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(1)
「酒井さん宅には今年もお世話になりまして……」
僕は何も世話してないけどね。
何もしてないけど挨拶に訪れる大人たち。
隣には青いドレスを着た翼が立っている。
如月天も僕の妹の繭を連れて対応している。
天もいい加減慣れたらしい。
大地と天音もリラックスしている。
真新しいドレスに身を包んでいる。
大地がプレゼントしたそうだ。
多分僕の知り合いで一番変わったのは天音だと思う。
教師の机にトカゲを入れていた当時の彼女が想像できないほどの変貌。
立場が人を変えるってあるんだね。
もちろん天音がそれを弁えてる事が前提だけど。
「どうかしたの?善明」
「ああ、天音が変わったねって思って」
「確かに変わったね」
きっと、大地を気づかった結果が今の天音の姿なんだろうね。
翼はそう言った。
「それにしても酷くない?彼女が隣にいるのに他の女子の事を考えてたわけ?」
「あ、ああ。ごめんよ」
僕は翼に平謝りした。
そんな僕を見て翼は笑う。
「心配しないで、本気で怒ってるわけじゃないよ」
「そ、それはよかった。それにしても随分知り合いが増えたね」
「そうだね」
地元を支配できるんじゃないか?
翼はそう言って笑う。
多分笑い事じゃないと思うよ。
事実上支配してるようなものだし。
まさか本当に県知事までその手が及ぶとは思わなかったよ。
文字通り僕達に敵なんていないのかもしれない。
昔読んだ小説に4つの企業体が世界を支配しているという小説を読んだ事がある。
僕達はいくつの家で地元を支配しているのだろう?
ちなみにその小説は化け物じみた能力を持つ4兄弟によって滅ぼされるという結末だった。
未だに未完だったけど。
随分と左寄りな思考の作者だったと思うよ。
あとがきでファンレターという名の脅迫文を晒して名前も名乗れないような程度の低い奴にまともに回答する気がないと逃げていた気がするけどね。
策者もそのあまりにも反日的な作者の思考についていけずに途中で読むのを止めたらしい。
しかし、なんでこう反日的な作者というのは共通して逃げるのが上手いんだろうね。
某料理漫画の思想も酷かったけどね。
福島を批判した挙句クレームが殺到して逃げた。
日本が嫌いでオーストラリアが大好きでオーストラリアに国外逃亡したのはいいけど、オーストラリアが反日行動をとってからその後どうなったのかは知らない。
アメリカの反捕鯨団体には抗議するけどオーストラリアには何も言わない。
イルカ漁の反発にも目をつぶっていた。
まあ、印税がっぽり稼いだんだろうし、誰もいない無人島で暮らすのもいいかもしれないね。
「今度はどうされたんですか?」
また自分の世界に入ってしまったようだ。
誤魔化すように翼に話を振ってみた。
「美希はイルカ好き?」
「うん、イルカショーとかいつか見に行きたいね」
「食べるのは?」
「うーん、わざわざ食べる必要は感じないかな?」
クジラとかも食べたことはあるけど正直美味しくなかった。
一般的な回答だった。
「善明はイルカ食べてみたいの?」
「まあ、美味しいなら食べてみたいけどそうでも無いみたいだし」
翼と空は「キャビアとか味しなくて美味しくない!」と直球な感想を出していた。
「善明は世界の食文化について考えてたの?」
「まあね」
食べようと思えば何でも食べられるこのご時世にわざわざ代用食のくじらやイルカを食べる理由がわからないけどね。
「孵化しかけたひな鳥を食べる国があるの知ってる?」
「その話は知ってるよ」
「でもその国にとってはそれが食べるのが文化なの」
日本やドイツが犯した最大の過ちは相手国の文化を否定したことだと聞いたことがある。
言葉を自国語の学習を強要したことが最大の罪だと誰かが主張していた。
じゃあ、日本の文化であるくじらやいるか漁を否定することは罪にならないのか?
牛や豚、鶏を食べることは可哀そうじゃないのか?
