姉妹チート

和希

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(1)

 しかし、本当にこのクラスはどうなっているんだろうか?
 歳を重ねるごとに、季節が変わる度に人数が増えていく。
 この2学期も例外ではなかった。
 私達のクラスに転校生がやってきた。
 ルイス・ピエール。フランス人らしい。
 夏から地元サッカークラブに加入し、ゴールキーパーとして活躍しているルイス・カルキの息子なんだそうだ。
 ピエールも身長が高くゴールキーパーを目指している。
 白人で青い瞳。それだけでFGのターゲットになるが、サンターナの母さんとピエールの母さんは仲が良いらしい。
 当然のようにSHが介入するとFGが散っていく。
 フランス人か。毎日フランス料理食ってるのかな?
 私達はまた質問攻めしていた。
 朝は各自自分勝手にフランスパンをオーブンで温めバターとジャムをつけて食べる。カフェオレを飲むらしい。
 その代わり夜は家族一緒に食べる。イタリア料理を主に食べるらしい。特徴はメインを食べると必ずチーズを食べる事。
 チーズだけは必ず別の皿で出るそうだ。
 肉料理が多くて、野菜、魚料理が少ないのが特徴。
 フランスでは小学校が5年間、中学校が4年間ある。
 その次の3年間が高校なのは日本と変わらない。
 フランス人の男の特徴でおしゃべりが多いらしくてピエールも良くしゃべる。
 SHはついに国籍の壁も超えてしまった。
 どこまで広がっていくのだろう?
 家に帰るとその事を家族に伝える。
 愛莉とパパは知っていたらしい。
 水奈の父さんから聞いていたそうだ。
 今季限りで水奈の父さんが引退することも聞いた。
 水奈は何も言ってなかったからまだ知らないんだろう。
 夕食を食べた後部屋に戻る。
 1人でゲームをして寝る。
 勉強?
 宿題なんて30分もあれば終わるよ。
 どうせ授業で習うんだし予習とかするだけ時間の無駄だろ。
 何時間もだらだらと勉強する奴の気持ちが分からない。
 時間になると寝る。
 また退屈な日々の始まりだった。

(2)

 始業式。
 2人の転校生が入ってきた。
 ルイス・ガルトとルイス・ヘフナー。
 フランス人だそうだ。
 羨ましいくらいに真っ白な肌と青い目。
 そして二人とも背が高い。。
 2人ともサッカーをしていてポジションはゴールキーパーを希望しているらしい。
 父親はJリーグの選手。
 フランス代表にも選ばれた経歴を持つ選手。
 お母さんの希望と偶々スカウトされた事。ルイス家は皆日本の文化に関心があったことから来日したんだそうだ。
 もっとそれらしい、京都やらそっちを選べばよかったのに。
 朝礼が終ると早速優たちが勧誘する。
 優たちが動くとFGは手出しできない。
 2人はSHに入った。
 始業式が終ると終礼をして家に帰る。
 祈姉様から祈姉様のクラスにもルイス家のものが入って来たらしい。
 やはりサッカーをしているんだそうだ。
 サッカーが流行っているんだろうか?
 夕食を食べて、風呂に入ると部屋に戻る。
 そして天とメッセージをしたり電話をしたり。
 勉強をしている間はメッセージだけにしている。
 別に名門中学に行きたいわけじゃないけど普通に大学までは行っておきたい。
 その為の勉強くらいはしている。
 勉強が終ると「おやすみなさい」とメッセージを打って眠りにつく。
 何事もない日常生活を送っていた。

(3)

