姉妹チート:RE

和希

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2ndSEASON

今日を抱きしめる旅

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(1)

初めて切る制服。
今日から僕はちょっとだけ家の外に出る。
制服を着てダイニングに行くとお爺さんとお婆さんが「あら、似合ってるじゃない」と言ってくれた。
お世辞じゃない事くらいわかる。
兄さんと姉さんも「おはよう」とやってきた。
あとから双子の妹、冬莉も制服姿でやってくる。
みんな揃うとご飯を食べる。
食事中はおとなしくありがたくいただく。
片桐家の絶対のルール。
天音姉さんですら絶対に破らない鉄の掟。
空兄さんと天音姉さんは学校に行く。
僕は母さんの仕度が済むのを待つ。
父さんも今日は同行するらしい。
午前中だけ休みをとったそうだ。
駐車場が無いからと徒歩で幼稚園に向かって歩く。
途中で誠司と会う。

「今日からよろしく」

3人であいさつする。
幼稚園に着くとクラス分けされる。
3人とも同じクラスだったようだ。
そして入園式が始まる。
突然泣き出す子もいる。
親をちらちら見てる子もいる。
じっとしているのが苦痛でしょうがない子もいるらしい。
まあ3歳児だからしょうがない。
普通はそういうものらしい。
入園式がおわると先生から説明がある。
大体の子が聞いてないけど。
一日の流れの説明を受ける。
それが終ると帰る。
この時点で大体のグループ分けが出来ている。
当たり前だけど幼稚園の名札はひらがなで書いてある。
漢字で書いてもおかしい名前もあるけどひらがなで書くとおかしさがより強調される名前もある。
大雑把に分けて「きらきらネーム」と「普通の名前」に分かれる。
自然とそうなっていた。
今日は親がいるから表立って言う子はいないけどこれから先揶揄われるんだろうな。
改名も本人の意思でできるらしいけど、そんな難しい事まだ3歳の僕達に分かるはずがない。
一生つきまとうんだと悲観する子もいる。
帰ると言ったけど母さんたちは帰らない。
庭で「ママ友」と話をしている。
母さんは顔が広くママ友が沢山いる。
その間退屈だから誠司と話をしている。
話が終ると家に帰る。
誠司とはまだ一緒だ。

「せっかくだからお昼でも行かない?」

母さんが言った。
誠司の母さんもそのつもりだったらしい。
父さんは仕事があるからそのまま家で食べたけど僕達は近所にある回転寿司に行った。
誠司はお子様ランチが食べたくてファミレスを主張したけど却下された。

「お前はどうせ途中で残すから駄目だ!」

誠司の狙いはお子様ランチじゃなくてそれについてくる玩具が目当てだった。
僕は正直どっちでもいい。
家族で行くときはファミレスに行くけど悲しい事に鉄板が熱いステーキやハンバーグはまだ食べさせてもらえない。
誠司の気持ちが分かるのは分かるけど理解はできなかった。
お子様ランチ程度じゃ僕のお腹は満たされない。
誠司は大体食事の途中で遊びだす。
僕はファミレスより回転寿司の方が好きだ。
何を食べても自由だしデザートやラーメンもついてくる。
端末で注文を取りながらひたすら食べ続ける。
誠司は途中で食べることに飽きて遊びだす。
理解が出来ない行動だった。
思う存分食べると家に帰る。
家に帰ると昼寝をする。
まだ僕達には昼寝の時間は大切らしい。
目が覚める頃には空兄さんと天音姉さんが帰ってきてる。
天音姉さんは遠坂さん家に住んでる純也兄さんと茜姉さんの所に行く。
母さんが言う。
リビングで夕方のアニメを見て時間を潰す。
父さんが帰ってくると夕食の時間。
夕ご飯を食べると母さんと風呂に入る。
風呂に入ったら眠くなる。
そうして僕の一日が終わった。

(2)

