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(1)
公立高校入試合格発表当日。
発表は当該の高校で発表される。
父さん達が送ってくれた。
他の皆も先に来ていた。
掲示板にはまだ貼られていない。
受験票を握り締めて発表時刻を待っている。
「ダメなら伊田高があるんだから大丈夫だよ」
翼が僕にそう声をかけてくれた。
だけど美希の為にも合格したい。
係の人がやって来た。
掲示板に紙を貼る。
紙には番号が書かれてある。
必死に自分の番号を探す。
不思議と周りの声が聞こえなくなっていた。
入ってしまったようだ。
そしてある番号が輝いて見える。
それは僕の受験番号。
神様は僕に微笑んでくれたようだ。
「やったあ!」
僕は大声を出して叫んでいた。
周りの人が驚いていた。
「空、やったね!」
翼と抱き合って喜ぶ。
他の皆も受かっていたようだ。
中には肩を落とす者もいたがそんなの気にしなかった。
僕は夢に向かって一歩進むことを許された。
スマホでSHの皆に知らせる。
他の高校の皆も合格したようだ。
昼食は外で済ませて帰る。
のんびりしている時間はない。
新しい制服の発注。教科書等の購入。入学説明会等やる事は一杯ある。
帰る前に中学校に寄る。
「お前達なら大丈夫だと思ってたよ」
高槻先生が合格通知書を渡してくれた。
「高校でも頑張れよ」
それが高槻先生との本当のお別れ。
最後の中学への訪問。
夕食はご馳走だった。
「お疲れ様」
父さん達はそう言ってくれた。
「ここが終わりじゃありませんからね。勉強もそうだけどこれからの3年間の生活しっかりテストさせてもらいます」
母さんが言う。
前にも言ってたな。テストに通ったらプレゼントがあるって。
普通に考えて車かな?
その程度にしか考えてなかった。
「来月から翼は女子高生か」
父さんが言ってた。
「空は自動二輪は取らないのか?バイクくらい入学祝いに買ってやるぞ」
お爺さんが言ってた。
「美希と乗るのは無理だからいらない」
それに冬は寒いし夏は暑い。
Tシャツは認められない。
あの乗り物の何が良いのかさっぱりわからない。
何より単車を持っていたからといっても単車通学は認められない。
「じゃあ、お爺さんからのプレゼントは空が自動車免許を取るまでお預けだな」
お爺さんから車をくれるなら父さん達は何をくれるんだろう?
「それは大学入試を通るまでのお楽しみだよ」
父さんはそう言って笑う。
何を企んでいるのやら。
とりあえず高校入学祝いは小遣いアップだった。
小遣い以外にも「新しい服をそろそろ買いなさい。翼に恥をかかせてはいけません」とか言ってお金もらってるんだけど。
僕達はほっといたら全部飲食費に消えちゃうから。
夕食が済むと風呂に入ろうとした。
すると母さんが呼び止める。
「翼は今日から片付けを手伝いなさい。先に天音と茜が入ればいいでしょ」
「別にいいけど急にどうしたの?愛莉」
翼が母さんに聞いていた。
「言ったでしょ?今日から訓練です」
翼が片づけをしていると天音と茜が風呂から出てくる。
続いて僕が風呂に入ると部屋に戻って美希とチャットをしていた。
「来月から高校生か~」
美希が言う。
新しい3年間が始まる。
するとSHのグルチャの方に通知が入った。
「今週末皆でSAPで遊ぼうぜ!」
光太からだ。
美希にも届いてたようだ。
特に予定がないので行くことにした。
今のクラスの皆が揃う事は同窓会くらいしかないんじゃないか?
そう思ったから。
最後の思い出を。
皆同じ気持ちだったらしい。
全員行くことになった。
(2)
卒業。
新しい学び舎に移る儀式。
校長から卒業証書を受け取る。
両親が担任に挨拶をする。
中には違う中学に行く者もいる。
入試は合格したらしい。
学校が違っても心は一緒だよ。
アーチをくぐり校門を出る。
もう2度とこの校門をくぐることはない。
なんだかんだ言って充実した生活だった。
将来のパートナーを手に入れる事が出来た。
これから中学に行くための準備が始まる。
制服の発注、教科書の購入、入学説明会。
どんな3年間を過ごすのだろう?
