姉妹チート:RE

和希

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1stSEASON

聞こえる軌跡

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(1)

「じゃあ、皆で楽しく年を越そう乾杯」

渡辺さんがそう言うとパーティが始まった。
今夜もお偉いさんが沢山押しかけてくる。
パーティドレスに身を包んだ美希は挨拶に来る賓客に対応している。
ステージでは芸能事務所「USE」の所属タレントのライブが行われている。
USEの社長は美希のお父さん。
USEのタレントは東京支社に所属するタレントを除けば全員が地元出身だ。
歓声を上げるのは父さん達だった。
父さん達の作ったグループ「渡辺班」は地元の政経両分野に置いて力を振るっていた。
裏社会でも実権をにぎっているらしい。
県外からの良からぬ権力を弾き返すほどの力を誇る渡辺班。
一体何をやってきたのやら。
もっとも地元経済など美希の家にしてみれば大したものではないらしい。
美希の母さんの機嫌一つで傾く企業は数知れない。
石原家の子供も皆訓練を受けているらしい。
俺も大変な彼女を持ったものだ……。
挨拶が一段落したところでソフトドリンクを取りに行く。
グレープフルーツジュースを二つ取って戻ると美希が待っていた。

「お疲れ様、喉渇いていると思って取ってきた」

そう言ってジュースを渡す。

「ありがとう」

美希はそう言ってジュースを受け取る。
美希はジュースを一口飲むと一息つく。

「同年代の子女性が多いね」
「確かにそうだな」
「私よりいい人いた?」

偶にこういう意地の悪い質問をしてくる。
そういう仲になれたという事なのだろう。

「その質問に意味はあるのか?」
「え?」
「良い人なのかそうでないのかなんて一目見ただけで分かるわけがない。それに俺には美希と言う恋人がいる事実は覆らない」

どんな女性がいようと好きになったのは美希に間違いないのだから。

「そこは嘘でもいないって答えるべきじゃない?」
「俺が今好きなのは美希だって意味で伝えたつもりだが」
「ありがとう」

美希はそう言って笑っていた。
その後渡辺班について話し合っていた。
どれだけ大きな組織なのだろう?
そんな話をしていた。

「美希、もう22時を回ったわ。あなた達は先に帰りなさい。お母さんたちは二次会行くから」

美希の母さんがいう。
送迎の車で家に送ってもらう。

「じゃ、また明日」
「また明日」

そう言って美希の車が出発するのを見て俺は家に入る。
家には遊と恋が先に帰っていた。

「父さん達徹夜だってさ。学も風呂入ったら一緒にテレビ観ようぜ」

遊が言うと俺は風呂に入ってリビングに行く。
毎年恒例の番組で終盤に差し掛かりあまり面白くない状態だった。
3人いて3人ともスマホを弄っている。
番組が終わって年越しの番組が始まる。
そして年を越す。

「あけましておめでとうございます」

挨拶を交わすと3人とも眠いのかテレビを消して自室に帰る。
ちゃんと美希にも新年のあいさつを伝えて。

「今年もよろしく」

そう返事が返って来てた。
あと何度同じ挨拶を繰り返す事が出来るだろう?
まだ俺は子供だ。
子供だからこそ子供の特権を使わせてもらおう。

永遠に。

未来に希望を抱きながら、永遠を夢見ながら俺は眠りについた。

(2)

大地に招待されて渡辺班のパーティに出席した。
パパや愛莉。翼と空も呼ばれていたけど断っていた。
愛莉は冬吾と冬莉の世話があるから。
翼と空も同じ理由だった。
自分の弟や妹が可愛いんだろう。
私の時も同じだったんだそうだ。
私は複雑な心境だった。
パパや愛莉、翼と空の興味が私から冬吾達に変ってしまった気がしたから。
弟や妹にヤキモチを妬くものなのだろうか?
そんな事を考えながら料理を食べていた。
大地は側に居るけど色んな人から声をかけられて大変そうだ。
邪魔にならないようにしていた。

