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伝説の帰還
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ラットがサウス地方の将軍のお膝元、つまりサウス最大の城下町であるメニシンシティに到着したのは、エンドタウンを出て二十日後の昼頃のことだった。馬を使えば十日前後で着く。しかしここまで時間がかかったのは、地方の境目にある関所を突破するのに時間を要したからだ。
いや、突破というより密入国と言うべきだろう。ラットは正式な方法ではサウスに入れない身だった。だから違法な手段を用いるしかなく、もしも将軍直属の役人に見つかれば極刑は免れない。かなりの危ない橋を渡っているのだが、ラットがサウスに戻ろうと決意した時点で、ある意味些細なことなのかもしれない。何故なら、将軍候補の大名、オウル・アクスを殺そうとしているのだから。
メニシンシティの入り口に立ったとき、ラットは郷愁の念に駆られた。かつてこの街で生きていた記憶が甦りそうになる。つらくも楽しかった記憶が――ラットの頭を巡る。
「……未練があるってことか。まあそうだろうな」
呟いて街に入る彼の表情は暗いものだった。懐かしんだ己の女々しさに呆れているわけではない。未だに過去を受け入れられない覚悟の無さを嘆いていたのだ。
メニシンシティは将軍のお膝元だ。セントラル以外の将軍は従属大名たち――直属の大名家のことだ――を自分の城下町に住まわせている。従属大名たちは各々の領地を小大名や家老に任せて、通常は将軍の政策の補佐をする。また従属大名たちは領地の税を将軍に上納し、その力を高める責務がある。一見、従属大名たちに何のメリットもないように見えるが、将軍の下で地位を高めることでそれぞれの格を上げ、自分の配下である小大名を増やす権利を得ることができる。そしていずれは将軍にもなれる可能性がある。
小大名は家老以下の武士が大名から領地を下賜され、創設することができる。そう聞けば小大名を作ることは大名の領地を減らすことに思えるが、実際は独立勢力ではない。言うなれば代わりに領地の経営をする便利屋のようなものだ。これもまた小大名にとっては何のメリットもないように思えるが、自分の親組織である従属大名が将軍になれば、自らもまた従属大名に格上げされる。
このシステムを作り上げたのは、約二百年前に日の本と呼ばれる異世界からやってきた武士たちである。彼らは総勢二千八百五十人いたとされ、当時戦乱状態だったアルカディア大陸を瞬く間に統一した。その後、武士という身分を作り、武家文化を広めた。だが風習までは変えられず、人々の名前などは以前のままである。
だからラットがオウルを探すため、メニシンシティに来たのは当然のことだった。将軍が死んだ時期に自分の領地には帰らない。野心があればメニシンシティで政治工作をしているはずだ。推測だが『自分の知っているオウル』であるならば慎重を期して、その行動を取っていると彼は考えた。
街並みは以前、ラットが暮らしていたときと比べて、だいぶ変わってしまった。知らない店。見知らぬ人。自分がいなかった間、街の時間も動いていたのだと改めて彼は思った。だとするのなら、馴染みの店や情報屋は使えないなと舗装された道を歩きながら、誰か知り合いがいないか探していた。
そのとき、ラットは自分が見られている感覚を覚えた。敢えて視線を探すことなく、彼はごく自然に誰もいない裏通りを目指す。予想外だったが、知り合いかあるいは彼を恨んでいる者であれば話を聞かせてもらうか、強引に聞き出すかできるかもしれない。
人気のない建物と建物の間にある広場でラットは立ち止まった。視線はまだ存在している。
「そろそろ出てきたらどうだ? それとも、恥ずかしがり屋なのか?」
静かだがよく通る声で、視線の主に問いかけるラット。
「恥ずかしがり屋ではありませんよ。ただの――恥知らずです」
