃっ」

 メイが慌ててユーナとの通信をメインに切り替えると、正面上部のメインスクリーンに相手の映像が映し出された。

 『何?』

 「ユーナ。一旦、魔獣から距離を取れ」

 『分かった。みんなっ』

 チマチマと攻撃中だったエンジェル隊が一斉に魔獣から離れる。
 追いかけてはくるようだが、A.A.S.の機動性が抜群に高いので追いつくことは出来ない様子だ。

 『離れた』

 「よし、タメツグが話があるそうだ」

 『タメツグが?』

 「はーい。ユーナ元気?」

 『何?』

 「今から俺達が行って助けあげるよ」

 『要らない』

 「まぁ、そうだよねー。そりゃそうだよねー」

 『じゃあ』

 「あー、ちょっと待って。俺達は魔獣討伐のエキスパートだからね、困るよね手出しをされちゃったら」

 『何が言いたいの』

 「そりゃユーナの活躍を横取りされちゃったら嫌だよねぇ。せっかく味方のエンジェルを捨て駒にして偉くなったのに、もったいないわなぁ」

 『タメツグ…… 何を言ってるの?」

 「邪魔なライバルを喰わせてリーダーにでもなったんでしょ、ははっ。今回も周りの連中を喰わせて自分は艦長に褒めてもらえるしね。俺達が手出ししたら困るよなぁ。雑魚なお仲間を餌にしないとだもんねー」

 メインスクリーンに映るユーナ。
 その顔はあからさまに怒りに満ちていた。
 反面、為次はニタニタと嫌らしい笑みを浮かべている。

 『私のことはいい、仲間を悪くいうことは許さない!』

 「あっそ」

 『……助けるって言うなら、今すぐ出てこいっ! 魔獣の恐ろしさを存分に見せつけてやる!』

 完全に怒っていた。
 しかし、そんなのは無視して艦長を振り返る。

 「アイちゃん」

 「アイちゃん言うな」

 「助けに来てほしいってさ」

 「貴様はイカれているのか? ユーナはそんなこと言ってないだろ」

 「でも、今すぐ来いってさ」

 「そんなに死にたいなら止めはせんぞ?」

 「そうすか。んで、俺達が魔獣を倒したらどうする?」

 「はっ、そうきたか。別に構わんぞ、なんでも言うこと聞いてやればいいのか?」

 「やったね。じゃあさ、レオ…… 俺達の乗って来た戦車を強化してよ。宇宙でも使えるように」

 「ん? そんなことでいいのか? むしろ魔獣を倒せる戦車ならこちらからお願いしたいくらいだな。わははは」

 「よしゃ、交渉成立だね」

 「待て待て、そちらは何を賭けるのだ?」

 「あー…… こっちもか」

 「当然であろう」

 「何がいいかなー」

 「では、貴様らが負けた場合は艦長と呼んでもらおうか。名前で呼ぶことは許さん。もっとも、失敗した時点で宇宙の塵のなってるだろうがな」

 「りょかーい。マサ、スイ」

 「おう」

 「はいです」

 「んじゃ、行ってくるわ」

 為次の言って来ますを無視して、艦長はユーナと通信をする。

 「ユーナ、しばらく距離を取ったまま待機だ」

 『分かった。ポンコツが来るまで待ってる』

 その言葉を聞いて、ブリッジから出ようとしていた為次はメインスクリーンを睨む。

 「この戦闘が終わったらポンコツ呼ばわりはやめてもうらおうかな」

 『ポンコツ戦車』

 「くそっ」

 と、言い残して為次は出て行く。
 残った二人もなんだか気不味そうに、ペコリとお辞儀をして出て行った。

 迫り来る宇宙戦闘。
 宇宙を漂うだけでも難儀なレオパルト2。

 果たして勝利を掴むことが、できるのであろうか……
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