姉妹チート:RE

和希

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3rdSEASON

穏やかな色彩

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(1)

インターハイ県予選。
僕達は開会式に駆り出されていた。
違う高校に行った同級生と出会う。
中学を卒業してそんなに経ってないけど懐かしい。
開会式が終るとファミレスで集まって話をしていた。
皆充実した高校生活を送っているようだ。
ファミレスを出ると皆で帰る。
僕達の世代は部活をしている者は少ない。
サッカーをしていても地元クラブの方に行ってしまう。
いつもより家に早く帰る。
大学入試への戦いはもう始まっている。
そう言う親もいる。
だけどうちの両親は何も言わない。

「普段からやる事をやっていたら慌てる必要なんてない」

母さんは天音と一緒で教科書に目を通すだけで全部を理解する。
授業の話を聞くだけで完璧に把握する。
残念ながら僕には天音ほどの力はない。
だから宿題だけでもやっておかないと。
テスト前にちょっとだけでも勉強しておかないと。
行く高校は地元大学と決めてある。
だからそこまで必死にならなくてもいいけど国公立大学。
やはり不安はある。
うちの高校は2年に上がる際に文系と理系に分けられる。
さらに文系理系共にⅠとⅡに分けられる。
3年になるとⅢというクラスが用意される。
難関大学受験用のクラスだ。
Ⅲには防府中学から進学した者しか進めない。
国公立に入りたいならⅡには入りたい。
中学と高校の違いは入学した時からクラスメートと競い合わなければならない。
脱落していくものもいる。
授業についていけずに落ちこぼれて留年した挙句退学する者もいる。
もう、義務教育という言い訳は通用しない。
落ちこぼれていく者は勝手に脱落していけ。
そうしてふるいにかけられて残った者はさらに大学入試という難関に挑む。
大学に行けなかったから人生が終るという事もない。
予備校に通って来年に再挑戦するという選択肢もある。
しかし僕の目的を達成するには大学に入学することは必須条件だ。
そこで単位をとって資格の受験資格を獲得してやっと資格試験に辿り着ける。
だから必死になる。
ならざるを得なかった。

「焦る必要なんかないって。いつも通りの空なら絶対大丈夫だから」

焦ると本番ミスするぞ。
母さんが父さんに言ってきた言葉らしい。
夕食を食べた後は風呂に入って部屋でくつろぐ。
風呂から上がった後は勉強はしない。
夜はしっかり脳を休めて明日の授業に備えなさい。
予習も復習も学校から帰ってやっておけば済むでしょ?
宿題はそのためにあるのだから。
世界中の受験生が聞いたら苦情が聞こえてきそうだ。
勉強ばかりしてないでたまには遊びなさい。
世間一般の親と真逆の意見を僕達は聞いて育ってきた。
しかし水奈の家庭教師との両立は難しい。
最近は水奈も積極的に分からないところを質問するようになってきた。
それに対して「分からない」「自分で調べろ」なんて絶対に言えない。
困ったことに水奈はこれ幸いと身体を密着して誘ってくる。
流石に勉強時間にまずい事くらいわかるし……

「このド変態!いつになったら分かるんだ!」
「でも水奈の声って神奈に似てるのかなって」
「知るか!!」

こんな感じで美味い具合にムードをぶち壊すのが水奈の父さんだった。
期末試験が終わったらもう夏だ。
今年もいつも通りに遊ぶらしい。
純也と茜はアラスカで遊ぶらしい。
だけどそうやって遊ぶのも小学校の間だけ。
中学生になったら勉強しなさい……というわけじゃない。
もう親といるより恋人と二人でいた方がいいだろう。
なにか色々間違っている気がする片桐家の教育方針。
だけどそれで取り返しのつかない過ちを犯す者はいない。

「今年も夏にに海行くのかな?」

水奈の頭の中は夏休みの事で一杯のようだ。

「今年は空も一緒に選んでもらおうかな?」
「期末試験が終わったらでいい?」
「そんなの関係ないよ。もう夏の新作の服だってでてるんだよ」

水奈の機嫌を損ねたくは無い。

「空の目標は大学合格だろ?定期考査や模試の結果なんてどうでもいいじゃん」

本当に世の中の受験生を敵に回すようなセリフが飛び交うな。

「……今度の日曜でいい?」
「いいけど……さっさと決めて帰って勉強しようなんて考えたら拗ねてやるからな!」
「わかってるって」
「じゃ、さっさと終わらせよう。ここなんだけどさ……」
「そこは昨日やったこのグラフの曲線の描き方覚えてる?」
「えーと……」

そんな風に水奈の勉強が終ると、「あまり夜遊びするなよ」と言って家に帰る。
そして夕食と風呂を済ませて部屋で自分の勉強をする。
単に明かりがついてたから母さん達の寝室に入る前に気付いたんだろう。