「イルカやクジラは賢いから可哀そう」
ブロンド色の髪の毛の青い瞳の少女は無邪気にそう答えたそうだ。
それに対してこう問いかけたらしい。
「牛や豚は生まれた時から食用で生きる権利すら奪われている、それは可哀そうじゃないのか?」
少女の回答は無かったそうだ。
どこかの国では犬を食べるらしい。
犬種は関係ない。
犬なら何でも食べるらしい。
食べなかった犬の残骸もむごたらしい姿で放置されているそうだ。
その事については誰も触れようとしない。
生の尊厳とやらはどこにいったのやら。
価値観の違いは何処の国でもあること。
日本にはこういうことわざがある。
「郷に入っては郷に従え」
自分の価値観だけで物事を推し進めてはいけない。
だから認めようとする。
分かりあおうと努力する。
自分には無理だけどあなたが食べたいのなら食べなさい。
日本人は良くも悪くも異国の文化を取り入れようとしていた。
鎖国している期間を除けばずっとそうだ。
鎖国の前ですら取り入れてきた。
それは西洋も東洋も問わずだ。
そして独自の文化を創り出す。
代表的なのがアニメだろう。
色んな価値観や理念や宗教がある。
色んな人がいるんだから仕方ない。
大事なことは認め合う事。
分かりあえなくてもいい、一つになれなくてもいい。
認め合う事さえできればいい、それだけで明日に光が射す。
奇しくも今日は12月25日。
人々が争いを止め共に飲んで歌って騒ぐ日。
今日だけは終戦の日だと誰かが歌ってた。
そんな平和な日が本当にあればいいね。
実際は今日もどこかで殺し合いが行われているのだろうけど。
「……今日という日に乾杯だね」
「ジュースだけどね」
翼と乾杯する。
パーティが終ると、僕達は江口家を出る。
「じゃあ、次は渡辺班の忘年会に」
「うん。またね」
家に帰ると風呂に入ってベッドに横になる。
さすがに二日続けては疲れた。
ベッドに横になるとすぐに眠りについていた。
(2)
「それじゃ、冬吾と冬莉、誕生日おめでとう」
父さんが言うとクラッカーを鳴らす。
「はい、冬吾と冬莉にこれプレゼント」
母さんがプレゼントを渡す。
車のラジコンだった。
冬莉にはスケッチブックとクレヨンをプレゼントしていた。
たまたま母さんの目にボールペンを持って何かを紙に書いている冬莉の姿が止まったらしい。
冬莉は大人しい。
大人しすぎて何を考えているのかさっぱり分からない。
それは翼ですら心を読めないらしい。
「ありがとう」
2人とも嬉しそうだ。
冬吾のラジコンには茜と冬眞も興味を示している。
後日二人によって分解され改造されて冬吾の下に戻って来るのだったが。
オフロード仕様だったので公園や家の庭で遊べる。
さすがに道路で遊ぶのは危険だと判断したのだろう。
危険がなかったらインラインスケートを買うつもりだったらしい。
ちなみに僕達にクリスマスプレゼントは無かった。
欲しいものは買ってもらえてるし、お小遣いもある。
「空は美希にプレゼントしてもらえるからもうお母さん達からもらわなくてもいいでしょ?」
母さんはそう言った。
その後皆で料理を食べた。
父さん達はお酒を飲んでいる。
僕達はジュース。
料理を食べ終わるとケーキが待っている。
ケーキを食べ終えると冬眞と莉子と冬吾と冬莉はもう寝た。
僕も風呂に入る。
風呂から出て部屋に戻ろうとする頃に翼と天音が帰って来た。
「あ~つかれた~」
「お疲れ様」
「空はもう風呂入ったの?」
「今出たとこだよ」
「じゃあ、私も入ってさっさと寝よう」
そう言って翼と天音は部屋に戻っていった。
僕達も部屋に戻るとさっさと寝ることにした。
明日からは勉強だ。
宿題を済ませてしまわないと。
ベッドに入ると照明を消して眠りについた。
(3)
「メリークリスマス」
今日は家でクリスマスパーティ。
いつもよりちょっと豪華な料理がテーブルに並んでいる。