「彼女が、大地君と交際している人?」
「はい、片桐天音さんです」

偶にこんな風に話を振られる。
食事の邪魔をすることは何人たりとも許されない。
片桐家のルールだ。

「天音、こちら防衛大臣の方だよ」

大地が紹介してくれた。
テレビで見たことある顔だ。
偉い人だって事くらいは分かる。
大地の父・石原望が経営する会社「ETC」は次世代戦闘機のステルス塗料の販売もしているらしい。
防衛相のトップが挨拶に来るわけだ。
私の立場も小学生ながらに理解しているつもりだ。
大地の将来の妻になるかもしれない。
そんな夢も見た。
しかし今は食事が優先だ。
爺の相手をしている時間などない。
そんな態度の私を見て慌てる大地。

「君、日本の国防を担ってる大臣だよ。その態度は失礼じゃないか?」

防衛大臣の秘書がそう言った。

「す、すいません。まだ彼女こういう場に慣れてなくて」

大地が代わりに謝る。

「まあ、まだ子供だ。難しい話はわからんよ」

カチン。
一々癇に障る爺だ。
しょうがない。貴重な時間を使って相手してやろうじゃねーか。

「申し訳ありません。子供だから話がよく分かりませんでした」

私はにこりと笑う。

「いいんだよ。気にしてないから」
「分からないついでに少々質問してもよろしいでしょうか?」
「なんだね?」
「中華系マフィアの入国は許しても在日米軍の受け入れを拒否するのはなぜですか?」

大地が頭を抱える。
私の質問はまだ続く。

「教職員の児童わいせつにはうるさく言わないのに在日米軍の強姦をしきりに取り上げるのはなぜですか?」
「き、君何を言ってるんだ。ここはそういう場ではないよ」

狼狽える防衛大臣に替わって秘書が回答する。
まともな回答など期待してなかった。
国会の質疑応答は円滑に進めるためにあらかじめ質問を決めておいて閣僚に提出してそれを官僚が見て回答を作っておくらしい。
その事に疑問は抱かなかった。
事務レベルの仕事など官僚に任せてその仕事の責任を取るのが政治家の仕事だと理解している。
官僚任せの政治のどこが悪い?
現に野党が政権を握った時「政治家が政治をする」とかほざいた挙句、日本国憲法についての質問すら答えられずに狼狽えている法務大臣が昔いたそうだ。
その政権のトップは「無能」「変人」「ぼけ老人」と揶揄され短い政権時代に日本の政治経済外交あらゆる面に大きな負債を背負わせた。
ろくに仕事ができないなら、役人に任せてハンコだけ押して責任だけ取ってもらった方がはるかに能率が良い。
そんなことはどうでもいい。
私の貴重な食事の時間を割いたこいつらに悪戯してやったまでだ。
何も言わない防衛大臣に代わって言ったのは大地の母さんだった。

「天音ちゃん。おばさんに免じて許してあげないかな?どうやらレディに対する扱いに慣れてないみたい」
「わかりました」

素直に引き下がって食事に戻る。
大地の母さんが一言何か言うと防衛大臣は立ち去って行った。

「大地!見てたわよ!あなた何やってんの!?自分の恋人も庇えない弱虫だったの?」
「恵美、相手が相手だ。大地にはまだ難しいよ」

大地の父さんが来た。

「『彼女今ちょっと取り込み中なので』の一言くらいしっかり言いなさい!」
「……ごめんなさい」

大地は謝る。

「恵美、取引先の社長が挨拶に来てる。行こう」
「わかったわ。まったく彼女のエスコートくらいしっかりなさい!あ、そうだ。天音ちゃん翼ちゃんに言伝いいかな?」
「翼に?」

何か用があるのだろうか?

