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商談
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重三郎の版元としての仕事がにわかに忙しくなった。
人気の歌舞伎役者が大舞台を演るようで、その顔を描いた絵、つまりは役者絵の需要が高まったのが原因だ。彼にしてみれば嬉しい悲鳴である。
あの日以来、勇助はシャーロックの話を持ち出さなかった。繁盛期だからか、黙々と働いている。重三郎もまた寝る間も惜しんで働いていたので、勇助のことに気が回らなかった。分かってくれたとばかり考えていた。
シャーロックとお雪の関係も良好で、過去を知っても態度や様子が同じままなのは悪くない状態と言えよう。こちらも解決してくれて良かったと重三郎は仕事に忙殺されながらも感じていた。
またその間も東洲斎写楽の作品は次々と発表されていた。題材となった役者たちには不評ではあるものの、買う者は少しずつだが増えてきている。認められつつあるとも言えた。しかし爆発的な人気は取れていない。やはり誇張の絵は主流ではなく亜流であるのは致し方ないのだろう。
そうして傍目には何事もない毎日が過ぎていく。シャーロックも重三郎も、このまま穏やかな日々のまま暮らしていければいいと思っていた――
「いやあ。素晴らしい絵ですね。すっかり私は東洲斎写楽の熱狂的な蒐集者になってしまいましたな」
師走の初めの頃である。
写楽の絵を絶賛しているのは紀伊藩の御用商人である、三井八郎右衛門高祐だ。今回もまた多くの絵を購入した。
「ありがとうございます。写楽の絵をここまで高く評価していただけるのは、手前共としましても格別の喜びと存じます」
すっかり蔦屋のお得意様になっている三井に対して、重三郎は礼を尽くして対応する。仕事が溜まって忙しいことには変わりないが、店の主が相手をしなければ失礼にあたる。それこそ三井は格別の商人なのだ。
「私こそ写楽の絵と引き合わせてくれて嬉しいですよ。商売だけが楽しいはずの私の心を掴んで離さない。見事なものです」
そう語る三井の視線の先に写楽の絵があった。初期と比べて洗練されている――誇張も上手く取り入れられている。しかし特徴をことさら強調する画風は世間に好まれていないのが現状だ。
重三郎はこれでいいと思っている。
江戸の町人たちにも知られるようになった。注目も少なからず集めている。そして未だ誰も真似していない。それこそが芸術を広める一歩だと彼は確信している。
世間に認められることは素晴らしい。けれども、認められるために迎合するのは本末転倒だ。傑作となるには作者の個性が光ってこそ、文字通り輝くのである。
東洲斎写楽の芸術を解する者は少なくていい。いつの日か、必ず花開くときがくる。そのために重三郎は売り込んでいるのだ。
「三井様がそのようにお思いになられるとは。写楽も喜ぶでしょう」
「ふふふ。実はもっと喜ぶことを思案しております」
三井はゆっくりと重三郎に近づき「二人だけで話せませんか?」と囁く。
写楽に個人的な絵の制作でも頼むのだろうかと思った重三郎は「ええ、構いませぬ」と二つ返事で引き受けた。
「手前の店にある、仕事部屋でしたら聞かれることはありません」
「いえ、時間があるのなら――招待させていただきたい」
微笑んでいるが、相変わらず眼の奥は笑っていないなと重三郎は「招待ですか?」と慎重に訊ねる。
「蔦屋さんのことを信用していないわけではありませんが、内容なだけに誰にも聞かれたくないのですよ」
「左様ですか……ではお言葉に甘えさせていただきます」
「ありがとうございます。いつお手すきになりますか?」
「暮れ六つの後ならば」
「それでは迎えを用意しておきます」
三井は「後ほど会いましょう」と言い残し、使用人たちと共に去っていった。
重三郎は何の話か分からないが、良い話であることを祈りつつ、仕事に戻った。