 教室の机の引き出しに一通のラブレターが入っていた。

「好きです。付き合ってください。放課後教室で待ってます。白鳥蒼斗」

 真面目そうな白鳥君からとは意外だった。
 白鳥君を見る。
 白鳥君と目が合う。
 白鳥君は慌てて目を逸らす。
 間違いはなさそうだ。
 彼は成績はクラスでは上位だ。
 父親は大企業のCEO。
 うちの父親は外交官で海外に赴任していることが多い。
 会合等に招待されることもあるので母親もついている。
 家には住み込みの家政婦が1人いて、その人と二人で暮らしている。
 とりあえずはどう返事しよう?
 彼は塾に通っている。
 聞いたところ進路は私と同じ防府中学の入試を受けると聞いた。
 断る理由はない。
 だけど付き合う理由もない。
 誰かに相談するというのはありだろうか?
 誰に相談する?
 友達のリリーに昼休み相談してみた。
 彼女は彼氏がいる。
 何か参考になるかもしれない。

「取りあえず付き合ってみるのもいいんじゃない?」

 一言だった。

「羨ましいよ、高校までは進路一緒なんでしょ?」

 リリーは言う。
 そうか、リリーの彼氏は中学から離れ離れなんだな。
 でも高校は同じ高校に行くと約束したらしい。
 とりあえずか。
 まあ、断る理由も無いし良いか。
 放課後教室に残った。
 そして白鳥君と二人きりになる。

「返事聞いてもいいかな?」
「いいよ」

 白鳥君は何も言わない。

「もう話は終わり?」
「あ、だから返事を聞いてないんだけど?」
「だからいいよ」
「……まじで?」
「断ったほうがよかった?」
「そ、そんなことないけど」

 彼は本気で嬉しそうだった。
 私は良い事をしたんだ。
 胸がどきどきしてるのはそういう事だろう。

「じゃあ、行くね」
「待って、連絡先交換だけでも」

 ああ、そっか。
 スマホを取り出して白鳥君と連絡先を交換する。

「でも、どうして私だったの?」

 私はスマホを操作しながら聞いていた。
 そんなに大した理由じゃなかった。
 隣の席にいたときに曜日を間違えて教科書がなくて困っていた時に見せてくれた事。
 たったそれだけが彼の恋のきっかけだった。

「あ、僕そろそろ行かないと塾の時間に間に合わない」

 忙しい人なんだな。

「じゃあ、またね。これからよろしく」

 そう言って白鳥君は教室を出て行った。

「じゃあ、またね」
「これからよろしく」

 リリーと初めて話した時もそんな事話したっけ?
 そう思った時胸がうずいた。
 何だろうこの気持ち?
 私も家に帰った。

「あ、おかえり。今日はちょっと遅かったね?何かあった?」

 家政婦の川口碧さんが聞いてきた。

「まあ、ちょっとね……」
「夕食出来たら呼ぶから」
「うん」

 それまでは部屋で勉強していた。
 そして夕食の時間、私は川口さんと食事をする。
 彼女はとても親しく接してくれる。
 まるでお姉さんがいるみたいに。
 だから碧さんに今日あったことを話していた。

「なるほどね、爽子にも彼氏ができたか」
「とりあえずだけどね」
「それは違うんじゃない?」

 碧さんがそう言ってにやりと笑う。

「取りあえず付き合うにしてはやけに嬉しそうじゃない。少なからずその彼氏に関心があるんじゃないの?」

 碧さんの言うとおりかもしれない。
 私は心が揺れている。

「まだ小学生なんだし自由にしたらいいと思うよ。先の事なんて誰にもわからないんだから」

 永遠に続くかもしれないし、別れるかもしれない。
 碧さんは何人もつきあってきたらしい。
 今はフリーだけど。
 夕食が終ると私は風呂に入る。
 そして考えをまとめる。
 私は白鳥君が好きなんだ。それを受け入れよう。
 でも今後何をすればいい?
 小学生の恋愛なんて何をすればいいんだろう?
 精々誕生日を祝ってあげたりバレンタインにチョコレートあげたりとか。
 受験でデートなんてとてもできない。
 答えが出ないまま私は風呂を出る。
 部屋に戻るとスマホが一通のメッセージを着信していた。
 白鳥君からだ。

