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1stSEASON
風吹けば恋
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(1)
「おはよう空」
「おはよう翼」
今日の翼は浮かれている。
凄く気分がうきうきしている。
理由はすぐにわかった。
今日は2月14日
バレンタインの日。
「はい、これあげる」
翼からチョコレートを受け取る。
「ありがとう」
「じゃ、早く着替えなよ」
「うん、先行ってて」
「は~い」
翼が部屋から出ていくと着替える。
もうそんな時期なんだな。
着替えると鞄を持ってダイニングに行く。
母さんからもチョコレートをもらえた。
天音は今年はないらしい。
天音も大地だけにあげることにしたそうだ。
その代わり父さんは母さんから特別に手作りのガトーショコラをもらっていた。
「ありがとう愛莉」
父さんは嬉しそうだ。
朝ごはんを食べると準備をして翼たちを待つ。
水奈が来る頃に翼たちが降りてくる。
「行ってきま~す!」
天音の元気な声が響き渡る。
純也たちを迎えに行くと学校へ向かう。
「あれ?水奈は今年は義理チョコ配らないのか?」
天音が水奈に聞いていた。
水奈は普通に答えた。
「配る必要ないだろ?大体の男子が彼女持ちだし……それにいないやつも気がある女子いるみたいだから気を使ってみた」
「そうなのか?」
「まあ、予想だけどな。普段の態度見てたらなんとなく分かんだろ?」
そう言えば6年生組も大体カップルできてしまったな。
「茜は誰か渡す人いるのか?」
「いるよ」
え?
「誰だよ!?」
天音が聞いていた。
「内緒」
翼と純也は見当がついてるみたいだ。
学校に着くと昇降口でそれぞれの教室に分かれていく。
その時水奈が背後から声をかけてきた。
「昼休みに屋上に来て欲しい」
え?
振り返った時には水奈はもういなかった。
「……行ってあげなよ」
翼が言う。
不思議な事に翼は特に怒ってる様子はない。
一体どうしたんだろう?
教室にはいつものメンバーが集まっていた。
学の話を聞いていた。
恋の意識が変わったらしい。
最近は要と遊んでることが多いらしい。
学がいなくても自分で何でもするようになった。
洗濯物もそそくさと自分のものを取ってたたんで仕舞うようになった。
料理とかも学をみて学んでいるらしい。
「そういう年頃なのかもしれないね」
翼が言う。
そんな話をしていると高槻先生が教室に来た。
そして授業があって昼休みになる。
水奈と約束していたことを思い出した。
「翼も来るんだろ?」
聞くまでもないか。
「私は遠慮しとく」
へ?
「水奈も様子からして私はいない方が良いみたいだから1人行って」
その時の翼の心はとても優しい物だった。
水奈が何をしようとしているのかもわかっているようだったけど、結局教えてくれずに僕は屋上に向かった。
(2)
遊や粋がなずなや花にチョコをもらっている。
普通はチョコはこっそり渡す物。
放課後呼び出したり家に直接手渡しにいったり。
愛莉もパパも家に持って行ったらしい。
しかしこのクラスではそんな常識は通用しなかった。
逆にもらえないやつが哀れまれる状態だった。
そんな奴の救済に私は義理チョコを去年は準備していたのだが、今年は一人に絞る事にした。
天音も大地に渡してた。
クラスに好きな人がいることが羨ましいと思った。
私は一緒に登校することも休憩時間に会話することも給食を一緒に食べる事すらできない。
それどころかまだ自分の気持ちを伝えられずにいた。
桜子が教室に来た。
授業が始まる。
最近はFGの連中が桜子をからかっているだけ。
喜一と光太が交渉した結果だ。
お互い不干渉で行こう。
約束を破ったら即戦闘開始。
それで両陣営のトップが和解したらしい。
昼休みの時間になった。
「悪いちょっと用事」
「まさか水奈にもついに恋人出来たのか!?」
天音が聞いてきた。
翼には筒抜けだったみたいだから、もしかしたら天音にも……と思ったんだけど違うみたいだ。
「まあな、ついてくるなよ」
「……そうだな。後で教えろよ」
気づいたのか気づいてないのか分からない天音の返事を背に屋上に向かった。
まだ空は来ていなかった。
こんなにドキドキしたのは生まれて初めてだ。
好きな人にチョコレートを渡すってこんなに緊張するものなのだろうか?
