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悲惨
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「ド、ドウシタノ!? オユキサン! カラダ、ヌレテルヨ!」
ずぶ濡れの姿で帰ってきたお雪を見て、シャーロックは驚いた。
ちょうど絵描きの休息だった。奥の間でぼんやりと絵のことを考えていると、ゆっくりとふすまが開いて――お雪が立っていた。
「…………」
慌てるシャーロックを余所にお雪は黙ったままだった。何の力のない眼で何も無い空間を見ている。感情がないのではなく、全てが虚しいと思っていた。
「……ホントニ、ドウシタノ?」
シャーロックがお雪に近づいて、肩に触ろうとして――
「気安く触らないでよ!」
それは怒声ではない。
明らかな悲鳴だった。
シャーロックは手を止めて、何も言えなくなる。
「私はね、男が嫌いなのよ! 吐き気がするくらいにね! 汚らわしいわ!」
シャーロックは自分に対してだけではない、他の誰かに言っていると感じた。
お雪の過去は知らなくても、その反応は雄弁だった。
「男なんてみんなそう! 欲を満たすだけの、身勝手な生き物だわ!」
まるで子供が玩具を壊されたときのような、あるいは大事な人が眼の前で死んだような、取り返しのつかない悲しみに支配されていた。
「みんないなくなればいい! 男なんて、クズよ!」
そこまで言って、お雪は言葉を切った。
彼女のはあはあと荒い息遣いだけが部屋に響いていた。
「……テヌグイ、モッテクル。オユキサン、ソコニイテ」
シャーロックは隣の部屋に行こうと、お雪のそばを通った。唇を噛み締めて何も言えずにいる彼女を慮っていた。
そして手ぬぐいを渡す。だけどお雪は受け取らなかった。視線は下を向いていた。
「……いらないわよ」
「カゼヒク。ソレハダメ」
「別に良いわよ。それにシャーロックには関係ないじゃない」
「アル。オユキサン、シンパイ」
「はっ。どうせ、食事の用意ができなくなるからでしょ」
「チガウ。オユキサン、カゼヒクト、ワタシ――カナシイ」
飾らない本音を聞いて、お雪はシャーロックと眼を合わす。
碧眼がひたひたと濡れていた。
「ナニガアッタノカ、ワカラナイ。デモ、オユキサン、タイセツナヒト。ワタシダケジャナイ。ジューザブローモ、オナジ」
そこでシャーロックは笑顔になった。
瞳は今にも涙を流しそうだった。
それでも、優しい口調で感謝を伝える。
「ワタシ、オユキサンニアエテ、ヨカッタ。イツモ、アリガトウ」
一年前を思い出したお雪。
ああ、変わらないのね、この子は――
「シャーロック、私話すわ。私の過去を。全部話す」
意を決したお雪だが、身体は震えていた。
濡れているからではない。
不安があった。シャーロックが自分のことを嫌いになるかもしれないと、考えてしまうのだ。
けれども、話さないといけないとも思う。
誤魔化しているつもりはないけど、いつもどこか後ろめたさはあった。
しかし自分が話して楽になりたいという思いもあった。
利己的な気持ちもある。それらが入り混じって話そうと決意した。
「楽しい話じゃないけど、聞いてくれる?」
「ウン。キクヨ」
シャーロックもまた覚悟を決めていた。
だからこそ、すぐに応じられた。
「ワタシ、オユキサンノコト、シリタイ」
◆◇◆◇
「私は吉原遊郭にいた、遊女なのよ」
着替え終えたお雪は静かに語り始めた。
一年間、江戸に暮らしていたシャーロックは吉原のことを知っていた。そして遊女がどんな存在かということも。
確かに衝撃はあった。
それでも過去を厭う気持ちが、お雪の中にあることも分かってしまった。
だからシャーロックは「ソウ……」としか言えない。
「あなたは知らないけど、天明のときに酷い飢饉があってね。私は口減らしのために売られたのよ。ま、結局は親も兄弟も飢えて死んだけど。後で知ったときは……何も思わなかったわ」
シャーロックと同じ天涯孤独だけれど、まるっきり違っていた。もしも巡り合わせが良ければ、お雪は今も家族と一緒に暮らしていただろう。でもそうならなかった。
「吉原で私は座敷持になった。花魁のように華麗ではないけど、客は取らされた。はっきり言えば――身体を売るのは嫌だった」
お雪は自らの身体を抱きしめた。
がくがくと震えている。それを収めようと力を強くする。
シャーロックは心配だったけど、お雪の言葉を待った。
「一人相手するたびに、私の何か大切なものが失っていく。良い客でも酷い客でも同じ。男は私から奪っていく」
シャーロックは黙って聞いていた。
けれど握った拳から血が滲んでいる。
「ある時、私は病になって、子を産めない身体になった。客の相手もできなくなった。店の女主人から罵倒されたのは、今でも覚えているわ」
『役立たず! もうあんたは一生、クズのままだよ!』
子を産めなくなった女にかける言葉ではなかった。お雪が望んでいたのは優しい言葉だった。だけど、彼女の生きていたところでは当たり前の言葉だった。
