3 / 31
「自分を大きく見せようとして――逆に小さく感じるぜ」
しおりを挟む
三左衛門の案内で連れてこられたのは、奉行所からほど近い武家屋敷だった。
いつ手を回したのか知らないが、奴の親戚に無理を言って亀若丸を預かってもらっているようだ。
奉行所で別れた直後だというのだから、やはりできる男は仕事が早いのだろう。
「亀若丸は寝ています。昨夜のことがありうなされているようです」
屋敷に入り女中の先導で廊下を歩いていると、そんなことを三左衛門に耳打ちされた。
殺した俺が言える立場ではないが、目の前で起きた人斬りはかなりの衝撃だったのだろう。
繊細さや豪胆さとは関係なく、子供には刺激的過ぎる。
部屋の障子を開けると、布団にくるまって寝ている亀若丸がいた。
あぶら汗が額にうっすら浮かんでいる。表情も苦しそうだ。
改めて亀若丸を見る。
色が白くて痩せている。線の細い男の子と評したほうがいいだろう。
髷を結っておらず短いざんぎり頭だ。意外とまつ毛が長い。
「それで、この子供を守れというのか」
「私が言ったわけではありません。源八郎さんの師匠様がおっしゃったんです」
「だとしても、俺にしてみれば気に入らない展開だ」
破門を取り消してもらうために子供を守る。
まるで苦しんでいるこの子を、自分のために利用しているような心地だった。
「いたいけな子供を守るのは嫌ですか?」
「見ず知らずの子供を守るのが嫌だ。俺はこいつのことを何も知らないんだ」
「おや。知り合いだったら守るんですか? おかしいですね、あの死んだ男は知り合いでも何でもないでしょう?」
痛いところを突く――しかし死にゆく者の約束は守るのは俺なりの責務だと思っている。
それに快く引き受けるのは武士として当たり前のことだと師匠から教えられた。
「それとこれとは話が違う。こいつは生きているじゃないか」
「でも苦しんでいる。だったら介錯しますか?」
「俺の務めを揶揄しているのか?」
「源八郎さんが頑固だから、私も言いたくないことを言っているんです」
三左衛門は説教をしているわけではないが、そう受け取ってしまう俺がいた。
まるで聖人を相手にしているようだ。
しかし自分が悪人だと卑下するつもりはないが、善人でもないので甘んじて受け入れるのも癪だった。
「ま、破門はされたくないからな……」
「素直じゃないですねえ……この子の素性、なんでしょうね? 単なる百姓の子とは思えません」
話を変えた――いや、本題に入ったのだろう。
今後動くにしても考えなければならない事柄だった。
「高利貸しか人買いが亀若丸を拐した……それをあの男――銀次郎が連れ戻そうとした」
「源八郎さんも覚えているでしょう。銀次郎は『亀若丸様』と呼んでいた。武士の身なりをしている男が、百姓の子をそう呼びますか?」
「亀若丸という幼名にしてもそうだ。武家の中でも高貴そうだと思う」
「なら、亀若丸は武家ですか? なんでこのような恰好をしているんでしょうか?」
「……さあな」
俺は答えなかったがなんとなくアタリをつけていた。
疑問を口にしている三左衛門だけれど、俺と同じ考えを持っているに違いないだろう。
武家の子息が百姓の恰好をしている理由は――身分を隠す以外ありえない。
「うーん……あ、うう……」
ようやく亀若丸が目覚めようとしていた。
俺たちは枕元に座った。
「……ここは?」
「気がついたようだな」
俺が声をかけると亀若丸は「うわあああああああ!?」と布団を跳ね飛ばして起き上がった。
そしてそのまま立ち上がろうとして足がもつれて尻餅を突く。
町娘みたいな悲鳴だなと俺は耳の穴をほじる。
「だ、誰だ!? な、なんだ、お前は!?」
「まあ落ち着け。お前に危害は加えない」
「源八郎さん。そんな言い方では怯えてしまいますよ」
三左衛門はなるべく安心させようと優しげな笑顔で「怖がらなくていいんですよ」と言う。
「私は三左衛門。こちらの方は源八郎さん。あなたを保護しています」
「保護……なんで? あ! 銀次郎は!?」
「あー、銀次郎さんは……」
困った顔で俺を見つめる三左衛門。
仕方ないなとため息をついて「よく聞け」と俺が答えた。
「銀次郎は死んだ。おそらくお前を守るために傷を負ったのが原因だ」
「そ、そん、な……うっぐ、えっぐ……」
大粒の涙を流す亀若丸に多少の鬱陶しさを覚えてしまう。
三左衛門が「もう少し言い方を考えましょうよ」と呆れていた。
「知り合い……かどうかは知りませんけど、とにかく知っている大人が死んだんですから」
「誤魔化すよりいいだろ。なあ亀若丸……それがお前の名か?」
