姉妹チート:RE

和希

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4thSEASON

光に満たない青春を

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(1)

「大地!私達が遅刻なんて洒落にならないぞ!」
「分かってるって!」

大地は器用なところもあるけど身の回りの事だけは不器用だ。
世話が焼ける。
大地が準備が出来たというと私は少し整える。

「お前は寝癖を直すのに散々時間をかけてこの髪形か!」

七五三に行くんじゃないんだぞ。

「ご、ごめん。こういうのどうも苦手で……」

美希にやってもらったり、秘書にやってもらったりしていたらしい。

「じゃあ、これからは私がしてやるよ」
「ありがとう」

これ以上のんびりしていると本当に遅刻してしまう。
ここから駅まで徒歩10分もかからない。
しかしのんびりし過ぎて遅刻してしまった。

「おせーぞ天音。同棲始めてからこんな時間までお楽しみか……いてぇ!」
「遊は黙ってなさい!」

遊と粋はそういう役回りなんだろうな。

「んじゃ皆揃ったし行こうぜ」

祈が言うと皆SAPに向かった。
まずはボウリングでテンションをあげる。
ボウリングでテンションをあげるのは良いけど上げ過ぎるのは禁物だ。
まずアルコールが入っていると遊ばせてもらえない。
偶に遊ばせてもらった奴がいるけどゴミ箱の中に用を足したり、レーンに勝手に入っていってワックスで滑ってこけたり、軽いボウルを天井に放り投げて穴をあけたり。
軽い9ポンドのボウルでも石膏ボードくらいかる貫通する。
遊達もその類だった。
両手で転がして投げたり、かっこつけて投げようとして後ろにボウルが飛んできたり。
こういうパーティでスコアなんて気にする方がおかしい。
悲惨なスコアだったけど楽しかった。
ゲーセンでプリを撮る。
厳密に言うとSH組で卒業旅行に行くんだけど引っ越しやバイト探しで忙しい奴は来ない。
今日が最後になる奴もいるから記念にプリを撮っていた。
私達桜丘高校組は大体が専門学校に進学する。
稀に大学に進学したり就職するものもいるけど。
カラオケで絶叫する。
命を賭けて絶叫することを絶唱と言うらしい。
文字通り命を落とすけど。
しかし設定どおりに命を落としたのは一人だけ。
あとは色々理由をこじつけて生きている。
うどん県を舞台にしたアニメの方が代償が大きく見える。
ネタだろうと演歌だろうとデスメタルだろうと関係ない。
皆で騒いでいた。
ここは合コンする場所じゃない。
皆で最後にバカ騒ぎをする場所だ。
愛を囁いているようなアホはいなかった。
偶に自殺したロック歌手のバラードを唄って顰蹙を買う。
某アイドルグループの歌を歌うと粋と遊が怪しい踊りを始める。
当然のように「恥ずかしいから止めなさい」となずなや花に怒られていた。
遊はこりずに「巨乳音頭」なんて歌を歌ってなずなと大ゲンカする。
皆で宥めていた。
最後に皆で卒業ソングを歌って終わらせる。
SAPを出るともう22時。
帰る組と残る組に分かれる。

「みんな元気でまた会おうね!」

そう言って帰っていく。
きっと10年後にまた会えるよ。
残った者は当たり前のように居酒屋に入る。
巨砲サワーなんて甘えた物は飲まない!

「生!」

私と紗理奈がそう言うと「私も」と皆が言い出す。
当然愛莉には内緒だ。
食い放題、飲み放題2時間。
徹底的に飲んで食いつくす。
大地を酔い潰そうとしたけど大地はマイペースで熱燗を飲んでいる。
爺くさいもの飲んでるな。
食べてるのも揚げ豆腐とかイカの刺身とか。
まあ、大地の好みを知るいい機会だ。
嫌いと言っても無理矢理食わせるつもりだが
同棲を始めて数日間で結構矯正した。
もちろん無理矢理口に押し込むなんて真似はしない。

「大地は彼女の手料理を残して何とも思わないのか?」

殺し文句ってやつだ。
これで残しやがったら本当に埋めるつもりだったけど。
大地の母さんが用意してくれた部屋は最上階。
ベランダから突き落とすだけの簡単な作業だ。
皆酔いが回ってきたところで時間になる。
最終便で帰る奴はここでサヨナラ。
水奈は残るつもりだったが空が迎えに来た。