「そんなに慌てる必要はないけど、でも返事だけでも決めて欲しいって伝えてほしいの」
「わかりました」
「よろしくね」

そう言って大地の両親はその場を後にした。
返事って何だろう?
翼からは何も聞いてないけど。

「天音、ごめん」
「気にするな、ちょっとイラッと来ただけだ」

その後は大地がちゃんと私の食事の時間を確保してくれた。
そして最後のデザートを食べ終わる頃パーティが終る。
2次会は時間的に私達の年齢だとまずいので家に帰る。
送迎の車に大地と乗ると車は私の家に向かった。

「今日はごめん……」

大地がまだひきずってる。
いつもの悪い癖だ。

「大地、前から思っていたんだけどお前は私といて楽しいか?」
「え?」
「そんな過ぎたことをぐちぐち言われても私は楽しくないぞ」
「ごめん」
「それだよ!」

私は大地の顔を見る。

「意味もなく謝るの止めろ。悪いのはあの爺だ。お前じゃない。それに私はお前のおかげで美味しいディナーにありつけた。それでいいじゃねーか」
「天音がそれでいいなら……」
「私がそれでいいならじゃない。そもそも大地はなんで私を招待したんだ?」
「……天音に楽しんでもらえたらって」
「なら私は食事を楽しむことが出来た。大地は目的を果たす事が出来たじゃないか?もっとわかりやすい礼が必要か?」
「礼?」

私は大地に口づけをする。
そしてにこりと笑う。

「これなら大地でもわかるだろ?私の気持ち」
「うん」
「だったらしけた面すんな」
「そうだね」

そして私の家に着くと私は車を降りる。

「じゃ、またな。おやすみ」
「今日はありがとう。また」

大地がそう言うと車は走って行った。
家に帰ると服を着替えて風呂に入る。

翼と空はテレビを見て笑っていた。
私が風呂から上がる頃お祖母さんが年越しそばを作ってくれた。
それを食べて新しい家族の一員も混ざって年を越す。

「明けましておめでとう」

家族と挨拶をするとスマホで皆にメッセージを送る。

「今年も宜しくお願いします」

大地から来たメッセージ。
あと何回同じメッセージを受け取るのだろう?
その間にどんな変化が待っているのだろう?
変わっていく心と体と環境の中で変わらない想いか……。
あ、そうだった。
寝る前に翼に伝えないと。

「翼、大地の母さんから伝言預かってきた」
「伝言?」

翼の表情があからさまに険しくなる。

「返事だけでも急いでほしいって。翼と大地の母さんでなんかあったのか……」
「……天音には関係ない」
「って事は何かあるんだな?」
「……愛莉が落ち着いたら一度相談してみる」
「何があったんだよ?」
「愛莉と相談するまで待って欲しい。それと空には今の話秘密にしてほしい」

思い詰めた翼の表情を見るとそれ以上追及する気になれなかった。

「約束だからな、絶対教えろよ」
「大丈夫、多分隠し通せるものじゃないから」

翼はそう言ってベッドに入る。
翼に何があった?
まあ、いずれ分かると言ってるんだから今はそっとしておいてやろう。
かなり悩んでいる様だ。
私も眠りについた。

(3)

一家そろって年末特番を見ていた。
父さんが中学生の時からやっていたらしい。
父さんと祖父母はビールを飲みながら見ている。
母さんは時折泣く冬吾や冬莉をあやしながら乳を飲ませながらテレビを見ていた。
冬吾と冬莉は家族の人気者だった。
僕達が生まれた時もそうだったんだろうか?
翼も冬吾達を羨ましそうに見ていた。

「翼は赤ちゃん欲しくなった?」

翼に伝心してみた。

「私の気持ちは空は分かってるはずだよ」

そう返ってきた。
天音が帰ってきた。
ご馳走にありついたらしい。
服を着替えて風呂に入っていった。
天音が風呂から出ると年越しそばを食べる。
そして除夜の鐘をききながら年を越す。

「あけましておめでとうございます」

皆で挨拶する。
挨拶が終ると僕達は部屋に戻って寝る。

「空、朝だよ」

翼に起こしてもらう。
着替えるとダイニングに向かう。
朝の雑煮を食べると準備をする。
天音は大地と初詣に行くらしい。
美希も学と行くと言ってた。
父さんは母さんと一緒にいるそうだ。
僕は翼と一緒に初詣に行った。
お年玉ももらった。
お参りを済ませると二人で食べまくる。
そして家に帰ると昼ごはんを食べる。
食べ終わったらリビングでお正月特番を見ていた。
元旦はのんびり過ごす。
そういう決まりだ。
天音が帰ってくると夕食を食べる。
そして3人でお風呂に入る。
今年も変わらないらしい。
変わったのは浴室がかなり広くなった。
風呂を出ると部屋に戻る。
ゲームをしてると誰かがノックしている。
多分翼だ。

