姉妹チート:RE

和希

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3rdSEASON

現実主義者は少年に戻る

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(1)

この家に来るのも久しぶりだ。
私は片桐家に家庭訪問に来ていた。
両親に子供の学校生活の様子を知らせると同時に家では子供がどう過ごしているのかを聞く。
片桐冬吾の生活態度は完ぺきだった。
授業は真面目に受ける、昼休みはみんなとドッジボールして遊んでる。
掃除も真面目にやる。
どういう教育をしたらこんな真っすぐないい子に育つのか教えてほしいくらいだ。
母親の愛莉先輩は冬吾君には全く違う躾をしてきのか?
そうでもないらしい。
自由にさせているそうだ。
家でも大人しく宿題をしてゲームをしてそして寝るそうだ。
何よりも驚いたのは恐らく父親の冬夜先輩から受け継いだ能力を無駄にすることなくきっちり発揮している事。
冬吾君は小学校入学後すぐに那奈瀬のサッカークラブに入ったらしい。
友達の多田誠司も入ったそうだ。
そのチームの監督をしている従兄の佐倉祐翔から話は聞いていた。
大変な子供を引き受けることになった。冬吾がサッカーを嫌いにならないように、怪我をさせないように次のチームに万全の状態で送り出さなきゃならない。大変な仕事を任せられた。
だけど従兄が思っているような心配はまったくなく楽しそうに従兄が課したメニューをこなしているそうだ。
まるで自分がレベルアップしていることを自覚しているかのように。

「試合に参加できなくて不満か?」

従兄はそう聞いたらしい。

「見てるだけで楽しいから今はいい」

冬吾はそう答えたそうだ。
まるで従兄の気持ちを読み取っているかの如く期待に応えてくれるらしい。
愛莉先輩に聞いたら小学校3年生になったら地元のサッカークラブにいれるらしい。
従兄に任せられたのはそのわずかな間だけ。
とにかくケガだけはさせないように基礎体力の向上とルールを学ばせること、そして一人ではできなかったパスワークを教えているらしい。

「将来が楽しみな、お子さんで愛莉先輩が羨ましいです」
「桜子もみなみちゃんがいるじゃない。日本代表で活躍しているのでしょ?」

みなみは次のオリンピックには必ず出られる。そう世間では言われている。

「とにかく今のところ学校生活は問題ありません。模範生と言ってもいいくらいです」

あとは周りの影響を受けないように私が配慮してやるだけ。
うちのクラスはその児童の数に比例するように問題児が多い。
そんな問題児に染まってしまわぬように見守ってやらなければならない。
ただ冬吾一人を贔屓してはならない。
そこがむずかしいところだ。

「ご家庭では学校での問題とか何そう言った話をされていませんか?」

私は愛莉先輩に聞いていた。

「特にないわよ。学校であったことを楽しそうに話すくらいだから不満は感じてないみたい」
「それならいいんです。本当にいいお子さんですね」
「ありがとう」
「じゃ、私そろそろ次の児童に会わなければならないんで」
「冬吾の事くれぐれもよろしくね」
「はい、それではまた」

そう言うと私は次の家、多田誠司の家に向かった。

(2)