そう言って出てきたのは、一人の男だった。年齢は二十代後半。洒落た商人が好んで着るような紺色の和服で、肩まで長く伸ばした髪、煙草を機嫌よく銜えて吹かしている。武器は持っていないことをアピールしているのか、両手を挙げている。
ラットはその男が一瞬誰だか分からなかったが、人懐っこい笑みでようやく思い出せた。
「お前……ダニエルか? スパード家の?」
「お久しぶりです――兄貴」
ダニエルと呼ばれた男は煙草を捨て、深く頭を下げた。
ラットは「兄貴はよせ」と首を振る。そんな資格は自分にはないと言わんばかりだった。
「俺はラットだ。それ以外の名はない」
「ラット、ですか……ではラットさんと呼ばせてもらいますよ」
ダニエルはラットに数歩近づいた。警戒するかしないかの距離だった。そういえば剣客のように人との距離感が得意だったなとラットは思い出す。もっとも、彼の知るダニエルの腕前はたいした事なかったが。
「いつここにお戻りで?」
「さっきだ。しかしまさかいきなりお前と出会うとは思わなかった」
「俺もですよ。追放されたはずのラットさんを見かけたとき、目を疑いましたよ」
ダニエルは笑って、それからすぐに真面目な顔になった。真剣な話をするためだろう。
「この時期にラットさんが戻ってきたってことは、期待していいんですね?」
「……期待だと? 何のことだ?」
「とぼけないでくださいよ。あなたは――オウルの兄貴を殺すつもりでしょう?」
実を言えば、ラットはオウルを殺すかどうか、決めかねていた。かつての『親友』の悪い噂はエンドタウンまで届いていた――いや轟いていた。しかしあの武士の中の武士であるオウルが噂どおりの男に成り果てていたとは思えなかった。それを判断するために、まずは会いに来たというのが正しい。
「……オウルを殺す? 期待している? 最初から理由を話せよ」
「ありゃ? てっきり俺はオウルの兄貴を止めるためにやってきたんだと……」
「知ってのとおり、俺はサウスから追放された身なんでな。詳しい話が聞きたい」
ダニエルは少しの沈黙の後、表情一つ変えずに訊ねた。
「詳しい話を話す前に、こっちから一つだけ、確認させてください」
「なんだ? 言ってみろ」
「ラットさんは――オウルの兄貴に味方するために、戻ってきたんじゃないんですよね?」
ラットはどこか不安そうなダニエルの顔を見ながら「それはない」と答えた。
「昔のあいつになら、手を貸しても良い。だが噂どおりの男に成り下がったなら、味方なんてできねえよ」
「……兄貴――おっと失礼。ラットさんは変わらないな」
ダニエルは心底安心したように、表情を和らげた。心の中では、もしオウルに味方すると断言したら刺し違えても殺そうと決意していた。ラットとオウルが手を組めば、誰一人対抗できないからだ。
「安心しましたよ。変わらないあなたが戻ってきてくれたことに」
「俺は変わったよ、ダニエル」
ラットはダニエルから視線を外し、空を見上げた。よく空を見る癖があるのをダニエルは知っていたので、何も言わない。
「人が好まない汚い仕事をして生きてきた。武士の誇りなんて、もう失くしちまった」
「…………」
「それよりなんだその格好は。商人みたいじゃないか」
ラットは再び視線を戻す。ダニエルははにかみながら「実は俺、商人の娘と婚約したんですよ」と告げた。
「婿養子ってやつです。あはは、似合わないですかね」
「意外だな。武士に憧れていたお前がどうして……」
「恨み言を言うつもりじゃないですけどね。ラットさんのせいでもありますよ」
それを聞いたラットは理解して「悪かったな」と詫びた。ダニエルは手を振りながら「いいんですよ」と笑った。
「元々、向いていなかったんです。武士になろうとしたのは、ラットさんとオウルの兄貴に憧れていただけですから」
「……トライアド家と実家はよく許可してくれたな」
トライアド家はダニエルが仕えていた従属大名である。かなり力のある大名家であり、小大名の数も多い。
「実家とは縁を切りました。俺が望んだことですけど。トライアド家は……もうありません」
「ありません? どういうことだ?」
飲み込めなかった答えにダニエルは「本当に、何も知らないんですね」とまるで記憶喪失の患者を相手するように、過去の出来事を述べた。