翌週から本格的に幼稚園生活が始まる。

「冬吾、行くぞ」

天音姉さんが言うと母さんたちに「行ってきます」と言って家を出る。
小学校と幼稚園は隣にある。
運動会も合同でやる。
年長組は給食を一緒に食べたりするらしい。
水奈姉さんが誠司を連れてやってくる。
幼稚園に着いて誠司と喋っていると、中山瞳子と赤西冴、高久隼人が来た。。
しかしこの幼稚園フランス人からブラジル人となんでもありの幼稚園。
両方とも誠司は知ってるらしい。
去年引退したけど誠司のお父さんはJリーグの選手だった。
同じチームの選手の子供なんだそうだ。
クララは明るくて音楽が流れると踊りだす。
生後間もないころからダンススクールに通っているらしい。
とにかく踊りが大好きな子
ジャックはサッカーが好きなんだそうだ。父親後を継いでいる。
フランス人のカルツもサッカーが好きらしい。
レベッカはピアノのレッスンをしている。
カレンはサッカーに興味はない。温泉や神社や寺、お城が大好きなんだそうだ。
というか構造物に興味があるらしい。
今もじっと柱を眺めている。
ちなみに外国人も「おかしな名前の人」の部類に入る。
僕と誠司はあまり気にしない。世界には色んな人がいることを知っているから。
色んな顔と心が世界中に溢れているから。
例えば同じクラスにあほと名のついた子がいる。
皆はそれを笑っている。

「おいで、一緒に遊ぼう『鎌倉さん』」

たったそれだけで済むだけの話。

「なんだお前?あほが好きなのか?」

そう言って冷やかす連中がいる。
そう言う奴等の心はあまり覗くなと父さんに言われてる。
汚れた心に触れたら自分まで汚れてしまうから。
むしして鎌倉兄弟の手をとって誠司たちのもとに連れて行く。
そうやって順調に友達を作って遊んでいた。
なぜか瞳子の心が悲しそうだった。
どうしたんだろう?
帰る時間になると僕は誠司達と一緒に帰る。
帰ると疲れがどっとくる。
部屋に入って昼寝をする。
そして夕食を作ってる母さんに今日あったことを話す。
楽しかったことがたくさんあった。
母さんも笑って聞いてた。
夕食の時間には父さんに同じ話を聞かせる。

「あの幼稚園そんなに大きかったか?」

父さんが不思議そうに聞いていた。
昔を知らないからわからないけど、父さんが言うんだからきっと大きな幼稚園なんだろう。
夕食が終ると母さんが片付けてる間テレビを見る。
そして母さんとお風呂に入る。
思い出した。
瞳子が悲しそうな顔をしている理由が知りたかったので同じ女性の母さんに聞いてみた。

「誰に似たのかしら?女の子を悲しませるような真似をしてはいけませんよ」

母さんはそう言った。
僕にどうしろと言うのだろうか?
風呂から出ると僕は寝る。
新生活の始まりだった。

(3)

「片桐天音は至急職員室に来るように!」

学校内の放送が流れる。
まただ。
大体内容は分かる。
僕はため息をついた。
天音は入学式に入ることを許されなかった。
母さん達が圧力をかけて結局は許されたのだけど。
それから毎日のように呼び出しを受けている。
原因は服装と頭髪にあった。
スカートの丈を短くしてる。
靴下も既定の物のわけがない。
中学になったら自由にしていい。
そう思っていたらしい。
もちろん先輩に目をつけられる……ことは無かった。
FGとSHの関係は中学でも続いていた。
その中でも一番危険な天音に誰も手が出せるはずがない。
入学式の翌日僕達は山本喜一の呼び出しを受けた。
正確には光太が呼び出されたのだが念のためと僕が同行した。
案の定喜一は多数のFGのメンバーを連れて来た。
やる気か?
そうではなかったらしい。

「改めてFGとSHの関係を確認しておきたい」

喜一はやる気はないらしい。
お互い不干渉で行こう。
光太はその条件を飲んだ。
FGから手を出してこない限りはこちらも手を出さない。
お互いが合意した。
SHのメッセージを見る限りだと小学校でも徹底されてるらしい。
しょうもないことに付き合ってる暇はない。
そしてこれまで何も無かった。
皆それぞれの生活を過ごしている。
天音は多分帰りが遅くなるだろう。
僕と水奈は先に帰ることにした。
コンビニに寄ってから揚げを食べながら帰る。
帰ったら宿題をこなしてそしてゲームをする。
もちろん、普通にゲームをさせてくれるはずがない。
水奈からひっきりなしにメッセージが送られてくる。
それを疎ましいと思った事は無い。
テレビを見ながら水奈とメッセージで話をする。
ニュースの時間になる頃天音が帰ってくる。
機嫌が悪いらしい。
ドスドスと階段を上ってきてバタンと勢いよくドアを閉める。
夕食の時も機嫌が悪かった。

