私、「自然」に愛されて育ちました!

つきの

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秋の章

温泉も作っちゃいました。

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アクラスと思いが通じあってから、
2人は頻繁に会うようになった。

アクラスが休みの時は一緒にお茶をしたり、中庭で話をしたり。

それが千春にとってはとても幸せな時間だった。




この日も2人は談話室にあるソファで
まったりと過ごしている。


「…もうすぐ冬になりますねぇ。少し肌寒くなってきました。」


「あぁ。こちらの冬は初めてだよな…。千春殿、寒いならもう少しこちらへ寄れ。」

そう言って肩を抱き寄せた。


「(ちょ、近い…っ!)

あ、あの。ここでは少し恥ずかしいと言いますか…!たくさん人もいますし。
(っなんかニヤニヤして見てくる人もいるんですけど⁈)」

千春はそう言いながらチラリと周りを伺う。


談話室にはくつろぐ者もいれば、千春達と同じように仲睦まじい恋人達もいる。



「今更だろう。それにもう皆にも周知されているんだ、そろそろ慣れないか?」


「いいえ、慣れません…!」


この2人、実はすでに交わっている。

しかし千春が未だに恥じらうため、
そんな所も可愛いと思いつつもアクラスは満足できていないのだ。

毎日したい。



「…そうか。だが、部屋はな…。千春殿と2人きりになれば俺が辛いからな、あまり行きたくないんだが…。」


「え?それはつまり…?」


「…明るいうちは、ダメなんだろう?それに毎日もダメだと…。だから、人の目があった方が俺にとってはいい。
理性が働くからな。」


「んなっ…!何言ってるんですか!?
ア、アクラスさんもそういう事考えたりするんですね…。」

千春の顔はいつもの如く真っ赤だ。綺麗なワンピースをぎゅっと握りしめる。


「当たり前だろう、いつもどうしたら貴女とずっと一緒にいられるか、触れられるか、そればかり考えているぞ。」
そう言ってワンピースを掴む千春の手をそっと手に取った。





そんなやりとりを見ていた者が2人。


「お熱いですねぇ、羨ましい。
私もいつか女性とあんな風に仲睦まじく…。」
トレインは仲睦まじい2人を見てポッと頰を赤らめている。


「おいおいトレイン、極度の照れ屋なお前には無理だろー?
あんな事出来んのか?優しく肩を抱き寄せたり、甘い言葉吐いて女の子を喜ばせたり。」

トニーはトレインの肩を組みそう言った。


「っ私だって、その気になれば肩のひとつやふたつやみっつ!

甘い言葉だって慣れれば…っ!!」


「いや、そこは1つにしておけ。
お前にハーレムなんてまだ50年早い。
それは俺みたいなモテる男だけに許されたものだ。」


「っ何だよ、俺は70代にしてやっとハーレムを得るのか!?70代の婆さま達に囲まれて⁈

っというか…俺、お前がモテてる所見たこと無いぞ。」

トレインはジト目で見る。


「なーに言ってんだよ。まさかこれだけ一緒にいて気づいてなかったのか?女の子達の俺への熱い視線を!いつも城の中でも、城下に行ってても感じるだろ?

…お前そんなんじゃ本当にダメだぞ?
そこまで鈍感すぎるといつか女の子を傷つけちまうぞ。」


「お前が何言ってんだよ!
その視線は全部団長に向けられてるだろ、
それは俺にでも分かる!!

っお前、俺以上に可哀想な鈍感野郎だったんだな…。」


「俺を憐れんだ目でみるな!!」






「…あいつら何を言い合ってるんだ?」


「(っトニーさん達いたのね…!
もしかして私達の会話とか聞かれてた⁈っ恥ずかしい!)」


アクラスは自分達より少し離れたところにいたトニー達へと声をかけた。



「あ、団長!俺って女の子からモテモテだよね⁈」


「いや!そんなのトニーの勘違いですよね⁈」


「…何の話だ。俺は知らん。」


「っくしゅん!!」


「千春殿、大丈夫か?寒いならもっと寄れと言ってるのに何故さっきから離れる?」


「だから、恥ずかしいんですってば!
私は大丈夫です…っくしゅんっ!!」

有無を言わさず抱き寄せられた。



「あー、最近寒くなって来たからなぁ。これから益々寒くなるぜー?この国は雪が積もるからな。
真冬でも手っ取り早く温まる方法があればいいのになぁ。」


「(アクラスさんが離れてくれないっ!)
…あの、そういう事ならトニーさん!温泉とかどうでしょう?」


「…温泉?何だそれ。
っていうかなんか邪魔してごめんね~。」


「ほんとにな。」
アクラスは正直だ。


「いいえっ、大丈夫です!

