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4thSEASON
哀ない苛まない世界へ
しおりを挟む「じゃあ、帰るときに連絡して、迎えにくるから」
「わかった。ありがとう」
そう言って私を会場に送ってくれた空は帰っていった。
今日は地元大学の入学式。
違う所にある狭間キャンパスの医学部と合同でやる為、ホテルのホールをつかって行われる。
「あ、水奈。こっちこっち」
大地達は先に来ていたみたいだ。
皆立派なスーツに身を包んでいる。
遊や粋は私立大学入学式。
天音や紗理奈は専門学校に通い始めている。
皆それぞれの新生活が始まっていた。
私もそうだ。
空と同棲を始めて2週間が経とうとしていた。
空は1年間一人暮らしをしていただけの事はあって家事は大体こなすけど料理だけはダメだ。
すぐにインスタントやレトルト食品に走ろうとする。
それもあって私が食事は世話していたけど。
同棲を始めたというのに、今さら恥ずかしがることも無いのに、私の洗濯物を洗濯するのを恥ずかしがっている。
「もう、気にする間柄じゃないだろ?」
「そうは言うけどさ」
「じゃあ、洗濯は私がする?」
「全部水奈に任せるわけにもいかないし」
「じゃ、よろしく」
「わかったよ」
もちろんどこかの馬鹿と違って私のパンツの匂いを嗅いで喜ぶ変態じゃない事くらいは知ってる。
きっと私達の生活はうまく行ってるらしい。
入学式が終るととりあえずファミレスに行くことにした。
その後どうするかを考えていた。
と、行ってもこの人数でやれることなんて知れている。
カラオケかボウリングかゲーセンか。
さすがにスーツ姿で汗をかきたくない。
結局カラオケに行くことにした。
繭がSAPのパーティルームを確保してくれる。
他の学校の皆と合流する時間まで歌うと集合場所に向かう。
なずなや天音達と合流した。
それから居酒屋に向かう。
なずなや花は私立大学そばのアパートで遊や粋と同棲をしている。
私立大学そばまでは大在駅から近いので便利といえば便利だ。
だけど便利なのは大在かその次の坂ノ市駅まで。
それを過ぎると電車の本数は極端に減ってしまう。
神田春海と西松大介もタクシーで来たらしい。
狭間キャンパスのそばで同棲してるそうだ。
私たちの学年は大体が同棲している。
お互いバイトをしているか、親の仕送りで生活している。
大地の家や繭達の家は仕送りの額が違う。
特に祈と繭と梓は親に家を新築してもらっていた。
相方の方はもう笑うしかないと思ってるそうだ。
大地は天音の通学に配慮して府内町の高級マンションの最上階を借りていた。
最上階を改築して1フロアまるっと借りている。
まあ、石原家と酒井家はこの地元でなら何でもありだから普通なのだろう。
それでも天音は飲食店でバイトを始めた。
お金に困ってるわけじゃない。
調理師の資格を得る為に実務経験を必要とするから。
府内町ならいくらでも飲食店はある。
車で移動しなくてもいいように大地のお母さんが部屋を手配してくれたらしい。
バイト先も江口グループの傘下のチェーン店。
かなりの好待遇らしい。
私はバイトはしない。
親の仕送りでやり取りしろと言われている。
ついでに空からも通帳を預かっている。
「どうせいずれはそうなるんだろうし、家計は水奈に任せるよ」
空が私を信頼してくれてるらしい。
久しぶりに皆が集まったという事もあったので1次会は盛り上がっていた。
空もそうなると予想していたのだろう、あまり連絡をしてこない。
楽しんでくるといいという空なりの配慮だ。
1次会が終ると2次会に行く者と帰る者に別れた。
私は帰ろうと思ったので空に連絡する。
「なんだよ水奈。せっかくだから遊んでいこうぜ」
「空と約束してるんだ。悪い」
「空は束縛系なのか?私がガツンと言ってやる!」
天音が私を2次会に誘ったけど私は断った。
明日が休みというわけじゃないから。
ガイダンスやオリエンテーション、履修科目の登録と結構忙しいと空に聞いていた。
朝まで遊ぶのはまた別の機会にと天音の誘いを断っていた。
「南口の方で待ってる」
空から連絡が来たので天音達と別れて駅の方へ歩く。
駅を抜けて南口に行くと空の車が待機してた。
空の車に乗って家に帰る。
「どうだった?」
「楽しかった」
「それはよかった」
家に帰るとスーツを脱いで畳んでしまう。
今度クリーニングに出して置こう。
「水奈、せめて何か着なよ」
「私の下着姿は興味ないか?」
「それは後の楽しみにとっておくから」
「いいよ、このままシャワー浴びてくる」
「酔ってるんだから足滑らせないようにね」
「じゃあ、空も一緒に入って見ててくれよ」
「そんなに広い風呂じゃないよ」
そんなやりとりももう慣れた。
空はちゃんと私に優しくしてくれる。
私がシャワーを浴びて戻ってくると空が缶を二つ用意してくれていた。
「それじゃ、水奈入学おめでとう」
「ありがとう」
2人で乾杯してテレビを見て過ごす。
空は今日何してた?とかそんな他愛のない話をしていた。
あまり夜更かしはしない。
空は来週まで休みだけど私は明日も学校に行かなくちゃいけない。
2人でベッドに入るとじっくりと愛を語り合う。
朝になると私は空を起こさないように起きて朝食の支度をする。
手作り感を出したいならきっと和食の方がいいだろう。
空の実家ではパン食だったらしいけど、私はご飯食にしてみた。
どうせ弁当も作ってやらないといけない。
ならご飯の方が無駄が無くて済む。
味噌汁の葱の匂いに気付いたのか空が起きてきた。
2人で朝食を食べる。
「水奈は先に準備しなよ。片づけはやっておくから」
「ありがとう」
空が洗うとキッチンを泡だらけにしてしまう。
だけどやってくれるという好意に今は甘えていた。
私が準備を終わらせるとリビングでテレビを見ながらコーヒーを飲む。
時間になったら私は学校に行く。
「どうせ、一緒に行くことになるから」
そう言って空が大学まで送ってくれる。
帰りはまた連絡くれたらいいよと空が言う。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
そうして一日が始まる。
哀さえ愛に変えて鐘の音を鳴らしていこう。
輝きは刹那。
ここでなくてもどこかで私たちは咲いていた。
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