銃とナイフとストレンジ

和谷ノア

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2話 バーへ行こう!

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 現在4月10日。

 ずっと続けばいいと思っていた春休みも終わり、今日から新学期が始まる。

 “五化私立大桐高校いつかしりつだいどうこうこう”の校門をくぐり、下駄箱付近に張り出されているクラス分けの張り紙で、自分がどのクラスかを確認の後、始業式が始まった。

 長かった校長先生の話が終わり、生徒指導の先生の話が始まる。「3分で終わります」と先生が前置きしたが、断言できる。絶対に終わらない。

 結果15分かかり、やっと解放された生徒達は、それぞれの教室に戻る。
 体育館から教室に戻る際に、危うく一年生のクラスに行こうとしたのを、友人の竹下にからかい半分でたしなめられ、進級に未だ自覚が無いことを自分自身感じた。

 2年2組の教室に着くと自己紹介が始まる。
 所々にギャグを挟んでクラスの空気を和ませるお調子者などもおり、トントン拍子で進んでいった。前の席の生徒の紹介が終わると俺の番だ。
 出席番号順に進んでいたので最後になってしまった。無難に終わらせよう。

「“柳川敬人やながわけいと”です。前のクラスは1年4組でした。所属している部活はありません。でも、体動かすことは嫌いじゃないので、遊びに誘ってくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」
 
 そう言い席に着くと控えめな拍手が向けられる。名前と部活のことだけじゃ、ただの根暗だと思われてしまうため、少し情報を付け足してみた。
 
 周りを見る限り、変に浮いた奴という反応は返ってこなかった。上出来である。拍手がやむと、若い女性教師が前に出て話し始めた。

 担任の橋本先生。高身長で、サバサバとした性格をしており、生徒達の相談によく乗ってくれる良い先生と評判だ。

「はい、顔合わせが済んだところで、明日から普通の授業に移るわけだが、……まだこのクラスは全員そろった訳じゃない」

「え、どゆこと?」

 生徒の一人が先生に尋ねた。

「このクラスには明日、……転校生が来ることになっている!」

「「「「「おぉー」」」」」

 生徒側からは歓声というか、どよめきが上がった。やはり転校生と聞くとテンションが高くなるのは必然で、そんな中、先生は起爆剤となる情報を俺達に投下した。

「ちなみに、その転校生は女子だ。男子共は期待しときな」

「「「しゃー!!」」」

これには男子達のボルテージが一気にスパークする。俺も声には出さなかったものの「おぉ、マジか」と内心思った。これで反応しなかったら嘘である。
 
 ちなみに女子はと言うと、「イケメンが良かったなぁ」とムスッとする者と「男子うるさい」と生ゴミを見るような視線を男子に送る者に分かれた。

「はいはい、だからあんたら仲良くしなよ」

 先生が締めくくり、その日の学校の工程は終了した。
 下駄箱で靴を履き替え、部活に勤しむ友人達に「じゃあな」と挨拶され、俺はそれを「おう」と短く返す。今日は授業がない分、部活の時間が長い。これから、顧問やコーチにどやされながら練習するのであろう戦士達を横目に、俺は校門へ足を進める。

 学校から徒歩で十数分。俺は家に帰らずに、とあるところに来ていた。
 
 目の前にあるのは一軒の“バー”。
 上にはわかりやすく「クリスタル」と言う店名が書いてある。店自体はそこまで大きくないが、外装はレトロでかなりおしゃれだ。一見カフェと見間違えそうである。

 店の隣には大きな車庫があり、シャッターが閉まっていた。中にジープでも格納してそうなでかさだ。

 そもそもバーなんて、高校生が来るような場所ではないだろう。俺もそう思う。しかし、“立地”がここなのだからしかたがない。

 店の前まで行き、CLOSEDの看板が出ているのを確認し、店のドアを開ける。店は閉まっているけど、ドアの鍵は開いていた。

 中に入ると、まだ店内の電気はついておらず、奥に非常口の緑の光が店内を照らしていた。

「こんにちはー」

 誰かいないか確認するために、俺は店内に呼びかけた。
 
 すると、店の電気が点灯し見やすくなる。

 埃一つ落ちていないカウンター。そしてその奥には様々な酒瓶が、ずらりと飾られている。その酒瓶達が店内の柔らかい照明に照らされキラキラと光って見え、奥にある観葉植物の緑が映える。
 
 そして、電気をつけてくれた人が店の奥から現れた。

 でかい。その人を見てまず出てくる単語である。身長は192センチと、縦にでかいにもかかわらず、筋肉が盛り上がっており、かなりがっしりしている。肌も焼けており、少し黒め。バーテン服を着ていなければ、間違いなく軍人に見えるだろう。
 
 そんな体躯と打って変わって、顔はニコニコと微笑んでいる。

「……こんにちは、マスター」

 と俺が挨拶をすると、マスターは微笑んだ顔でコクリと首を縦に振った。いつも微笑んでおり表情が逆に読み取りづらいのだ。
しかも、彼は無口である。

「先輩ってもう来てますか?」

 そう俺が尋ねると、マスターはもう一度コクリと頷く。
 高身長、筋骨隆々、笑顔、無口、バーテンダー、というこれでもかとキャラクターを詰め込んだマスターに、「ありがとうございます」としっかりお礼を言い、俺は店の奥にある関係者以外立ち入り禁止の札がかかっているドアを開けた。

 中に入ると狭い通路になっており、左右二つに道が分かれている。少しこの空間が薄暗く感じるのは、この通路を照らしているの電球が、年代物だからだろうか。それとも回りの壁がコンクリートむき出しで、灰色だからだろうか。
 
 そんなことを考えながら俺は左側に進んだ。進むとすぐに下へ続く螺旋階段があり、そこを降りていく。
 ちなみに右側に進めば、バーの倉庫につながっており、酒瓶等がたくさん置いてあるが、今回はそちらの方に用はないのでスルーする。
 
 地下へ向かって降りていくと自動ドアが待ち構えていた。
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