「こんにちは」
「おう、よく来たな。まあ上がれよ」
「失礼します」

桜子をリビングに案内するとお茶をよういする。

「大したもの用意してないけど」
「お構いなく。いただきます」

桜子はお茶を飲む。
そして語りだした。
水奈の時は水奈がやんちゃしすぎて桜子が参っていた。
誠司はどうなんだろう?
静かに聞いていた。

「誠司君はとてもいい子にしてます。少々落ち着きが無いのが欠点ですが」

それでも他の子に比べたらはるかにましだと言う。
桜子のクラスの子供はとにかく落ち着きがないらしい。
授業を受けたがらずに家に帰ったりコンビニに寄ったり、遅刻をしたり大変らしい。
それでも一つだけ他のクラスに比べて良い事がある。
天音達も所属するグループSHが占領しているらしい。
いわゆる学級崩壊という事態は避けられているそうだ。
他のクラスは授業にならないほど騒いでるらしい。
1年生からそれでは先が思いやられると他のクラスの担任はおもっているらしい。
誠司のクラスも抜け出した子供を連れ戻す為に桜子が教室不在で授業ができない事があるらしい。
そんな中でも残った子は大人しくしているそうだ。
まあ、クラスの友達と話したりくらいはするそうだが。
冬吾と並んで誠司のサッカーの能力も高いと聞いた。
水野伽夜-誠司-冬吾の軸はしっかりでき上っていてすぐにでも試合に投入したいくらいだという。
しかし誠司と冬吾の将来を考えるとここで消耗するわけにはいかない。
誠達の口添えもあったそうだ。
2人はしっかり基礎能力の向上を図る事にしたらしい。
誠も言っていたな。
2人の能力なら中学、いや高校に入ってから試合デビューでも十分通用すると。
私はサッカーの事はわからないから誠に任せている。
桜子はさっき「落ち着きがない」と言った。
それが気になった。

「誠司は勉強の方はどうなんだ?」

逃げ出そうとする誠司の腕を掴む。

「悪くはないんですけどもう少し真面目に授業を受けて欲しいですね」

やっぱりこいつは……。

「でもうちのクラスでは比較的まじめな方です」

桜子がフォローする。
別に特別成績が悪いわけでも無いらしい。
ただ宿題を忘れて来るとかその程度の出来の悪さらしい。

「まあ、桜子に迷惑をかけてないならいいんだが」
「特別手のかかる子というわけではないので」

と、いうより他の子の面倒を見るので精一杯なのが実情だと桜子は語る。
だが、まだ小学1年生。
どんな色にでも染まってしまう。
それだけは責任もって気を付けると桜子は言った。
さっきも言ったけど桜子のクラスはSHの支配下にある。
そう言う悪戯をする子は一切いない。
一度それで揉めたことがあるそうだが、冬吾と誠司をはじめとした男子が守ったらしい。
ドッジボールで絡んできたときも撃退した。
だからそれほど心配はいらないそうだ。

「じゃあ、私そろそろ次の家に行かないといけないので」

桜子が立ち上がる。

「それではまた」

そう言って車で次の家に向かう桜子を見送った。
誠司をリビングに呼ぶ。

「母さんはサッカーの事は分からない。だから誠司がサッカー選手になると言うなら止めない。だけどせめて高校くらいは入れるくらいの成績は維持しろ」

冬吾と同じ高校に行きたいんだろ?
昔ならいざ知らず今は18歳以下の海外移籍は禁止されている。
なら高校くらい行っとけ。
そういう思い出もあって損は無い。

「わかった」

誠司はそう返事した。
返事だけはいいんだ。

「じゃあ、自分の部屋に戻れ。せめて宿題くらいはしろ」

そう言うと誠司は部屋に戻った。
夜になると誠が帰ってきて夕食を食べる。
夕食を食べて子供たちが風呂に入って部屋に戻ると誠が言う。

「今日は誠司の面談があったんだろ?どうだった?」

わたしは2人の様子を報告した。
そして今日桜子に言われたことを誠に伝える。

「そうか、じゃあ二人共問題なさそうだな」

誠はそう言う。
もう一つ伝える事があった。
皆良い子に育ってるじゃないか。
神奈のおかげだよ。
誠はそう言ってくれた。
悪い気はしなかった。
それから話をして寝室に行って寝る。
朝になると起きて朝食の準備を始める。
皆が起きてくる。
皆を見送ると私も家事を始める。
今日も何気ない一日が始まった。

(3)