「ぐす、う、うん。そうだよ……」
亀若丸は袖で涙を拭いつつ答えた。
心が弱っているのだろう。今なら答えづらいことも言うかもしれない。
「お前は百姓の子か? それとも武家の子か?」
「……百姓だよ。おっかあと暮らしてた」
「お前の母親はどこにいる?」
ますます暗い顔になった亀若丸は「おっかあは死んだ」と短く返した。
「流行り病で……ひと月前のこと……」
「気の毒だな。しかしならば何故、お前はあの男たちに――」
そのとき、外で誰かが怒鳴る声がした。
ビクッと亀若丸は驚き、三左衛門は「少し様子を見てきます」と席を立った。
「な、なんだろう……」
「さあな。それより本題だ。俺はお前を守らなければならない」
「どういうこと?」
俺は頬を掻きながら「言葉通りの意味だ」と応じた。
「銀次郎という男の頼みだというのもあるが、俺の破門を取り消してもらうためにお前を守らないといけなくなった」
「よく分からないけど」
「俺だってよう分からん。詳しくはさっきの三左衛門に聞け」
廊下をドタドタ走る音がして障子が開く。
三左衛門が焦った顔で「まずいです、源八郎さん」と早口で言った。
「武家の男が五人、この屋敷の前にいます。亀若丸がここにいるのを見破られたようです」
「二人はここで待ってろ。俺が行く」
刀を持って出て行こうとすると「穏便に話し合ってくださいよ」と三左衛門が懇願してきた。
「借りた屋敷で血生臭いことしないでください」
「保証はできん。もしそうなったら――代わりに謝っておいてくれ」
◆◇◆◇
外に出ると三左衛門が言ったとおり五人の男がこちらを威圧している。
そのうちの一人は見覚えがある――昨夜逃げた男だ。
「その面……どうやらここにいるらしいな」
男も気づいたようで全員の殺気が高まる。
空気が徐々に乾いていくのも感じた。
「なあ。場所を変えねえか? ここじゃ屋敷の主人に迷惑かかる」
「ふざけるなよ! てめえが亀若丸を出せばいい話だろうが!」
声を張り上げて恫喝する男たち。
昔、師匠に言われたことを思い出した。
「そんな大声上げて、みっともねえな」
「なんだと!?」
「自分を大きく見せようとして――逆に小さく感じるぜ」
俺は刀を素早く抜いた。
五人は動揺したが、各々刀を抜く。
「迷惑をかけるって意味は、お前らの血で玄関を汚しちまうことだ……」
「ほざくなよ……! やっちまえ!」
五人のうち二人が一斉に襲い掛かった。
刀をくるりと回して、俺は迫ってくる左の男の脇を峰打ちにした――右の男にぶつかってから倒れてしまう。
「こ、この――」
悪態をつく暇があるなら俺を斬ればいい。
そう思いつつ、体勢を崩した男の顔面目掛けて前蹴りをした。
鼻血を出した――鼻柱が折れたようだ――そのまま気絶する。
「斬ると後々面倒だからよ。このままにしておくぜ」
残された三人は逡巡した挙句、刀を構えたまま固まってしまった。
逃げるでもなく、襲い掛かるでもないか……何とも中途半端な対応だった。
「逃がしてやるからさっさと帰れ」
面倒になった俺はそのまま屋敷に入る。
奴らの歯の根が鳴っているのが聞こえていたので別にどうだって良かった。
さて。事情を訊くのは後回しだ。あんな連中が次々と来る前にこの屋敷から出なくてはならない。
三左衛門の親戚である、屋敷の主人に迷惑をかけないためにも。
いつ手を回したのか知らないが、奴の親戚に無理を言って亀若丸を預かってもらっているようだ。
奉行所で別れた直後だというのだから、やはりできる男は仕事が早いのだろう。
「亀若丸は寝ています。昨夜のことがありうなされているようです」
屋敷に入り女中の先導で廊下を歩いていると、そんなことを三左衛門に耳打ちされた。
殺した俺が言える立場ではないが、目の前で起きた人斬りはかなりの衝撃だったのだろう。
繊細さや豪胆さとは関係なく、子供には刺激的過ぎる。
部屋の障子を開けると、布団にくるまって寝ている亀若丸がいた。
あぶら汗が額にうっすら浮かんでいる。表情も苦しそうだ。
改めて亀若丸を見る。
色が白くて痩せている。線の細い男の子と評したほうがいいだろう。
髷を結っておらず短いざんぎり頭だ。意外とまつ毛が長い。
「それで、この子供を守れというのか」
「私が言ったわけではありません。源八郎さんの師匠様がおっしゃったんです」
「だとしても、俺にしてみれば気に入らない展開だ」
破門を取り消してもらうために子供を守る。
まるで苦しんでいるこの子を、自分のために利用しているような心地だった。
