126 / 138
4thSEASON
哀ない苛まない世界へ
しおりを挟む「じゃあ、帰るときに連絡して、迎えにくるから」
「わかった。ありがとう」
そう言って私を会場に送ってくれた空は帰っていった。
今日は地元大学の入学式。
違う所にある狭間キャンパスの医学部と合同でやる為、ホテルのホールをつかって行われる。
「あ、水奈。こっちこっち」
大地達は先に来ていたみたいだ。
皆立派なスーツに身を包んでいる。
遊や粋は私立大学入学式。
天音や紗理奈は専門学校に通い始めている。
皆それぞれの新生活が始まっていた。
私もそうだ。
空と同棲を始めて2週間が経とうとしていた。
空は1年間一人暮らしをしていただけの事はあって家事は大体こなすけど料理だけはダメだ。
すぐにインスタントやレトルト食品に走ろうとする。
それもあって私が食事は世話していたけど。
同棲を始めたというのに、今さら恥ずかしがることも無いのに、私の洗濯物を洗濯するのを恥ずかしがっている。
「もう、気にする間柄じゃないだろ?」
「そうは言うけどさ」
「じゃあ、洗濯は私がする?」
「全部水奈に任せるわけにもいかないし」
「じゃ、よろしく」
「わかったよ」
もちろんどこかの馬鹿と違って私のパンツの匂いを嗅いで喜ぶ変態じゃない事くらいは知ってる。
きっと私達の生活はうまく行ってるらしい。
入学式が終るととりあえずファミレスに行くことにした。
その後どうするかを考えていた。
と、行ってもこの人数でやれることなんて知れている。
カラオケかボウリングかゲーセンか。
さすがにスーツ姿で汗をかきたくない。
結局カラオケに行くことにした。
繭がSAPのパーティルームを確保してくれる。
他の学校の皆と合流する時間まで歌うと集合場所に向かう。
なずなや天音達と合流した。
それから居酒屋に向かう。
なずなや花は私立大学そばのアパートで遊や粋と同棲をしている。
私立大学そばまでは大在駅から近いので便利といえば便利だ。
だけど便利なのは大在かその次の坂ノ市駅まで。
それを過ぎると電車の本数は極端に減ってしまう。
神田春海と西松大介もタクシーで来たらしい。
狭間キャンパスのそばで同棲してるそうだ。
私たちの学年は大体が同棲している。
お互いバイトをしているか、親の仕送りで生活している。
大地の家や繭達の家は仕送りの額が違う。
特に祈と繭と梓は親に家を新築してもらっていた。
相方の方はもう笑うしかないと思ってるそうだ。
大地は天音の通学に配慮して府内町の高級マンションの最上階を借りていた。
最上階を改築して1フロアまるっと借りている。
まあ、石原家と酒井家はこの地元でなら何でもありだから普通なのだろう。
それでも天音は飲食店でバイトを始めた。
お金に困ってるわけじゃない。
調理師の資格を得る為に実務経験を必要とするから。
府内町ならいくらでも飲食店はある。
車で移動しなくてもいいように大地のお母さんが部屋を手配してくれたらしい。
バイト先も江口グループの傘下のチェーン店。
かなりの好待遇らしい。
私はバイトはしない。
親の仕送りでやり取りしろと言われている。
ついでに空からも通帳を預かっている。
「どうせいずれはそうなるんだろうし、家計は水奈に任せるよ」
空が私を信頼してくれてるらしい。
久しぶりに皆が集まったという事もあったので1次会は盛り上がっていた。
空もそうなると予想していたのだろう、あまり連絡をしてこない。
楽しんでくるといいという空なりの配慮だ。
1次会が終ると2次会に行く者と帰る者に別れた。
私は帰ろうと思ったので空に連絡する。
「なんだよ水奈。せっかくだから遊んでいこうぜ」
「空と約束してるんだ。悪い」
「空は束縛系なのか?私がガツンと言ってやる!」
天音が私を2次会に誘ったけど私は断った。
明日が休みというわけじゃないから。
ガイダンスやオリエンテーション、履修科目の登録と結構忙しいと空に聞いていた。
朝まで遊ぶのはまた別の機会にと天音の誘いを断っていた。
「南口の方で待ってる」
空から連絡が来たので天音達と別れて駅の方へ歩く。
駅を抜けて南口に行くと空の車が待機してた。
空の車に乗って家に帰る。
「どうだった?」
「楽しかった」
「それはよかった」
家に帰るとスーツを脱いで畳んでしまう。
今度クリーニングに出して置こう。
「水奈、せめて何か着なよ」
「私の下着姿は興味ないか?」
「それは後の楽しみにとっておくから」
「いいよ、このままシャワー浴びてくる」
「酔ってるんだから足滑らせないようにね」
「じゃあ、空も一緒に入って見ててくれよ」
「そんなに広い風呂じゃないよ」
そんなやりとりももう慣れた。
空はちゃんと私に優しくしてくれる。
私がシャワーを浴びて戻ってくると空が缶を二つ用意してくれていた。
「それじゃ、水奈入学おめでとう」
「ありがとう」
2人で乾杯してテレビを見て過ごす。
空は今日何してた?とかそんな他愛のない話をしていた。
あまり夜更かしはしない。
空は来週まで休みだけど私は明日も学校に行かなくちゃいけない。
2人でベッドに入るとじっくりと愛を語り合う。
朝になると私は空を起こさないように起きて朝食の支度をする。
手作り感を出したいならきっと和食の方がいいだろう。
空の実家ではパン食だったらしいけど、私はご飯食にしてみた。
どうせ弁当も作ってやらないといけない。
ならご飯の方が無駄が無くて済む。
味噌汁の葱の匂いに気付いたのか空が起きてきた。
2人で朝食を食べる。
「水奈は先に準備しなよ。片づけはやっておくから」
「ありがとう」
空が洗うとキッチンを泡だらけにしてしまう。
だけどやってくれるという好意に今は甘えていた。
私が準備を終わらせるとリビングでテレビを見ながらコーヒーを飲む。
時間になったら私は学校に行く。
「どうせ、一緒に行くことになるから」
そう言って空が大学まで送ってくれる。
帰りはまた連絡くれたらいいよと空が言う。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
そうして一日が始まる。
哀さえ愛に変えて鐘の音を鳴らしていこう。
輝きは刹那。
ここでなくてもどこかで私たちは咲いていた。
0
あなたにおすすめの小説
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
好きだから傍に居たい
麻沙綺
恋愛
前作「ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)」の続編です。
突如として沸いた結婚話から学校でのいざこざ等です。
まぁ、見てやってください。
※なろうさんにもあげてあります。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる