姉妹チート:RE

和希

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1stSEASON

天の授かりもの

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(1)

僕達は夜に病院に呼び出された。
もうすぐ僕達の新しい兄弟が生まれるらしい。
父さんは出産に立ち会ってる。
翼と天音は母さんの無事を祈ってる。
女性にとって出産は文字通り命がけの作業なんだそうだ。
分娩室に入る前母さんは笑みを浮かべていたけど。
お爺さんとお婆さん、母さんの方のお爺さんとお婆さんも来ている。
ずいぶん長い時間待たされた。

「空、落ち着きなよ」

翼が言う。
わかってるんだけど、ソワソワするんだ。
その時天音のスマホが鳴った。
水奈の弟が生まれたらしい。
誠司と名付けられたそうだ。
おめでとうと返した。
しかしもうすぐ生まれると聞いてからはや4時間が経とうとしていた。
日付はクリスマスイブからクリスマスに変わる瞬間だった。
分娩室から産声が聞こえる。
その場にいた皆が立ち上がる。

看護師の学のお母さんが抱きかかえている。

「おめでとう、男の子と女の子だよ」

皆が一目見ようとそばに寄る。

「皆今日は帰って。空達はパーティに呼ばれてるんだろ?少しでも休んでおいた方がいい」
「父さんはどうするの?」
「母さんについてるよ。労ってあげないと」

そういって父さんは笑顔だった。

「もう子供の名前は決めてるのかい?」
「今回はお前と愛莉の希望でつけてやりなさい」

お爺さん達が言う。

「もう愛莉と考えてあったんだ。男の子だったら『冬吾』女の子だったら『冬莉』」

弟の名前は冬吾、妹は冬莉で決まりみたいだ。
翼が袖を引っ張る。

「今はパパと愛莉の3人にしてあげよう?」

翼がそう通信してきた。

「じゃあ、何かあったら知らせてくれ」
「わかった」

お爺さんと父さんが言うとお爺さんは僕達を車に乗せて家に帰る。
今年のクリスマスプレゼントは新しい家族の一員だったようだ。
家に帰ると僕達は部屋に帰って寝る。

「空の気が変わった?」

翼がそんな伝言を送ってくる。

「なんで?」
「やっぱり赤ちゃん欲しいのかな?って……」

そうか、僕と翼じゃ子供は作れない。
それが翼の不安につながってるみたいだ。

「よかったじゃないか?」
「え?」
「この家の跡取り出来るよ」

僕達は何の心配もなく付き合える。

「……そうだね」

翼は喜んでいた。

「ねえ空」
「どうした?」
「ありがとうね、私を選んでくれて。私幸せだよ」
「そんなの分かってるさ」
「そっか、常にリンクしてるもんね」
「ああ、いつもそばにいるから」
「ありがとう」
「じゃあ、そろそろ寝ようか?」
「おやすみなさい」

そうして翼の幸せな心を感じ取ったまま。僕は眠りについた。

「空、朝だよ」
「もう冬休みだよ?」
「今日はホテルでパーティでしょ。それなりの服装で行かなくちゃ。お偉いさんも来るって言ってた」

そんな大事なパーティにどうして僕達が招待されたんだろう?
美希の希望らしい。
僕達は冬休みに入っていた。
美希と学、大地と天音、光太と麗華、天と繭達SHのメンバーはも来るそうだ。
正確に言うと父さん達のグループ「渡辺班」が一斉に集まるらしい。
場所は街外れのホテル会場。
志水家と江口家が主催してるらしい。
遠方から来る人の為ホテルの部屋も準備してあるのだとか。
さぞかし豪勢なパーティなんだろうな。
起きると朝ごはんを食べてから宿題をこなす。
片桐家ではイベントの日に宿題をしなさいなんてことは言わない。
母さんが予定表を組んでくれてそれに合わせて皆こなす。
パーティは夕方から始まる。
昼ご飯を食べると支度を始める。
天音はピンク、翼は水色のパーティドレスを着る。
僕はフォーマルスーツを着る。
石原家が送迎を手配してくれていて送迎の人が来た。
僕達は車に乗り込む。
そしてパーティ会場に向かった。
受付を済ませて中に入ると既に人でごった返していた。
ジュースを受け取るとそれを飲みながら美希たちが来るのを待っていた。