ちゃんと食べられる程度の量にしてあった。
食べ終わった後ケーキが入る程度の量にしてあった。
「神奈……酒にケーキはさすがに合わないぞ」
「娘がせっかく焼いてくれたケーキが食えないって言うのかお前は」
「水奈が作ったのか?」
「ああ、お前に食べて欲しいからって張り切って作ってたぞ」
偶には父さんにサービスしておかないとな。
「水奈も色々お洒落とかしたい年頃だろう」と母さんに内緒でお小遣いをくれるから。
母さんの古着で間に合うと思っていたのだけど胸がきつくなってきた。
母さんには内緒だ。母さんが気にしてるから。
「シャ、シャンパンでよかった……ビールだったら絶望だったぜ」
そう言って父さんはケーキを喜んで食べてる。
「誠司たちも食ってみろ。姉ちゃんの自信作だぞ」
私が言うと、誠司や崇博たちも食べた。
「美味しい」と喜んで食べてる。
ケーキを食べ終わる頃母さんは片づけを始めた。
私も手伝おうとすると「水奈は誠司たちを風呂に入れてやってくれないか?遅くなるしあの馬鹿はあそこで寝てるし」
父さんはリビングのソファで寝ていた。
誠司たちを風呂に入れると寝かしつける。
その後私も部屋に戻る。
「おい、そんなところで寝てると風邪ひくぞ!せめて自分の部屋に戻れ!」
母さんが父さんに肩を貸して部屋に引きずってる。
私も部屋に戻ると学にメッセージを送っていた。
私が作ったケーキの写真を送って来た。
「すごいな」
「どうせ学も作ったんだろ?」
「いや、俺の楽しみを恋に奪われてしまってな」
今年は恋がケーキを焼いたらしい。
「いいじゃないか。学も自分の時間が持てるようになったって事だろ?」
「まあ、そうなんだがなんか寂しいものがあってな」
「だったらその分私に甘えさせてくれ」
「そうだな、水奈の相手をしてやらんといかんな」
「この分だと今年も初詣いけそうだな」
「ああ、水奈も中学生だしな。寒くてもいいなら西寒田にでも行くか?」
「行く!」
「じゃあ、予定しとくよ。年越しそば食った後でいいか?」
「何時頃になる?」
「多分ゆく年くる年が始まる頃には迎えに行けると思うが……親御さんに連絡した方がいいか?」
「初詣くらい許してくれるよ。小学生じゃないんだし。明日にでも私から言っておく」
「わかった。じゃあ、宿題くらいしろよ」
「わかったよ。
「おやすみ」
「おやすみ」
真夜中に神社に初詣。
それも彼氏と。
今からその時を楽しみにしていた。
(4)
帰省ラッシュで空港は人で混雑していた。
僕達は純也と茜の見送りに来ていた。
ハワイで年越し。
芸能人のようなことを遠坂家では行われている。
小学生を残しては行けない。
そういう理由で純也達を連れていた。
「良い子にしてるのよ」
愛莉が言う。
「もう慣れたよ」
純也が返す。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「……うむ」
「ごめんなさい、遅くなっちゃった」
石原梨々香が遅れて来た。
「まだ手荷物検査すら始まってないから大丈夫よ~」
愛莉ママが応える。
遠坂家の2人と梨々香と壱郎の親が挨拶していると案内が流れた。
「じゃあいってくるわね~」
愛莉ママがそういうと6人はゲートに並ぶ。
それを見送ると僕達も帰ることにした。
帰りに国東のレストランでステーキを食べる。
食べ終わると地元に帰る。
「冬夜さん、お疲れのところ申し訳ないのですが……」
愛莉が買い物に付き合って欲しいという。
冬眞達は母さん達に任せて買い物に行く。
御節の準備なんかを今日中に買っておくつもりだったらしい。
荷物が多いから手伝って欲しかった。
愛莉はそう言ってるけど……。
「本当は別の理由があるんだろ?」
愛莉に聞いてみると愛莉は舌をペロッと出した。
「冬夜さんに隠し事はできませんね」