…えっと、この国ではシャワーが主流ですよね。でも、私の国では、ゆっくりお湯に浸かって温まるのが主流だったんですよ。
それに、ただのお湯じゃなくて温泉ならその土地で効能も変わりますし。」


「へぇ、湯につかるのか。水浴びしかした事ないからなぁ。」


「千春様、効能というのは?」


「効能は温泉の種類によって色々と変わるんです。例えば腰痛に効くとか、病が治るとか、美肌効果とか!本当にたくさんありましたよ!」


「それはいいな。
千春殿、温泉も作れるのか?」


「それはスエロに聞いてみないとです。というか、作ってもいいんですか?」


「王妃は体調を崩しやすいからな。
それに効く温泉がもし出来たなら陛下も喜ぶだろう。」


「うーん、効能までは分からないですけど、温泉が掘れるのか、スエロに聞いてみますね。
…そろそろ離してくれませんか?」


「嫌だ。」


ーーー

それから数日後。王の許可を貰い、早速温泉の源泉探しへと乗り出した。

今は中庭だ。


いつものように、スエロに頼んで温泉の源泉を探してもらう。


『源泉ならあるぞ。この国のどこにでも出るから、好きなところに作ればいい。』


「それ、ほんと⁈すごーい!!
アクラスさん、温泉いっぱい作れますよっ!!これで皆を癒せます!」

千春は目をキラキラとさせてアクラスを見上げた。


「あぁ聞いてたよ。よかったな、可愛いぞ千春殿。」
アクラスは千春のキラキラした笑顔に癒されている。頭を撫でる手が止まらない。


「え⁈(突然なに⁈)」


「はいはい。羨ましいなクソ…。(俺にだっていつか可愛い彼女が!)」

トニーの本音が漏れる。


「トニー声に出てるぞ。(俺も彼女…欲しい)