「お、やっと知り合いが見つかった!」

光太と麗華さん達が来た。
瑞穂と粋も一緒だ。

「こんなに豪華だとは思ってなかったぜ」

光太が言う。

「皆さん長らくお待たせしました」

司会役の人が言う。
宴の始まりの様だ。

(2)

「こちらがお嬢さんの婚約者ですか、堂々とした少年だ」

婚約をした覚えはないんだけどな。
だけどまだ小学生だぞ。
ちょっと早いとおもうのだが。
しかしそんなこと美希には関係ない様だ。
終始にこやかに挨拶をしている美希。

「学緊張してる?」

美希が聞いてくる。
緊張するなって方が無理だろ。
周りには各界の有名人が集まっている。
美希の両親の知り合いらしい。

「学君。そんなに硬くならないでいいのよ。もっと堂々としてなさい!」

美希の母さんが言う。
だけど表情は硬いまま俺達は挨拶をしていた。
まさか小学生に都市銀行の頭取が挨拶に来るなんて誰が想像した?
高々小学生に県知事が挨拶に来るなんて誰が想像する?
けれど美希はなれているようだった。

「美希、久しぶり」
「あ、蒼さん」

美希が蒼と呼ぶその人物は体格も良く身長も高い若いながらにして風格のある人物だった。
その隣には気品のある、気位の高そうな女性がいる。美人だ。

「美希、この方たちは?」

僕は美希に聞いていた。
美希が紹介してくれた。
江口蒼。江口重工の代表取締役。美希の母さんの従兄らしい。
女性は江口紀子。最大手銀行グループ・江口銀行の代表取締役会長を務めてるらしい。
江口重工は自動車・飛行機のエンジンから戦車、戦艦、ありとあらゆるものを作るそうだ。
国内シェアの8割を占めているらしい。
東京に居を構えていたのだが、田舎ののんびりした空気で子供たちをのびのびと育てたいと考えて引っ越して来たそうだ。

「うちの子供たちを紹介するよ」

蒼さんは二人の女子を三人の男子を紹介した。
まずは双子の姉妹。
江口美帆。気品のある少女だ。僕達と同学年らしい。
もう一人は江口美雨。おしとやかな少女。二人に共通して言えることは美人だという事。
そして三つ子の男子。
江口亘。真面目そうな男の子。風格が出ている。
次に江口亨。プライドが高そうな子だ。
最後に江口陸。スポーツ刈りの真面目そうな子だけど髪を茶髪に染めているところを見るとそうでもないらしい。
ちなみに江口は石原家のお母さん石原恵美の旧姓。
気紛れで作った芸能プロダクションが大手にのし上がったり手腕は強引なのは美希の母さんの実家・江口家と変わらないらしい。
俺達は5人と会話をしていた。
3学期から俺達の小学校に転入するらしい。
美雨さんはテニススクールに通ってるそうだ。
陸君は野球でピッチャーをやっているらしい。末はプロ野球選手を目指しているのだとか。
多分慣れると思うよ。
そのうちメジャーリーグに行ったりするんじゃないか?
美雨さんもグランドスラムを制覇したりするんだろうな。
ちなみに美帆さんはあまり運動をしないらしい。
運動神経がどうとかの問題じゃなくて体が弱く外にいるのが苦手らしい。
食事をしながら歓談していると時間が来た。
2次会は街中でやるらしいが俺達には関係ない。
美希と一緒に送迎の車に乗って帰る。

「3学期がたのしみだね」

美希が言ってる。
そうだま、きっと大人の事情が発動して皆クラス一緒になるんだろうな。
美希の家に着いた。

「じゃあ、今度は年越しパーティの時に」
「今夜はありがとう」
「いえ、じゃあおやすみなさい」

美希が家に入るのを確認すると。俺は家に入った。
服を着替えて風呂に入ると、ベッドに入る。
美希におやすみとメッセージを送って。眠りについた。

(3)