どんな事が待っているんだろう。
期待に胸が震える。
まだまだ私達は未完成。
これからいろいろな事を学んでいく。
そんな中で忘れてはいけないものもある。
夢、希望。
失くしちゃいけない物を抱えて生きていく。
荷物の整理をする。
使わない教科書を仕舞って新しい教科書を机の本棚に並べていく。
クローゼットには新しい制服がしまってある。
「繭、ご飯だってさ」
祈姉様が言う。
今日はご馳走だった。
私の卒業祝いと善明兄様の合格祝い。
祈姉様も将来の進路を決めてるらしい。
「繭も進路を決めてるのかい?」
父様が聞いてきた。
私も決めてある。
大学くらいは出ておこう。
就職先は決まってあるのだから大学は何処でもいい。
なるべくなら自宅から通学できるところが良いだろう。
その事を伝えていた。
「ま、大学なんてどこでもいいわよ。遊んでるよりはましだわ」
母様はそう言う。
とりあえずは高校だけど。
その前に皆の進路を決める事で大変なんだろうな。
ピラミッドのように下の年齢になるほど増えていく地元の人口分布。
少子化問題などこの物語には関係ない様だ。
夕食が終るとお風呂に入って部屋に戻る。
本を読んで時間を潰しているとメッセージが届く。
また馬鹿な事を……。
天は中学生デビューをするようだ。
髪の毛を茶髪にしていた。
変形学生服はさすがにしなかったけど財布とズボンをチェーンでつないでる。
学ランの下にパーカーを着ていた。
「おば様に怒られなかったの?」
「そんなの平気だよ」
「おじ様は?」
「今ってそんなファッション流行ってるんだなって」
「そうなんだ」
「繭はどんな格好なの?」
「普通ですよ」
「ミニスカートとかにしないの?」
「私の好みじゃないから」
私はあまり露出の多い服は好きじゃない。
それに学校はお洒落をしに行くところじゃない。
祈姉様だって校則を守ってる。
「ま、いいや。入学式の時に見せあおうぜ」
「天は入学式まで私に会いに来てくれないの?」
「へ?」
考えてもいなかったらしい。
「いいわ、私から会いに行くから」
「わかった。一日くらいデートしようか?卒業祝いも兼ねて」
「そうだね」
「じゃあ、また明日」
「うん、おやすみ」
天の口からデートなんて言葉が出るなんて思いも寄らなかった。
嬉しさでその晩で眠れなかった。
春の訪れはもうそこまで来ている。
(3)
「いてぇ!」
またこけた。
遠坂のおじさん達は手を貸してくれない。
ただ膝と肘にパッドはしてある。
茜も同じだ。
家の周りだと坂道で危ないから公園で練習していた。
僕も茜ももうすぐ小学校5年生。
自転車を買ってもらえた。
その練習をしている。
2時間もしていたら乗れるようになった。
「すご~い」
りえちゃんが拍手している。
茜も乗れるようになっていた。
「ちょっと一回りしてきていいかな?」
「うむ……車に気を付けるんだぞ」
遠坂のおじさんが言うと僕と茜はコンビニまで出かけた。
そしてお菓子とかを買って帰る。
帰りは上り坂がきつかったけど電動自転車だから比較的楽だった。
家に帰ると茜と別れる。
茜の住んでる片桐家は今増築中。
冬眞達の部屋を確保するんだそうだ。
僕は部屋にもどるとゲームを始める。
梨々香からメッセージが届く。
梨々香に自転車に乗れるようになったことを伝えた。
「私も乗れるよ~今度一緒にどこかいこうよ」
「わかった」
「那奈瀬の公園がいいかもね。広いし」
「わかった」
「お弁当楽しみにしててね」
「うん」
カレンダーを見る。
いつがいいだろう?
五月の連休はきっとまた旅行だろうし。
と、なると4月の祝日か。
気候的にもきっといい頃だろう。
梨々香にそう伝える。
「楽しみにしてるね」
自転車に乗れるようになった。
ペダルをこいで進んでいくだけ。
それだけで世界が広がる。
どこへだって行ける。
その気になれば日本の果てまで行けるそうだ。
だけどそこまで行けなくていい。
ただ梨々香との世界が広がった。
それだけで十分だった。
(4)
3月下旬。
僕達はSAPに来ていた。
中学生には中学生なりの楽しみ方がある。
それも今日で最後だけど。
高校生になればまた楽しみが増えるのだろうか?