愛莉の望みは一つ。
青い鳥に寄りたいとのこと。
久しぶりだな。
いつ以来だろ。
子供が出来てからは来てない気がする。
愛莉はたまに恵美さん達と話するのに利用していたらしいけど。
別にそれを咎めるつもりは無い。
僕達は仕事をしているが、ずっと作業をしているわけじゃない。
同僚と話をしたりとか息抜きくらいする。
だから愛莉たち主婦にも息抜きする時間くらい作ってやりたい。
小さい子供がいるとそれも難しいのが現状だけど。
せっかく冬吾も大きくなったのに冬眞と莉子という子供の面倒を見ることになった。
久しぶりにいつものメニューを頼んだ。
「懐かしいね」
マスターが言う。
近所に料理屋が沢山出来てわざわざこっちまで来ることが無くなったから。
でも味は変わってない。
懐かしい味。
料理を食べていると晶さんと恵美さんが来た。
「あら、今日は片桐君も一緒?」
「偶には2人でと思って」
愛莉は嬉しそうだ。
そんな愛莉を羨ましそうに二人は見てた。
さすがに企業の社長ともなると年末年始だからって休みが取れない。
それでも意地でも忘年会には出るらしい。
「2人とも子供はいいの?」
愛莉が聞いていた。
「新條がいるから問題ない」
「風見がいるから問題ない」
金持ちは違うね。
「そうだ、片桐君。増築工事いつから始める?」
晶さんが聞いていた。
「そうだね。新学期が始まる前には終わらせたいんだけど」
受験勉強を邪魔するような真似はしたくない。
「じゃあ、入試が終ったすぐ始めるよう手配するわ。2週間もあれば終わるはず」
晶さんがそう言いながらスマホで手配をしている。
「高校か。ついに来たって感じね」
恵美さんが言う。
僕達は高校時代から始まった。
皆に出逢い、教えられた柔らかな想い。
この場所から始める未来を紡いでいく痛みの先へと新しい羽を広げて、月日を振り返る。
変わり往く景色と同じように止められない運命。
歌にも命は宿り、その息吹感じる瞬間、真っ直ぐに空向かう花となる。
誰かを想う気持ちは変わるはずがない、変わらない。
そっと護る大切な人の為の進化。
あの子たちもいよいよ、翼を広げる時が来た。
みんな飛び立つ先は決めているようだ。
あとはしっかり飛び立っていくのを見守るだけ。
もうあの子たちは自分の社会を作り始めていた。
「酒井さん宅には今年もお世話になりまして……」
僕は何も世話してないけどね。
何もしてないけど挨拶に訪れる大人たち。
隣には青いドレスを着た翼が立っている。
如月天も僕の妹の繭を連れて対応している。
天もいい加減慣れたらしい。
大地と天音もリラックスしている。
真新しいドレスに身を包んでいる。
大地がプレゼントしたそうだ。
多分僕の知り合いで一番変わったのは天音だと思う。
教師の机にトカゲを入れていた当時の彼女が想像できないほどの変貌。
立場が人を変えるってあるんだね。
もちろん天音がそれを弁えてる事が前提だけど。
「どうかしたの?善明」
「ああ、天音が変わったねって思って」
「確かに変わったね」
きっと、大地を気づかった結果が今の天音の姿なんだろうね。
翼はそう言った。
「それにしても酷くない?彼女が隣にいるのに他の女子の事を考えてたわけ?」
「あ、ああ。ごめんよ」
僕は翼に平謝りした。
そんな僕を見て翼は笑う。
「心配しないで、本気で怒ってるわけじゃないよ」
「そ、それはよかった。それにしても随分知り合いが増えたね」
「そうだね」
地元を支配できるんじゃないか?
翼はそう言って笑う。
多分笑い事じゃないと思うよ。
事実上支配してるようなものだし。
まさか本当に県知事までその手が及ぶとは思わなかったよ。
文字通り僕達に敵なんていないのかもしれない。
昔読んだ小説に4つの企業体が世界を支配しているという小説を読んだ事がある。
僕達はいくつの家で地元を支配しているのだろう?