◆◇◆◇
用意された駕籠に乗って、重三郎が招待されたのは――屋形船だった。
倹約令であまり奢侈で大きなものは作れなくなっているが、その範囲内で豪華さを保っている、計算された外装をしている。流石に三井八郎右衛門の名は伊達じゃないなと重三郎は船に乗り込みながら思った。
内装も役人に調べられても詮議を受けない程度になっている。その中で大きな長机が置かれていて、眼からも美味しさが分かる山海珍味が揃っていた。そこで三井は座って料理に手を付けずに重三郎を待っていた。
「蔦屋さん。まずはお座りください。食事を楽しもうじゃありませんか」
「これはこれは。ご丁寧なおもてなし、感謝いたします」
重三郎が席に座ると船が動き出した。
ゆったりとした速度は乗客に不快感を与えないようにと配慮されている。
二人は節度を弁えつつ、料理と酒を楽しんだ。
「大切な話は船の上でやるものだと、父から教わりましてね。ま、陸より聞き耳を立てられることはないですからな」
「ふむ。大事な話というのは商談も含まれますか?」
「もちろんです。しかし、今日は商談のために用意した場ではありません」
重三郎は冷酒を飲もうとした手を止めた。
杯を置いて「それではどんな話でしょうか?」と促した。
「蔦屋さんはご存じでしょうか、私の祖父、三井八郎右衛門高美のことを」
「すみません。世情に疎いもので……」
「いえ。もしかしたら存じ上げていると思っただけで、普通はよく知らないでしょう。何せ昔の話ですから」
三井は「祖父の高美は二代前の当主でした」と言う。
「しかし浪費癖が酷くて、芸術品の蒐集などで散財したのです。それは三井家が傾く寸前までだったそうです。結果として一族から追放されてしまい、義絶までさせられました」
「はあ、それはまた……」
重三郎が招かれたことと関係なさそうだった――しかし意外なところでつながることになる。
「その祖父の蒐集品が三年前に見つかりましてね。かなり膨大で鑑定がなかなか進まなかったのですが、ようやく先月に全て終わりました。ま、ほとんどは贋作だったようで、真偽を見極める目はなかったようです」
「…………」
「その中の本物を整理していくうちに、売り物にならないが価値のあるものが多数出てきました。売れはしないものの処分が難しい。厄介なものばかりですが、前々から考えていたことが私にはありましてね」
重三郎は「それは、なんでしょうか?」と相槌を打った。
三井は「私は芸術が好きです」と言う。
「けれども、昔の絵師の作品は好みません。手に入れても売るだけです。私が欲しいのは、今を生きる絵師の生きた証、魂を感じる作品です」
「とてもよく分かります」
「蔦屋さんなら分かってくれると思いました」
三井は咳払いをして――自身の考えを述べた。
「祖父が残した蒐集品を賞品とし、絵比べを行ないたいと思っております」
「――絵比べ、ですか?」
「とは言っても、これは公の催しではありません。あくまでも私的なことです」
重三郎はここに至って、自分が招待された意味を悟った。
「つきましては、写楽殿にも参加していただきたい」
「三井様がそうお望みなのは分かります。写楽の絵を気に入ってくださるのですから。しかし、写楽は人前には……」
「作品を提出していただければ構いませんよ」
三井は「私のために描いてくださる。その気持ちが欲しいのです」と続けた。
「ま、絵比べと言っても欲しい賞品が被らなければ勝負の場とは致しません。己の欲しいもののために描く絵は、必ず素晴らしいものとなるでしょう」
「……流石に豪商の三井様は考えることが凄まじいですな」
慄く重三郎に「こちらが賞品の目録となります」と紙を差し出した。
丁重に受け取り、重三郎は目を走らせる――止まった。
「こ、これは!?」
「いかがしましたか? 気になるものでもありましたか?」