楽しみ方は人さまざまだと思う。
白球に青春を込めるもの。
情熱を燃料にグラウンドを駆け回るもの。
甲子園、インターハイ、コンクール。
色んな青春がある。
部活だけじゃない。
3年間必死に勉強して大学に挑む者もいる。
恋に費やす者もいる。
僕はきっと食べることに全てを賭けるんだろうな。
高校入試という門はくぐり抜けてきた。
これからまた新たな選択肢を選ぶことになる。
悔いのない青春を。
だから今は思いっきり遊ぶ。
ボーリングにカラオケにゲーセン。
丸一日遊んでいた。
そしてファミレスで皆で食事。
僕はひたすら食べてた。
美希は友達と写真を撮ったりして忙しかった。
男子から記念に一枚一緒に写真を撮ってと頼まれていたけど断っていた。
「あなたにもちゃんと彼女いるでしょ」
そう言って笑っていた。
本当はがヤキモチを妬くのが嫌だったらしい。
だから僕も断っていた。
「ごめん、今食べてるから」
「お前女子と食い物どっちが大事なんだよ!」
光太に怒られた。
「美希と食べ物なら美希を迷わず選ぶよ。でも彼氏持ちの女子と食べ物を選べと言うなら食べ物を選ぶ」
納得してもらえたようだ。
「じゃあ、彼氏いない女子だったらどっちを選ぶの?」
そんな意地悪な質問を問いかけてくる翼。
「きっと変わらないよ。この世界に美希以上の女子がいるなら考えるけど」
そう返した。
「亀梨君や、これからSHはどうするつもりなんだい?」
善明君が聞いてた。
「当然天下狙うぜ!FGが先に手を伸ばしてるだろうけどそんなの関係ないね」
光太が応える。
「入学早々乱闘なんてやめてくれよ」
学が言う。
高校になったら停学処分がある、出席日数が足りなかったら留年だってあるんだ。ほどほどにしてくれ。
「そんなのFG次第だろ?」
光太が言う。
FGがどこまで勢力を伸ばしてるのかは知らないけど目についたらいつでも潰してやる。
そう宣言している以上簡単にはしかけてこないだろ。
「まあ、面倒事は嫌だけどやられっぱなしは性に合わないですからね」
善明が言う。
「私達の高校。女子しかいないんだけど大丈夫かな?」
山崎姉妹が不安気に言う。
「何かされたらすぐにグルチャで伝えてくれたらいいよ。翌日には喜一は海外旅行だから」
美希が言った。
「みんなもFGに負けないくらいSHに人集めてくれよな」
光太が言う。
そして夕食が終ると、皆別れを言う。
「夏休みに会おうね」
誰かがそんな事を言っている。
でもそれぞれの高校で新しい輪を作っていく。
それがどういう事か誰も口にしなかった。
卒業。
それはただ学校を巣立つだけじゃない。
皆新しい社会へと巣立つんだ。
「みんな頑張ってね。今日の事は忘れないよ」
翼が言う。
「SHは永久に不滅だ!」
光太が言う。
そしてそれぞれ家に帰って行った。
自転車をこいで家に帰る。
上り坂は自転車を押して帰る。
漕いで登れないわけじゃない。
単に息を切らせながらお喋りしながら帰るなんて無理だから。
「SHは永久に不滅か……」
翼が一言もらす。
父さん達の渡辺班もそう言って今も続いている。
あり得る話だとは思う。
大学に行ったらまた会える。
何十年も経ったら同窓会だってやるだろう。
家に帰ると風呂に入って部屋でゆっくりと過ごす。
残り僅かな春休みを過ごす。
僕達は立ち止まってる暇はない。
もうすでに次の舞台が準備されて待っているのだから。
公立高校入試合格発表当日。
発表は当該の高校で発表される。
父さん達が送ってくれた。
他の皆も先に来ていた。
掲示板にはまだ貼られていない。
受験票を握り締めて発表時刻を待っている。
「ダメなら伊田高があるんだから大丈夫だよ」
翼が僕にそう声をかけてくれた。