「今日くらいいいだろ!」
「それだけ飲めばもういいだろ。……家でゆっくり二人で飲みたい」
「空がそういうなら仕方ないな」

空も水奈の扱い方を覚えたみたいだ。
紗理奈と私は当然残った。
繁華街でいい店は無いかと探しているとポン引きに声をかけられた。

「フィリピン人のバーだよお触りもし放題。皆下着だよ」

私と紗理奈は即決した。
決め手は「女性ははタダ」だった。
引き留めようとする大地と康介を引きずって店に入る。
祈も面白がって入る。
遊と粋は言うまでもない。
当然のようにフィリピン人女性の下着姿をみたり足を触ったりして盛り上がっている二人。
後日なずなと花の機嫌を直すのに一苦労したらしい。
康介と大地は普通にふるまっていた。
大地にいたっては水割りを飲みながら余裕を見せている。

「お前こういう女性に興味ないのか?」

だとしたら私はもっと派手な下着で誘惑しないといけなくなる。
だけど大地は言った。

「お酒飲んだくらいで前後不覚になるような、恋人の前で醜態を晒すような訓練は石原家では受けていないよ」

いつでも大切な人を守れるように注意してるんだそうだ。
お前会社の社長と言うより傭兵の隊長の方が似合っていないか?
1時間ほどで私も紗理奈も飽きたので店を出る。
人数が人数だからムードのあるバーなんかに行って他の客の迷惑になったら悪い。
ある程度騒いでお酒を飲めて騒げるこの時間に空いてる場所……。
やっぱりあそこしかないか。
私達はファミレスに行った。
朝まで騒いだ。
夜が明ける頃ファミレスを出て解散する。
今日からまた新しい一日が始まる。
それぞれの暮らしに向かって歩き出す。
私も新居に戻ると風呂に入る。
かっこいい事を言って無防備に寝ている大地。

「寝るんだったらせめて着替えてくれ。洗濯するから」
「ああ、ごめん。ちょっとうとうとしてた」
「醜態を晒さないんじゃないのか?」
「天音と2人っきりだとつい気が緩んでしまうんだ。まだまだ修行不足だね」
「そんな修行しなくていい」

私と一緒で安心するならそうしてくれ。
お前が帰ってくる場所に私がなってやるから。

(2)

「おーい皆こっちだぞー!」

ぞろぞろと集まる謎の団体。
それが私達SHの高校3年生組だった。
水奈が1人じゃかわいそうだから空が同行してる。
県外へ引っ越すもの、バイトを探しているもの、まだ引越しが住んでいない者は来ていないけど凄い人数だった。
祈と陸がチケットを配る。
そして搭乗手続きを始めた。
私達の旅行先は北海道。
中には修学旅行で言ったという物もいたけど私は行ってない!
牛肉は嫌と言うほど食った。
次はラム肉だ。
それだけじゃない!
キムチと焼肉しかない韓国とは違うんだ!
海鮮丼やラーメンが待っている。
当然それだけじゃ不満が出る。
だから函館の夜景や稚内の日本最北端を目指した。
個人的にはずっと札幌でいいんだけどな。
珍しく遊や粋と意見があった。
2人とも目的は違うけど。

「また私を怒らせたいの!?」

なずながいうと遊は黙ってしまった。
やっぱりあの後大変だったんだな。
北海道は広い。
しかも新千歳空港を挟んで真反対の位置にある2か所。
取りあえずは函館に向かった。
明日は札幌。
明後日は稚内。
そしてその翌日に帰る。
如月観光が割安で手配してくれた。
SHだけの特権だ。
3月の気候は九州の真冬以下の気候らしいので防寒が必要になる。
と、なると当然暑い。
かと言って遊の様に「コートだけ用意しとけばいいじゃん!」とかやってると……

「げぇ!寒いを通り越していてーよ!」

って事になる。
まあ、ほとんど乗り物での移動だから大丈夫だろう。

「これなら遊達も夜出歩かないね」

なずなと花は安心していた。
しかし私と祈は見逃さなかった。
飛行機に乗る前に見たバッグがやけに荷物が沢山詰め込まれていた事。
そして函館の夜景を見る時に平然としていた事。
夕食で北海道を満喫して風呂に入るとなずなや花に話をしてロビーで張り込んでいた。
すると何も知らずに標的が浮かれてやって来た。