今日は遠足の日。
皆で那奈瀬の公園まで歩く。
皆揃うと先生が注意事項を言って解放される。
僕達も場所を確保してシートを敷くと弁当を食べ始めた。

「冬吾君達のお弁当、量がすごいね」

瞳子が驚いている。
うちでは普通なんだけどな。
むしろ瞳子たちが食べなさすぎなんじゃないのかと思った。
お弁当を食べてお菓子を食べながら皆で話をする。
公園にある遊具で遊ぶ者もいた。
皆思い思いに自由に行動していた。
物騒な輩はいなかった。
FGと呼ばれる連中も大人しかった。
大きなグループだとは聞いてたけど大したことはしていない。
入学当初はいきなり上級生が押しかけてきたりしたけどSHの名前を出すと早々に逃げるように帰っていった。
ドッジボールで絡んできた事もあったけど大したことなかった。
僕は瞳子とお菓子を食べながら話をしていた。
冬莉は相変わらずスケッチをしている。
自由時間が終る頃になると僕達は片づけを始める。
皆が整列すると帰りに着く。
帰りはみんな疲れているのか足取りが重い。
それでもなんとか学校に帰ると解散する。
当然だけど家まで歩いて帰らなければならない。
みんな疲れて口数が減っていた。
僕の家に着くとみんなと別れて家に帰る。
母さんが迎えてくれた。
弁当箱と水筒を渡すと自分の部屋に行く。
気が付いたらベッドで寝ていた。
夕食の時間になったら母さんが起こしてくれた。
皆で夕食を食べる。

「遠足はどうだった?」

父さんが聞いてきた。

「楽しかった!瞳子と一杯話してた」
「それは良かったわね」

母さんが言った。
夕食を食べ終わると風呂に入って昼間してなかった宿題を片付ける。
今日は疲れていたので早めに寝る。
日曜は父さんがサッカーの練習を見に来てくれる。
誠司の父さんも一緒だった。
僕達は相変わらず基礎練習のみだけどそれを見て何か話をしていた。
練習が終ると父さんと家に帰る。

「冬吾、練習は楽しいか?」
「うん!」
「学校生活はどうだ?少しは慣れたかい?」
「凄く楽しいよ!」
「それはよかった」

学校はとても楽しい所だった。
勉強もそんなに大変だとは思わない。
水島先生が丁寧に教えてくれる。
体育の授業も楽しかった。
休み時間は皆でドッジボールで遊んだりしてた。
学校はとても楽しい所。
そんな一か月をすごしていた。

(4)

制服に着替えて荷物を持って部屋を出る。
慌ただしく朝食をとって洗面所で仕度する。

「行ってきます」

そう言って私は家を出る。
バス停まで急ぐ。
バスはいつも定刻より4,5分遅れる。
それは良くもあり悪くもあった。
通学、通勤時間だから多少バスの便も多いけどやっぱり少ない。
一本乗り過ごせば大惨事だ。
そして10分もバスが遅れても学校の時間が変わることはない。
かといって駅まで自転車で行くのもめんどくさい。
行きは下り坂で楽だが帰りがきつい。
罠に嵌った気分だ。
始業時間は翼や空の学校と変わらない。
だけど始業時間にバスの時間を合わせてくれるほど甘くない。
通勤時間だから多いと言っても1時間に3本程度。
おまけに通勤ラッシュに巻き込まれるからその分も計算しないといけない。
早めに行って駅のコーヒーショップで時間を潰すという手も考えたが早く起きるのが面倒だ。
高校の入学式があって早1週間が過ぎようとしていた。
専門科目も当然だけど普通の科目も受けなければいけない。
宿題もしっかりある。
普通科の方が楽なんじゃないのか?
私は全く化粧をしていなかった。
春の時期に唇がかさつく事もないだろうとリップすらしなかった。
してる時間がない。
他の皆がしっかり化粧してくるのが不思議だった。
その謎はすぐ解けたけど。

「すいません、今日お腹が痛くて調子悪いんです」

女子生徒がそう言えばそれ以上遅刻の理由を追及する男子教師はいなかった。
雨の日も濡れるのを嫌って休むやつもいた。
理由は同じ。
私も雨の日に傘をさすのが面倒だから同じ理由で休もうとした。