ちなみにその小説は化け物じみた能力を持つ4兄弟によって滅ぼされるという結末だった。
未だに未完だったけど。
随分と左寄りな思考の作者だったと思うよ。
あとがきでファンレターという名の脅迫文を晒して名前も名乗れないような程度の低い奴にまともに回答する気がないと逃げていた気がするけどね。
策者もそのあまりにも反日的な作者の思考についていけずに途中で読むのを止めたらしい。
しかし、なんでこう反日的な作者というのは共通して逃げるのが上手いんだろうね。
某料理漫画の思想も酷かったけどね。
福島を批判した挙句クレームが殺到して逃げた。
日本が嫌いでオーストラリアが大好きでオーストラリアに国外逃亡したのはいいけど、オーストラリアが反日行動をとってからその後どうなったのかは知らない。
アメリカの反捕鯨団体には抗議するけどオーストラリアには何も言わない。
イルカ漁の反発にも目をつぶっていた。
まあ、印税がっぽり稼いだんだろうし、誰もいない無人島で暮らすのもいいかもしれないね。
「今度はどうされたんですか?」
また自分の世界に入ってしまったようだ。
誤魔化すように翼に話を振ってみた。
「美希はイルカ好き?」
「うん、イルカショーとかいつか見に行きたいね」
「食べるのは?」
「うーん、わざわざ食べる必要は感じないかな?」
クジラとかも食べたことはあるけど正直美味しくなかった。
一般的な回答だった。
「善明はイルカ食べてみたいの?」
「まあ、美味しいなら食べてみたいけどそうでも無いみたいだし」
翼と空は「キャビアとか味しなくて美味しくない!」と直球な感想を出していた。
「善明は世界の食文化について考えてたの?」
「まあね」
食べようと思えば何でも食べられるこのご時世にわざわざ代用食のくじらやイルカを食べる理由がわからないけどね。
「孵化しかけたひな鳥を食べる国があるの知ってる?」
「その話は知ってるよ」
「でもその国にとってはそれが食べるのが文化なの」
日本やドイツが犯した最大の過ちは相手国の文化を否定したことだと聞いたことがある。
言葉を自国語の学習を強要したことが最大の罪だと誰かが主張していた。
じゃあ、日本の文化であるくじらやいるか漁を否定することは罪にならないのか?
牛や豚、鶏を食べることは可哀そうじゃないのか?
「イルカやクジラは賢いから可哀そう」
ブロンド色の髪の毛の青い瞳の少女は無邪気にそう答えたそうだ。
それに対してこう問いかけたらしい。
「牛や豚は生まれた時から食用で生きる権利すら奪われている、それは可哀そうじゃないのか?」
少女の回答は無かったそうだ。
どこかの国では犬を食べるらしい。
犬種は関係ない。
犬なら何でも食べるらしい。
食べなかった犬の残骸もむごたらしい姿で放置されているそうだ。
その事については誰も触れようとしない。
生の尊厳とやらはどこにいったのやら。
価値観の違いは何処の国でもあること。
日本にはこういうことわざがある。
「郷に入っては郷に従え」
自分の価値観だけで物事を推し進めてはいけない。
だから認めようとする。
分かりあおうと努力する。
自分には無理だけどあなたが食べたいのなら食べなさい。
日本人は良くも悪くも異国の文化を取り入れようとしていた。
鎖国している期間を除けばずっとそうだ。
鎖国の前ですら取り入れてきた。
それは西洋も東洋も問わずだ。
そして独自の文化を創り出す。
代表的なのがアニメだろう。
色んな価値観や理念や宗教がある。
色んな人がいるんだから仕方ない。
大事なことは認め合う事。
分かりあえなくてもいい、一つになれなくてもいい。
認め合う事さえできればいい、それだけで明日に光が射す。
奇しくも今日は12月25日。
人々が争いを止め共に飲んで歌って騒ぐ日。
今日だけは終戦の日だと誰かが歌ってた。
そんな平和な日が本当にあればいいね。
実際は今日もどこかで殺し合いが行われているのだろうけど。
「……今日という日に乾杯だね」
「ジュースだけどね」
翼と乾杯する。
パーティが終ると、僕達は江口家を出る。
「じゃあ、次は渡辺班の忘年会に」
「うん。またね」
家に帰ると風呂に入ってベッドに横になる。