「トライアド家は滅びました。断絶したんです」
「……まさか。そんな馬鹿な」
「そんな馬鹿なことが現実に起こったんですよ。もう二年前のことです」
二年前と聞いて、ラットはオウルのアクス家が小大名から従属大名に昇格した時期だと気づいた。情報屋にはそれ以上聞かなかったが、あのとき詳しく聞けば良かったと後悔する。
「なんで、そんなことが……」
「原因は三つあります。一つは、ラットさんという存在がいなくなったこと。二つ目はオウルの兄貴が内側から崩し始めたこと。三つ目は当主のリース・トライアド様が隠居なさったこと」
「お屋形様が、隠居?」
「……あまり言いたくないですけど、大名殺しの事件の責任をとってのことです」
数年前に起きた事件のせいで、様々な人間の人生が狂い始めた。
それはラットも例外ではないのだが……
「そうですね……詳しい話は、俺の店でしましょう。ついて来てください」
「いいのか? 俺を匿ったら、どうなるか――」
「あなたはラットさんです。そうでしょう?」
ダニエルは昔と同じような屈託ない、幼い笑みでラットに微笑みかけた。
「武士をやめた恥知らずですけど、ラットさんへの恩を忘れた恩知らずではありませんから」
ラットがダニエルの厚意に応じて店に移動するのを見て、今まで気配を消していた男は主に報告するため、その場を後にした。
男はたまたまラットとダニエルの密会を見つけたのだ。男に与えられていた任務は街で不審な者を見つけたら主に報告することだった。ピンポイントでラットを見張っていたわけではない。男にとって偶然であり、ラットとダニエルにとっては不運だった。
男は警戒網の一人であり、情報源の一人であり、主の手足の一人であった。そしてかつて武士が異世界にやってきた際、偶発的にできた組織の一員であった。だから、ラットとダニエルは視線や気配を感じなかったのだ。
ダニエルの視線に気づくほどの鋭敏な感覚を持つラットと周りを注意深く警戒していたダニエルの二人に気づかれないほどの諜報のスペシャリスト――男は『忍び』の一員で、主である忍びの頭領に報告するため足音を鳴らさずに素早く駆け出した。
伝説の帰還。その報告はメニシンシティを震撼させることになる――
いや、突破というより密入国と言うべきだろう。ラットは正式な方法ではサウスに入れない身だった。だから違法な手段を用いるしかなく、もしも将軍直属の役人に見つかれば極刑は免れない。かなりの危ない橋を渡っているのだが、ラットがサウスに戻ろうと決意した時点で、ある意味些細なことなのかもしれない。何故なら、将軍候補の大名、オウル・アクスを殺そうとしているのだから。
メニシンシティの入り口に立ったとき、ラットは郷愁の念に駆られた。かつてこの街で生きていた記憶が甦りそうになる。つらくも楽しかった記憶が――ラットの頭を巡る。
「……未練があるってことか。まあそうだろうな」
呟いて街に入る彼の表情は暗いものだった。懐かしんだ己の女々しさに呆れているわけではない。未だに過去を受け入れられない覚悟の無さを嘆いていたのだ。
メニシンシティは将軍のお膝元だ。セントラル以外の将軍は従属大名たち――直属の大名家のことだ――を自分の城下町に住まわせている。従属大名たちは各々の領地を小大名や家老に任せて、通常は将軍の政策の補佐をする。また従属大名たちは領地の税を将軍に上納し、その力を高める責務がある。一見、従属大名たちに何のメリットもないように見えるが、将軍の下で地位を高めることでそれぞれの格を上げ、自分の配下である小大名を増やす権利を得ることができる。そしていずれは将軍にもなれる可能性がある。
小大名は家老以下の武士が大名から領地を下賜され、創設することができる。そう聞けば小大名を作ることは大名の領地を減らすことに思えるが、実際は独立勢力ではない。言うなれば代わりに領地の経営をする便利屋のようなものだ。これもまた小大名にとっては何のメリットもないように思えるが、自分の親組織である従属大名が将軍になれば、自らもまた従属大名に格上げされる。