「どうぞ」

翼が入ってきた。
翼はベッドに腰掛ける。
ゲームを止めて隣に座る。
最近やっている事だ。
こうしているだけで幸せな気分に浸れる。
ゆっくり進んでいるようであっという間に時間が流れる。
時間になると翼が立ち上がる。

「じゃ、おやすみ」

そう言う翼の手を掴みキスをする。
この時間が止まっていればいいのに。
そんな都合のいいわけがなく。

「また明日ね」

そう言って翼は部屋を出る。
そしてまた次の日の「おはよう」を待って僕は夢を見た。
それがずっと続くんだと思っていた。

(4)

「水奈、そろそろ時間じゃないのか?」

母さんが言う。
今日は遊達と初詣に行く日。
誠司としばしの別れを惜しみつつ私は家を出る。
遊の家に着くと呼び鈴を押す。
遊が出る。

「あけましておめでとう。なずなが来るらしいんでちょっと上がって待っててくれ」

そういや、遊の奴なずなと付き合いだしたって言ってたな。
家に上がると恋がいる。

「おばさんは?」
「ああ、朝帰ってきて今寝てる」

遊が答えた。
恋がやってくる。
恋と話をしてると呼び鈴の音がした。
なずなが来た。

「あ、そっか。水奈もいるんだ」
「いちゃ悪かったか?」
「そんなわけないじゃん!男子の家に来るなんて、なんか緊張するんだよね」
「……経験者として言わせてもらう。遊に限ってなずなが想定してる事態にはならない」
「多分お父さんがいるから」

恋も父親に苦労させられてるんだな。

「何を話してたんだ?」

遊達の準備が済んだらしい。

「女子同志の話だよ」
「そうか、じゃあそろそろいこうか」

遊が言うと。私達は神社に向かった。
駐輪場に止めるとそこからは歩く。
遊となずなは二人で楽しそうに歩いている。
私は恋と手をつないで後ろを歩いていた。

「なずなは遊とうまくやってるか?」
「まあね」

少し照れくさそうになずなが返事をした。
上手くやっているならそれでいい。
何事も無いのが一番だ。
神社に着くとお参りをしておみくじ買って帰る。
家に帰るとおばさんを起こさないように静かにテレビを見てた。
そして家に帰る。
途中までなずなと家に帰った。

「あとちょっとで5年生か」

なずなが言う。

「色々あったよね」
「そうだな」
「自分でいうのもなんだけど遊と付き合うなんて思ってもみなかった」
「どうして?」
「だって子供っぽいとこあるじゃん。あり得ないって思ってた」
「じゃあ、なぜ?」
「天音達と楽しそうにしてる遊を見てたらいつの間にか好きになってた」

ついでに遊が私に好意を持っている事も気づいて、苦しかったそうだ。
なるほどな。
人間何がきっかけでどういう関係になるか分からない。
巡り逢えた二人。
探し合えた二人。
なずなの中に咲いた、遊の命火。
弾けるままに閃くままに心を撃ちぬいた。
二度とない激情だから君の夢で踊ろう。
空より大きく抱きしめて。
見せかけの強さよりも、名ばかりの絆よりも、同じ時を一緒に生き抜いてく覚悟をした。
さあ、私を奪って、縛って。
同じ時間は二度と来ない。
だから感じるままに信じるままに跳んでいけ。

「じゃ、また学校でね」
「ああ、またな」

なずなと別れると家に向かう。

「おかえり」

母さんが言う。
誠司に授乳していたようだ。

「晩飯ちょっと待ってて」

それはいいんだけど……。

「何で母さん私の部屋で乳やってるんだ?」
「ああ、それはな……」
「神奈!一枚だけでいいから!」
「ふざけんな!ここは水奈の部屋だからな!絶対入ってくるな!」

授乳してる写真を馬鹿が撮ろうとしてるらしい。
本当にくそ野郎だな。
誠司が父親に似ないことを心から願った。
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