さすがに二日続けては疲れた。
ベッドに横になるとすぐに眠りについていた。
(2)
「それじゃ、冬吾と冬莉、誕生日おめでとう」
父さんが言うとクラッカーを鳴らす。
「はい、冬吾と冬莉にこれプレゼント」
母さんがプレゼントを渡す。
車のラジコンだった。
冬莉にはスケッチブックとクレヨンをプレゼントしていた。
たまたま母さんの目にボールペンを持って何かを紙に書いている冬莉の姿が止まったらしい。
冬莉は大人しい。
大人しすぎて何を考えているのかさっぱり分からない。
それは翼ですら心を読めないらしい。
「ありがとう」
2人とも嬉しそうだ。
冬吾のラジコンには茜と冬眞も興味を示している。
後日二人によって分解され改造されて冬吾の下に戻って来るのだったが。
オフロード仕様だったので公園や家の庭で遊べる。
さすがに道路で遊ぶのは危険だと判断したのだろう。
危険がなかったらインラインスケートを買うつもりだったらしい。
ちなみに僕達にクリスマスプレゼントは無かった。
欲しいものは買ってもらえてるし、お小遣いもある。
「空は美希にプレゼントしてもらえるからもうお母さん達からもらわなくてもいいでしょ?」
母さんはそう言った。
その後皆で料理を食べた。
父さん達はお酒を飲んでいる。
僕達はジュース。
料理を食べ終わるとケーキが待っている。
ケーキを食べ終えると冬眞と莉子と冬吾と冬莉はもう寝た。
僕も風呂に入る。
風呂から出て部屋に戻ろうとする頃に翼と天音が帰って来た。
「あ~つかれた~」
「お疲れ様」
「空はもう風呂入ったの?」
「今出たとこだよ」
「じゃあ、私も入ってさっさと寝よう」
そう言って翼と天音は部屋に戻っていった。
僕達も部屋に戻るとさっさと寝ることにした。
明日からは勉強だ。
宿題を済ませてしまわないと。
ベッドに入ると照明を消して眠りについた。
(3)
「メリークリスマス」
今日は家でクリスマスパーティ。
いつもよりちょっと豪華な料理がテーブルに並んでいる。
ちゃんと食べられる程度の量にしてあった。
食べ終わった後ケーキが入る程度の量にしてあった。
「神奈……酒にケーキはさすがに合わないぞ」
「娘がせっかく焼いてくれたケーキが食えないって言うのかお前は」
「水奈が作ったのか?」
「ああ、お前に食べて欲しいからって張り切って作ってたぞ」
偶には父さんにサービスしておかないとな。
「水奈も色々お洒落とかしたい年頃だろう」と母さんに内緒でお小遣いをくれるから。
母さんの古着で間に合うと思っていたのだけど胸がきつくなってきた。
母さんには内緒だ。母さんが気にしてるから。
「シャ、シャンパンでよかった……ビールだったら絶望だったぜ」
そう言って父さんはケーキを喜んで食べてる。
「誠司たちも食ってみろ。姉ちゃんの自信作だぞ」
私が言うと、誠司や崇博たちも食べた。
「美味しい」と喜んで食べてる。
ケーキを食べ終わる頃母さんは片づけを始めた。
私も手伝おうとすると「水奈は誠司たちを風呂に入れてやってくれないか?遅くなるしあの馬鹿はあそこで寝てるし」
父さんはリビングのソファで寝ていた。
誠司たちを風呂に入れると寝かしつける。
その後私も部屋に戻る。
「おい、そんなところで寝てると風邪ひくぞ!せめて自分の部屋に戻れ!」
母さんが父さんに肩を貸して部屋に引きずってる。
私も部屋に戻ると学にメッセージを送っていた。
私が作ったケーキの写真を送って来た。
「すごいな」
「どうせ学も作ったんだろ?」
「いや、俺の楽しみを恋に奪われてしまってな」
今年は恋がケーキを焼いたらしい。
「いいじゃないか。学も自分の時間が持てるようになったって事だろ?」
「まあ、そうなんだがなんか寂しいものがあってな」
「だったらその分私に甘えさせてくれ」
「そうだな、水奈の相手をしてやらんといかんな」
「この分だと今年も初詣いけそうだな」
「ああ、水奈も中学生だしな。寒くてもいいなら西寒田にでも行くか?」
「行く!」
「じゃあ、予定しとくよ。年越しそば食った後でいいか?」
「何時頃になる?」
「多分ゆく年くる年が始まる頃には迎えに行けると思うが……親御さんに連絡した方がいいか?」