天はフォーマルスーツに身を包み親と一緒に会場に現れた。
私は天の両親に挨拶をする。
天のお母さん・如月伊織は中学校教師をやっているらしい。
お父さん:如月翔太は父の事業を継いだ。
如月君の家は観光・ホテルの事業をやってるらしい。
このホテルの提供も如月家のものなんだそうだ。

「ど、ドレス姿似合ってるよ。綺麗だ」

天もそんな言葉が言えるんだね。

「ありがとうございます。天も素敵ですよ」
「ありがとう」
「おじさん達先輩に挨拶とかあるからあとは繭ちゃんに任せて良いかな?」
「わかりました」
「天、行儀よくしなさいね」
「わかってるよ」

天のお母さんが言うと天の両親は他の人にあいさつ回りを始めた。
天は料理をとっている。

「繭ちょっといいかしら?」

母様に呼ばれた。

「どうなさいました?」
「そうね、まずそこのあなたの彼氏を紹介してもらえないかしら?」

母様が言うので紹介した。

「今交際させてもらっている如月天君です」
「ど、どうも初めまして、如月です」

天でも緊張するのね。
もっとリラックスしていいのに。
母様は品定めするかのように天を見ている。
そしてフッと笑った。

「まあ、あなたが見初めた子なら間違いないでしょう。欠けてる部分はあなたがどうにかなさい」
「そのつもりです」

話はそれだけなのだろうか?
私は母様のそばにいる人達を見た。
それに気づいた母様が言った。

「紹介するわ志水葵とその子供達よ」
「初めまして繭ちゃん。ほら、あなた達も挨拶しなさい」

葵さんが言うと3人は挨拶した。
双子の志水竜馬君と志水卓也君、その一個下の志水拓海君。
年齢的には小泉君の兄弟と一緒なのかな?
葵さんはUSEの看板歌手・ALICEのSPを務めている。
旦那さんとは離婚して今はシングルマザーらしい。
家事は長男の竜馬君がやってるらしい。
物凄い小学3年生だ。

「3学期から繭と同じ小学校に通うから面倒見てやってちょうだい」

母様が言う。

「分かりました」
「じゃあ、ちょっと話をしてて。母さんも色々挨拶しないといけないから」

母様と葵さんはそう言って他の人に挨拶にいった。
そんな母様たちを見ている私達。
どうしたらいいか考えていると粋と遊に会う。
ちょどいい。
志水君達を紹介した。

「だったら、SHに招待しておいたらいいんじゃないか?」

遊が言う。
それもそうね。

「志水君達スマホ持ってる?」
「持ってるけど」

志水君達が言うと連絡先を交換してグループに招待する。

「セイクリッドハート?」

竜馬君が聞く。
私はSHについて簡略して説明した。

「そういう事なら」

2人はSHに加入する。

「困ったことがあったら、SHに相談してください。大抵の事は解決出来ると思うので」

2人に言うと2人は頷いた。

「ま、そういうで。3人ともついてこいよ。折角だからご馳走食おうぜ」

遊と粋が言うと3人はついて行った。
ああ見えて私達に気づかってくれたみたい。

「天。これ私からのクリスマスプレゼント」

そう言って袋を渡す。

「何これ?」
「家に帰ったら開けてください」
「ありがとう……ごめん、俺何も用意してない」
「お気になさらず。私の一方的な好意だから」
「わかった」

その後二人で話をしていると時間が来たみたいだ。

「じゃあ、今度は年越しパーティで」
「ええ、また」

大人たちは忘年会、年越しパーティ、新年会と年末年始は忙しいみたいだ。

「繭、帰るぞ」

祈に言われて送迎の車に乗ると私達は家に帰る。
家に帰って風呂に入るとスマホを見る。
画像が送られていた。
私がプレゼントした手編みのニット帽をかぶった天の写真。

「似合うかな?」

メッセージも来てた。

「ええ、とても」

そう返した。
返事は帰ってこなかった。
もう寝ている時間か。
私もベッドに入って眠りにつく。
きっとすぐに夜は空ける。

(4)