「空は臨時休校になるような台風が来ない限りカッパを着て自転車で通学してるんですよ。甘えたことをいうんじゃありません!」
「今日お腹が痛いんだけど」
「痛み止めを飲みなさい!」

駅前でバスを降りると時計を見る。
まだ間に合う。
だけどコンビニで漫画を立ち読みしてる時間はなさそうだ。
急ぎ足で学校に行く。
教室に入ると異様な光景になる。
ここって女子高だっけ?と思うほどの女子の比率。
もちろん男子もいる。
私の高校には女子だけの学科もあるけど私が入った調理科は普通に男子もいる。
現に先輩は男子もそこそこいる。
そしてそこそこいる男子が新入生を狙っている。
だけどだいたいの女子が既に彼氏持ち。
無駄な努力をしてるな。
席に着くと渡辺紗理奈がやってきた。

「毎日大変だな」

紗理奈はそういって笑う。
紗理奈ははそんなに派手にはしないけど少しだけ化粧をしていた。
そんな時間よくあったなと聞いたら紗理奈は笑って答えた。

「父さんの勤務先が市役所だからバスに送れたら連れて行ってもらえる」

それも間に合わない時は母さんが送ってくれるらしい。
反則だ。
そして授業が始まる。
昼休みを挟んで午後の授業も終えると学校を出ようとした。

「帰りはいつものファミレス寄ってく?」
「私はファストフードでもいいんだけどな」

ちなみに人気のファストフード店は駅にはない。
あるのはコーヒーショップとドーナツとハンバーガーもない事はないけど若干高い。
駅ビル4階の店はちょっと買い食い程度にするには高すぎる。
人気のファストフード店は駅から離れたところにある。
もちろんファミレスより安くつく。
たまには紗理奈に付き合うか。
歩くの面倒だけど。
靴を履き替えて下校しようとした時だった。

「片桐さん、ちょっとだけいいかな?」

入学式の時に知り合った大垣美穂がいた。
隣の席だったのですぐに打ち解けた。
家も近所だった。
同じ中学のはずなのにどうして今まで会わなかったのか不思議なくらいだ。

「紗理奈もいるけどそれでもいい?」

私がそう聞くと美穂はうなずいた。
ちょうどファストフード店に行くところだしちょうどいいだろう。
美穂に言うと3人でファストフード店に言った。
美穂は話した。

「片桐さん達の噂は中学校の時に聞いてる。あ、悪い方の噂じゃないよ」

必ず恋が成就する不思議なグループ。
そんな噂も流れていたらしい。
そして私がそのグループの中心にいた。
ていうことはそっち系の相談か。

「好きな男でもできた?」

残念だが、同じクラスの男子なら全員彼女いるぞ。

「あ、違うクラスっていうか。あ、同じクラスといえばそうか……」

どっちだよ!

「誰を好きになったんだ?私達の知っている人か?」

どっちつかずの返答に紗理奈もいら立ちを覚えたようだ。

「先生を好きになった」

は?

「先生ってまさか朝倉?」

紗理奈が確認している。
朝倉瑛一。
私達の担任の教師。
確かに女子生徒には人気がある。
まだ未婚だという噂も聞いたことがある。
私はちょっと複雑な心境だった。
あ、私が朝倉のことを好きになったとかそんなんじゃない。
とりあえず美穂の話を聞く事にした。

「どうしてそうなったんだ?」

私が聞くと美穂は話し出した。
話は先週の金曜日の事だった。

(5)

「美穂、今日夜空いてる?」

友達に誘われた。
高校生なら良くあることだろう。

「空いてるよ」
「私の先輩がさ、どうしても合コンの人数あわせに来て欲しいって言ってるんだよね。一緒にきてくれないかな?」
「合コンって……」

私達まだ高校生だよ!