「北国の女性ってみんな肌が綺麗なんだろ?楽しみだな」
「粋、目星はつけてあるんだろうな?」
「当たり前よ!ぬかりねーって……」

粋が私達に気が付いた。

「な、何やってんだ花?」
「それはこっちのセリフです」

どこに行くつもりだ?となずな達が問い詰める。

「ちょ、ちょっと風呂に入って来るだけだよ」

言ってる事に嘘はないだろうな。
ちょっとカマかけるか。

「へえ、体洗ってもらったりマッサージしてもらったりか?羨ましいな。私もついていっていいか?」
「いや、女子が行くとこじゃねーから天音……あっ!」

慌てて口を塞ぐ遊。

「遊!!あんたまだ懲りてないの!?」

ロビーで正座して怒られてる遊と粋と2人に乗せられた男子。
大地はあまり興味がないらしいし、陸も自分で祈一筋と断言したくらいだら有言実行していた。
……てなことがあったことを部屋で筋トレしている大地に報告していた。

「あの二人は相変わらずだね」

大地はそう言って笑っている。

「お前はどうなんだ大地?」
「え?」
「お前は同棲を始めてから彼女の私にすら興味を示さない。どういうことだ?」

その年で賢者になったのか?
私に魅力が足りないのか?

「興味ないわけじゃないよただ色々慌ただしかったから」
「じゃあ、旅行中なら問題ないよな?」
「ご、ごめん。考えてなくて準備してない」
「専門学校くらいいざとなったら中退するから心配しないでいい」

それに私は子供ができにくい体質らしい。
少なくともすぐできる事はない。
安心しろ。

「本当にいいの?僕が病気持ってるかもしれないよ?」
「そんなに心配なら今度病院で診てもらえ」

私は今楽しみたいんだ。
そう伝えると無駄な抵抗は諦めたようだ。

「いざとなったら僕も大学辞めるよ」
「そんなことにはならないって言ったろ?」

私達の北海道旅行は始まったばかりだった。

(3)

今旅行の帰りの飛行機にいる。
私は十分に北海道を満喫した。
肉に魚介にジャガイモにラーメンに……。
北海道のありとあらゆるものを食いつくした。
日本最北端に行ったけど私には何がいいのか分からなかった。
寒い。
ただそれだけだった。
此処にどんなロマンが在るのか分からなかった。
大地には分かったらしい。
水平線の向こうを見つめて何か思うところがあったらしい。
何も言わずにただじっと見つめていた。
札幌では上手い事ホテルを抜け出した遊達。
すすきので遊んでいたらしい。
朝方帰ってきて部屋から閉め出されて大騒ぎになった。
自業自得だ。
大地はそういう事は全くなかった。
陸もそうだけど江口家の人間は教育されているのだろうか?
ちなみに空もやっぱり同じだったらしい。
おなじ金で肉食った方が良いと思ってるらしい。
飛行機を乗り継いで地元に戻る。
飛行機は全て如月航空の飛行機をチャーターしていた。
江口グループの御曹司が関わると待遇も変わってくる。
私達だけファーストクラスを提案されたけど皆と一緒でいいと断った。
どうせこの先大地と一緒なら乗ることになるだろう。
まあ、みんな疲れて寝てしまっているけど。
地元空港に着くとバスで地元に帰る。
荷物は既に宅配していたので皆着た時よりも身軽だった。
駅前に着くと解散した。
家に帰るもの。
繁華街に遊びに行く者。
私は大地に帰る前に寄りたい店があると言った。

「元チャーシュー麺大盛り!味付玉子、ネギバカ盛り、ギョーザ10個、チャーマヨめし!」

ただの夕食だ。
北海道の味噌ラーメンも良いけど地元のラーメンが恋しくなる。
もちろん替え玉も3回くらいはいける!
腹も満たされて家に帰ると風呂に入って寛ぐ。
大地は今風呂に入っている。
テレビはどうでもいいイライラをスカッとさせるどうでもいいエピソードを披露していた。
最初の一言で私なら殴り飛ばしているところだ。
最後まで聞いてビンタ一発じゃ私はスカッとしない。
産地直送で中東送りくらいしてやらない時が済まない。
同じ番組を見ていたらしいSHの皆とチャットをしていると大地が戻って来た。

「何か面白い番組やってる?」
「むしろイライラしてたところだ」
「じゃあスカッとしない?」
「何をするんだ?」
「えーと……」

華麗にベッドに誘ってくれるのか?
少しはまともになったみたいだけどまだ足りないらしい。
手助けしてやるか。
私は服を脱ぎだし下着だけになる。
大地は戸惑っていた。

