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3rdSEASON
速過ぎる時の瞬き
しおりを挟む(1)
今僕達は空の上にいる。
行先はアラスカ。
シアトルを経由してアンカレッジに向かう。
梨々香たちも一緒にいる。
オーロラは時期的に難しいらしいけどサーモンフィッシングは出来るらしい。
あまり釣りというものに興味はないけど。
ただ海外で夏休みを過ごすというのは羨ましがられた。
現地に着くと観光地を見て回る。
動物園や鉄道、氷河や自然を楽しむ。
博物館なんかも外せない。
アラスカは新鮮なシーフードが有名。
茜はしっかりと写真を撮っている。
ゲームが出来ないと嘆くことはない。
日本では味わえない壮大な大自然を楽しむことが出来るのだから
小学生にしては贅沢過ぎるデート。
海外ならではののんびりとした休日を過ごしていた。
梨々香も満足していたようだ。
自分の背の半分ほどのサーモンを釣ってはしゃいでる。
そして翌日日本へ帰国するという夜にレストランで最後の夕食を楽しんでいた。
夕食を楽しむとホテルへ帰って部屋に入るとシャワーを浴びてベッドに横になる。
梨々香と夜遅くまで話した。
どうせ飛行機で寝てたらいい。
そう思ったから。
「純也君は将来の夢とかあるの?」
そんな話梨々香としたことなかったな。
というか誰にも話してなかった。
梨々香になら話してもいい気がしたから話した。
おじさんにもまだ言ってない事。
「警察官になろうと思うんだ」
理由はおじさんが警察官だったから。
おじさんの話を父さんから聞いたから。
おじさんの背中を見て育ったから。
父さんでもよかったんだけど、僕はおじさんのようになりたい。
だから警察官の道を目指した。
「すごいね。でも純也君ならなれるよきっと」
「梨々香は夢あるの?」
「あるよ。雑誌の編集者」
地元のアパレル関係に強い雑誌の編集者。
もちろんアパレルだけじゃない飲食関係の雑誌も出している。
全国紙のファッション誌よりも地元の人間にこんなお店があるんだよって知ってほしい。
だから地元のシティ情報誌の編集者をめざすそうだ。
「梨々香ならなれるよ」
「ありがとう」
高校までは一緒らしい。
でも大学生になっても同じ地元にいるから関係ない。
いつの間にか眠ってしまうまで僕達は話をしていた。
未来を絶望していたあの過去が嘘のようだ。
僕はいま自分の未来を自分で選択できる立場にいる。
だからそれを大切にしたい。
慎重に選んだつもりだ。
翌朝ホテルを発つ。
飛行機で日本に帰国し地元へもどる。
父さん達が迎えに来てくれた。
「今夜は鮭パーティだから」
愛莉がそう言った。
僕達が送っておいた自分で釣ったサーモンを取っておいたらしい。
梨々香たちも招待した。
そして鮭を食べて遠坂家に帰って風呂に入って部屋に戻る。
「来年はどこに行きたい?」
りえちゃんが聞いていた。
わからないと伝えた。
「そう、じゃあまた決めておくわね」
面倒だから年越しはハワイでいいわよね。
りえちゃんがそう言う。
面倒だからで行くような場所なのだろうか?
「りえちゃんとおじさん」
「……どうした?」
「ありがとう」
「……こちらこそありがとう、諦めていた男の子を育てるという夢が叶ったよ」
僕が20歳になったら一緒に酒を飲みたいとおじさんは言っていた。
部屋に戻るとベッドに横になる。
将来の話ができる。
それがとても幸せな事のように思えた。
(2)
8月上旬。
今日は花火大会の日。
水奈と2人で花火デートをしていた。
水奈は浴衣を着ていた。
髪もサイドポニーにまとめて簪で止めている。
うっすらと化粧をしているようだ。
とても似合っている。
僕は水奈とフードコートで夕飯を食べて会場に歩いて向かいそしてまた出店で食べ物を買う。
水奈はかき氷だけねだってた。
氷だけじゃお腹膨れないよ。
やがて花火が打ち上がる。
星々と共に夜空を彩る。
みんな花火に見とれていた。
花火大会が終るとみんな一斉に街に戻る。
そしてバス停に着くとバスに乗る。
「あっという間だな……花火も、街の明かりも」
水奈がふと漏らした言葉。
綺麗な思い出は一瞬で過ぎ去ってしまう。
その先にあるのは暗闇。
「僕の事心配?」
「私は空の彼女だぞ。彼氏の心配くらいするよ」
それは信じていないとかじゃなくて不安になるらしい。
ただでさえ、年下のまだ子供だと思われてるかもしれない。
同い年の女子に僕を奪われるんじゃないか?
