姉妹チート:RE

和希

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1stSEASON

空に咲く花

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(1)

「空、朝だよ」
「おはよう翼」

今日は花火大会の日。
翼の協力もあって無事宿題も終わり、お互いにだらけた生活をしていた。

「せめて市民プール行くとかしてきなさいな」

母さんに言われて行ってみたりしたけど。
ラジオ体操に行って帰ってくると朝食が待っている。
朝食を食べると部屋に帰ってゲームをしたり漫画を読んだり。
ダラダラ生活を続けていると翼が部屋に入ってくる。
翼は意外とまじめだ。
次に僕と変な真似をしたら僕の部屋に立ち入り禁止。
翼はそれをまともに捕らえて必要以上に迫ってこなくなった。
ただ隣で一緒に漫画をみたりゲームをしたりテレビを見たり。
翼はそれだけで嬉しいみたいだ。
天音は今日はいない。
昨日から大地の家に泊まりに行ってる。
張り切っているようだった。
色んな意味で。
午前中時間を潰すと昼ごはんが待っている。
おばあさんがご飯を作ってくれる。

「今日は2人ともでかけないの?」

母さんが聞いてきた。

「うん、今日は花火大会あるし、父さんが連れて行ってくれるからそれまでゆっくりしてる」

翼が答える。
天音は大地と一緒に行くらしい。
水奈は友達と花火を見に行くそうだ。
学は家で恋の世話。
恋も天音と同い年だし一緒に花火に行けばいいのに。
午後はリビングで父さん達とテレビを見ていた。
この時間はワイドショーとかであまり興味はなかった。
父さんは母さんと話をしながら見ている。
僕達も翼と対話しながらみてた。
翼も女の子。
やはりお目当てのアイドルの熱愛報道発覚とかは気になるらしい。
3時ごろになると部屋に戻る。着替えてリビングに行くと父さんも仕度を終えて待っている。
翼も仕度を終えて降りてきた。
母さんに手伝ってもらったらしい。
水色にピンクの花柄の浴衣を着ていた。
髪の毛も上でお団子にしてまとめ上げていた。
何か一言言って欲しそうだった。

「綺麗だよ、似合ってる」

心に語りかけていた。
翼は嬉しそうだった。
そんな僕達を両親はにこりと笑ってみている。

「じゃあ、愛莉行ってくる」

父さんがそう言う。
母さんはお留守番。
あまり人混みとか入りたくないらしい。

「気を付けてね」

母さんに見送られて僕達は街に向かう。
父さんは街の中の駐車場に止めると商店街を散策する。
商店街は短冊とかが飾れていた。
そのお願い事を見ては翼と二人で楽しんでいる。

「あれ?空と翼じゃん!」

会ったのは光太と麗華。
翼も知らなかったようだ。
困惑している。
2人は付き合っているのか聞いていた。

「そうだよ、変かな?」

麗華さんがそう言った。

「別に変じゃないけど意外だなって」

僕は光太に聞いていた。

「光太卒業まで待つんじゃなかったのか?」

一学期にスカートめくりが流行った時に麗華さんにそれをしたとき光太がキレて相手をボコボコにした事件があった。
それがきっかけだったらしい。
それでも光太は卒業式まで待つはずだった。
だけど学にも彼女が出来て焦ったらしい。
待っても待たなくても確率は2分の1。
だったら当たって砕けろと個人チャットを送ったところ「いいよ」と返事をもらえたらしい。
夏休みが始まってから、二人で図書館に行って勉強したり映画を観たりしていたそうだ。
ちなみにキスはもう経験済み。