「初詣くらい許してくれるよ。小学生じゃないんだし。明日にでも私から言っておく」
「わかった。じゃあ、宿題くらいしろよ」
「わかったよ。
「おやすみ」
「おやすみ」
真夜中に神社に初詣。
それも彼氏と。
今からその時を楽しみにしていた。
(4)
帰省ラッシュで空港は人で混雑していた。
僕達は純也と茜の見送りに来ていた。
ハワイで年越し。
芸能人のようなことを遠坂家では行われている。
小学生を残しては行けない。
そういう理由で純也達を連れていた。
「良い子にしてるのよ」
愛莉が言う。
「もう慣れたよ」
純也が返す。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「……うむ」
「ごめんなさい、遅くなっちゃった」
石原梨々香が遅れて来た。
「まだ手荷物検査すら始まってないから大丈夫よ~」
愛莉ママが応える。
遠坂家の2人と梨々香と壱郎の親が挨拶していると案内が流れた。
「じゃあいってくるわね~」
愛莉ママがそういうと6人はゲートに並ぶ。
それを見送ると僕達も帰ることにした。
帰りに国東のレストランでステーキを食べる。
食べ終わると地元に帰る。
「冬夜さん、お疲れのところ申し訳ないのですが……」
愛莉が買い物に付き合って欲しいという。
冬眞達は母さん達に任せて買い物に行く。
御節の準備なんかを今日中に買っておくつもりだったらしい。
荷物が多いから手伝って欲しかった。
愛莉はそう言ってるけど……。
「本当は別の理由があるんだろ?」
愛莉に聞いてみると愛莉は舌をペロッと出した。
「冬夜さんに隠し事はできませんね」
愛莉の望みは一つ。
青い鳥に寄りたいとのこと。
久しぶりだな。
いつ以来だろ。
子供が出来てからは来てない気がする。
愛莉はたまに恵美さん達と話するのに利用していたらしいけど。
別にそれを咎めるつもりは無い。
僕達は仕事をしているが、ずっと作業をしているわけじゃない。
同僚と話をしたりとか息抜きくらいする。
だから愛莉たち主婦にも息抜きする時間くらい作ってやりたい。
小さい子供がいるとそれも難しいのが現状だけど。
せっかく冬吾も大きくなったのに冬眞と莉子という子供の面倒を見ることになった。
久しぶりにいつものメニューを頼んだ。
「懐かしいね」
マスターが言う。
近所に料理屋が沢山出来てわざわざこっちまで来ることが無くなったから。
でも味は変わってない。
懐かしい味。
料理を食べていると晶さんと恵美さんが来た。
「あら、今日は片桐君も一緒?」
「偶には2人でと思って」
愛莉は嬉しそうだ。
そんな愛莉を羨ましそうに二人は見てた。
さすがに企業の社長ともなると年末年始だからって休みが取れない。
それでも意地でも忘年会には出るらしい。
「2人とも子供はいいの?」
愛莉が聞いていた。
「新條がいるから問題ない」
「風見がいるから問題ない」
金持ちは違うね。
「そうだ、片桐君。増築工事いつから始める?」
晶さんが聞いていた。
「そうだね。新学期が始まる前には終わらせたいんだけど」
受験勉強を邪魔するような真似はしたくない。
「じゃあ、入試が終ったすぐ始めるよう手配するわ。2週間もあれば終わるはず」
晶さんがそう言いながらスマホで手配をしている。
「高校か。ついに来たって感じね」
恵美さんが言う。
僕達は高校時代から始まった。
皆に出逢い、教えられた柔らかな想い。
この場所から始める未来を紡いでいく痛みの先へと新しい羽を広げて、月日を振り返る。
変わり往く景色と同じように止められない運命。
歌にも命は宿り、その息吹感じる瞬間、真っ直ぐに空向かう花となる。
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そっと護る大切な人の為の進化。
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鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
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