しばらくして空がやってきた。
空に声をかける。
空は私に気がついてこっちにやってきた。
「で、用って何?」
空は今日が何の日か知らないのだろうか?
翼にもらったんじゃないのか?
そんな空に小箱を渡した。
「チョコだよ。光栄に思え。今年は空だけだ」
「え?」
空の表情が険しくなる。
多分そんな事だろうと思ってた。
「勘違いするな。言ったろ。空には翼以外の仮の彼女が必要だって」
「あ、ああ。そういう事か」
そう言って安心する空を見るのが嫌になる。
そんな口実でしかチョコを渡せない自分に嫌気がさす。
「……あれから翼とはどうなんだ?」
自分の気持ちに感づかれないように話題を変えた。
空も決意したらしい。
翼がいなくても一人でやれるから。
いつもそう翼に語りかけてるそうだ。
案の定翼は心を閉ざしたけど寂しそうな顔をしているのはすぐにわかるらしい。
約束の期限まであと1月。
私もそろそろ覚悟を決めなければいけない。
「じゃ、僕もう行くね。ありがとう」
「空!」
私は空を呼び止めていた。
空は立ち止まってこっちを見る。
「もう少しだけ時間をくれ」
「何の話?」
「気にしないでいい、私の問題だから。時が来たら伝えるから」
半分言ってるようなもんじゃないか。
だけど空は全く気づいてくれない。
「わかった」
そう言って空は教室に戻っていった。
私も教室に戻ると天音が来た。
「どうだった?」
「……ちゃんと渡せたよ」
「で、誰なんだよ?」
「それは秘密だ」
「なんだよ、どうせSHの誰かなんだろ?」
「天音、あんまり無理強いするもんじゃないぜ」
遊が加勢してくれた。
「それもそうだな」
そう言って天音は祈達の所に行く。
「悪い……助かった」
「気にするな。このくらいなんてことない」
遊はそう言って私の肩をポンと叩く。
学校が終ると天音達と家に帰る。
今年は父さんにもチョコを渡した。
れっきとしたチョコレート。
1人で感激してた。
部屋に入るとベッドに横になってスマホを弄る。
今日はみんな個人チャットでやり取りしてるんだろう。
退屈だ。
最近天音もノリが悪い。
あいつの中で何か革命が起こったらしい。
風呂に入ってジュース飲んでテレビを見ながらスマホを弄る。
空から個別メッセージが来た。
画像付きだ。
私がプレゼントしたチョコの画像。
ありがとうってメッセージが添えられていた。
「気にするな、翼の為だから」
自分に言い訳しているようなメッセージを送った。
「お返し何がいい?」
翼の時と違って他人には何を渡せばいいのかわからないらしい。
「……考えておくよ」
そう返した。
窓に映るは白い月。
月よ私達は何がしかの意味をさまよい求めては今もこうして血を通わせ生きている私たちのあるべくしてある意味を誰が知ろう。
(3)
2月14日。
女子から男子に好意を伝える日。
他の国では違うらしいけど日本ではそういう風習らしい。
日本でもその文化は変わりつつあるようで、最近は女子同志で交換する友チョコが主流になっている。
だけどこのクラスにはそんなの関係なかった。
大好きなあなたにだけあげる。
そんな女子が大半を占めていた。
それも教室の中で大っぴらに。
呼び出してドキドキする感覚も大事だけど断られても冗談めいて誤魔化すことが出来る。
そんな風に考えたのかもしれない。
私も席についた天に堂々と渡した。
天ははずかしそうに「ありがとう」と受け取ってくれた。
そんな天を見て私は嬉しく思う。
自分のイベントが終ると席にもどって観察していた。
クラスでチョコをもらってないのはFGのメンバーくらいじゃないだろうか?
あとは転校して間もない人達。
クラスの中は温かいムードに包まれていた。
昼休みもそれぞれの二組に分かれて給食を食べていた。
クラスが温かいムードに包まれる。
そんな雰囲気に嫌気がさしたのかFGの連中はいない。
もともとクラスメートの中にFGのメンバーなんてそんなにいなかったけど。
終礼が終ると下校する。
変える方向のカップルは一緒に帰る。
お互い照れくさそうに。
私達も一緒に帰った。
ご褒美だろうか?