「よかったじゃん」
「ああ、夢みたいだぜ」

翼も麗華と話をしてはキャッキャと騒いでる。
はしゃいでる麗華さんを見てるのは初めてだった。
今まで何にでも興味を示さなかったから。

「じゃ、俺達飯食ってくるから」

光太がそう言うと二人は消えて行った。

「意外だったね」

翼は本当に驚いているようだった。
これで5年生はみんな彼女もちか。
そんな話をしながら、父さんに説明しながら夕食を食べると花火大会の会場に向かう。

「父さん場所取っておくから夜店でも見ておいで」

父さんがそう言うと二人で夜店を回る。

イカ焼きたこ焼き箸巻き焼きそばかき氷。
あとラムネか。
抱えきれないくらい買って戻る。
父さんにラムネを渡してそれを食べながら花火を見る。
翼と二人で見る花火は綺麗だった。
そして周りで見ているカップルが羨ましかった。
それは翼も同じだったみたいだった。

「いつか二人で来ようね」

翼から送られた伝言。
返事をすると翼は僕を見て微笑む。
その瞬間は生涯忘れない。
花火が終るとみんな散らばっていく。
父さんの背中を追いかけながら、翼と手をつないで歩いて行った。

(2)

朝目が覚めると僕は驚いていた。
僕は裸でそんな僕に同じく裸で抱きついてる天音。
眠気なんて一瞬で飛んだ。
落ち着け、僕だってまだ小学校4年生。
いくらなんでもそれはない。
しかし今恋愛映画にありがちな場面に直面している。
記憶を辿る。
思い出した。
そろそろ寝ようかといった時躊躇いもなく僕のベッドに侵入してくる天音。
天音は悩んでいる。
どうしたんだろう?

「電気消して、流石にいきなりは恥ずかしい」

言ってる意味が分からないけどどうせ寝るんだ。
リモコンで照明を落とす。
すると彼女は驚くべき行動に出た。
服を脱ぎだしたんだ。
僕は慌てて天音を止める。
天音は落ち込む。

「やっぱり私は子供か?」

そう言う問題じゃないと思うんだけど。
このままにしておいたら母さんに何言われるか分からない。

「子供なのになにやってるの!」じゃない。
「あなた女の子に恥かかせてどういうつもり!」だ。

何か声をかけてやらないとこの雰囲気は変わらない。
頭をフル回転させて考えてみる。
答えはいつだって単純。

「そんなことないよ、綺麗だよ」

たった一言で天音の機嫌は変わる。

「よかった、ちょっと恥ずかしかっただよな。下着もお子様だし」

そういう基準なのか?
まあ、いい。これでゆっくり眠れる。
母さんも何かあるのを期待していたみたいだし、いきなり部屋に入ってくることは無いだろう。
朝になったら服を着せればいい。
そう思っていた。
だけど、天音はとんでもないことを言い出した。

「次は大地の番だぜ、私だけ恥ずかしい思いさせてそのまま寝るってことは無いよな」

恥ずかしい思いをさせてって言葉にはちょっと異議があったけどそんな事よりどう断るかが問題だ。
けれど、天音はそんな時間を与えてくれなかった。
無理矢理服をはぎ取ろうとする天音。
あまり騒いだらさすがに親が来る。
素直に脱いだ。
それを見て天音は笑った。

「大地もやっぱりまだお子様だな。今度私は下着選んでやるよ」

そう言って笑っている。
そして天音はしばらく思案して僕に抱きついてくる。
僕はドキドキしていた。
しかし天音は僕の反応に不満だったようだ。

「私魅力ないか?こう見えて精一杯お前を誘惑してるつもりなんだぞ」

言葉の意味が分からなかった。
僕の心臓の鼓動は天音には伝わっていないのだろか?