「翼ちゃんちょっといいかしら?」

翼と料理を食べていると美希のお母さんが翼に声をかけた。
美希のお母さんの隣には知らない女性が立っている。

「ああ、紹介するわね。林田英恵。私の従姉」

美希のお母さんがそう言うと、林田さんは軽く会釈をするので僕達も返した。

「空君、ちょっと翼ちゃん借りてもいいかな?」

翼一人に用があるらしい。
何かあったら心で伝えてくれるから別に問題ない。

「じゃあ、ちょっと借りるわね」

そう言って翼を連れて離れていった。
そうなると僕は孤立する。
天音は大地と一緒に行動してる。
まあ、適当に食べてればいいかと思ったらそうでもないらしい。

「空、翼はどうしたんだ?」

振り返ると水奈が1人でいた。

「ああ、美希のお母さんに呼ばれて、何か話があるみたい」
「そうか……」
「水奈は1人?」
「まあな」

水奈はそう言って笑った。
無理もない、遊はなずなと交際をはじめたし、粋も花と付き合いだしたそうだ。
最初きいた時には驚いた。
何があったんだろう?と天音も頭を悩ませていた。
ちょうど僕も1人だったし、水奈の話し相手になることにした。

「なんかすごい世界に入り込んだね」
「そうだな……全部空の父さんが築いてきたものらしいよ」

え?

「渡辺班。小さなグループを地元を支配するレベルの巨大なグループにしてしまった立役者だって皆言ってる」

父さんは何をやったんだろう?

「SHもいつかこんな風になるのかな?」
「……光太次第じゃないのか?」
「私は空次第だと思う。自覚はしてないみたいだけど」

SHも結局は天音や翼、それに僕が求心力になっていると水奈は言う。

「そんな事無いよ」
「私の父さんも言ってたんだ……」
「水奈のお父さんが?」

僕の父さんは凄い才能を持っているのにそれに甘えることなく、自ら険しい道を進んでいく。
そんな父さんに惹かれて次々と人が集まっていったそうだ。
傍から見たら逃げの一手でも、見る人が見れば常に戦ってる。
その後にはいつも母さんがいた。
母さんが父さんを支えていた。

「空なら翼がいるから安心だろ?」
「そうだね」
「……大事にしろよ」
「分かってる」

なんか水奈が少し寂しそうにしているのは気のせいだろうか?
きっと水奈にはまだ恋人と呼べる存在がいないのがそうさせるのだろうか?
そんな事を考えていると翼が帰ってきた。

「水奈と何話していたの?」

翼が聞いてきた。

「父さんが凄いって話」
「ふぅん……そろそろ帰ろうか。天音探して。私疲れた」

翼でも気疲れする事あるんだな。

「じゃあ、水奈また」
「ああ、またな」

そう言って水奈と別れると僕達は家に帰る。

「なんの話してたの?」

特に何の意味もないけど話題がなかったから翼に聞いてみた。

「大した話じゃないよ」

翼の言う通りかもしれない。
でも気になったのはその話題に対して何重にも鍵をかけていたから。
聞いたらいけなかったことなのだろうか?
その日翼は口数がすくなかった。
まるで何かを思い詰めているように。
ちゃんと聞いてやるべきだったんだろうか?
人生の選択肢はいつどこであるかわからない。
一つでも見落とすと取り返しのつかないことになる。
この日翼は何か重大な決断を迫られているようだった。

(5)

「天音」

私はひたすら食べ続ける天音に声をかけた。

「あ、祈。どうした?」

天音の隣には大地がいる。

「まあ、暇だからさ」
「そうか?私は忙しいけどな」

そう言いながら食べ続ける天音。

「他の皆は?」
「彼氏と夢中だよ」
「なるほどな」

その時天音の手が止まった。

「そういや、祈には彼氏いないな」
「まあな」
「作らないのか、作れないのかどっちだ?」
「今はめぼしい男いないからな」
「なるほどな。ま、そのうち出来るよ。慌てる事ないって」