天は手をつないでくれた。
そして家の前で別れる。
「またね」
「ああ、また明日」
そう言って帰る天の後姿を見送って家に帰る。
しばらくすると、天からメッセージが届く。
「チョコレート美味しかったよ。ありがとう」
そう言ってくれると信じてた。
いつか天に夕食を作ってあげよう。
お弁当を作ってあげよう。
そんな夢に思いを馳せながら宿題をしていた。
(4)
2月14日。
バレンタインデー。
クラスは皆温かい空気に包まれていた。
クラスの中はカップルだらけ。
それぞれの想い人にチョコレートと気持ちをプレゼントしてた。
友チョコはなかった。
ただ思っている相手に渡すだけ。
純也も彼女の石原梨々香にチョコをもらっていた。
嬉しそうにしてた。
梨々香に遠慮して純也にはチョコをあげなかった。
私もまたチョコレートをあげる人がいた。
転校してすぐに出来た恋人の佐原壱郎
下駄箱に入れておくとか机に忍ばせておくとかそういう面倒な事はしない。
このクラスで色恋沙汰を冷かすのはFGのメンバーくらいなものだ。
そのFGすらSHのメンバーには手出しできない。
私は彼が来るのを待った。
そして彼が来ると彼の席にいく。
「はい、壱郎。これあげる」
そう言ってチョコレートを渡す。
この一言を言うのにどれだけ勇気がいるだろう。
彼は喜んで受け取ってくれた。
「ありがとう」
その一言が夜遅くまで頑張ってく作った疲れが吹き飛んでいく。
「あのさ、茜。前から思ってたんだけど……」
まだ何かあるの?
「付き合うって何をすればいいの?」
素朴な疑問だった。
住所も離れてる。
校則で休日に会う事も出来ない。
それを彼は気にしていた。
「大丈夫だよ、心配しなくてもいいんだよ。私達はいつでも繋がっている」
「え?」
「何のためのメッセージ?チャットがあるの?私達だから見える恋がある」
「あ、そっか」
壱郎は納得したようだ。
「じゃ、よろしくおねがいします」
壱郎は手を差し出す。
「ええ、ありがとう」
私は壱郎と握手する。
壱郎の手の温もりを知った時、恋というものを理解した。
私は既に恋をしていたんだ。
そのまま手をつないで昇降口に着く。
そして私達は分かれる。
「じゃあ、また今夜」
「うん」
家に帰ると、その晩チャットで仲間に知らせる。
皆大人の人だった。
「私恋をしました」
みんな「おめでとう、頑張って」と励ましてくれた。
そして壱郎からメッセージから届く。
「えっと、何て呼べばいいのかな?」
その一言で私は笑っていた。
「普通に茜でいいよ。私も壱郎って呼ぶから」
いつも通りでいいんだよ。
「わかった。今もチャット中?」
「うん、それとちょっとお仕事しながらかな?」
私達はホワイトハッカー。不正にアクセスしようとする輩に「お仕置き」をする仕事。
「邪魔したかな?」
「大丈夫、それより覚悟してね」
「何を?」
「私狙った獲物を逃した試しは一度もない」
何処までも追いかけて捕獲する。
だけど偶には追いかけられたい。
私を攫って欲しい。
だから攫って、迫って、このまま。
純也は眠くなったようだ。
私もそろそろ寝るか。
「じゃあ、また明日」
「おやすみ」
そう言ってスマホを机にセットする。
チャットでもお休みと言って退室する。
「茜は上手く言ったのか?」
純也が聞いていた。
「うん、上手く言ったよ」
「SHの皆上手く言ったそうだよ」
「そうなんだ」
これからが大変だな。
もうじき春が来る。
今年の春は桜に包まれて暖かな日々を送る事だろう。
2人巡り逢えた。
2人探し合えた。
闇に光る、空に咲いた君の命火。
だから弾けるままに、煌めくままに私のハートを打ちぬいて。
二度とない激情を君の夢の中で踊りたい。
同じ時を生き抜いていく覚悟して。
奪って、縛って、まだまだ。
初めて手に入れた恋だから。
満ち足りた衝動を離さないでね。
君史上最速で捕まえてほしい。
くだらないシガラミなんて飛び越えて。
私を攫ってね。
このまま離さないで。
もうすぐ私達にも春がくる。
「おはよう空」
「おはよう翼」
今日の翼は浮かれている。