「私服で行ったらバレやしないからって言うからさ。その代わり絶対にお酒は飲まないから!って言ってるから」

2次会にも出席しない。
ちゃんと約束するから来て欲しい。
まあ、ちょっとは興味があった。
そんな年頃なのだからしょうがない。
2次会に行かないなら大丈夫だろう。
今日は金曜だし友達とちょっと遅くまで遊んでたと言えば通用すると思う。
うちの門限はどんなに遅くても23時。
21時を過ぎる場合には連絡を入れなさい。
23時を過ぎるとさすがに交通手段が無くなってしまう。
自転車で行ったらすぐに高校生ってバレてしまう。

「会費は友達が出してくれるからタダで食い放題だよ」
「わかった」

そして家に帰ると着替えて街の居酒屋に行く。
高校生ってわからないように少し化粧をして行った。
店の前で友達と待ち合わせすると店にはいる。

「あ、いらっしゃい!君が美穂ちゃん?」

幹事の人が言うと私はうなずいた。

「助かったよ。楽しんで行ってね」

そう言って席に案内してもらった。
席に私と美穂は同席にしてもらった。
そして席に着いた瞬間背筋が凍った。
目の前にいるのは朝倉瑛一。
私のクラスの担任。
内心ひやひやした。化粧してるからバレなかったのだろうか?
少し私達を見ていたけど朝倉は気づかなかったようだ。
しかし災難は続く。

「君、名前は?」

やっぱりバレてる!?
偽名を使うか悩んだ。
しかしさっきの幹事が余計な事をした。

「なんだよ、早速目をつけたのか?大垣美穂さん20歳。あ、こいつうちの大学のOBで朝倉瑛一って言うんだ。未だに彼女もいないらしくて招待したのよ。よろしくね」
「よろしく、美穂さん」

ウィッグくらいつけて来るべきだったか。
しかし本名バラされたらそんなの関係ないか?

「こいつ高校教師になりたてなんだ。しかもいきなり担任任されてさ。女子高生だらけで羨ましいぜ」

隣にいた男がべらべら喋る。
年は23歳。
高校の近くに住んでるらしい。
爽やかだけどどこか生真面目な部分がある。
そこがうちのクラスの女子に人気が高い部分なんだけど。
幹事の人が挨拶すると合コンは始まった。
皆が自己紹介する。

「大垣美穂、20歳です」

幹事が言った証言を貫くしかない。

「2人ともどこから来たの?」とか「彼氏いない歴何年?」とか私達2人は質問攻めにあっていた。
そしてまた試練がやってくる。

「2人ともソフトドリンクばっかりで全然飲んでないじゃん。どうしたの?」
「あ、私達飲めないんです」

友達が返事した。

「飲んだ事無いの?」
「そうです」
「だったらとりあえず一杯いっといたほうがいいよ。何事も経験ていうだろ?軽めの奴にするからさ。すいません、こっちウーロンハイ二つ」

まずい。
どうやって回避する?
私達の前にお酒がおかれる。
友達もさすがに躊躇っている。
さっきの幹事に助けを求めてるけど幹事は気分良くなっている。
私も友達の心配をしている場合じゃない。
どうにか回避しないと。

「ひょっとして車で来た?」
「いえ、そういうわけでは……」
「じゃあ、問題ないって!ぐいっといっちゃって」

少し飲んだだけでも倒れる人がいるという。
毒を飲むわけじゃないけどさすがにヤバいと思った。
だけど回避策がない。
友達と顔を見合わせる。
観念して飲もうとした時だった。

「美穂ちゃん飲まないなら俺もらうよ」

そう言って朝倉が私の目の前にあったジョッキを持つと飲んだ。

「お前が飲んだら意味ないだろ?」
「飲めない奴に無理強いするのはよくないだろ。そっちの子も飲めないなら俺もらうよ」
「そういうところが固いんだよお前は」

私達は朝倉に助けられた。
その後は何事もなく1次会が終了した。
そして私達は駅前に向かおうとした。
するとさっきの人達に絡まれる。

「帰るにはまだ早いよ。ちょっと遊んでいかない?」
「酒飲まなくてもカラオケとかなら出来るでしょ?」
「ごめんなさい。門限があるから」

私が言うと男たちは笑った。

「20歳にもなって門限なんて関係ないでしょ」

男はそう言って腕を掴んで引っ張る。
急いでいたので定期付きICカードを落としてしまう。
やばい。
しっかり高校の名前が書いてある。

「女子高生か。まあ、そんな気はしたんだよな」
「子供なら俺達が保護してやらないとな」

初めて男性に恐怖を覚えた。
私達どうなるんだろう?

