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「三輪源八郎吉昌、いざ参る!」
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「お前、本気なのか……亀若丸を殺す気なんだぞ! あの花房って野郎は!」
幕府の役人に囲まれているのにも関わらず、衝動的に立ち上がる。
周りの人間が殺気立つ中、三左衛門は手を挙げて止めて「重々承知の上です」と応じた。
「引き渡せば亀若丸は死ぬでしょう。しかし、それは致し方ないことです」
「ふざけるなよ!」
ずいっと迫ると二人の役人が俺の腕を掴む。
構わず俺は「お前はそんな冷たい人間だったのか!?」と睨みつける。
「子供を見殺しにするような、外道じゃねえだろ!」
「そうじゃないつもりでした。けれど私はこれから外道に落ちます」
三左衛門の顔はとても冷めていた。
悲しみや憤りを感じられない――感情を殺しているようだ。
「たとえ地獄に落ちるとしても私はやらねばならないのです」
「いったいどういうことだ! 亀若丸は何者なんだ!」
「それは答えられません。あなたも知らないほうがいい」
くるりと後ろを向き、そのまま去ろうとする。
その背中に向かって「待てよ!」と怒鳴った。
「あいつは……徳川家の人間か!? 御三家か御三卿……まさか、将軍家か!?」
役人たちの手が震えた気がした――動揺しているようだった。
三左衛門は振り返ることなく「違います」と否定した。
「ですがこれだけは言っておきます。亀若丸は――古くて高貴な血を引いております」
「……何を言っているんだ?」
困惑する俺の問いには答えずに三左衛門は部屋から出てふすまを閉じた。
俺は役人の手を振り払いその場に座り込んだ。
「ちくしょう、なんだってんだ!」
役人たちはしばらく俺の様子を窺っていたが、動かないと知ると部屋の外へ出ていく。
何がなんだか分からない――
「……迷っている暇はねえな」
刀を掴んで俺は思いっきりふすまを開けた。
そこには三人の役人がいて、急に俺が出てきたものだから面食らったようだ。
「お、おい! どこへ――」
「亀若丸のところだ。邪魔すんなよ」
三人を無視して玄関へ向かう――肩を掴まれた。
「ここにいるんだ! さもないと――」
最後まで言わせなかった。
強く握った拳で――掴んだ役人の顔をぶん殴った。
汚い悲鳴と赤い鼻血を出してひっくり返る。
「この野郎! 何を――」
残りの役人の一人が刀を抜こうとした――鳩尾を下から突きあげるように殴る。
胃液を吐き出しその場にうずくまる役人を見て最後の役人は「何をしたのか、分かっているのか!?」と喚く。
「き、貴様は、幕府に逆らうのか!? これからどういう目に遭うのか分からないのか!?」
「――知るかよ」
俺の返事の途中で役人は刀を抜いた。
構えと震えを見てたいしたことはないなと思い、振り上げた瞬間に相手の刀の柄と手を掴んでやる。そのままねじり上げて刀を取った。
「どんな目に遭おうとな。亀若丸が死にそうなのに動かねえのは間違ってんだ」
呆然とする役人の顔すれすれに刀を突き刺す。
壁に刺さったが、自分が刺されたと思い込んだのか、役人はそのままへたり込んで気絶した。
玄関を出ると役人が十数人固まっていた。
その中心には三左衛門がいた。
「ほらやっぱり。動く人だと思っていましたよ」
「だとすれば備えは不十分だな。俺を止めたければ倍は用意しろ」
すらりと刀を抜いて中段に構える。
役人たちも刀を構えた。
三左衛門は「考え直してもらえませんか?」と俺に訊く。
最後通告だと誰もが分かる口調だった。
「今ならまだ間に合いますよ」
「俺にしてみれば遅いぜ……お前が亀若丸を引き渡すって戯言抜かしたときから、俺ぁ――キレちまったんだからよ!」
十数人も相手にできるほど俺の腕は達者ではない。
それでも戦わなければならないときはある。
亀若丸は罪人でも悪人でもない。
当然、介錯されるような人間でもない。
そんな奴があっさりと殺されるなんて――我慢ならない!