凄く気分がうきうきしている。
理由はすぐにわかった。
今日は2月14日
バレンタインの日。
「はい、これあげる」
翼からチョコレートを受け取る。
「ありがとう」
「じゃ、早く着替えなよ」
「うん、先行ってて」
「は~い」
翼が部屋から出ていくと着替える。
もうそんな時期なんだな。
着替えると鞄を持ってダイニングに行く。
母さんからもチョコレートをもらえた。
天音は今年はないらしい。
天音も大地だけにあげることにしたそうだ。
その代わり父さんは母さんから特別に手作りのガトーショコラをもらっていた。
「ありがとう愛莉」
父さんは嬉しそうだ。
朝ごはんを食べると準備をして翼たちを待つ。
水奈が来る頃に翼たちが降りてくる。
「行ってきま~す!」
天音の元気な声が響き渡る。
純也たちを迎えに行くと学校へ向かう。
「あれ?水奈は今年は義理チョコ配らないのか?」
天音が水奈に聞いていた。
水奈は普通に答えた。
「配る必要ないだろ?大体の男子が彼女持ちだし……それにいないやつも気がある女子いるみたいだから気を使ってみた」
「そうなのか?」
「まあ、予想だけどな。普段の態度見てたらなんとなく分かんだろ?」
そう言えば6年生組も大体カップルできてしまったな。
「茜は誰か渡す人いるのか?」
「いるよ」
え?
「誰だよ!?」
天音が聞いていた。
「内緒」
翼と純也は見当がついてるみたいだ。
学校に着くと昇降口でそれぞれの教室に分かれていく。
その時水奈が背後から声をかけてきた。
「昼休みに屋上に来て欲しい」
え?
振り返った時には水奈はもういなかった。
「……行ってあげなよ」
翼が言う。
不思議な事に翼は特に怒ってる様子はない。
一体どうしたんだろう?
教室にはいつものメンバーが集まっていた。
学の話を聞いていた。
恋の意識が変わったらしい。
最近は要と遊んでることが多いらしい。
学がいなくても自分で何でもするようになった。
洗濯物もそそくさと自分のものを取ってたたんで仕舞うようになった。
料理とかも学をみて学んでいるらしい。
「そういう年頃なのかもしれないね」
翼が言う。
そんな話をしていると高槻先生が教室に来た。
そして授業があって昼休みになる。
水奈と約束していたことを思い出した。
「翼も来るんだろ?」
聞くまでもないか。
「私は遠慮しとく」
へ?
「水奈も様子からして私はいない方が良いみたいだから1人行って」
その時の翼の心はとても優しい物だった。
水奈が何をしようとしているのかもわかっているようだったけど、結局教えてくれずに僕は屋上に向かった。
(2)
遊や粋がなずなや花にチョコをもらっている。
普通はチョコはこっそり渡す物。
放課後呼び出したり家に直接手渡しにいったり。
愛莉もパパも家に持って行ったらしい。
しかしこのクラスではそんな常識は通用しなかった。
逆にもらえないやつが哀れまれる状態だった。
そんな奴の救済に私は義理チョコを去年は準備していたのだが、今年は一人に絞る事にした。
天音も大地に渡してた。
クラスに好きな人がいることが羨ましいと思った。
私は一緒に登校することも休憩時間に会話することも給食を一緒に食べる事すらできない。
それどころかまだ自分の気持ちを伝えられずにいた。
桜子が教室に来た。
授業が始まる。
最近はFGの連中が桜子をからかっているだけ。
喜一と光太が交渉した結果だ。
お互い不干渉で行こう。
約束を破ったら即戦闘開始。
それで両陣営のトップが和解したらしい。
昼休みの時間になった。
「悪いちょっと用事」
「まさか水奈にもついに恋人出来たのか!?」
天音が聞いてきた。
翼には筒抜けだったみたいだから、もしかしたら天音にも……と思ったんだけど違うみたいだ。
「まあな、ついてくるなよ」
「……そうだな。後で教えろよ」
気づいたのか気づいてないのか分からない天音の返事を背に屋上に向かった。
まだ空は来ていなかった。
こんなにドキドキしたのは生まれて初めてだ。
好きな人にチョコレートを渡すってこんなに緊張するものなのだろうか?