「ここは黙って彼女の下着を取るとかやることあるだろう!?」

天音のやる事は一つ一つが過激だ。
ちなみに天音の裸は風呂場で見ている。本当に一緒に風呂に入る羽目になるとは思わなかった。
このままでは眠れそうにない。
天音に愛想尽かされるかもしれない。
悩んだ挙句一つの妥協点を見つけた。
このまま天音の言う通りにしていたら、本当に最後まで行きかねない。

「ごめん、僕はまだお子様だ。今の天音をどう扱っていいか分からない。だから僕から要求していい?」
「その言葉を待ってたんだ!お前も男になる決意がついたか!」

天音は喜んでいる。後は僕の要求を聞き入れてくれるかどうか。

「今から天音の下着を取るよ、僕も自分の下着を脱ぐ。お互い全裸だ」

天音は黙ってうなずいた。ほのかに顔を赤らめているようだ。恥ずかしいなら最初からやらなきゃいいのに。

「お互い全裸で抱き合って寝る。今の僕に出来る最大限の事だ。それで許して欲しい」
「……分かった」

天音はそう言うと目を閉じる。
僕は緊張して天音の下着を取る。
そして僕も脱ぐと天音は僕に抱き着いた。

「不思議だな。空とはよくやっていたけど。なんか気分が変だ。こんな気持ち初めて」

天音は緊張してるようだった。
それは僕も同じだった。
お互いのぬくもりを感じながら眠りについた。
そして今に至る。
とりあえず天音を起こすところからだな。

「おはよう、天音。朝だよ。起きて」

そう言って体を揺すると天音は目をこすりながら目を覚ます。
そして僕と同じように記憶を辿っている。
違ったのはその後の行動。

「おはよう大地」

そう言って僕にキスをする。
そして服を着る。
僕も服を着た。
天音は服を着ると何か考えている。
どうしたんだ?また何か企んでいる。
しかし天音も一人の女の子だったようだ。

「昨夜やったことは空にもしたことないことだからな。安心しろ」

多分翼もそこまではいってないはずだと天音は言う。
天音を突き動かすのは翼への対抗意識なんだろうか?

「……幻滅したか。私の事軽い女だと思ったか?」

小学校4年生の発言じゃないと思ったよ。

「そんな事思ってないから安心して。天音の初めてが僕で光栄に思うよ」

最適解を選んだつもりだった。

「そうか……なら良かった」

正解だったようだ。
母さんがドアをノックする。

「ご飯できてるわよ」

母さんが言う。
僕達は部屋を出た。

5人で食事をする。
父さんのスマホが鳴った。
父さんが電話に出る。
父さんは芸能事務所と貿易会社の社長をしている。
休日も休んでいられないほど忙しい。
今日も急な仕事が出来たようだ。
取引先の会社と契約書の内容でトラブルが発生したらしい。
今日中に書き換えるからサインが欲しいとのこと。
母さんに説明してる。
だから僕達の面倒は母さんに任せたいと。
母さんの理屈では家庭が最優先。
その家庭の団欒を壊すような無能など潰してしまえ。
大体そう言う流れだ。
だけど今日の母さんは違った。

「ま、いいわ。望は仕事に専念してて」

父さんは胸をなでおろす。

「父親は仕事をこなす役割。私は子供の世話をする役割……大地の教育をするわ」

父さんは何も言わない。
今何か反論したらとんでもないことになる。
父さんは危険を察知する能力はずば抜けている。

「そうと決まれば善は急げよ。大地。ご飯を食べ終わったら仕度をなさい。出かけるわよ」
「花火は夜だよ?」

まだ早すぎる。

「そんな事分かってる。あなた夜まで天音ちゃんを退屈させるつもりなの?」

母さんは偶に正論を言う。
強引な時もあるけど。

「そうね、あなた映画で失敗したって言ったわね。汚名返上の機会を与えてあげる。天音ちゃん。どんな映画が好きなの?」
「そうですね……今やってる奴だとアニメかな」
「だ、そうよ。午前中は映画を観なさい」