「ありがとうな、取りあえずお互い受験頑張ろう!」

 白鳥君の中ではすでに答えが出ていたようだ。

「うん、頑張ろうね」

 そう返信する。
 返信は無かった。
 多分今頃勉強に必死なんだろう。
 私も机に向かう。
 デートなんかしなくてもお互いの気持ちが一緒ならそれでいい。
 認めあえればそれだけでいい。
 お互いの夢に向かって突き進むだけ。
 ただ隣に寄り添うパートナーが出来た。
 それはとても温かいもの。
 こうしてお互いの疑念を紐解きながら私達は一歩ずつ歩んでいいく。

(4)

「水奈、ちょっと来なさい」

 父さんに呼ばれた。
 今日は私なにもやってないぞ?
 とりあえずリビングに座る。
 父さんの隣には母さんがいた。
 誠司はもう寝てる。

「今日チームの運営の人と話をしてな。合意を得たので水奈にも話しておこうと思ってな」

 父さんがいつになく真剣だ。
 何を話したのだろう?

「父さん、今季が終ったらサッカー選手辞めようと思う」

 え?

「どこか悪いのか?」

 私は聞いていた。
 父さんは首を振る。
 このままいけば多分3連覇は間違いないだろう。
 チームにも新戦力が次々入ってる。
 父さんの役目は終わった。
 今後はコーチとしてサッカー選手の育成に携わっていくつもりだ。

「母さんは賛成なの?」
「いやな事を続けさせたっていい結果にはつながらない。そういう世界らしいから」
「父さんはサッカーが嫌いになったの?」

 父さんは首を振る。

「そうだな……冬夜流に言うと”もう満足した”かな?」

 冬夜とは天音の父さんの事。
 天音の父さんは大学時代にバスケットを二年して世界の頂点に二度たった。
 頂点に立ってそして自ら幕を下ろした。
 父さんの世代のフォワードは天才が多くて代表には選ばれなかった。
 でもJリーグというアジアでは3番目の強豪リーグで何度もリーグ優勝に輝いている。
 クラブワールドカップにも何度も出場した。
 さすがに優勝は出来なかったけど。
 父さんはもう限界を感じたのだろう。

「父さんはもう思い残すことは無い。これからの夢は誠司に託せる」

 そっか、父さんの中ではもう未練はないんだな。

「水奈にこの話をしたのには理由があるんだ」

 母さんが言う。

「多分水奈の中で今描いてるのは学君のお嫁さんだろう?」

 まだそんな先の事考えてない。

「でもそれは夢の終わりだ。水奈の人生はこれからいろいろな選択肢が出てくる。それは自分で選ばなくちゃならない。振り返った時に父さんのように充実感を得られる選択をしなさい」

 私の未来。自由、希望、夢。
 それは私の自由だ。
 だけどできるなら悔いのない人生を。
 母さんはそう言う。

「話は以上だ。あまり夜更かしするなよ」

 母さんが言うと私は部屋に戻る。
 父さんの事はまだ伏せておいた方がいいだろうな。
 学とメッセージのやり取りをする。

「水奈はやりたい事あるのか?」
「まあ、なんとなくな」
「そうか、高校くらいは行くんだろ」
「そのつもりだ」

 私の頭で入れる学校があるなら。

「頑張れ」
「ありがとう」

 やりたい事があるならやりなさいという自由。
 やりたい事という夢。
 夢がもたらす希望という名の光。
 それが天音の言っていた月の導きなのかもしれない。

(5)

 街外れにある料亭。
 俺は見たことのない女性を二人っきりになっていた。
 その女性は動きやすいように髪を短く切って整った顔立ちをしており、それなりに体も鍛えられているようだった、
 礼儀もきちんと指導されているようで正座して背筋を伸ばしている。
 一つ一つの動作に無駄のない洗練された動き。
 彼女の名前は新條真梨香。
 職業は俺と同じ、ボディガード兼秘書。
 日本人らしさが出ていて一言も喋らないまま俯いている。
 見た目ももちろんだが、その一つ一つの動きに美しさを感じさせる女性。
 俺から何言わないと始まらないようだ。

「ご趣味は?」

 ベタな質問だった。何か話題のとっかかりが欲しい。

「申し訳ありません。そういう時間を持ったことがなくて……」

 彼女もまた俺と同じ幼少の頃から海外で英才教育を受けてきたエキスパート。
 無理もないか……。

「好きな音楽とかは?」

 曲くらいは聞くだろう?