「いたいけな子供を守るのは嫌ですか?」
「見ず知らずの子供を守るのが嫌だ。俺はこいつのことを何も知らないんだ」
「おや。知り合いだったら守るんですか? おかしいですね、あの死んだ男は知り合いでも何でもないでしょう?」
痛いところを突く――しかし死にゆく者の約束は守るのは俺なりの責務だと思っている。
それに快く引き受けるのは武士として当たり前のことだと師匠から教えられた。
「それとこれとは話が違う。こいつは生きているじゃないか」
「でも苦しんでいる。だったら介錯しますか?」
「俺の務めを揶揄しているのか?」
「源八郎さんが頑固だから、私も言いたくないことを言っているんです」
三左衛門は説教をしているわけではないが、そう受け取ってしまう俺がいた。
まるで聖人を相手にしているようだ。
しかし自分が悪人だと卑下するつもりはないが、善人でもないので甘んじて受け入れるのも癪だった。
「ま、破門はされたくないからな……」
「素直じゃないですねえ……この子の素性、なんでしょうね? 単なる百姓の子とは思えません」
話を変えた――いや、本題に入ったのだろう。
今後動くにしても考えなければならない事柄だった。
「高利貸しか人買いが亀若丸を拐した……それをあの男――銀次郎が連れ戻そうとした」
「源八郎さんも覚えているでしょう。銀次郎は『亀若丸様』と呼んでいた。武士の身なりをしている男が、百姓の子をそう呼びますか?」
「亀若丸という幼名にしてもそうだ。武家の中でも高貴そうだと思う」
「なら、亀若丸は武家ですか? なんでこのような恰好をしているんでしょうか?」
「……さあな」
俺は答えなかったがなんとなくアタリをつけていた。
疑問を口にしている三左衛門だけれど、俺と同じ考えを持っているに違いないだろう。
武家の子息が百姓の恰好をしている理由は――身分を隠す以外ありえない。
「うーん……あ、うう……」
ようやく亀若丸が目覚めようとしていた。
俺たちは枕元に座った。
「……ここは?」
「気がついたようだな」
俺が声をかけると亀若丸は「うわあああああああ!?」と布団を跳ね飛ばして起き上がった。
そしてそのまま立ち上がろうとして足がもつれて尻餅を突く。
町娘みたいな悲鳴だなと俺は耳の穴をほじる。
「だ、誰だ!? な、なんだ、お前は!?」
「まあ落ち着け。お前に危害は加えない」
「源八郎さん。そんな言い方では怯えてしまいますよ」
三左衛門はなるべく安心させようと優しげな笑顔で「怖がらなくていいんですよ」と言う。
「私は三左衛門。こちらの方は源八郎さん。あなたを保護しています」
「保護……なんで? あ! 銀次郎は!?」
「あー、銀次郎さんは……」
困った顔で俺を見つめる三左衛門。
仕方ないなとため息をついて「よく聞け」と俺が答えた。
「銀次郎は死んだ。おそらくお前を守るために傷を負ったのが原因だ」
「そ、そん、な……うっぐ、えっぐ……」
大粒の涙を流す亀若丸に多少の鬱陶しさを覚えてしまう。
三左衛門が「もう少し言い方を考えましょうよ」と呆れていた。
「知り合い……かどうかは知りませんけど、とにかく知っている大人が死んだんですから」
「誤魔化すよりいいだろ。なあ亀若丸……それがお前の名か?」
「ぐす、う、うん。そうだよ……」
亀若丸は袖で涙を拭いつつ答えた。
心が弱っているのだろう。今なら答えづらいことも言うかもしれない。
「お前は百姓の子か? それとも武家の子か?」
「……百姓だよ。おっかあと暮らしてた」
「お前の母親はどこにいる?」
ますます暗い顔になった亀若丸は「おっかあは死んだ」と短く返した。
「流行り病で……ひと月前のこと……」
「気の毒だな。しかしならば何故、お前はあの男たちに――」
そのとき、外で誰かが怒鳴る声がした。
ビクッと亀若丸は驚き、三左衛門は「少し様子を見てきます」と席を立った。
「な、なんだろう……」
「さあな。それより本題だ。俺はお前を守らなければならない」
「どういうこと?」
俺は頬を掻きながら「言葉通りの意味だ」と応じた。
「銀次郎という男の頼みだというのもあるが、俺の破門を取り消してもらうためにお前を守らないといけなくなった」
「よく分からないけど」
「俺だってよう分からん。詳しくはさっきの三左衛門に聞け」
廊下をドタドタ走る音がして障子が開く。
三左衛門が焦った顔で「まずいです、源八郎さん」と早口で言った。
「武家の男が五人、この屋敷の前にいます。亀若丸がここにいるのを見破られたようです」
「二人はここで待ってろ。俺が行く」
