ハートとロッパの日常

さくら

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ロッパとの出会い

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ハートとロッパ

第一話 ロッパとの出会い

海沿いの小さな町。
春の風がふわりと吹き抜け、遠くで波の音がやさしく響いていた。ピンク色の髪を風になびかせながら、一人の少女――ハートは、砂浜の貝殻を拾っていた。

「今日の貝は、きれいなのが多いなぁ」
そう呟く声は柔らかく、まるで潮風のように優しかった。

ハートはこの海辺の町に一人で暮らしている。都会から引っ越してきてまだ間もないが、自然と動物が好きな彼女は、この穏やかな場所がすぐに気に入ったのだった。

そのとき――
「ぎゃあああ! やめろって言ってんだろ!」
どこからか、奇妙な悲鳴が聞こえてきた。

ハートは顔を上げ、声のした方へと駆け出す。砂を蹴り上げながら、岩場の向こうへ。

そこでは――小さなヒトデが、数匹のサメに追い詰められていた。

「はっはっは! お前みたいなヒトデが、浜の王様気取りかよ!」
「ちょっと目立つ色してるだけで調子乗るなよ、ピンク野郎!」

ヒトデは身体を震わせながらも、口だけは達者に反論していた。
「な、なんだと!? この俺様を誰だと思ってるんだ! 海底一のスターだぞ!」

「スター(ヒトデ)だって? ハハハ! うまいこと言ったな!」
サメたちは嘲笑いながら、さらに囲いを狭めた。

その瞬間、ハートが飛び込む。
「やめなさいっ!」

風が巻き、砂が舞う。
サメたちは驚いて振り向いた。
「なんだ人間か? 邪魔するな!」

「弱いものいじめなんて最低!」
ハートは拳を握りしめると、波のように一歩踏み出した。
海辺の石を蹴り上げ、それを見事にサメの額に命中させる。

「いってぇ! なんだこの娘!」
「面倒だ、引き上げるぞ!」

サメたちは文句を言いながら、泡を立てて逃げていった。

ハートは小さく息をつき、倒れていたヒトデに手を差し伸べた。
「もう大丈夫?」

そのヒトデは、ぱちりと目(のような模様)を開けると、少し誇らしげに言った。
「ふん、あたりまえだ。俺様がこの程度でやられるわけないだろ?」

「……今の見てたけど、結構やられてたよ?」
ハートが笑いながら言うと、ヒトデは顔を赤く(?)してそっぽを向いた。

「な、なんだよお前、俺様を笑うのか!?」
「別に。ちょっと可愛いなって思っただけ」
「か、かわ……っ!? 俺様を可愛いとか言うなぁぁ!」

彼の名前は――ロッパ。
見た目はただのピンクのヒトデだが、どういうわけか流暢に喋り、態度はやたらと大きい。

しばらく言い合ったあと、ロッパが唐突に言い出した。
「おい、人間。お前、俺様を助けたんだろ?」
「うん、まあ、見てられなかったから」
「そうか……なら、お礼として――この俺様と一緒に住む権利をやる!」

ハートはぽかんとした顔でロッパを見た。
「いや、いらないけど」

「はあ!? なんでだ!? 俺様と一緒に暮らせるんだぞ!? 海の宝だぞ!?」
「知らないヒトデと一緒に住むって、ちょっと変でしょ」

ハートは笑いながら立ち上がり、帰ろうとする。
だが――

「ま、待てよぉぉ! 頼むよ!」
ロッパは砂の上を這いながら、ハートの足にしがみついた。
「行くところがないんだ! 俺様、住処をサメに壊されて……もうどこにも……!」

涙をぼろぼろこぼしながら訴えるロッパ。
その姿に、ハートは苦笑した。

「ほんと、しょうがないなあ……」
「ほ、ほんとに!? 俺様を拾ってくれるのか!?」
「うん。ただし、騒がないこと。あと、勝手に鏡を見るの禁止ね」
「む、無理だ! 俺様のこの完璧なフォルムをどうやって確認すれば――」
「はいはい。じゃあ置いてくね」
「待てぇぇぇ!!」

こうして、ハートとロッパの奇妙な同居生活が始まった。

ハートの小さな海辺の家。
窓からは潮風が入り、夕陽が差し込む。
ロッパはその光を浴びながら、得意げに胸(?)を張った。

「よし! 俺様の新しい城はここか!」
「城じゃなくて、家だから」
「同じことだ!」

ハートは思わず笑ってしまった。
ロッパは面倒でうるさいけれど、どこか憎めない。
彼がいると、不思議と家の中が明るくなる気がした。

そしてハートは小さく呟いた。
「……よろしくね、ロッパ」

ロッパも少し照れくさそうに、
「ま、まあな。俺様のファン第1号として、よろしくしてやるよ」

その夜、波の音がやさしく響いていた。
――これが、少女ハートと喋るヒトデ・ロッパの、ちょっと騒がしくて、あたたかい物語の始まりだった。





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