だけど美希の為にも合格したい。
係の人がやって来た。
掲示板に紙を貼る。
紙には番号が書かれてある。
必死に自分の番号を探す。
不思議と周りの声が聞こえなくなっていた。
入ってしまったようだ。
そしてある番号が輝いて見える。
それは僕の受験番号。
神様は僕に微笑んでくれたようだ。
「やったあ!」
僕は大声を出して叫んでいた。
周りの人が驚いていた。
「空、やったね!」
翼と抱き合って喜ぶ。
他の皆も受かっていたようだ。
中には肩を落とす者もいたがそんなの気にしなかった。
僕は夢に向かって一歩進むことを許された。
スマホでSHの皆に知らせる。
他の高校の皆も合格したようだ。
昼食は外で済ませて帰る。
のんびりしている時間はない。
新しい制服の発注。教科書等の購入。入学説明会等やる事は一杯ある。
帰る前に中学校に寄る。
「お前達なら大丈夫だと思ってたよ」
高槻先生が合格通知書を渡してくれた。
「高校でも頑張れよ」
それが高槻先生との本当のお別れ。
最後の中学への訪問。
夕食はご馳走だった。
「お疲れ様」
父さん達はそう言ってくれた。
「ここが終わりじゃありませんからね。勉強もそうだけどこれからの3年間の生活しっかりテストさせてもらいます」
母さんが言う。
前にも言ってたな。テストに通ったらプレゼントがあるって。
普通に考えて車かな?
その程度にしか考えてなかった。
「来月から翼は女子高生か」
父さんが言ってた。
「空は自動二輪は取らないのか?バイクくらい入学祝いに買ってやるぞ」
お爺さんが言ってた。
「美希と乗るのは無理だからいらない」
それに冬は寒いし夏は暑い。
Tシャツは認められない。
あの乗り物の何が良いのかさっぱりわからない。
何より単車を持っていたからといっても単車通学は認められない。
「じゃあ、お爺さんからのプレゼントは空が自動車免許を取るまでお預けだな」
お爺さんから車をくれるなら父さん達は何をくれるんだろう?
「それは大学入試を通るまでのお楽しみだよ」
父さんはそう言って笑う。
何を企んでいるのやら。
とりあえず高校入学祝いは小遣いアップだった。
小遣い以外にも「新しい服をそろそろ買いなさい。翼に恥をかかせてはいけません」とか言ってお金もらってるんだけど。
僕達はほっといたら全部飲食費に消えちゃうから。
夕食が済むと風呂に入ろうとした。
すると母さんが呼び止める。
「翼は今日から片付けを手伝いなさい。先に天音と茜が入ればいいでしょ」
「別にいいけど急にどうしたの?愛莉」
翼が母さんに聞いていた。
「言ったでしょ?今日から訓練です」
翼が片づけをしていると天音と茜が風呂から出てくる。
続いて僕が風呂に入ると部屋に戻って美希とチャットをしていた。
「来月から高校生か~」
美希が言う。
新しい3年間が始まる。
するとSHのグルチャの方に通知が入った。
「今週末皆でSAPで遊ぼうぜ!」
光太からだ。
美希にも届いてたようだ。
特に予定がないので行くことにした。
今のクラスの皆が揃う事は同窓会くらいしかないんじゃないか?
そう思ったから。
最後の思い出を。
皆同じ気持ちだったらしい。
全員行くことになった。
(2)
卒業。
新しい学び舎に移る儀式。
校長から卒業証書を受け取る。
両親が担任に挨拶をする。
中には違う中学に行く者もいる。
入試は合格したらしい。
学校が違っても心は一緒だよ。
アーチをくぐり校門を出る。
もう2度とこの校門をくぐることはない。
なんだかんだ言って充実した生活だった。
将来のパートナーを手に入れる事が出来た。
これから中学に行くための準備が始まる。
制服の発注、教科書の購入、入学説明会。
どんな3年間を過ごすのだろう?