「仕方ありませんね。源八郎さん、あなたは本当にいい友人でした」
先ほどまで感情を殺していた三左衛門の顔が曇った。
悲痛に満ちたものだ――俺を惜しむなら、亀若丸を惜しめ!
「三輪源八郎吉昌、いざ参る!」
役人たちに向かって走り出したとき「源八郎殿!」と俺の名を呼ぶ者がいた。
目をやると、周助と久次郎、そして弟子たちがこちらにやってくる。
各々木刀を携えていて、三十人は超えている――役人の数より多い。
「周助! どうして――」
「……三左衛門殿。見損ないましたよ。亀若丸を死なせる真似をするなんて」
木刀を構えつつ、周助は俯いたままの三左衛門に言う。
「俺は見捨てない。これは剣客としての考えではない。人として捨てておけないんだ」
「いいんですか? これは立派な……一揆ですよ」
「たとえ幕府に逆らうことになっても――あの子を救いたい」
周助は「そうだろう! 源八郎殿!」と俺に呼びかけた。
周りの弟子たちも覚悟を決めている。
今後のことを考えれば百姓たちを退かせたほうがいい。
たった一人の子供を守るために幕府と敵対するなんて割に合わない。
だけど――
「ああ。お前の言うとおりだ……俺だって見捨てられねえ!」
俺と周助たちの覚悟を見たのか、困った表情の三左衛門は「これでは私が悪人ですね」と呟く。
「ならば私は悪人として、幕府に尽くしますよ――皆さん、この者たちを捕縛しなさい!」
三左衛門の命令で全員が動いた。
役人のうち二人が俺に向かってきた。
左右に分かれて様子を窺っている――俺は右側の役人に斬りかかった。
袈裟斬りを放つと役人は刀の峰で止めた。
刀に集中していて周りが見えていないようだ――腹を思いっきり蹴ってやる。
「うぐぼ……!?」
鈍い苦痛の声をあげてくの字に曲がる役人。
俺の背中を斬ろうともう一人の役人が迫る。
見えていたのでその場から離れて躱した――勢い余って刀を地面にまで下ろしてしまった。
その隙を突いて――俺はその役人の顔面を殴った。
全力で殴ったのでその場に倒れ伏す。
そして俺は見た――三左衛門が誰にも守られずに俺と向かい合っているのを。
「どうした三左衛門。逃げないのか?」
「私はここの責任者です。逃げるわけにはいかないでしょう」
「はっ。そのくらいの分別はあるんだな」
じりじりと俺は三左衛門に近づく。
奴はため息をついて――刀を抜いた。
「なんだ。俺と戦うつもりなのか」
「武士にはやらねばならないときがあるんです……敵わなくてもね」
「その気概があるのに……どうして、亀若丸を見捨てたんだ!」
怒りのあまり俺は三左衛門に斬りかかった。
一撃は防いだ三左衛門だったが、俺の二撃目は防げなかった。
わき腹を叩くように俺は峰打ちした。
「うげえ、ええ……」
倒れる寸前、俺は奴の首根っこを掴んで――乱闘している全員に言い聞かせた。
「三左衛門は押さえた! 全員、戦うのをやめろ! でないとこいつを殺す!」
役人たちは迷っていたが、俺の殺気に圧されたのか、全員緩慢な動きで刀を納めた。
三左衛門は「首斬り源八郎さんとは思えませんね……」と苦しげな声で言う。
「私を殺さないんですか?」
「殺したら死人が出るだろ。お前以外のな」
「甘くなりましたね。それは亀若丸と過ごした影響ですか?」
「ふん。好きに言え」
俺は三左衛門に「亀若丸はどこだ?」と問い詰めた。
「どこに隠した?」
「隠していません……もう時すでに遅し、なんですよ」
三左衛門は「どうせ源八郎さんに邪魔されるって分かっていたんです」と韜晦した。
「もしかしたら亀若丸を取り戻されると思っていたのです。それなのにわざわざ亀若丸を引き渡すと言いますか?」
「意味が分からねえ。さっさと――」
そこまで言ったとき、俺は気づいてしまった。
「この野郎……! まさか、既に!」
「ええ。ご想像のとおりです」