重三郎が驚愕したのは目録の賞品に、シャーロックが江戸に来てまで手に入れたいものがあったからだ。
『キリシタン一揆で使われた軍旗』
そう。天草四郎の旗だった――
人気の歌舞伎役者が大舞台を演るようで、その顔を描いた絵、つまりは役者絵の需要が高まったのが原因だ。彼にしてみれば嬉しい悲鳴である。
あの日以来、勇助はシャーロックの話を持ち出さなかった。繁盛期だからか、黙々と働いている。重三郎もまた寝る間も惜しんで働いていたので、勇助のことに気が回らなかった。分かってくれたとばかり考えていた。
シャーロックとお雪の関係も良好で、過去を知っても態度や様子が同じままなのは悪くない状態と言えよう。こちらも解決してくれて良かったと重三郎は仕事に忙殺されながらも感じていた。
またその間も東洲斎写楽の作品は次々と発表されていた。題材となった役者たちには不評ではあるものの、買う者は少しずつだが増えてきている。認められつつあるとも言えた。しかし爆発的な人気は取れていない。やはり誇張の絵は主流ではなく亜流であるのは致し方ないのだろう。
そうして傍目には何事もない毎日が過ぎていく。シャーロックも重三郎も、このまま穏やかな日々のまま暮らしていければいいと思っていた――
「いやあ。素晴らしい絵ですね。すっかり私は東洲斎写楽の熱狂的な蒐集者になってしまいましたな」
師走の初めの頃である。
写楽の絵を絶賛しているのは紀伊藩の御用商人である、三井八郎右衛門高祐だ。今回もまた多くの絵を購入した。
「ありがとうございます。写楽の絵をここまで高く評価していただけるのは、手前共としましても格別の喜びと存じます」
すっかり蔦屋のお得意様になっている三井に対して、重三郎は礼を尽くして対応する。仕事が溜まって忙しいことには変わりないが、店の主が相手をしなければ失礼にあたる。それこそ三井は格別の商人なのだ。
「私こそ写楽の絵と引き合わせてくれて嬉しいですよ。商売だけが楽しいはずの私の心を掴んで離さない。見事なものです」
そう語る三井の視線の先に写楽の絵があった。初期と比べて洗練されている――誇張も上手く取り入れられている。しかし特徴をことさら強調する画風は世間に好まれていないのが現状だ。
重三郎はこれでいいと思っている。
江戸の町人たちにも知られるようになった。注目も少なからず集めている。そして未だ誰も真似していない。それこそが芸術を広める一歩だと彼は確信している。
世間に認められることは素晴らしい。けれども、認められるために迎合するのは本末転倒だ。傑作となるには作者の個性が光ってこそ、文字通り輝くのである。
東洲斎写楽の芸術を解する者は少なくていい。いつの日か、必ず花開くときがくる。そのために重三郎は売り込んでいるのだ。
「三井様がそのようにお思いになられるとは。写楽も喜ぶでしょう」
「ふふふ。実はもっと喜ぶことを思案しております」
三井はゆっくりと重三郎に近づき「二人だけで話せませんか?」と囁く。
写楽に個人的な絵の制作でも頼むのだろうかと思った重三郎は「ええ、構いませぬ」と二つ返事で引き受けた。
「手前の店にある、仕事部屋でしたら聞かれることはありません」
「いえ、時間があるのなら――招待させていただきたい」
微笑んでいるが、相変わらず眼の奥は笑っていないなと重三郎は「招待ですか?」と慎重に訊ねる。
「蔦屋さんのことを信用していないわけではありませんが、内容なだけに誰にも聞かれたくないのですよ」
「左様ですか……ではお言葉に甘えさせていただきます」
「ありがとうございます。いつお手すきになりますか?」
「暮れ六つの後ならば」
「それでは迎えを用意しておきます」
三井は「後ほど会いましょう」と言い残し、使用人たちと共に去っていった。
重三郎は何の話か分からないが、良い話であることを祈りつつ、仕事に戻った。
◆◇◆◇
用意された駕籠に乗って、重三郎が招待されたのは――屋形船だった。