「義父上と出会ったのは、全てを失って吉原から逃げ出そうと決意した日だった。番人に捕まって折檻を受ける寸前で、あの人は助けてくれた。しかも身請けして養女にしてくれた……感謝しても足りないくらいの恩を受けたわ」
それがお雪の人生の転機だった。
優しい義父と出会えたことは幸福だった。
けれども、過去は消えなかった。
まとわりつく羽虫のようだった。
「私は子を成せない。だから義父上のためにしてあげられることは何もないわ。でもね、そんな私を義父上は優しくしてくれた。ご飯を食べさせて、暖かい寝床までくれた。シャーロック、あなたの世話をするようにと言われたときは戸惑ったけど、義父上のためならなんでもやろうって思っていたの」
お雪の表情が優しくなった。
シャーロックが好ましく思っている顔だった。
しかし今は痛々しく感じる。
「だけどね……まさか、あなたにまで情が湧くとは思わなかった。どうしてでしょうね。男が嫌いなはずなのに……不思議よね……」
「ソレハ、オユキサンガ、ヤサシイカラ」
それは小さな呟きだった。
シャーロックも聞かせるつもりはなかった。
お雪は「そんなことないわ」と視線を逸らした。
「私は汚れた女。心まで男に奪われた、哀れな女よ」
シャーロックは――悩んだ。
眼の前にいる大切な人をどうやって救えばいいのか。
自分のことを哀れだと思う彼女をどうやって慰めればいいのか。
悩んで悩んで悩んだ挙句。
彼が導いた答えは――
「ワタシ、モウイチド、オユキサン、カクヨ」
シャーロックにできることは絵を描くことだけだった。
それしか彼はできなかった。
それしか彼女を救えなかった。
それしか彼らはつながれなかった。
「描いてどうするの? そんなんじゃ、私の過去は――」
「ワタシ、カクノ、カコジャナイ。イマ。イマヲカク」
過去は絶対に変えられない。
ならば今を描くことで、大切な何かを伝えられるはずだとシャーロックは考えた。
「ウバワレタモノ、トリモドス。ワタシ、ガンバル」
「……いいわ。描いてちょうだい」
お雪は既に諦めていた。
どうしようもないほど――閉ざしていた。
それでもなお、シャーロックに描いてもらうのは、どこか期待しているのかもしれない。
何かがどうにかなりそうな、そんな希望を待っているのかもしれない。
シャーロックは描き始めた。
確かにお雪の人生は悲惨そのものだ。
だけど、最悪じゃない。
もしかすると、絵を描いても救われないかもしれない。
それでも、無駄じゃない。
今までは不幸だった。それは認めよう。
しかし、お雪が幸せになっちゃあいけないなんてことはない。
そんな思いでシャーロックは筆を走らせた――
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ちょうど絵描きの休息だった。奥の間でぼんやりと絵のことを考えていると、ゆっくりとふすまが開いて――お雪が立っていた。
「…………」
慌てるシャーロックを余所にお雪は黙ったままだった。何の力のない眼で何も無い空間を見ている。感情がないのではなく、全てが虚しいと思っていた。
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それは怒声ではない。
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シャーロックは手を止めて、何も言えなくなる。
「私はね、男が嫌いなのよ! 吐き気がするくらいにね! 汚らわしいわ!」
シャーロックは自分に対してだけではない、他の誰かに言っていると感じた。
お雪の過去は知らなくても、その反応は雄弁だった。
「男なんてみんなそう! 欲を満たすだけの、身勝手な生き物だわ!」
まるで子供が玩具を壊されたときのような、あるいは大事な人が眼の前で死んだような、取り返しのつかない悲しみに支配されていた。
「みんないなくなればいい! 男なんて、クズよ!」
そこまで言って、お雪は言葉を切った。
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「……テヌグイ、モッテクル。オユキサン、ソコニイテ」
シャーロックは隣の部屋に行こうと、お雪のそばを通った。唇を噛み締めて何も言えずにいる彼女を慮っていた。
そして手ぬぐいを渡す。だけどお雪は受け取らなかった。視線は下を向いていた。
「……いらないわよ」
「カゼヒク。ソレハダメ」
「別に良いわよ。それにシャーロックには関係ないじゃない」
「アル。オユキサン、シンパイ」
「はっ。どうせ、食事の用意ができなくなるからでしょ」
「チガウ。オユキサン、カゼヒクト、ワタシ――カナシイ」
飾らない本音を聞いて、お雪はシャーロックと眼を合わす。
碧眼がひたひたと濡れていた。
「ナニガアッタノカ、ワカラナイ。デモ、オユキサン、タイセツナヒト。ワタシダケジャナイ。ジューザブローモ、オナジ」
そこでシャーロックは笑顔になった。
瞳は今にも涙を流しそうだった。
それでも、優しい口調で感謝を伝える。
「ワタシ、オユキサンニアエテ、ヨカッタ。イツモ、アリガトウ」