「中学生活は慣れたかい?」

父さんが天音に聞いていた。

「慣れるわけねーだろ!」

天音は父さんに八つ当たりしていた。
反抗期ってやつなんだろうか。
けれどそんなのは母さんが決して許さない。

「天音!冬夜さんに謝りなさい!」

母さんは普段そんなに怒らない。
現に天音の服装については何も言わない。
だけど父さんに逆らったり今の天音のような態度だけは絶対に許さない。
父さんが一生懸命働いてくれてるんだから今の生活が成り立ってる。
誰のおかげで学校に行けてる?
母さんはそう言う。

「ああ、どいつもこいつも五月蠅いな!もう飯もいらねーよ!」

天音はそう言って部屋に戻る。
追いかけようとする母さんを父さんが止める。

「難しい年頃なんだからそっとしてあげなさい。天音も反省しているよ。ただ素直になれないだけ」
「冬夜さんがそう言うのでしたらそうしますが」

僕はご飯を食べてそして翼と風呂に入る。
僕はテレビを見ながら水奈と電話をしていた。

(4)

どうしてあんな言葉を言ってしまったんだろう?
私は後悔していた。
どんな事があっても両親に逆らってはいけない。
2人がいるから私がいるんだから。
愛莉もパパも私の事を思ってくれてる。
入学式の会場に入れないと教師が言った時も愛莉は抗議してくれた。

「あなたにどんな権利があってこの子にそんな仕打ちをするのですか?」
「校則を守れないお子さんを入れるわけにはいきません」
「たかだか服装くらいでこの子の何が分かるんですか?」
「お母さんがそんな甘い躾をしてきたからこういう子になるんでしょう」
「この子は小学校の時も少し悪戯が過ぎる子でしたが法を犯すような真似は決してしていません!」
「たかだか服装といいますが、そんな些細な事を守れない子がいるから」
「服装を守って授業を乱す子を放っておいてこの子を責める権利はあなたにはありませんよ!」

そんな押し問答を教師としていた。
今日だってそうだ。
母さんを呼び出されたけど電話で「そのしょうもない理由で我が家の夕食が遅れています。先生が直接来てお詫びをしなさい!」と怒鳴りつけたらしい。
いつだって母さんは私を庇ってくれる。
私だって自分が両親に恵まれている事くらい分かっている。
そんな大切な両親に酷い真似をした。
自分を責める。
たった一言謝ればいい。
でもどうしてだろう?
中学に入ってからそれが出来なくなっている。
そんな自分が情けなくてイライラしてそして爆発した。
お腹が空いた。
そういやまともに食ってなかったな。
お腹が空いてイライラしてたのだろうか?
でも空腹という現実に直面すると冷静になれる。
キッチンに行って謝ろう。
しかし部屋を出ようとしたときに愛莉が部屋に来た。
ラーメンを持ってきた。

「お腹空いたでしょ。これでも食べて落ち着きなさい」

愛莉はそう言ってラーメンを渡してくれた。
私はそれを食べる。
食べ終わる頃愛莉は言った。

「少しは落ち着いた?」
「ああ……」
「じゃあ、何も言わなくてもわかりますよね?」
「うん」
「冬夜さんも理解してくれてますよ。天音の気持ち」

そうだろうな。しっかり私の顔見てたもんな。
私の心なんて父さんには筒抜けだ。

「私から一言言わせてもらうとしたら……」

愛莉が言う。

「せめてスカートの下に短パンくらい穿きなさい。他の男子にいやらしい目で天音を見られてる時の大地君の気持ち考えてあげて」

愛莉はそう言って笑ってた。
言われて初めて気が付いた。
私は大地の気持ちすら気づいてやれなかったのか。
不安になる。
そんな私の気持ちを察したのか愛莉は立ち上がる。