「これで少しは懲りたか?悪ガキども」

朝倉は私達がちゃんと家に帰ったか気になってついてきたらしい。

「お前らも、早くしないと皆二次会の場所に移動してるぞ」
「ちっ……行こうぜ」

そう言って元の場所に戻る二人を見送ると朝倉は私達に付き添ってバス停まで歩いた。
その間きっちり叱られた。
バス停に着くと朝倉も帰るらしい。
今から店にいっても誰もいないだろうから。
朝倉は酔い覚ましに歩いて帰るらしい。

「寄り道せずにまっすぐ帰れよ」

朝倉はそう言って去っていった。
その時笑顔を見て私は胸が締め付けられる思いをした。
その正体が恋だと知ったのは家に帰りついた後だった。

(6)

「なるほどな」

私はそう言った。
美穂が朝倉を好きになった理由は分かった。
次はこの後どうするかだ。

「で、美穂はどうしたいんだ?」

私は美穂に聞いていた。

「そりゃ出来れば交際したいけど……」

そんなの無理だよね。と美穂は泣き出す。

「泣くほど好きなんだろ。同じ泣くならすっきりしてから泣け!」

紗理奈も美穂もきょとんとしていた。
私は食べていたポテトを全部食べると席を立つ。

「今から学校に戻るぞ」
「学校に戻るぞってまさかお前……」

紗理奈が言うと私はうなずく。

「教師はまだ残ってるはずだ。今から特攻するぞ」
「そんなの無理だって」

美穂が抵抗する。

「ずっとモヤモヤを抱えて生きていくつもりか?すっきりさせた方が楽になれる。それに美穂は私達を縁結びと信じたんだろ?」

だったら私を信じろ!
美穂も決意したようだ。
私達3人は学校に戻り職員室に行く。
職員室には思った通り朝倉が残っていた。

「片桐に渡辺、それに大垣まで……こんな時間にどうした?」

朝倉が私達を見て言った。
美穂はこの期に及んでまだ言い出せないでいる。
背中を押すなんて生易しいものじゃだめだ。
谷底に突き落としてやる!

「美穂が先生にどうしても伝えたい事があるそうです」

私がそう言うと「大垣が?」と美穂を見る朝倉。
美穂は決意して言った。

「女子高生と高校教師は付き合ったらダメなんですか?」

美穂が言うと朝倉は驚いたようだ。

「どういう意味だ?」

朝倉が美穂に聞いた。

「私先生の事が好きです。一目惚れしました。付き合ってください!」

美穂が叫ぶと職員室にいた職員が皆こっちを見ていた。
朝倉はしばらく考えていた。

「悪い。その話は無理だ」

まあ、そうなるだろうな。
ここは私立高校。
下手すれば職を失う。
美穂をみると今にも泣きそうだ。
私が美穂の肩を叩くと美穂は肩を落として家に帰って行く。

「片桐達と大垣は家が近かったな。ちゃんと家に送ってやってくれ」

朝倉が言う。
私達は黙って職員室を出た。
職員室を出ると美穂は私にしがみ付いて号泣する。
しばらくそのまま泣かせてやった。
落ち着いたのか泣き止むと3人で下校する。

「ありがとう、天音のおかげですっきりした」

バスの中でそう言った。
私のやったことは正しかったのだろう。
美穂を家の前まで送ると私も家に帰った。
しかしその晩、メッセージを見て私は驚いていた。
同じ部屋の茜もスマホを見て驚いている。
私と茜はグループメッセージにメッセージを送った。