そう言いがなら母さんはスマホを操作して映画の上映時間を確認してる。

「よかった、駅ビルでもやってるみたい。今から準備すれば十分間に合う。急ぎなさい」

チケットの予約をしながら母さんは言う。
僕は天音と支度をする。
とりあえず、服を着替えようとすると天音が待ったをかけた。

「一度やってみたかったんだよな!」

天音のやりたかったこと。
それは彼氏の服を選ぶこと。
天音は僕のクローゼットを探って服を選んでいる。

「空の服は選んだこと無いの?」
「空は翼がいるから。悔しいけどあの二人心が通じてるからどうしても敵わないんだよ」

そう言いながら僕の服をコーディネートしていく。
僕は天音の好みの男に慣れたんだろうか?
天音の言われるがままに服を着た僕を見て納得したようだ。

「今日、映画見終わったら午後暇だろ?服選んでやるよ」

天音が言った。
新條さんの運転で駅ビルに着くと母さんは買い物してるから二人で見てきなさいと言う。

「そうね、夕食は早めに済ませたいから17時にここに集合で。大地、お金は持ってるわね?買い物はカードを使いなさい」

母さんがそう言うと僕達は映画館に向かった。
そしてチケットを受け取り劇場に入る。
天音はホットドッグを食べてジュースを飲みながらポップコーンに手を付けている。
映画が始まった。
映画の内容より天音の反応が気になった。
今日は天音はちゃんと映画を観ている。
映画が終わると昼食をとることに。

「何か食べたいのある?」

天音に聞いていた。

「3階のフードコート行こうぜ!」
「そんなのでいいの?」
「色々食えるじゃん!」

実際に色々食べてた。
ラーメン、カツ丼、ステーキ、ハンバーガー、たこ焼き……。
こんな小さな体のどこに吸収されているんだろう?

「おっぱいになればいいんだけどな!」

天音は笑って言う。
そのあと天音は言っていた通り僕の服を選んでいた。
女子の買い物は時間がかかる。
天音も女の子だった。
時間をかけていくつかの服を買った。

「次はお前の番だぞ」

へ?

「大地はどんな女子が好みなんだ?」

天音は僕の好みの服を買うらしい。
あまり服に関心がない僕には難題だった。
天音に似合いそうな服をイメージしながら色々見て回る。
思ったより時間がかかる。
少なくとも自分の服を選ぶより時間がかかる。
イライラしてないだろうか?
杞憂だったようだ。天音はニコニコしている。
そして見つけた。

「これなんてどうかな?」
「……うん、やっぱりそうなるよな!分かったちょっと買ってくる」
「あ、僕が払うよ」
「気にするな。パパから小遣いはもらってるから」

そう言ってサイズを確認してレジに向かった。

「なんか楽しいな。こういうのも」

そう言って天音は笑っていた。
時間も良い頃合いだ。
僕達は母さんと待ち合わせする。
母さんは僕達を夕食に連れて行ってくれた。
まだ僕達には早すぎるお洒落な店。
天音でも雰囲気を気にするらしい。
急に大人しくしてた。
そんな天音に母さんは優しく声をかける。

「今日はどうだった?」
「楽しかったです」

天音は一言そう言って今日あったことを残さず話した。
母さんはにこにことそれを聞いていた。
天音は本当に嬉しかったんだな。
僕もホッとした。
夕食を食べ終わると会場に向かう。
その人混みに母さんはイライラしてた。
僕は天音とはぐれないように手をつないでた。
それが恥ずかしかったのだろうか?
天音は落ち込んでた。

「どうしたの?」
「いや、私も浴衣で来ればよかったかなって」
「来年の楽しみに取っておくよ」
「そうだな!」

天音に笑顔が戻った。
天音と花火を見る。
空に咲く花。
パッと咲いて静かに消える。
空に消えていく打ち上げ花火。
また来年も……。
来年の今頃どうなっているんだろう?
隣に君はいてくれるんだろうか?
何の保証もない未来の事。
だけど考えるだけ無駄だったようだ。
花火が終ると。新條さんに迎えに来るように言う。
その時天音はそっと僕に囁いた。

「また来年も来ようね」

保証はされてないけど約束はかわした。
天音を家に送る。

「またメッセージ送る!」

そう言って天音は家に帰っていった。
家に帰ると風呂に入って部屋に戻る。
メッセージが届いていた。

「楽しかった。今度は家に遊びに来い!」

返事をするとまたメッセージが届く。
いつの間にか眠っていた。
そして目を覚ますと最後のメッセージを見る。

「寝やがったな!罰ゲームだ!今度は私の下着を選べ!」

一瞬で目を覚ます。
時計は8時を回っていた。
スマホが鳴る。
電話に出る。
天音はいつも僕をドキドキさせてくれる。

「おはようだーりん」

ダーリン!?