倹約令であまり奢侈で大きなものは作れなくなっているが、その範囲内で豪華さを保っている、計算された外装をしている。流石に三井八郎右衛門の名は伊達じゃないなと重三郎は船に乗り込みながら思った。
内装も役人に調べられても詮議を受けない程度になっている。その中で大きな長机が置かれていて、眼からも美味しさが分かる山海珍味が揃っていた。そこで三井は座って料理に手を付けずに重三郎を待っていた。
「蔦屋さん。まずはお座りください。食事を楽しもうじゃありませんか」
「これはこれは。ご丁寧なおもてなし、感謝いたします」
重三郎が席に座ると船が動き出した。
ゆったりとした速度は乗客に不快感を与えないようにと配慮されている。
二人は節度を弁えつつ、料理と酒を楽しんだ。
「大切な話は船の上でやるものだと、父から教わりましてね。ま、陸より聞き耳を立てられることはないですからな」
「ふむ。大事な話というのは商談も含まれますか?」
「もちろんです。しかし、今日は商談のために用意した場ではありません」
重三郎は冷酒を飲もうとした手を止めた。
杯を置いて「それではどんな話でしょうか?」と促した。
「蔦屋さんはご存じでしょうか、私の祖父、三井八郎右衛門高美のことを」
「すみません。世情に疎いもので……」
「いえ。もしかしたら存じ上げていると思っただけで、普通はよく知らないでしょう。何せ昔の話ですから」
三井は「祖父の高美は二代前の当主でした」と言う。
「しかし浪費癖が酷くて、芸術品の蒐集などで散財したのです。それは三井家が傾く寸前までだったそうです。結果として一族から追放されてしまい、義絶までさせられました」
「はあ、それはまた……」
重三郎が招かれたことと関係なさそうだった――しかし意外なところでつながることになる。
「その祖父の蒐集品が三年前に見つかりましてね。かなり膨大で鑑定がなかなか進まなかったのですが、ようやく先月に全て終わりました。ま、ほとんどは贋作だったようで、真偽を見極める目はなかったようです」
「…………」
「その中の本物を整理していくうちに、売り物にならないが価値のあるものが多数出てきました。売れはしないものの処分が難しい。厄介なものばかりですが、前々から考えていたことが私にはありましてね」
重三郎は「それは、なんでしょうか?」と相槌を打った。
三井は「私は芸術が好きです」と言う。
「けれども、昔の絵師の作品は好みません。手に入れても売るだけです。私が欲しいのは、今を生きる絵師の生きた証、魂を感じる作品です」
「とてもよく分かります」
「蔦屋さんなら分かってくれると思いました」
三井は咳払いをして――自身の考えを述べた。
「祖父が残した蒐集品を賞品とし、絵比べを行ないたいと思っております」
「――絵比べ、ですか?」
「とは言っても、これは公の催しではありません。あくまでも私的なことです」
重三郎はここに至って、自分が招待された意味を悟った。
「つきましては、写楽殿にも参加していただきたい」
「三井様がそうお望みなのは分かります。写楽の絵を気に入ってくださるのですから。しかし、写楽は人前には……」
「作品を提出していただければ構いませんよ」
三井は「私のために描いてくださる。その気持ちが欲しいのです」と続けた。
「ま、絵比べと言っても欲しい賞品が被らなければ勝負の場とは致しません。己の欲しいもののために描く絵は、必ず素晴らしいものとなるでしょう」
「……流石に豪商の三井様は考えることが凄まじいですな」
慄く重三郎に「こちらが賞品の目録となります」と紙を差し出した。
丁重に受け取り、重三郎は目を走らせる――止まった。
「こ、これは!?」
「いかがしましたか? 気になるものでもありましたか?」
重三郎が驚愕したのは目録の賞品に、シャーロックが江戸に来てまで手に入れたいものがあったからだ。
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