「下着もとらないと大地を誘惑できないか?」
「十分だよ」

大地は私をお姫様抱っこすると寝室のベッドまで運ぶ。

「お前がスッキリしたいだけだろ?」
「ダメかな?」
「その気にさせてやっぱやめるとか言い出したら絞め殺してやる」
「殺されたくはないかな」

大地はそう言って抱きついてくる。
旅の疲れを大地が癒してくれた。

(4)

「これで全部かな?」
「うん、後は大丈夫かな」

旅行から帰ると怒涛の様に慌ただしかった。
まずは水奈の引越し。
人手がいるかなと思ったけどそんな事は無かった。
僕の家に水奈の着替え等を持って来るだけなんだから。
家具は大体僕の部屋に揃っているから必要なかった。

「お世話になります」
「こちらこそよろしく」

水奈が引っ越した夜そんな風に挨拶してた。
それからはまず水奈の入学の準備。
入学式用のスーツ、バッグ、通学用の服、ノートPC等々買うものが沢山ある。
スーツは実際に試着してみてしっくりするのを自分で確かめる。
バッグ等も女性物だから僕はただ、水奈が選んでいるのを見守っているだけ。
ノートPCだけは水奈だけでは分からなさそうなので選んでやる。
手頃そうなのを選ぶと買う。
水奈も同じように両親からカードと通帳を渡してもらったらしい。
バイトする時間を二人の時間に使いなさい。
それが許されるのは学生の間だけ。
社会に出たらそう言う時間がどれだけ貴重な物だったか思い知る事になるから。
水奈の両親はそうだったらしい。
水奈が本格的にこの家で暮らすから水奈の使いやすいようにレイアウトを変える必要がある。
水奈と相談して部屋の模様替えをした。
大体の事が終るともう入学式まであとわずかとなっていた。
水奈と夕飯を食べて、風呂に入って、そして二人でテレビを見てのんびりしていた。
手を繋いだまま。

「空、一ついいか?」
「どうしたの?」
「本当に私でよかったのか?」
「どうして?」

すると水奈は話を始めた。
水奈の両親も大学に入ってすぐ同棲を始めて、そして結婚した。
そして何度も揉めて喧嘩を繰り返したそうだ。
大体が水奈のお父さんが喧嘩の原因だった。
その原因が水奈の心配の種らしい。

「ガミガミやかましい女房!」

水奈の父さんはお母さんの事をそう言ったらしい。
水奈にもその血がある。
だから僕と同じように喧嘩をするんじゃないのか?
僕が水奈を選んだことを後悔しないか?
それが水奈の悩みだった。
僕は笑って水奈を抱き寄せる。

「学の母さんも同じだったみたいだね」
「ああ、うちの母さんと愚痴ってたらしい」

相手を間違えたと。

「学から聞いたんだ。僕の両親は理想の夫婦だったって」
「その話は私も聞いた」
「だけど僕は父さんじゃない」
「え?」
「父さんの様に振舞える自信なんてない」

水奈のお父さんみたいになっちゃうかもしれない。

「そしたら水奈は今後悔する?」

僕の言ってる意味が分かったみたいか。

「為すがままに……か」
「少なくとも僕は水奈を幸せにする努力はするよ」
「空はきっと空の父さんみたいになれるよ」
「ありがとう」
「私も空を幸せに出来るように頑張る」
「それは無理だよ」
「やっぱりか……」

落ち込む水奈に僕は笑って言う。

「だって僕は今幸せだよ」

これ以上にないくらい。

「空は意地悪だな」

水奈は僕に抱きつく。
そんな水奈の頭をやさしく撫でてやる。

「そろそろお休みするかい?」
「寝ちゃうのか?」

寂しそうな水奈の顔。

「お休みって言っただけ。寝るとは言ってない」

ここじゃ寒いだろ?

「お前本当に意地悪だぞ!」

水奈はそう言って僕の胸をポカポカ叩く。
そんな水奈を抱きかかえてベッドに運ぶ。

「まさかベッドの上でも意地悪しないだろうな?」
「例えば?」
「それが意地悪って言うんだよ!」
「ごめん」

水奈の耳元で囁いてやる。

「大好きだよ」

水奈は何も言わずに目を閉じる。
部屋の明かりを消す。
僕達の新生活の幕開けだった。
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