ぐったりしている三左衛門は容赦のない現実を俺に突きつけた。
「既に引き渡しているんですよ。半刻前にね」
幕府の役人に囲まれているのにも関わらず、衝動的に立ち上がる。
周りの人間が殺気立つ中、三左衛門は手を挙げて止めて「重々承知の上です」と応じた。
「引き渡せば亀若丸は死ぬでしょう。しかし、それは致し方ないことです」
「ふざけるなよ!」
ずいっと迫ると二人の役人が俺の腕を掴む。
構わず俺は「お前はそんな冷たい人間だったのか!?」と睨みつける。
「子供を見殺しにするような、外道じゃねえだろ!」
「そうじゃないつもりでした。けれど私はこれから外道に落ちます」
三左衛門の顔はとても冷めていた。
悲しみや憤りを感じられない――感情を殺しているようだ。
「たとえ地獄に落ちるとしても私はやらねばならないのです」
「いったいどういうことだ! 亀若丸は何者なんだ!」
「それは答えられません。あなたも知らないほうがいい」
くるりと後ろを向き、そのまま去ろうとする。
その背中に向かって「待てよ!」と怒鳴った。
「あいつは……徳川家の人間か!? 御三家か御三卿……まさか、将軍家か!?」
役人たちの手が震えた気がした――動揺しているようだった。
三左衛門は振り返ることなく「違います」と否定した。
「ですがこれだけは言っておきます。亀若丸は――古くて高貴な血を引いております」
「……何を言っているんだ?」
困惑する俺の問いには答えずに三左衛門は部屋から出てふすまを閉じた。
俺は役人の手を振り払いその場に座り込んだ。
「ちくしょう、なんだってんだ!」
役人たちはしばらく俺の様子を窺っていたが、動かないと知ると部屋の外へ出ていく。
何がなんだか分からない――
「……迷っている暇はねえな」
刀を掴んで俺は思いっきりふすまを開けた。
そこには三人の役人がいて、急に俺が出てきたものだから面食らったようだ。
「お、おい! どこへ――」
「亀若丸のところだ。邪魔すんなよ」
三人を無視して玄関へ向かう――肩を掴まれた。
「ここにいるんだ! さもないと――」
最後まで言わせなかった。
強く握った拳で――掴んだ役人の顔をぶん殴った。
汚い悲鳴と赤い鼻血を出してひっくり返る。
「この野郎! 何を――」
残りの役人の一人が刀を抜こうとした――鳩尾を下から突きあげるように殴る。
胃液を吐き出しその場にうずくまる役人を見て最後の役人は「何をしたのか、分かっているのか!?」と喚く。
「き、貴様は、幕府に逆らうのか!? これからどういう目に遭うのか分からないのか!?」
「――知るかよ」
俺の返事の途中で役人は刀を抜いた。
構えと震えを見てたいしたことはないなと思い、振り上げた瞬間に相手の刀の柄と手を掴んでやる。そのままねじり上げて刀を取った。
「どんな目に遭おうとな。亀若丸が死にそうなのに動かねえのは間違ってんだ」
呆然とする役人の顔すれすれに刀を突き刺す。
壁に刺さったが、自分が刺されたと思い込んだのか、役人はそのままへたり込んで気絶した。
玄関を出ると役人が十数人固まっていた。
その中心には三左衛門がいた。
「ほらやっぱり。動く人だと思っていましたよ」
「だとすれば備えは不十分だな。俺を止めたければ倍は用意しろ」
すらりと刀を抜いて中段に構える。
役人たちも刀を構えた。
三左衛門は「考え直してもらえませんか?」と俺に訊く。
最後通告だと誰もが分かる口調だった。
「今ならまだ間に合いますよ」
「俺にしてみれば遅いぜ……お前が亀若丸を引き渡すって戯言抜かしたときから、俺ぁ――キレちまったんだからよ!」
十数人も相手にできるほど俺の腕は達者ではない。
それでも戦わなければならないときはある。
亀若丸は罪人でも悪人でもない。
当然、介錯されるような人間でもない。
そんな奴があっさりと殺されるなんて――我慢ならない!