なんと返事したらわからなかった。

「おはよう」
「思ったより冷静だな。まあいいや。一回やってみたかったんだよな。ラブコール」

なるほどね。

「よく眠れたか」
「ごめん、気が付いたら寝てた」
「まあしょうがねーよ、気にするな。それより罰ゲームいつする?」

執行は免れないらしい。

「でも流石にどんなのが好みなのか分からないよ」
「お前の好みでいいんだよ。とっておきの日に穿いてやるから」

好みって言われても。

「あ、翼戻ってきた!またメッセージ送る。じゃあな!」

唐突にかかってきて唐突に切られた。
天の音はいつも突然で。一方的に約束を交わしていく。
でもそうやって幾つもの約束を重ねて未来を作っていくのだろう。
そのゴールがどこにあるのかわからないまま。

(3)

呼び鈴が鳴る。
彼女が来たようだ
玄関の戸を開ける。
美希が立っていた。

「ごめんちょっと早すぎたかな?」
「大丈夫、とりあえず中に入れよ」
「そうだね」

美希を部屋に案内する。
ここ数日美希は毎日のように家に来ていた。

「宿題は大丈夫か?」

俺は聞いていた。

「夜やってるから大丈夫、空達の真似して7月中にだいたい済ませたから」

そう言いながら恋と遊んでいる。
遊はゲームをしていた。

「いつもすまないな。助かるよ」
「気にしないで、私もこう見えて楽しんでるから」

美希はそう言った。
昼頃になると美希が立ち上がった。

「たまには私がお昼作ってあげる」

そう言ってキッチンに向かう美希

「冷蔵庫見てもいいかな?」
「ああ、大したもの入ってないけど」
「私も美希の手伝いする」

恋がキッチンに向かう。
美希は恋と一緒に昼ご飯を作っていた。
そうなると俺は手持ち無沙汰になる
遊は昼前になると出かけて行った。
粋達と花火を見に行くんだそうだ。
昼飯を食べると、俺は宿題を片付けながら、美希は恋の宿題をみてやってる。
夕方ごろ母さんが帰ってきた。

「瑛大は?」
「父さんは昼ご飯食べて出かけたよ」
「あのバカは……。恋と学。出かける準備しな」

母さんは花火に連れて行ってくれるらしい。

「でも、母さん疲れてるんじゃ?」
「学の彼女が花火の日に来てるのに、花火デートくらい考えてやりな」
「ありがとうございます」

美希は嬉しそうに答えていた。
仕度が済むとバス停に向かう。
街に着くとアーケードの中を短冊を見ながら歩いていく。
いつからだろう?
美希と手を繋ぐことに抵抗はなくなっていた。
美希も同じようだ。
恋は母さんと手を繋いでいた。

「私も彼氏欲しいな」

恋がそんな事を言い出した。

「恋は好きな人いるの?」

母さんが聞いていた。

「うーん、遊や粋みたいなタイプはいや」
「どんな男がタイプなんだ?」
「学みたいなタイプがいい」

そんな事を言っている。
俺と美希はそんな恋を微笑まし気に見ていた。
きっと恋がもう少し歳をとったら考えも変わっていくだろう。
そんなことを考えていた。
花火大会の会場は混雑していた。