「おめでとう」

(7)

不思議とスッキリしていた。
諦めがついた。
やっぱりダメもとでも言ってよかったんだ。
ただしばらく恋愛をする気にはなれなかった。
食欲もあまりなかった。
今日あった事だ。
引きずっていてもしょうがないだろう。
風呂に入って部屋でテレビでも見て寝ようと思った
寝たらきっと次の日の朝にはすっきりしてる。
そう思った。
2階にあがろうとしたときインターホンが鳴る。
時間は21時を回っていた。
こんな時間に誰だろう?
母さんが出たみたいだ。
誰が予想しただろう?
扉の向こうに立っていたのは私のクラスの担任の朝倉先生だった。

「夜分遅くに大変申し訳ありません。どうしても今日中に片づけておきたい用がありまして」
「用件ですか……。まあ、立ち話もあれですから上がってください。美穂、先生が来てるわよ」
「はい」

母さんに呼ばれて私はリビングに行く。
リビングには両親と私と朝倉先生。
朝倉先生は淡々と話し始めた。

「今日俺は娘さんから告白されました。ですが教師という立場で生徒と遊ぶなんて真似できません」

それをわざわざ言いに来たのか?
さっさと忘れてしまいたいのに。
胸が再び痛む。
だが、朝倉先生の話はまだ続いた。

「だから、交際するのであればはっきりした関係を築きたい。単刀直入にお願いします。娘さんと結婚させてください」

朝倉先生はそう言って頭を深く下げる。
当然両親は激怒する。

「娘を誑かしてなんて言い分だ。この子はまだ16だぞ!結婚なんてできるか!この件は明日学校に抗議する」

父さんは立ち上がってそう朝倉先生に怒鳴りつける。
朝倉先生は散々罵倒されながらもひたすら頭を下げ続けて耐えていた。
そんな朝倉先生を見ていられなかった。
私も朝倉先生と一緒に頭を下げる。
これが最後のチャンスだ。
絶対に離さない。
私達は2時間ほど頭を下げ続けた。
そしてようやく父さんが折れた。
条件を付けられた。
高校は絶対に卒業させる事。
卒業するまで結婚は認めない。
まあ、卒業しないと18歳にならないのだから当たり前だろう。
そして結婚するまでは妊娠は認めない。
最後に父さんは朝倉先生を近所の公園に呼び出した。

「腹を殴られたよ」

あとで朝倉先生が教えてくれた。
朝倉先生は笑っていた。
2人が家に戻ると先生は自分の車で家に帰る。

「あ、そうだ。連絡先交換しておかないとね」

朝倉先生と連絡先を交換した。
朝倉先生は帰って行った。
その事をSHに報告する。
みんな「おめでとう」と祝ってくれた。
週末白いセダンで迎えに来た。
どうしても一緒に行きたい場所があるという。
それは山の中にある遊園地の観覧車だった。
そして観覧車の中で私はプレゼントを受ける。
私にはまだ高い指輪だった。
そこで改めてプロポーズを受ける。

「よろしくお願いします」
「こちらこそ」

夕食を食べて家に帰った。
妊娠は認めない。
だから先生は絶対に要求してこなかった。
噂は瞬く間に学校中に広がった。
学校の中では普通に教師と生徒として接していたのに隠しきれるものでもなかった。
原因は私にあった。
どうしても食べて欲しくて先生に手作りの弁当を手渡したのを見られたから。
私達は校長室に呼ばれた。
先生は毅然とした態度で私達の関係を言った。
免職も覚悟していたらしい。
しかしお咎めは無かった。
理由は分からないままでいた。
しかし学校では節度を持って、他の生徒に示しがつくように。
ただそれだけ注意されて私達は解放された。
校長室を出ると私たちは笑顔でいた。
これからの3年間が楽しくなる。
私の高校生活が約束された。
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25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

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