このシステムを作り上げたのは、約二百年前に日の本と呼ばれる異世界からやってきた武士たちである。彼らは総勢二千八百五十人いたとされ、当時戦乱状態だったアルカディア大陸を瞬く間に統一した。その後、武士という身分を作り、武家文化を広めた。だが風習までは変えられず、人々の名前などは以前のままである。
だからラットがオウルを探すため、メニシンシティに来たのは当然のことだった。将軍が死んだ時期に自分の領地には帰らない。野心があればメニシンシティで政治工作をしているはずだ。推測だが『自分の知っているオウル』であるならば慎重を期して、その行動を取っていると彼は考えた。
街並みは以前、ラットが暮らしていたときと比べて、だいぶ変わってしまった。知らない店。見知らぬ人。自分がいなかった間、街の時間も動いていたのだと改めて彼は思った。だとするのなら、馴染みの店や情報屋は使えないなと舗装された道を歩きながら、誰か知り合いがいないか探していた。
そのとき、ラットは自分が見られている感覚を覚えた。敢えて視線を探すことなく、彼はごく自然に誰もいない裏通りを目指す。予想外だったが、知り合いかあるいは彼を恨んでいる者であれば話を聞かせてもらうか、強引に聞き出すかできるかもしれない。
人気のない建物と建物の間にある広場でラットは立ち止まった。視線はまだ存在している。
「そろそろ出てきたらどうだ? それとも、恥ずかしがり屋なのか?」
静かだがよく通る声で、視線の主に問いかけるラット。
「恥ずかしがり屋ではありませんよ。ただの――恥知らずです」
そう言って出てきたのは、一人の男だった。年齢は二十代後半。洒落た商人が好んで着るような紺色の和服で、肩まで長く伸ばした髪、煙草を機嫌よく銜えて吹かしている。武器は持っていないことをアピールしているのか、両手を挙げている。
ラットはその男が一瞬誰だか分からなかったが、人懐っこい笑みでようやく思い出せた。
「お前……ダニエルか? スパード家の?」
「お久しぶりです――兄貴」
ダニエルと呼ばれた男は煙草を捨て、深く頭を下げた。
ラットは「兄貴はよせ」と首を振る。そんな資格は自分にはないと言わんばかりだった。
「俺はラットだ。それ以外の名はない」
「ラット、ですか……ではラットさんと呼ばせてもらいますよ」
ダニエルはラットに数歩近づいた。警戒するかしないかの距離だった。そういえば剣客のように人との距離感が得意だったなとラットは思い出す。もっとも、彼の知るダニエルの腕前はたいした事なかったが。
「いつここにお戻りで?」
「さっきだ。しかしまさかいきなりお前と出会うとは思わなかった」
「俺もですよ。追放されたはずのラットさんを見かけたとき、目を疑いましたよ」
ダニエルは笑って、それからすぐに真面目な顔になった。真剣な話をするためだろう。
「この時期にラットさんが戻ってきたってことは、期待していいんですね?」
「……期待だと? 何のことだ?」
「とぼけないでくださいよ。あなたは――オウルの兄貴を殺すつもりでしょう?」
実を言えば、ラットはオウルを殺すかどうか、決めかねていた。かつての『親友』の悪い噂はエンドタウンまで届いていた――いや轟いていた。しかしあの武士の中の武士であるオウルが噂どおりの男に成り果てていたとは思えなかった。それを判断するために、まずは会いに来たというのが正しい。
「……オウルを殺す? 期待している? 最初から理由を話せよ」
「ありゃ? てっきり俺はオウルの兄貴を止めるためにやってきたんだと……」
「知ってのとおり、俺はサウスから追放された身なんでな。詳しい話が聞きたい」
ダニエルは少しの沈黙の後、表情一つ変えずに訊ねた。
「詳しい話を話す前に、こっちから一つだけ、確認させてください」
「なんだ? 言ってみろ」
「ラットさんは――オウルの兄貴に味方するために、戻ってきたんじゃないんですよね?」
ラットはどこか不安そうなダニエルの顔を見ながら「それはない」と答えた。
「昔のあいつになら、手を貸しても良い。だが噂どおりの男に成り下がったなら、味方なんてできねえよ」