天音は再び食べだした。

「天音は食べてばっかりで大地の相手しなくていいのか?」
「大地は大地で忙しいみたいだしな」

確かに天音が食べている間、ご子息ご令嬢と言った感じの子達と挨拶してる。
偶に天音を紹介してるようだが。
私も人の事言えない。
親と一緒にいたら同い年くらいのご子息が挨拶に来る。
どうもそういうタイプの男は苦手だ。
適当にあしらっているのも面倒になったんで天音を探してた。

「なあ、祈」

天音が聞いてきた。

「どうした?天音」
「うちのパパって何やったんだ?」
「え?」
「日本バスケで功績残して国民栄誉賞受賞したってのはきいてるけどそれだけだろ?他の親の方がよっぽど立派だぜ?」

国民栄誉賞受賞したってだけで十分凄いと思うぞ。

「今じゃただの個人経営の税理士事務所社長なのに。やたらお偉方から『今日は片桐君来てないのか?』って聞かれてさ。うちのパパ何やったんだ?って思ってさ」
「なるほどな……あまり自分の子供には話さないか」

恰幅のいいおじさんがきた。
うちの父さんも一目置いてる人だ。
渡辺正志・市役所の課長補佐。渡辺班を作った人。
天音は知っているらしい。

「一言で言うと渡辺班の礎を作った人だな」

渡辺さんが言う。

「そうね、『片桐班』って名前がついていてもいいくらい渡辺班に貢献した人よ。皆がこうして集まってるのも片桐君のお蔭と言ってもいいくらい」

母さんが言った。

「人の心を巧みに操り、人を惹きつけて、様々な人を集めた立役者だ。ここにいる人は少なからず冬夜の力を借りてる」

渡辺さんが言う。
いざとなったら自ら陣頭に立って果敢に指揮をとったり。命がけで仲間を守ったんだという。

「今は子供3人の世話に奔走するただの父親みたいだけどな」

渡辺さんがそう言って笑う。

「私達酒井家もそうだけど、石原家、地元銀行、西松医院、白鳥グループ、如月グループは片桐君の為なら即動くでしょうね。本人が望まなくても。そのくらいのカリスマの持ち主よ」

母さんが言う。
天音の父親って凄いんだな。

「今のSHだってそうじゃないのか?少なくとも天音が中心になって動いてるようだが」

渡辺さんが聞く。たしかにそうだ。少なくとも4年生は皆天音に惹かれて動いてる。

「そういう血の持ち主なんだろうな。冬夜は」

天音はそれをじっと聞いていた。

「おっとそろそろ時間だ。おじさん達は二次会に行くから。また年越しパーティで会おう。冬夜によろしくな」

そう言って渡辺さんは行ってしまった。

「お前の親凄いみたいだな」
「そうだな……」
「天音!そろそろ帰るよ」

翼が天音を呼んでる。

「じゃあ、私行くわ。またな」

そう言って天音は行った。
3人の能力は天の授かりもの。父親からの贈り物なんだろう。
母さんたちの学生時代か、ちょっと興味わいたな。帰ったら聞いてみよう。

(6)

「冬夜さんもお疲れでしょ?たまには子供たちの相手もしてあげて」

愛莉が言うから病院から家に帰る。
今日は江口家のパーティに行くって言ってたな。
もう帰ってる頃だろうか?
家に帰ると子供たちが待っていた。
クリスマスケーキを用意していた。
子供たちとそれを食べてお風呂に入って寝ようと思ったら子供たちがまだ起きていた。

「どうしたんだ?もうそろそろ寝ないと明日起きれないぞ?」

父親として当たり前のことをいって僕も寝ようとした。

「パパ、ちょっと話があるんだ」

天音が言う。
何かあったのか?
子供たちの様子がおかしいのでリビングのソファに座る。

「どうしたの?」
「今日のパーティで色々な人に会った」

天音が言う。

「皆口々に言うの『今日は冬夜はきてないのか?出産おめでとう。冬夜に伝えてくれ』って」
「ありがとう、後でメッセージ送っておくよ」
「パパは昔オリンピックで金メダルをとって国民栄誉賞受賞したって話は聞いた」
「ああ、そうだね」
「サッカーでもファンタジスタと呼ばれるくらいの天才だったって水奈の父さんから聞いた……」
「天音の言う通りだよ。サッカーはあまり楽しくなかったけどね」

それがどうかしたのかい?