じゃあ、どこに作るか決めないとだなぁ。城の中だとどこがいいか…。」


「…じゃあここの端はどうだ?中庭も結構な広さがあるよな?ここなら誰でも行きやすいんじゃないか?温泉専用の施設を建ててさ。」


「陛下はどこにでも好きに作れと言っていたからな。いいんじゃないか?
(…2人の視線が痛い……)」


そうしてスエロに中庭の端に大きな温泉をいくつも掘ってもらい、アクアに泉質を調べてもらった。

そしてここ周辺の温泉は、
美肌効果、疲労回復、切り傷、打ち身、消化器病に効く事が分かった。



「これなら、王妃様も少しは元気になるかしら!」


「あぁ、きっとな。」


それから数日かけて温泉施設を建設した。
おそらくこの世界で初めてとなる、温泉が誕生したのだ。

そしてそれは千春の故郷をイメージしたもの。

豊かな木の香りに包まれ、まったりとした時間が流れる独特な雰囲気。
これまでになかったこの国の癒しの空間だ。

さらに、この施設にはたくさんの種類の温泉が作られた。

男湯、女湯はもちろん、家族風呂に混浴風呂、露天風呂に岩風呂。

たくさんの人に癒されて欲しいという千春の思いだ。




そして温泉施設の完成日。

最初の体験入浴は王と王妃だった。

意気揚々と2人は温泉へと向かい、2時間程かけてやっと出てきた。


2人のその表情はとろけきっている。


「おぉ、千春殿!今出たぞ。
温泉とはこんなにも素晴らしいのだな!体が軽く、疲れも取れたようだ。妻も喜んでいたよ。なぁ、オリヴィア。」

王はニコニコと上機嫌だ。そして妻へと問いかける。


「えぇ。私も、湯に浸かるというのは初めてでしたが、とても気持ちの良いものでしたわ。いつまでも入っていたかったです。まだ体がポカポカしています。」

オリヴィアと呼ばれた美しい女性は長い金髪をなびかせている。しかしどこか儚げだ、これまで療養していたのも頷けた。



千春はこの時に初めて王妃と相見えた。

「王妃様。初めまして、千春と申します。
そんなにも喜んで頂けるなんて…。
これからはこの温泉で体を癒して貰えたら嬉しいです。」


「ありがとう千春さん。私はオリヴィアと申します。
今まで体調が優れなくてご挨拶も出来なかったこと、ごめんなさいね。

これから、毎日通うことにします。体の調子も良くなりそうだわ!本当にありがとう。」


「はい!」



それから、温泉には城の者達がこぞって通うようになった。


その中にはトニーとトレインも。



2人は湯に浸かりながら蕩けていた。
そこは露天風呂。


「あぁ~、きもちぃ。何だこれ、うごきたくねぇ~…」

肩から下を湯に浸からせ、岩にもたれかかっている。


「あぁ…、体の力が抜けて…。これが本当の癒しなんだな…。」


「もう何もしたくねぇ~、このまま寝たい。」


「それは死ぬぞ。
…よし、そろそろ出よう。」


「いやだ、まだいる。
俺のこの酷使した体には、まだ癒しが必要だ…。」


「つるつるの綺麗な体じゃないか。どこを酷使してるんだよ。」
そう言いながらトレインはトニーの体をジッと見た。


「おい、見るなよ変態。」


「へっ!変態⁈言いがかりだ!変なこと言うな!周りに勘違いされるだろ⁈」
トレインは慌てて周りを見渡す。




ーーそれから2人は温泉を名残惜しくも出た後、千春達の元へと訪ねた。



「千春ちゃん、温泉ってすげぇ気持ちーのな!俺ずっと思考が停止してたよ。

でもさ、トレインがヤラシイ目で見てくるんだよ~。もっとゆっくりしてたかったのに、その視線が落ち着かなくてさぁ。」


「っトニー!馬鹿なこと言うな!
違いますよ、千春様!!こいつが体を酷使してるって嘘言うから確かめてやっただけで…!」


「た、確かめて…。(どんな風にだろう…。)」
千春はやや頰を赤らめた。


「トレインお前…。」
アクラスはトレインから一歩下がる。


「団長まで、そんな目で俺を見ないでください!!誤解です!」


「ふ、分かってるよ、すまん。ちょっとふざけたな。」


「団長…っひどいです。」


「それにしても、大人気だよなぁ。
温泉を利用する人の波が途切れないぞ。」

トニーは温泉道具を持って施設へ向かう人達を見て言った。


「癒しスポットですし、騎士さん達は特に鍛錬の後の打ち身や怪我の治りも早くなりますからね!」


「そうだな、助かってるぞ。
千春殿は本当にこの国をどんどん豊かにしてくれる。
俺は誇らしい。」


「えへへ、嬉しいです。

アクラスさん、今度一緒に入りませんか?
家族風呂っていうのもあるんですよ!」


「願っても無いが…いいのか?意外だな。」
アクラスは目を見開き驚く。


「ホントだね。俺驚いたんだけど。どうしたの千春ちゃん。」


「家族風呂と混浴風呂は、体にタオル巻いていいですからね!それなら大丈夫です!」


「千春ちゃんの基準ってよく分からねぇな。何が恥ずかしくて何が大丈夫なのか。」


「…確かに。一緒に温泉なんて…。」
トレインは頰を染める。


「っお前今、俺の体思い浮かべたろ?」
トニーは自分の体を抱きしめて後ずさった。


「浮かべるか!!千春様のをだな…っ
嫌、違います団長!睨まないで下さいっ。」


トレインのその言葉に、アクラスの恐ろしい視線がトレインを射抜いていた。


「温泉は良いんです!癒しの時間を好きな人と共有出来るなんて素敵じゃないですか!」


「(好きな人…。)
そうだな、じゃあ今度一緒に入ろうな。楽しみだ。」


「はい!」




ーーーこうして、温泉まで作ってしまう千春だった。
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