「大地君に話があるのでしょ?」
「うん」

愛莉が立ち上がる。

「大地と話済んだら冬夜さんに謝りなさい。今日中に」
「分かった」

私がそう言うと愛莉は部屋を出た。
それを見ると私は大地にメッセージを……いや、直接話をした方がいいな。
電話する。

「もしもし」
「あ、大地?今大丈夫か?」
「うん、大丈夫。こんな時間にどうしたの?突然」

私は今の気持ちを大地に伝えた。
大地に悪い事をした。いつも帰りを待ってくれている大地の事を考えていなかった。
これからは考える。だから……私を嫌いにならないで。
すると大地は笑っていた。

「天音は勘違いしているよ。そんな天音だから僕は天音が好きなんだ」

声の限り叫んで自分の旗を振りかざしている私が好きなんだと大地は言う。

「僕は天音以外は誰も待っていない。だから今でも僕は天音が好きだよ」

巡りくる恐怖。
しかし大地はもう心を決めた。
この世界が消えてしまう前に悪あがきをしてやろうと。
今まさにここから私達の中学校生活は始まるんだと。
私はそれを聞いて泣いていた。
両親だけじゃない。
私は沢山の人に助けられて今ここにいるんだと。

「じゃ、また明日ね」

電話を終えると私は部屋を出てリビングに行く。
パパとお爺さんがテレビを見ていた。

「どうした?お腹でもすいた?」

私に気が付いたパパがそう言った。

「さっきはごめん」

パパに謝った。
だけどパパは言う。

「何も悪いことしてないのに謝るのは止めた方がいい。それより夕飯まだ残してるよ。早く食べなさい」

天音も育ち盛りなんだから。
パパはそう言って笑う。
私は残っているご飯を食べる。
そんな私を見てパパが言う。

「酒井祈さんと同級生なんだってね?」
「うん」
「そのお姉さんの岬さんて人が結婚したらしくてね。イタリアンのお店を開いたそうなんだ。今度食べに行ってみないか?」
「わかった」
「空にも伝えておいてね」

そう言ってパパはお爺さんとテレビを見ていた。
ご飯を食べ終わると自分で片づけをする。
すると冬吾と冬莉と愛莉が風呂から出てきた。

「そんなのは私がやるからお風呂入りなさい」

愛莉は優しかった。
どんな場合でも子供を守るのが親のつとめだと誰かが言ってた。
実際はそんな親いない。
だけど私の親はひたすら庇ってくれる。
庇ってくれるからつらいんだ。
叱られたら反抗すればいい。
でも自分の盾となってくれる愛莉たちを見て私はどう対応すればいい?
自分で決断するしかないんだ。
答は決まってる。
これ以上両親に迷惑をかけられない。
風呂を出ると私は制服のスカートを取る。
ミシン縫いしてあった糸をとる。
学校はお洒落をするところじゃない。
そう割り切ればいいんだ。
お洒落をするのは大地の前だけでいい。
作業を終わると宿題を済ませて寝た。
次の日ダイニングに降りると皆驚いていた。
愛莉はひとり笑っていた。

「天音、こんな話知ってますか?」
「何?」
「制服のスカートをお洒落に穿く方法」

そんなのがあるのか?

「教えてくれ」

私がそう言うと愛莉がにこりと笑っていた。

「買ったままの状態が一番お洒落なんですよ」

制服のスカート丈はデザイナーと何度も相談して一番脚が美しく見える丈にしたのだから素人のセンスで丈を短くするのは愚かな行為だと愛莉が言う。
水奈と誠司と純也と茜が来た。
私達も玄関に向かう。
水奈と私はお互いに恰好を見て笑っていた。
教室に行くとみんな驚いていた。
そんな中一人FGの一人が笑う。