「仕方ありませんね。源八郎さん、あなたは本当にいい友人でした」
先ほどまで感情を殺していた三左衛門の顔が曇った。
悲痛に満ちたものだ――俺を惜しむなら、亀若丸を惜しめ!
「三輪源八郎吉昌、いざ参る!」
役人たちに向かって走り出したとき「源八郎殿!」と俺の名を呼ぶ者がいた。
目をやると、周助と久次郎、そして弟子たちがこちらにやってくる。
各々木刀を携えていて、三十人は超えている――役人の数より多い。
「周助! どうして――」
「……三左衛門殿。見損ないましたよ。亀若丸を死なせる真似をするなんて」
木刀を構えつつ、周助は俯いたままの三左衛門に言う。
「俺は見捨てない。これは剣客としての考えではない。人として捨てておけないんだ」
「いいんですか? これは立派な……一揆ですよ」
「たとえ幕府に逆らうことになっても――あの子を救いたい」
周助は「そうだろう! 源八郎殿!」と俺に呼びかけた。
周りの弟子たちも覚悟を決めている。
今後のことを考えれば百姓たちを退かせたほうがいい。
たった一人の子供を守るために幕府と敵対するなんて割に合わない。
だけど――
「ああ。お前の言うとおりだ……俺だって見捨てられねえ!」
俺と周助たちの覚悟を見たのか、困った表情の三左衛門は「これでは私が悪人ですね」と呟く。
「ならば私は悪人として、幕府に尽くしますよ――皆さん、この者たちを捕縛しなさい!」
三左衛門の命令で全員が動いた。
役人のうち二人が俺に向かってきた。
左右に分かれて様子を窺っている――俺は右側の役人に斬りかかった。
袈裟斬りを放つと役人は刀の峰で止めた。
刀に集中していて周りが見えていないようだ――腹を思いっきり蹴ってやる。
「うぐぼ……!?」
鈍い苦痛の声をあげてくの字に曲がる役人。
俺の背中を斬ろうともう一人の役人が迫る。
見えていたのでその場から離れて躱した――勢い余って刀を地面にまで下ろしてしまった。
その隙を突いて――俺はその役人の顔面を殴った。
全力で殴ったのでその場に倒れ伏す。
そして俺は見た――三左衛門が誰にも守られずに俺と向かい合っているのを。
「どうした三左衛門。逃げないのか?」
「私はここの責任者です。逃げるわけにはいかないでしょう」
「はっ。そのくらいの分別はあるんだな」
じりじりと俺は三左衛門に近づく。
奴はため息をついて――刀を抜いた。
「なんだ。俺と戦うつもりなのか」
「武士にはやらねばならないときがあるんです……敵わなくてもね」
「その気概があるのに……どうして、亀若丸を見捨てたんだ!」
怒りのあまり俺は三左衛門に斬りかかった。
一撃は防いだ三左衛門だったが、俺の二撃目は防げなかった。
わき腹を叩くように俺は峰打ちした。
「うげえ、ええ……」
倒れる寸前、俺は奴の首根っこを掴んで――乱闘している全員に言い聞かせた。
「三左衛門は押さえた! 全員、戦うのをやめろ! でないとこいつを殺す!」
役人たちは迷っていたが、俺の殺気に圧されたのか、全員緩慢な動きで刀を納めた。
三左衛門は「首斬り源八郎さんとは思えませんね……」と苦しげな声で言う。
「私を殺さないんですか?」
「殺したら死人が出るだろ。お前以外のな」
「甘くなりましたね。それは亀若丸と過ごした影響ですか?」
「ふん。好きに言え」
俺は三左衛門に「亀若丸はどこだ?」と問い詰めた。
「どこに隠した?」
「隠していません……もう時すでに遅し、なんですよ」
三左衛門は「どうせ源八郎さんに邪魔されるって分かっていたんです」と韜晦した。
「もしかしたら亀若丸を取り戻されると思っていたのです。それなのにわざわざ亀若丸を引き渡すと言いますか?」
「意味が分からねえ。さっさと――」
そこまで言ったとき、俺は気づいてしまった。
「この野郎……! まさか、既に!」
「ええ。ご想像のとおりです」
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