「おかしくない?みんな大きな会社の社長だったり銀行の役員だったり建築会社の管理職だったり凄い人なのにみんなパパを褒めるんだ」
「そうだったのか」
「渡辺さんから聞いた。『渡辺班』の立役者だって」
「パパはいつも渡辺君の手助けをしてただけだよ。人を引き寄せたのは渡辺君の人柄だろう」
「それが知りたい。パパは何をしてたの?どうしたらパパみたいな誰からも注目される存在になれるの?」

天音は本心からそれを知りたいらしい。
他の2人も少なからずそれを望んでいる。

「……天音はSHの一員なんだってね?」
「うん」
「天音はSHの為に何かしようと思ったことはあるのかい?」
「……考えてなかった」

僕はくすっと笑った。

「僕も同じだよ。面倒事は渡辺君に押し付けて自分勝手にやっていた。ただ一つだけ決めていた」
「それは何?」
「自分に嘘をつかない。自分の信念に従って動く。……行きついた先は『誰かを助けるのに理由がいるかい?』だったよ」

泣いてる女の子の涙を止められるなら、誰かを助けを求める声を聞いたのなら手を差し伸べよう。
三人とも真剣なまなざしで聞いていた。

「でも天音たちにそれをしろとは言わない。天音たちはまだ道の途中だ。手探りで答えを探していかなければならない」

天音や翼、空達にも譲れない物、譲れない事が出来るから。それを必死に守ればいい。
誰かの賞賛を受けたくて動くんじゃない。自分の心に従って動きなさい。決して嘘偽りをしてはいけない。

「譲れない物、譲れない願いならある」

翼が言った。
多分空の事だろう。

「これから3人には様々な試練が訪れるだろう。絶対に揺らぐんじゃないよ。その為なら自分のパートナーに甘えても構わない」

お互いを思いやる魂があるのなら。

「父さんの譲れない物ってなんだったの?」

空が聞いてきた。
僕は躊躇わず答えた。

「愛莉だよ」
「……じゃあ、僕は翼を守ればいいんだね」
「誓えるか?一生を賭して翼の為に生きれると誓えるか?」

翼は不安だったみたいだ。
何か悩みを抱えている様だけど巧妙に隠している。
パーティで何かあったのだろうか?
だけど空の心は決まっているようだ。

「たった今から誓うよ」
「……わかった。頑張りなさい」

僕はそう言った。

「パパは小学生時代は何してたの?聞きたい」

天音が言う。

「父さんの小学生時代は普通の小学生だったよ。また天音たちが中学生になった時のお楽しみにしておこう」
「……わかった!じゃあ、そろそろ寝るね。パパ有難う」
「ああ。おやすみ」

3人は部屋に戻っていった。
そう、まだこれは序曲に過ぎない。
幼い未熟な彼等にどれだけのものを授けることが出来るだろう?
本当の始まりはそれらを手にしてから。
あの子達が大人になるまでの果てしない物語。
失ってしまうこともあるだろう。
守り切れないことがあるだろう。
大事なものを失って……身も心も疲れ果て……けれどそれでも決して捨てることが出来ない想いがあるならば、それだけが誰が何と言おうとそれこそが唯一の真実。
僕達に出来ることは。この先何度も立ちはだかる壁を前に立ちすくむ子供たちの背を押してやるだけ。
答えは子供たちが見つけていななければいけない。
その術を今は子供たちに授けよう。
それが未来を託すという事なのだろうから。
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