一年前を思い出したお雪。
ああ、変わらないのね、この子は――
「シャーロック、私話すわ。私の過去を。全部話す」
意を決したお雪だが、身体は震えていた。
濡れているからではない。
不安があった。シャーロックが自分のことを嫌いになるかもしれないと、考えてしまうのだ。
けれども、話さないといけないとも思う。
誤魔化しているつもりはないけど、いつもどこか後ろめたさはあった。
しかし自分が話して楽になりたいという思いもあった。
利己的な気持ちもある。それらが入り混じって話そうと決意した。
「楽しい話じゃないけど、聞いてくれる?」
「ウン。キクヨ」
シャーロックもまた覚悟を決めていた。
だからこそ、すぐに応じられた。
「ワタシ、オユキサンノコト、シリタイ」
◆◇◆◇
「私は吉原遊郭にいた、遊女なのよ」
着替え終えたお雪は静かに語り始めた。
一年間、江戸に暮らしていたシャーロックは吉原のことを知っていた。そして遊女がどんな存在かということも。
確かに衝撃はあった。
それでも過去を厭う気持ちが、お雪の中にあることも分かってしまった。
だからシャーロックは「ソウ……」としか言えない。
「あなたは知らないけど、天明のときに酷い飢饉があってね。私は口減らしのために売られたのよ。ま、結局は親も兄弟も飢えて死んだけど。後で知ったときは……何も思わなかったわ」
シャーロックと同じ天涯孤独だけれど、まるっきり違っていた。もしも巡り合わせが良ければ、お雪は今も家族と一緒に暮らしていただろう。でもそうならなかった。
「吉原で私は座敷持になった。花魁のように華麗ではないけど、客は取らされた。はっきり言えば――身体を売るのは嫌だった」
お雪は自らの身体を抱きしめた。
がくがくと震えている。それを収めようと力を強くする。
シャーロックは心配だったけど、お雪の言葉を待った。
「一人相手するたびに、私の何か大切なものが失っていく。良い客でも酷い客でも同じ。男は私から奪っていく」
シャーロックは黙って聞いていた。
けれど握った拳から血が滲んでいる。
「ある時、私は病になって、子を産めない身体になった。客の相手もできなくなった。店の女主人から罵倒されたのは、今でも覚えているわ」
『役立たず! もうあんたは一生、クズのままだよ!』
子を産めなくなった女にかける言葉ではなかった。お雪が望んでいたのは優しい言葉だった。だけど、彼女の生きていたところでは当たり前の言葉だった。
「義父上と出会ったのは、全てを失って吉原から逃げ出そうと決意した日だった。番人に捕まって折檻を受ける寸前で、あの人は助けてくれた。しかも身請けして養女にしてくれた……感謝しても足りないくらいの恩を受けたわ」
それがお雪の人生の転機だった。
優しい義父と出会えたことは幸福だった。
けれども、過去は消えなかった。
まとわりつく羽虫のようだった。
「私は子を成せない。だから義父上のためにしてあげられることは何もないわ。でもね、そんな私を義父上は優しくしてくれた。ご飯を食べさせて、暖かい寝床までくれた。シャーロック、あなたの世話をするようにと言われたときは戸惑ったけど、義父上のためならなんでもやろうって思っていたの」
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しかし今は痛々しく感じる。
「だけどね……まさか、あなたにまで情が湧くとは思わなかった。どうしてでしょうね。男が嫌いなはずなのに……不思議よね……」
「ソレハ、オユキサンガ、ヤサシイカラ」
それは小さな呟きだった。
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シャーロックは――悩んだ。
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悩んで悩んで悩んだ挙句。
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「ワタシ、モウイチド、オユキサン、カクヨ」
シャーロックにできることは絵を描くことだけだった。
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それしか彼らはつながれなかった。
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過去は絶対に変えられない。
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どうしようもないほど――閉ざしていた。
それでもなお、シャーロックに描いてもらうのは、どこか期待しているのかもしれない。
何かがどうにかなりそうな、そんな希望を待っているのかもしれない。
シャーロックは描き始めた。
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だけど、最悪じゃない。
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