「こんな事なら私も浴衣で来ればよかったかな?」

美希がふともらす。

「恋が手がかからなくなったら二人で見に来よう。その時に着てもらえたら嬉しい」
「……はい」

幻想的な花火の光景は人を高揚させる。
花火大会が終える頃には、俺の手を離して腕にしがみついていた。
美希の顔を見ると少し恥ずかしそうだった。

「一度やってみたかったんだよね」

そんな俺達を見て冷やかす恋。
恋の中ではもう美希の存在を受け入れているんだろうな。
帰りにファミレスに寄って帰る。
家に帰ると「夜遅いし美希を送ってやりな」と母さんが言う。
俺は美希を家に送ってやる。
ついでに美希の両親に遅くなったことをお詫びした。

「毎日面倒だろうだし、美希も学の家に泊まったらどう?」

たまに美希の母親はとんでもない事を言い出す。
狼狽える俺を笑ってみている美希。

「それは学が誘ってくれるようになったら考える」

美希はそう答えていた。
家に帰ると風呂に入って風呂掃除して寝る事にする。
寝る前に「おやすみ」と美希にメッセージを送って。

「期待して待ってるね」
「何をだ?」
「泊りに誘ってくれる日」
「さすがに遊が同室だし……」
「同室だとまずい事が待ってるの?」
「そ、それは……」

何と答えたらいいか分からない俺を美希は笑っていた。

「恋が大きくなるまで待つよ。そしたら私の家に泊まりにきたらいい」
「わかったよ」
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」

電話を切ると俺は眠った。

(4)

「悪い遅れた」
「気にするな」

私たちはクラスの連中と一緒に花火を見に来ていた。
遊も粋もいる。
女子もいる。
いないのは大地と天音だけ。
あの二人は大地の母さんと花火を見に行ってるらしい。
空と翼も見に行ってるみたいだ。

「まさか天音と大地が付き合いだすとはね」

なずなが言っていた。

「お前たちは好きな人いないのか?」

祈がなずなと花に聞いていた。

「そ、それは内緒だよ!」

少し慌ててるなずなと花を見て笑っていた。
いるんだな。
その相手も何となく見当がつく。
当の2人は全然気づく素振りが無かったけど。
花火大会の会場は混雑していた。
そして打ちあがる花火を眺めていた。
花火が終ると、ファミレスで夕飯を食べる。
こんな時間まで友達と過ごすのは初めてだな。
夕飯を食べるとバスに乗って家に帰る。

「家まで送るよ」

遊が言った。

「私よりも花を送ってやれよ」

私は遊にそう言った。

「ちょっと水奈何を言ってるの!?」

図星だったようだ。
花は慌てていた。

「なんで花なんだ?」

遊は気づいてないようだ。

「少しは察してやれ。私はここから近いから」

そう言って家に帰る。

「お帰り。花火はどうだった?」
「人が凄かった」
「そうか、まあしょうがないな」

母さんは笑っていた。
夏の終わりまではまだ遠いけど、空との思い出は作れるのだろうか?
将来の夢はいつだって忘れない。
10年後の8月……。
私はどうなっているのだろう?
そんな事を考えながら風呂に入っていた。
部屋に戻るとスマホがメッセージを受信していた。

「花に告られた」

遊からだ。
花は私と遊の関係を知っていた。
だから焦ったんだろう。

「それでどうしたんだ?」
「なんか乗り換えた感が凄くて一回断ったんだ」

なんでそんな真似を……。

「でもさ、花がそんなの私が忘れてあげる。私との思い出で埋め尽くしてあげる。だから私の想いでも遊との思い出で染めてくださいって」

花も必死だったんだろうな。

「付き合う事にしたよ。俺もそろそろ切り替えないとまずいしな」
「応援してるよ」
「ありがとう。あ、粋達には内緒な!?」
「その必要はないよ」
「なんでだ?」
「2学期になったらわかるさ」

きっとなずなも今頃……。
祈達も気づいているだろう。
皆恋をしていく中、私は取り残されている感があった。
でも焦ったら負けだ。
いくつもの春を越えてきっと最高の春を迎える時が来る。
そう信じて今を必死に生きるだけ。
そう思って私も眠りにつく。
そんな日がいつか来ると良いな。
そんな事を考えながら……。
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