「それならあります」

 彼女は1960年代に流行った洋楽バンドが好きらしい。
 良く口ずさむ歌があるそうだ。

 素直なままで思うように行けば良い。
 答えはきっと見つかるから。
 素直なままで思うように行けば良い。
 こんな素敵な言葉を聞いたんだ。素直に生きればいいんだって。

 俺のもとに女神がやってきた。
 そしてこんな言葉をつぶやいた。素直に生きなさい。
 全てが暗闇に包まれた時、彼女は僕のすぐそばに立っていた。
 そうしてこうつぶやいた。素直に生きればいいと。
 心が打ちのめされてしまっても自分の認められる世界の中にいる限り答えは見つかる。だからそのまま突き進め。
 離ればなれになってしまっても再び出会うチャンスはまだ残されている。答えはきっと見つかるからそのまま突き進め。
 彼女がそう呟く。迷うことは無いよって。
 夜の空がどんよりと曇ってしまっても。
 僕らを照らす明かりはまだあって明日が来るまで照らし出してくれるから大丈夫。
 目覚めると音楽が聞こえて女神がやってきてこう言うんだ。
 あなたの思うように生きればいいんだって。

「真梨香さんは俺の女神になってもらえますか?」

 失うものは無い。
 恐れることは無い。
 思ったことを口にしていた。

「私はまだあなたの事を何も知らない……まずはお互いを知ることから始めませんか?」
「……喜んで」

 お互いの連絡先を交換し終えた頃彼女の主人・石原恵美が来る。

「もう話は済んだかしら?」
「はい」

 彼女が立ち上がる。

「是非、またお会い出来たら嬉しいです」

 彼女はそう言った。

「是非よろしくお願いします」

 お互い仕事が忙しくて時間が取れないけど、それでも俺は彼女に惹かれていた。
 素直なままに生きよう。
 そう誓った

(6)

 運動会。
 運動神経が良い人に活躍の場を与えられる場所。
 ここぞとばかりに張り切る連中がいる。
 今年は小学校最後の運動会。
 もし、徒競走で1位をとれたら彼女に告白する。
 そう決めてた。
 スタートの合図が鳴る。
 スタートは決まった。
 走る事には自信があった。
 決まった!
 その時後ろで何かが起こった。
 思わず振り返る。
 誰かが倒れている。
 放っておけばよかったのに。
 僕の大イベントがかかっていたのに。
 どうせ手遅れだ。
 僕は戻って倒れたままの男子に声をかけて手を貸す。

「立てる?」

 男子は僕の手を取って起き上がる。
 靴の紐がほどけて踏んでしまったらしい。
 彼は悔しさで泣いていた。
 彼も何かをかけていたのだろうか?
 泣きたいのは僕も同じだ。
 最後に僕達がゴールする。
 観客から拍手が起こる。
 手に入れたいのは名声なんかじゃない。
 ただ一人の女の子を手に入れたかっただけなのに。
 その後の競技も滞りなく行われた。
 結論からすると片桐天音の大暴れだった。
 騎馬戦は一人で無双して、リレーはどんな劣勢だったとしても一気に覆す。
 今年はさらにサンターナという怪物がいる。
 勝負は6年生が走った時点で決まっていた。
 紅白対抗。もっといえばFG対SHの勝敗は変わらなかった。
 そうして運動会は幕を閉じた。
 6年生は片づけをしてそして終礼をして帰る。
 カッコつけて言いたかった。
 僕の恋は始まることなく終わった。
 だけど奇跡というのは起こるものだと物語は教えてくれる。