しばらくして空がやってきた。
空に声をかける。
空は私に気がついてこっちにやってきた。
「で、用って何?」
空は今日が何の日か知らないのだろうか?
翼にもらったんじゃないのか?
そんな空に小箱を渡した。
「チョコだよ。光栄に思え。今年は空だけだ」
「え?」
空の表情が険しくなる。
多分そんな事だろうと思ってた。
「勘違いするな。言ったろ。空には翼以外の仮の彼女が必要だって」
「あ、ああ。そういう事か」
そう言って安心する空を見るのが嫌になる。
そんな口実でしかチョコを渡せない自分に嫌気がさす。
「……あれから翼とはどうなんだ?」
自分の気持ちに感づかれないように話題を変えた。
空も決意したらしい。
翼がいなくても一人でやれるから。
いつもそう翼に語りかけてるそうだ。
案の定翼は心を閉ざしたけど寂しそうな顔をしているのはすぐにわかるらしい。
約束の期限まであと1月。
私もそろそろ覚悟を決めなければいけない。
「じゃ、僕もう行くね。ありがとう」
「空!」
私は空を呼び止めていた。
空は立ち止まってこっちを見る。
「もう少しだけ時間をくれ」
「何の話?」
「気にしないでいい、私の問題だから。時が来たら伝えるから」
半分言ってるようなもんじゃないか。
だけど空は全く気づいてくれない。
「わかった」
そう言って空は教室に戻っていった。
私も教室に戻ると天音が来た。
「どうだった?」
「……ちゃんと渡せたよ」
「で、誰なんだよ?」
「それは秘密だ」
「なんだよ、どうせSHの誰かなんだろ?」
「天音、あんまり無理強いするもんじゃないぜ」
遊が加勢してくれた。
「それもそうだな」
そう言って天音は祈達の所に行く。
「悪い……助かった」
「気にするな。このくらいなんてことない」
遊はそう言って私の肩をポンと叩く。
学校が終ると天音達と家に帰る。
今年は父さんにもチョコを渡した。
れっきとしたチョコレート。
1人で感激してた。
部屋に入るとベッドに横になってスマホを弄る。
今日はみんな個人チャットでやり取りしてるんだろう。
退屈だ。
最近天音もノリが悪い。
あいつの中で何か革命が起こったらしい。
風呂に入ってジュース飲んでテレビを見ながらスマホを弄る。
空から個別メッセージが来た。
画像付きだ。
私がプレゼントしたチョコの画像。
ありがとうってメッセージが添えられていた。
「気にするな、翼の為だから」
自分に言い訳しているようなメッセージを送った。
「お返し何がいい?」
翼の時と違って他人には何を渡せばいいのかわからないらしい。
「……考えておくよ」
そう返した。
窓に映るは白い月。
月よ私達は何がしかの意味をさまよい求めては今もこうして血を通わせ生きている私たちのあるべくしてある意味を誰が知ろう。
(3)
2月14日。
女子から男子に好意を伝える日。
他の国では違うらしいけど日本ではそういう風習らしい。
日本でもその文化は変わりつつあるようで、最近は女子同志で交換する友チョコが主流になっている。
だけどこのクラスにはそんなの関係なかった。
大好きなあなたにだけあげる。
そんな女子が大半を占めていた。
それも教室の中で大っぴらに。
呼び出してドキドキする感覚も大事だけど断られても冗談めいて誤魔化すことが出来る。
そんな風に考えたのかもしれない。
私も席についた天に堂々と渡した。
天ははずかしそうに「ありがとう」と受け取ってくれた。
そんな天を見て私は嬉しく思う。
自分のイベントが終ると席にもどって観察していた。
クラスでチョコをもらってないのはFGのメンバーくらいじゃないだろうか?
あとは転校して間もない人達。
クラスの中は温かいムードに包まれていた。
昼休みもそれぞれの二組に分かれて給食を食べていた。
クラスが温かいムードに包まれる。
そんな雰囲気に嫌気がさしたのかFGの連中はいない。
もともとクラスメートの中にFGのメンバーなんてそんなにいなかったけど。
終礼が終ると下校する。
変える方向のカップルは一緒に帰る。
お互い照れくさそうに。
私達も一緒に帰った。
ご褒美だろうか?