「先生に負けたの?ださっ」

以前の私なら殴り飛ばしていただろう。
だけど私はこいつらとは違う。
私の代わりに、大地が言う。

「僕の彼女になんて言ったかもう一度教えてくれないかな?」

そいつは引っ込む。
ダサいのはお前だ。

「でもなんで急に変えたの?」

大地も驚いていたようだ。

「私が自分の旗を掲げる場所はすでに決まってあったんだ」

声の限り叫んで、自分の旗を掲げる。
きっといつか、いつかどこかに辿り着くと信じて。
自分の旗を掲げろ。
さあ自分の旗を掲げるんだ。
何度挫けて迷っても。
息が切れるまで夢を見続け彷徨う。
いつがその時なんだ?
そんなの私の決断次第。
探し出す時だ。
自分の旗を掲げ、声の限り叫んで旗を掲げる。
息の続く限り、夢を見続け彷徨う。

(5)

驚いた。
遠足が終って週が明けたら、凄いことになっていた。
SH5年生組は全員恋人がいるらしいと、梨々香から聞いた。
いつの間にそんなことになったんだ?

「奇跡だよね」

梨々香はそう一言で片づけた。
どうしてそうなった?
多分理由は聞かない方がいい気がした。
運命の一言で片づけられるのならそれに越したことは無い。
4年も同じクラスで同じクラスメートだったらそういう事もあり得るだろう。……多分。
俺達5年組には春が訪れたんだ。
それが続けばいい。
多分つづくんだろうな。
学校が終ると茜と家に帰る。
茜からも同じことを聞いた。

「すごいよね」

茜も梨々香と同じ考えだったらしい。
家に帰ると茜は宿題を済ませてからPCを触りだす。
俺も宿題だけ片付けてしまおうか。
宿題を片付けるとゲームをする。
ゲームをしてるとスマホが鳴る。
梨々香からだ。
女子との話は9割方どうでもいい無駄話が多い。
今回もそうだった。
テレビの話題から今日あったこととか。
今日あったことはさっき話せばよかったんじゃないか?
明日の朝にでも話せばいいんじゃないのか?
そんな事は絶対に言わない。
言えば怒りだすか泣き出すかのどちらかだ。
梨々香の場合は怒り出す方だろうな。

「私と話するのがそんなにイヤなわけ!?」

だから慎重に返事を返す。

「ああ」とか「そう」とか適当に返しても怒られる。

「ちゃんと真面目に人の話聞いてる!?」

テレビの話題ならテレビをつけて同じ番組を見ればいい。
しかし……

「この前さ、今年の春用の服買ったんだよね!」

どう返せばいいか凄く迷う。
悩んだ結果。

「そうなんだ、是非見たいな」
「ちょっと学校には着ていけないかな。汚したくないし」

じゃあ、何のために買ったんだ?
女子の心と言うのは難しい。

「じゃあ、いつだったら見れる?」

そう返事をしていた。
すぐに返事が返ってきた。

「連休にでも会えない?」
「会うってどこに行くの?」
「どこでもいい」

こういう場合のどこでもいいは本当に困る。
連休か。片桐家では特に予定がまだ立ってなかったな。
立ってたとしても皆別行動だろう?

「ちょっと待ってて」

そう返事してりえちゃんに連休の予定を聞いてみる。

「りえちゃん、5月の連休どうする?」
「特に何も予定してないわよ。どうかしたの?」

りえちゃんに事情を説明する。

「そういう事ならおばさんに任せなさい!」

りえちゃんはそう言うと、梨々香の家に電話する。

「もしもし、片桐純也の世話をしている遠坂といいますが。はい、突然の電話すいません実は……」

りえちゃんはとんでもないことを言い出した。
連休に二泊三日で大阪に行くと言い出した。
無茶だ、いくらなんでも突然そんな事言われて良いと言うはずがない。
と、思ってた。