「あの、数馬君。ちょっといいですか?」

 水原希子さんから言われた。

「どうしたの?」
「聞きたい事があるんだけど」

 そのあと希子さんは僕と二人きりになるまで残った。

「どうして、あの時男子を助けたの?」
「え?」
「あのまま走っていればあなた1位だったじゃない」

 そうだね。そして君に告白するつもりでいた。
 希子さんは卒業後防府中学に行くって聞いてた。
 だからこの一年間のうちに思いを伝えたかった。
 だけど勇気がなかった。
 何かきっかけが欲しかった。
 そのきっかけに利用しようと思ったのが徒競走だった。
 馬鹿な事をしたと今でも思ってる。
 でも気付いてしまったら足が止まってた。
 そしてそれで手遅れだと思った。
 こんな時なんて言えば良いんだろう?

「誰かを助けるのに理由がいるかい?」

 そんなセリフを口にしていた。
 馬鹿だと彼女は軽蔑するだろう。
 そう思っていたけど彼女は静かに僕の話を聞いていた。

「ねえ、そのセリフを言えるならこんなセリフもしってるよね?」
「どんなセリフ?」
「人を好きになるのに理由がいるかい?」

 彼女からそんな言葉を聞くとは思っていなかった。

「水原さんは誰か好きな人がいるの?」
「うん、正確に言えば”出来た”かな?」
「そうなんだ、その人が羨ましいな」
「どうして?」

 この流れは神様が僕にチャンスを与えてくれたのかもしれない。
 きっかけは彼女から作ってくれた。
 好きな人はいるらしいけど。
 ちゃんと気持ちに整理をつけよう。

「僕は水原さんが好きでした。徒競走で1位になったら告白するつもりでした」
 
 でも一位になれなかった。
 そんな僕の話を聞いて水原さんは笑う。

「知ってる、それって死亡フラグっていうんだよ」

 そうだね、すっかり忘れていたよ。
 そして最後に玉砕をしっかり決めた。
 もう思い残すことは無い。

「じゃ、僕もう行くね。好きな人に思いが届くと良いね」

 そう言って僕は帰ろうとした。
 だけど水原さんが呼び止めた。

「待って、返事も聞かずに帰るわけ?好きな人に思いが届くと良いねって言うならちゃんと話を聞いて」

 僕は足を止めて振り返る。

「どういう意味?」
「ある意味数馬君の選択肢は正しかったのかもしれない。あなたのあの行動に私は心を動かしてしまった」

 水原さんは何かを言うのを躊躇っている。
 次の言葉を僕はじっと待っていた。

「私は数馬君を好きになりました。もし良かったら付き合ってください」

 あの時男子がこけなければ、教師に任せて走り抜けなければ起こらなかった奇跡。
 いくつもの偶然が重なった軌跡。
 水原さんに会えたことがキセキなんだ。

「喜んで、これからよろしくお願いします」
「ありがとう」

 彼女は泣いていた。
 泣かないで。
 そんな顔をさせる為に返事したんじゃない。
 水原さんは落ち着くと僕に近づく。

「数馬君は一位という褒美はもらえなかった。だからかわりにとっておきの褒美をあげる」

 そう言って水原さんは僕の初めてのキスを奪っていった。
 水原さんも初めてだとあとで聞いた。
 その後教室で話をしていた。
 あと半年でこの教室ともお別れ。
 そして僕達も別々の中学に行く。
 だから僕は約束する。

「3年待ってくれる?防府高校に必ず行くから」
「だめだよ。そんなに待てないよ」

 水原さんはそう言って笑う。

「連絡先交換しよ?違う中学でも済むところは一緒なんだから。偶にはデートくらい誘ってよ」

 スマホをだして連絡先を交換する。

「じゃ、そろそろ帰ろう?続きは帰ってからでもできるから」
「わかった」

 2人で手をつないで昇降口まで歩く。
 この学校では1年生でもカップルがいる。
 手をつなぐくらいで騒がれるような小学校じゃない。

「じゃあね」
「じゃあまた」

 そう言って僕達は家に帰る。
 小さな勇気が大きな奇跡を呼ぶ。
 僕は家に帰ると、夢の続きを楽しんだ。
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