「空、オンオフの切り替えをしっかりしないと効率なんてあがりませんよ」

母さんが言う。
そういうのは勉強しないやつの言い訳だと誰かが言ってた。
でも母さんや天音を前にして言えるやつはいないだろう。
まあ、いいか。取りあえず寝よう。
明日の朝起きてやればいい。

「おやすみ」

水奈にメッセージを送ると照明を落としてベッドに入る。
すると電話が鳴る。
水奈からだ。

「どうしたの?」
「花から聞いたことがあってさ……一度やってみたかったんだ」

とても単純な事だった。
どちらかが寝るまで電話で声を聞いていたいという水奈の願望だった。
いつもメッセージだけだと味わいたいから。

「わかったよ……でもいいのか?水奈のイビキを僕は聞いてしまうかもしれない」
「そう言うのを聞かせられるのは恋人だけじゃないのか?」

そうかもしれないな。
その後しばらく水奈の他愛もない話につきあっていた。
ある程度話すと静かになる。
そして寝息が聞こえてきた。
彼女の寝息をBGMにしたりする趣味は持ってない。
電話を切って僕も寝る。
週末に水奈と水着と夏服を買いに行った。
僕の分も買った。
期末試験は思った以上に出来が良かった。

「だから言ったでしょ」

母さんはそう言って笑う。
時々どうなってるのか分からなくなる時があるけどやはりこの物語は僕達を中心に回ってるらしい。

(2)

「ふざけないで!こんな仕事受ける必要ない!」

私は渡された台本を持ってきたマネージャーに投げつけた。
原口聖子12歳。声優志望。
声優という分野は未開のジャンルだったのでこの際拡大しようと採用した。
しかし持ってきた仕事は酷い物だった。
俗にいうエロゲーのキャラクター。
卑猥な声を担当する役。
そんなの中学生にさせる仕事じゃない!

「で、ですが下積みって重要だし」
「瀬良は十分演技が出来てる。経歴を作ってやる事が重要だと言ってるのよ!こんな仕事の経歴つけてどうするの!」

原口聖子は見た目もそんなに悪くはない。
多分同い年の女子と同じようなメークをしたらそれなりに綺麗に映える。
USEのタレントにそんな下劣な仕事はさせない!

「しかし、今まで一つも経験がないんですよ。どうやってコネを作れとおっしゃるんですか!」

マネージャーが訴えた。
どうやって作る?私が作ってやろうじゃない。
私はスマホで晶に電話する。

「晶、あなたスマホのゲーム作ってる会社持ってたわね?」
「ええ、新規開拓に必死だから」
「お願いがあるんだけど」
「どうしたの?」
「声優にうちの新人使ってあげられないかしら?オーディション受けさせるだけでもいい」
「ああ、そういう事。全然問題ないわ。新人だからギャラはそんなに高くないけど」

経験が必要なら多少の投資は必要だ。

「お願いするわ」
「任せておいて、オーディションの日は後日連絡する」
「よろしく」

そのあともキー局の制作部に電話する。

「そっちで映画の吹き替えでも海外ドラマの吹き替えでもアニメでもいかがわしい物じゃないならいい。12歳の声優に相応しい仕事ないか探して欲しいんだけど」
「い、いきなり言われても。そんな簡単に無理ですよ」
「新人だからオーディションは受けさせる。今度週末にでもマネージャーと一緒に挨拶に伺わせるから」
「子役ですか……まあ、当たってみますが。期待はしないでくださいよ」
「うちのタレントを全て引き上げさせたくなかったら精々頑張るのね」

そう言って電話を切る。
いざとなったらスポンサーに圧力をかけるまでだ。
めんどうだからまたテレビ局の株を買い占めるか?
いっその事テレビ局作ればいいんじゃないのか?
そういえば、石原グループにローカル局があったわね。
そこでナレーターを務めさせるのもいいかもしれない。
早速電話で手配をした。
そしてマネージャーに言う。

「今週末聖子を連れて東京に飛んでテレビ局に挨拶に行きなさい」
「……はい」

キー局は必死に仕事を探したらしい。
脇役ってのが気に入らなかったけどいくつか仕事はもらえた。
国営放送のナレーターももらえた。
私と望で直談判して朝ドラの語り手の仕事ももらえた。
それは過去最年少のナレーターになるらしい。
それだけ経験を積めば仕事が湧いてくるだろう。

「こうやって仕事をとるの。少々強気でいきなさい。生意気なディレクターは淘汰してやるから」
「はい」

原口聖子も東京の高校の入試を受けさせる予定だ。
彼女にも彼氏がいる。
でもそんなの関係ない。
私達は縁結びの神様なのだから。
中村と相談した結果聖子は東京支社に所属することになった。
USEは順調に勢力を広げつつあった。
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