そんな日が来ることに怯えているらしい。
そういうものなんだろうな。
僕も同じ事を翼に対して考えてる時があった。
こういう時「心配しなくていいよ」とか「信じて欲しい」という言葉だけじゃ足りないという事はわかっていた。
「水奈。水奈は素敵な女性だよ」
「……私はまだ子供だ」
「そんな事無い、背だって十分あるし美人だし、スタイルもいいし、女性らしい体形になってるよ」
きっと高校の制服を着たら誰も水奈の事を中学生だって思わない。
現に今日だって同い年のカップルにしか見えないはずだよと水奈に教える。
「今日はやけに優しいんだな」
薄暗いバスの中で水奈の頬は薄紅色に染まっていたのは化粧のせいじゃない事くらい僕にも分かる。
「水奈。母さんも言ってた。僕達は私服なら見た目は大学生くらいと大差ないって」
「もうわかった。ありがとう」
「そうじゃないよ」
どうしたんだ?と言いたげな目で僕を見ている。
「……続きがあってね。水奈の父さんが気になるならホテルにでも泊まったら?って言うんだ」
流石に水奈も驚いたようだ。
そんな水奈を見てにこりと笑う。
「私の事恋人として見てくれてるんだよな?だったら2人でホテルに泊まるって事の意味分かってるよな?」
「今探してる……。水奈と初めての夜を過ごすのにふさわしい場所」
「本当に?」
水奈が聞き返すと僕は頷いた。
すると水奈は俯いて黙ってしまった。
バスを降りると水奈の家に水奈を送って帰る。
「待って!」
水奈が呼ぶから足を止めた。
「どうしたの?」
そう聞いたとほぼ同時に水奈は僕に抱きついてキスをする。
仄かに甘い香水の匂いがした。
何度目のキスだろう?
「あれだけその気にさせておいてキスもしないで帰るなんて、空も意地が悪いぞ」
「……今から僕の家に泊まる?」
「……素敵な場所用意してくれるんだろ?」
そう言って水奈は笑った。
月明かりに照らされた水奈の笑顔はとてもキレイだった。
「じゃあ、楽しみに待ってる」
水奈はそう言って家に入っていった。
僕も家に帰って風呂に入ると部屋に戻る。
そして水奈に画像を送る。
花火に見とれる素敵な彼女の画像。
「盗撮してんじゃねーよ」
照れもあったのだろうか、冗談っぽく返してきた。
(3)
今日は花火の日。
学も浴衣で行くと言うから私も浴衣を着て2人でバスに乗る。
そして駅ビルのフードコートでご飯を食べると会場に移動する。
学と手をつないでゆっくり歩く。
ゆっくり歩いて間に合う時間に駅ビルを出たつもりだ。
「立ちっぱなしで辛くないか」
学が気を利かせてくれる。
「せっかくの浴衣だから土で汚したくないから」
「そうか、そこまで気が回らなかった」
「言っとくけど私着つけは自分でできないよ?」
「どういう意味だ?」
「ホテルでゆっくり見ようとか思ってるかもしれないけど、この辺のホテル全部ラブホだよ」
「そ、それは考えてなかった」
まあ、学だしね。
夏休みはバイトをするつもりだったらしい。
本当はずっとバイトをするつもりだったらしいが学級委員になってそんな暇がなかったから。
「俺の稼ぎだけではそんなに不安か?ボーナスもあるし心配するな」
「そんなゆとりがあるなら勉強するか美希ちゃんの相手してやりなさい」
学の父さんと母さんに言われたらしい。
律義に手の空いてる時は私を誘って遊んでくれる。
「部屋は防音聞いてるから心配しなくていいわよ」
母さんはそう言って肩を叩いてくれた。
焦らずただ彼を待っていればいい。
だけど学は変な事はしない。
せめてキスくらいはして欲しい。
そう言ったら、帰りにキスをしてくれた。
花火を見て街に戻る。
バスに乗って家に帰る。
私の家の前で別れる。
「じゃあ、また来る」
「待ってる」
学の背中を見送った後に私は家に入る。
浴衣を脱いで片付けると風呂に入って部屋に戻る。
そしてスマホを弄って学とメッセージのやり取りをして眠りにつく。
夏はまだ始まったばかり。
遊んでばかりじゃない。
ただ学校生活を過ごしていくだけ。
その時間が大事なんだ。
父さん達は言う。
その意味をまだ子供の私達には理解できなかった。
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