「……兄貴――おっと失礼。ラットさんは変わらないな」
ダニエルは心底安心したように、表情を和らげた。心の中では、もしオウルに味方すると断言したら刺し違えても殺そうと決意していた。ラットとオウルが手を組めば、誰一人対抗できないからだ。
「安心しましたよ。変わらないあなたが戻ってきてくれたことに」
「俺は変わったよ、ダニエル」
ラットはダニエルから視線を外し、空を見上げた。よく空を見る癖があるのをダニエルは知っていたので、何も言わない。
「人が好まない汚い仕事をして生きてきた。武士の誇りなんて、もう失くしちまった」
「…………」
「それよりなんだその格好は。商人みたいじゃないか」
ラットは再び視線を戻す。ダニエルははにかみながら「実は俺、商人の娘と婚約したんですよ」と告げた。
「婿養子ってやつです。あはは、似合わないですかね」
「意外だな。武士に憧れていたお前がどうして……」
「恨み言を言うつもりじゃないですけどね。ラットさんのせいでもありますよ」
それを聞いたラットは理解して「悪かったな」と詫びた。ダニエルは手を振りながら「いいんですよ」と笑った。
「元々、向いていなかったんです。武士になろうとしたのは、ラットさんとオウルの兄貴に憧れていただけですから」
「……トライアド家と実家はよく許可してくれたな」
トライアド家はダニエルが仕えていた従属大名である。かなり力のある大名家であり、小大名の数も多い。
「実家とは縁を切りました。俺が望んだことですけど。トライアド家は……もうありません」
「ありません? どういうことだ?」
飲み込めなかった答えにダニエルは「本当に、何も知らないんですね」とまるで記憶喪失の患者を相手するように、過去の出来事を述べた。
「トライアド家は滅びました。断絶したんです」
「……まさか。そんな馬鹿な」
「そんな馬鹿なことが現実に起こったんですよ。もう二年前のことです」
二年前と聞いて、ラットはオウルのアクス家が小大名から従属大名に昇格した時期だと気づいた。情報屋にはそれ以上聞かなかったが、あのとき詳しく聞けば良かったと後悔する。
「なんで、そんなことが……」
「原因は三つあります。一つは、ラットさんという存在がいなくなったこと。二つ目はオウルの兄貴が内側から崩し始めたこと。三つ目は当主のリース・トライアド様が隠居なさったこと」
「お屋形様が、隠居?」
「……あまり言いたくないですけど、大名殺しの事件の責任をとってのことです」
数年前に起きた事件のせいで、様々な人間の人生が狂い始めた。
それはラットも例外ではないのだが……
「そうですね……詳しい話は、俺の店でしましょう。ついて来てください」
「いいのか? 俺を匿ったら、どうなるか――」
「あなたはラットさんです。そうでしょう?」
ダニエルは昔と同じような屈託ない、幼い笑みでラットに微笑みかけた。
「武士をやめた恥知らずですけど、ラットさんへの恩を忘れた恩知らずではありませんから」
ラットがダニエルの厚意に応じて店に移動するのを見て、今まで気配を消していた男は主に報告するため、その場を後にした。
男はたまたまラットとダニエルの密会を見つけたのだ。男に与えられていた任務は街で不審な者を見つけたら主に報告することだった。ピンポイントでラットを見張っていたわけではない。男にとって偶然であり、ラットとダニエルにとっては不運だった。
男は警戒網の一人であり、情報源の一人であり、主の手足の一人であった。そしてかつて武士が異世界にやってきた際、偶発的にできた組織の一員であった。だから、ラットとダニエルは視線や気配を感じなかったのだ。
ダニエルの視線に気づくほどの鋭敏な感覚を持つラットと周りを注意深く警戒していたダニエルの二人に気づかれないほどの諜報のスペシャリスト――男は『忍び』の一員で、主である忍びの頭領に報告するため足音を鳴らさずに素早く駆け出した。
伝説の帰還。その報告はメニシンシティを震撼させることになる――
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