刀を持って出て行こうとすると「穏便に話し合ってくださいよ」と三左衛門が懇願してきた。
「借りた屋敷で血生臭いことしないでください」
「保証はできん。もしそうなったら――代わりに謝っておいてくれ」
◆◇◆◇
外に出ると三左衛門が言ったとおり五人の男がこちらを威圧している。
そのうちの一人は見覚えがある――昨夜逃げた男だ。
「その面……どうやらここにいるらしいな」
男も気づいたようで全員の殺気が高まる。
空気が徐々に乾いていくのも感じた。
「なあ。場所を変えねえか? ここじゃ屋敷の主人に迷惑かかる」
「ふざけるなよ! てめえが亀若丸を出せばいい話だろうが!」
声を張り上げて恫喝する男たち。
昔、師匠に言われたことを思い出した。
「そんな大声上げて、みっともねえな」
「なんだと!?」
「自分を大きく見せようとして――逆に小さく感じるぜ」
俺は刀を素早く抜いた。
五人は動揺したが、各々刀を抜く。
「迷惑をかけるって意味は、お前らの血で玄関を汚しちまうことだ……」
「ほざくなよ……! やっちまえ!」
五人のうち二人が一斉に襲い掛かった。
刀をくるりと回して、俺は迫ってくる左の男の脇を峰打ちにした――右の男にぶつかってから倒れてしまう。
「こ、この――」
悪態をつく暇があるなら俺を斬ればいい。
そう思いつつ、体勢を崩した男の顔面目掛けて前蹴りをした。
鼻血を出した――鼻柱が折れたようだ――そのまま気絶する。
「斬ると後々面倒だからよ。このままにしておくぜ」
残された三人は逡巡した挙句、刀を構えたまま固まってしまった。
逃げるでもなく、襲い掛かるでもないか……何とも中途半端な対応だった。
「逃がしてやるからさっさと帰れ」
面倒になった俺はそのまま屋敷に入る。
奴らの歯の根が鳴っているのが聞こえていたので別にどうだって良かった。
さて。事情を訊くのは後回しだ。あんな連中が次々と来る前にこの屋敷から出なくてはならない。
三左衛門の親戚である、屋敷の主人に迷惑をかけないためにも。
22
あなたにおすすめの小説
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
『五感の調べ〜女按摩師異聞帖〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸。盲目の女按摩師・市には、音、匂い、感触、全てが真実を語りかける。
失われた視覚と引き換えに得た、驚異の五感。
その力が、江戸の闇に起きた難事件の扉をこじ開ける。
裏社会に潜む謎の敵、視覚を欺く巧妙な罠。
市は「聴く」「嗅ぐ」「触れる」独自の捜査で、事件の核心に迫る。
癒やしの薬膳、そして人情の機微も鮮やかに、『この五感が、江戸を変える』
――新感覚時代ミステリー開幕!
日露戦争の真実
蔵屋
歴史・時代
私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。
日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。
日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。
帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。
日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。
ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。
ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。
深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。
この物語の始まりです。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
古書館に眠る手記
猫戸針子
歴史・時代
革命前夜、帝室図書館の地下で、一人の官僚は“禁書”を守ろうとしていた。
十九世紀オーストリア、静寂を破ったのは一冊の古手記。
そこに記されたのは、遠い宮廷と一人の王女の物語。
寓話のように綴られたその記録は、やがて現実の思想へとつながってゆく。
“読む者の想像が物語を完成させる”記録文学。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる