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月樹《つき》

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白珪学園編

第三十三話 体育祭⑫

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 前から思っていたのですが…

 倶利伽羅くんって、やっぱり…わざと手を抜いていたのですね…。

 確かにクラスで一番早いけれど…今までの走りはみんなとそれほど差があるものではありませんでした。

 けれど、今、目の前を走り抜けた彼は、つむじ風が巻き起こるほどのスピードで…。



 倶利伽羅くんはアンカーを任されていたのですが、彼の前の前の走者の西野くんがバトンを落としてしまい、倶利伽羅くんは最下位でバトンを受け取ることになりました…。



 そして彼が走り出した後は…



『スゴい!!アレで本当に中学生なのか!?
 今すぐオリンピック選手になれるんじゃないか?』
『えっ…?あんな子、うちの学校にいた?』
『ちょっと地味だけれど…背も高いし、カッコイイかも…』



 なんて声が聞こえてきました。
 あらっ…最後に言ったの…誰かしら…?

 倶利伽羅くんはバトンを受け取るとあっという間に前の三人を抜き去り、最後は半周以上差をつけられていた白組の生徒も追い越して、どうどうの1位でゴールしました。

 それにはさすがのルークお兄様も目を見張ったようです。
 もっともお兄様が本気を出せば、フルスピードで走る車と並走できるのですが…
 魔法で転移できるので、そんな面倒なことはしませんけれどね…。

 どうやら一方的な宣戦布告していた生徒会長も1位でゴールしたようです…。
 彼の場合はもともと1位でバトンを受け取り、そのままキープした状態でゴールしただけですけれど…

 終わった後に、『二人とも1位だったから、また引き分けだね♡』と爽やかな笑顔で倶利伽羅くんの肩を叩いていました…。
 その引き分けは…ちょっと無理があると思います…。

 赤組の総合結果としては、惜しくも白組に負け2位でしたが、みんな健闘した良い体育祭でした。

 お兄様達も初めて見る日本の体育祭を十分楽しみ満足していましたが、倶利伽羅くんへの警戒心はより増したようで…

『次に来る時は(密かに消し去る)方法を考えてくるよ♡』

 と笑顔で帰って行きました…。
 まあ、倶利伽羅くんだったら大丈夫でしょう…たぶん…。
 

 今日は良く運動したので、ぐっすり眠れそうです♪


 ~・~・~・~・~


 タカラが心地よく眠りの世界へと旅立つ頃、聖アルメリア王国では…


「で…どうするんですか?」
 転移装置を降りた後、難しい顔をして前を歩く兄にノアは尋ねた。

 祖父母と可愛い妹に見送られ日本を出発したときの笑顔とは、全然異なる厳しい表情だ…。

 見た目に反して能天気なタカラは、超人的な家族を見て育ったからか基準がおかしいので、同級生の彼を単に普通より少し運動神経が良い人…くらいに思っているようだが…

「とりあえずは静観かな…。でも昔からタカラは変なものに好かれるるよね…」
 ルークは呆れた顔で、妹の過去を思い返した…。


 精霊の森に入れば、様々な精霊に好かれてその精霊が擬態した動物達を知らずに連れて帰ってくるし…
 獣人の国の王子が我が国に訪問した時も、一方的に番認定されて連れ帰られそうになるし…
 ユニコーンはストーカー化して王宮に住み着くし…。最近はタカラがいないから、あきらめてフラフラしてるようだけれど…。

 他にも挙げだしたらキリがない…。

「たぶん彼は普通の人間ではない…。
 そして彼に僕達の幻影魔法は利いていないと思うよ」
「彼は人間ではないのですか?それは悪しき存在ですか?」
 兄のその発言に、ノアは驚きを隠せなかった。兄は普段おちゃらけているけれど、家族に関わることとなったら真剣で、そんな冗談を言う人ではない。
 人ならざるものが大切な妹に近づいていることも、その相手が自分達の魔法を解くほどの力を持っていることも問題だ。

「分からない…。でも、タカラに対して悪意がないことは確かだ…。
 たぶん気に入っている…それが恋愛感情なのかは微妙だが…」

 あの借り物競争の時、ルークには倶利伽羅の持つ紙の字が見えていた。
 そこにはハッキリと『ペット』と書かれていて…。

 幻影魔法が利いていないのなら、あの国民的美少女と言われている可憐な妹の容姿も見えているはずなのに、それを扱いするとは…

 なかなかの曲者…やはり人ではないのかもしれない…。

「まあ、タカラを守りはしても害することは無さそうだから…相手が何者か分かるまでは、もうしばらく様子見でいいだろう…。父上にもそのように報告するつもりだ」
 そう言うと、ルークはもうかなり夜遅く普通なら明日の朝、改めて報告すればよいのだけれど…あえてそのまま父王の寝室に向かって歩き出した。慌てて、ノアも後を追う。

(全く…父上が日本の学校に通わすなんて言わなければこんなことにならなかったのに…)

 ルークもノアもまた不満に思ってしまったので、寝ているだろう父を無理やり起こすぐらいの嫌がらせはしても良いと思った。


■□■□■□■□

お読みいただきありがとうございます。

投稿が遅くなり申し訳ありません。

土曜日更新が難しくなってきましたので、

来週から日曜日に更新に変更いたします。
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