「はい、責任もって預かりますので」

嘘だろ?
りえちゃんは電話を切ると次に2階の茜に何かを聞いていた。
そして電話する。
電話を終わるとすぐにスマホを操作する。
操作を終えると、僕に言う。

「これで連休は予定たてたわよ。ちゃんとじゅんびしなさいね~」
「わかった……」

2階に戻ると茜が嬉しそうに言う。

「連休大阪に旅行だって!壱郎も連れて行っていいって」

片桐家は時々とんでもない行動をすると2年間の間に学んだと思ったけどまだ足りなかったようだ。
俺はとりあえずスマホを見る。

「誘ってくれてありがとう!楽しみだね!」
「そうだね。期待してるよ」

とりあえずそう答えるしかないだろう。
遠坂のおじさんが帰ってくるとりえちゃんが事情を話す。

「……片桐さんの家はいいのか?」
「あっちはほら~色々大変だと思うから~」
「……それもそうだな」
「あ、そうだ!」

りえちゃんの行動はたまに大胆な行動をとる。
梨々香と壱郎の両親に夏休みまでにパスポートを申請するように言う。
夏休みの予定まで立てるつもりらしい。

「……本場のハリウッドとかいいんじゃないか?」

小5のバカンスじゃないぞそれ!

「問題はアトラクションが苦手じゃないかよね~」

そう言う問題なのだろうか。
茜は喜んでいる。
行きつく答えは唯一つ。
まあ、いいか。
なるようになるさ。
とりあえずは目の前にある連休を楽しんでから考えることにしよう。

(6)

その日学校に呼び出された。
理由は一つ。
娘の恰好だろう。
娘はパーマをかけてそして金髪にして化粧をしてスカート丈を短くして勝手にカーデガンを羽織っている。
靴も運動靴ではなくローファーを履いている。
靴下も規格外だ。
だからどうした!?

「私も店やってて忙しいんだよ!つまんねーことで一々呼び出すんじゃねーよ!」

生活指導だか何だか知らねーけど余計な手間とらせやがって。

「しかし、お子さんが非行に走っているんですよ?親として止めさせるべきじゃないんですか?」

染める髪の毛がねーから嫉妬してるのか?

「非行だと?」

私はその教師を睨みつける。

「ただ子供が好きにオシャレしてるだけだろうが!黒髪だったら虐めしねーのか!?スカートが長かったら人殺さないのか!?どうなんだよ!」
「それは問題のすり替えというものですよ。お母さん」
「お前のお母さんになった覚えはねえ!」

そうやってしょうもない押し問答を続けていると時間がきた。

「これ以上話しても時間の無駄だ。いくぞ紗理奈」
「ちょっと、話はすんでません」
「私は約束があるんだよ」

そう言って生徒指導室を出ると学校を出る。
全く学校って言うところは本当にしょうもない事で呼び出しやがる。
今も昔も変わってねーな。
私の時は親は来なかったけど。
学校の外には正志が待っていた。

「どうだった?」

正志が聞く。

「いつもと一緒だよ」
「俺が話を聞こうか?美嘉も仕事を早々抜け出せないだろ?」
「娘の躾は私が責任もってやる。信頼してくれ」
「ならいいんだが……」

今日は酒井岬、酒井の娘の店に招待されていた。
娘を着替えさせるのは面倒だからそのまま店に行く。
ドレスコードがあるわけでも無いし良いだろ。
店にはとーや達も来ていた。
娘の翼、天音、茜も正装しているわけでも無かった。
普通にセーラー服を着ていた。
もちろん、運動靴ではなかったけど。
紗理奈がやけに大人しい。
食事はやはり美味かった。
2人とも素質はあるようだ。
店の場所が離れているのが助かった。
とーや達とシェフの相羽陽介と挨拶をする。

「この分なら上手く経営できそうだね。問題あったら報告するよ」

とーやが言う。
子供たちを連れているから。
とーや達は店を出ると帰りのバスに乗った。
紗理奈が落ち込んでいる。

「ああいう場に行く服装ではなかった。母さんたちに恥をかかせたんじゃないか?」

紗理奈はそういう。

「そんな事気にすることはねえ、ミニスカートでレストランに来るギャルなんていくらでもいるから」

私はそういう。
だけど翌日紗理奈はスカートの丈を膝が隠れるくらいまで戻した。

「裾上げやめたのか?」

私は紗理奈に聞いていた。

「ああ、TPOってあるんだなって思ってから」
「まあ、お前が良いって言うなら良いよ」

親がガミガミ言わないでも子供は社会に触れると変わっていく。
自分で学んで体験してそして納得して社会のルールに収まっていく。
それが本来の教育なんだろう。
子供を信じる。
その意味を痛感した。
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