天は手をつないでくれた。
そして家の前で別れる。
「またね」
「ああ、また明日」
そう言って帰る天の後姿を見送って家に帰る。
しばらくすると、天からメッセージが届く。
「チョコレート美味しかったよ。ありがとう」
そう言ってくれると信じてた。
いつか天に夕食を作ってあげよう。
お弁当を作ってあげよう。
そんな夢に思いを馳せながら宿題をしていた。
(4)
2月14日。
バレンタインデー。
クラスは皆温かい空気に包まれていた。
クラスの中はカップルだらけ。
それぞれの想い人にチョコレートと気持ちをプレゼントしてた。
友チョコはなかった。
ただ思っている相手に渡すだけ。
純也も彼女の石原梨々香にチョコをもらっていた。
嬉しそうにしてた。
梨々香に遠慮して純也にはチョコをあげなかった。
私もまたチョコレートをあげる人がいた。
転校してすぐに出来た恋人の佐原壱郎
下駄箱に入れておくとか机に忍ばせておくとかそういう面倒な事はしない。
このクラスで色恋沙汰を冷かすのはFGのメンバーくらいなものだ。
そのFGすらSHのメンバーには手出しできない。
私は彼が来るのを待った。
そして彼が来ると彼の席にいく。
「はい、壱郎。これあげる」
そう言ってチョコレートを渡す。
この一言を言うのにどれだけ勇気がいるだろう。
彼は喜んで受け取ってくれた。
「ありがとう」
その一言が夜遅くまで頑張ってく作った疲れが吹き飛んでいく。
「あのさ、茜。前から思ってたんだけど……」
まだ何かあるの?
「付き合うって何をすればいいの?」
素朴な疑問だった。
住所も離れてる。
校則で休日に会う事も出来ない。
それを彼は気にしていた。
「大丈夫だよ、心配しなくてもいいんだよ。私達はいつでも繋がっている」
「え?」
「何のためのメッセージ?チャットがあるの?私達だから見える恋がある」
「あ、そっか」
壱郎は納得したようだ。
「じゃ、よろしくおねがいします」
壱郎は手を差し出す。
「ええ、ありがとう」
私は壱郎と握手する。
壱郎の手の温もりを知った時、恋というものを理解した。
私は既に恋をしていたんだ。
そのまま手をつないで昇降口に着く。
そして私達は分かれる。
「じゃあ、また今夜」
「うん」
家に帰ると、その晩チャットで仲間に知らせる。
皆大人の人だった。
「私恋をしました」
みんな「おめでとう、頑張って」と励ましてくれた。
そして壱郎からメッセージから届く。
「えっと、何て呼べばいいのかな?」
その一言で私は笑っていた。
「普通に茜でいいよ。私も壱郎って呼ぶから」
いつも通りでいいんだよ。
「わかった。今もチャット中?」
「うん、それとちょっとお仕事しながらかな?」
私達はホワイトハッカー。不正にアクセスしようとする輩に「お仕置き」をする仕事。
「邪魔したかな?」
「大丈夫、それより覚悟してね」
「何を?」
「私狙った獲物を逃した試しは一度もない」
何処までも追いかけて捕獲する。
だけど偶には追いかけられたい。
私を攫って欲しい。
だから攫って、迫って、このまま。
純也は眠くなったようだ。
私もそろそろ寝るか。
「じゃあ、また明日」
「おやすみ」
そう言ってスマホを机にセットする。
チャットでもお休みと言って退室する。
「茜は上手く言ったのか?」
純也が聞いていた。
「うん、上手く言ったよ」
「SHの皆上手く言ったそうだよ」
「そうなんだ」
これからが大変だな。
もうじき春が来る。
今年の春は桜に包まれて暖かな日々を送る事だろう。
2人巡り逢えた。
2人探し合えた。
闇に光る、空に咲いた君の命火。
だから弾けるままに、煌めくままに私のハートを打ちぬいて。
二度とない激情を君の夢の中で踊りたい。
同じ時を生き抜いていく覚悟して。
奪って、縛って、まだまだ。
初めて手に入れた恋だから。
満ち足りた衝動を離さないでね。
君史上最速で捕まえてほしい。
くだらないシガラミなんて飛び越えて。
私を攫ってね。
このまま離さないで。
もうすぐ私達にも春がくる。
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25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
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