どんな事が待っているんだろう。
期待に胸が震える。
まだまだ私達は未完成。
これからいろいろな事を学んでいく。
そんな中で忘れてはいけないものもある。
夢、希望。
失くしちゃいけない物を抱えて生きていく。
荷物の整理をする。
使わない教科書を仕舞って新しい教科書を机の本棚に並べていく。
クローゼットには新しい制服がしまってある。
「繭、ご飯だってさ」
祈姉様が言う。
今日はご馳走だった。
私の卒業祝いと善明兄様の合格祝い。
祈姉様も将来の進路を決めてるらしい。
「繭も進路を決めてるのかい?」
父様が聞いてきた。
私も決めてある。
大学くらいは出ておこう。
就職先は決まってあるのだから大学は何処でもいい。
なるべくなら自宅から通学できるところが良いだろう。
その事を伝えていた。
「ま、大学なんてどこでもいいわよ。遊んでるよりはましだわ」
母様はそう言う。
とりあえずは高校だけど。
その前に皆の進路を決める事で大変なんだろうな。
ピラミッドのように下の年齢になるほど増えていく地元の人口分布。
少子化問題などこの物語には関係ない様だ。
夕食が終るとお風呂に入って部屋に戻る。
本を読んで時間を潰しているとメッセージが届く。
また馬鹿な事を……。
天は中学生デビューをするようだ。
髪の毛を茶髪にしていた。
変形学生服はさすがにしなかったけど財布とズボンをチェーンでつないでる。
学ランの下にパーカーを着ていた。
「おば様に怒られなかったの?」
「そんなの平気だよ」
「おじ様は?」
「今ってそんなファッション流行ってるんだなって」
「そうなんだ」
「繭はどんな格好なの?」
「普通ですよ」
「ミニスカートとかにしないの?」
「私の好みじゃないから」
私はあまり露出の多い服は好きじゃない。
それに学校はお洒落をしに行くところじゃない。
祈姉様だって校則を守ってる。
「ま、いいや。入学式の時に見せあおうぜ」
「天は入学式まで私に会いに来てくれないの?」
「へ?」
考えてもいなかったらしい。
「いいわ、私から会いに行くから」
「わかった。一日くらいデートしようか?卒業祝いも兼ねて」
「そうだね」
「じゃあ、また明日」
「うん、おやすみ」
天の口からデートなんて言葉が出るなんて思いも寄らなかった。
嬉しさでその晩で眠れなかった。
春の訪れはもうそこまで来ている。
(3)
「いてぇ!」
またこけた。
遠坂のおじさん達は手を貸してくれない。
ただ膝と肘にパッドはしてある。
茜も同じだ。
家の周りだと坂道で危ないから公園で練習していた。
僕も茜ももうすぐ小学校5年生。
自転車を買ってもらえた。
その練習をしている。
2時間もしていたら乗れるようになった。
「すご~い」
りえちゃんが拍手している。
茜も乗れるようになっていた。
「ちょっと一回りしてきていいかな?」
「うむ……車に気を付けるんだぞ」
遠坂のおじさんが言うと僕と茜はコンビニまで出かけた。
そしてお菓子とかを買って帰る。
帰りは上り坂がきつかったけど電動自転車だから比較的楽だった。
家に帰ると茜と別れる。
茜の住んでる片桐家は今増築中。
冬眞達の部屋を確保するんだそうだ。
僕は部屋にもどるとゲームを始める。
梨々香からメッセージが届く。
梨々香に自転車に乗れるようになったことを伝えた。
「私も乗れるよ~今度一緒にどこかいこうよ」
「わかった」
「那奈瀬の公園がいいかもね。広いし」
「わかった」
「お弁当楽しみにしててね」
「うん」
カレンダーを見る。
いつがいいだろう?
五月の連休はきっとまた旅行だろうし。
と、なると4月の祝日か。
気候的にもきっといい頃だろう。
梨々香にそう伝える。
「楽しみにしてるね」
自転車に乗れるようになった。
ペダルをこいで進んでいくだけ。
それだけで世界が広がる。
どこへだって行ける。
その気になれば日本の果てまで行けるそうだ。
だけどそこまで行けなくていい。
ただ梨々香との世界が広がった。
それだけで十分だった。
(4)
3月下旬。
僕達はSAPに来ていた。
中学生には中学生なりの楽しみ方がある。
それも今日で最後だけど。
高校生になればまた楽しみが増えるのだろうか?
楽しみ方は人さまざまだと思う。
白球に青春を込めるもの。
情熱を燃料にグラウンドを駆け回るもの。
甲子園、インターハイ、コンクール。
色んな青春がある。
部活だけじゃない。
3年間必死に勉強して大学に挑む者もいる。
恋に費やす者もいる。
僕はきっと食べることに全てを賭けるんだろうな。
高校入試という門はくぐり抜けてきた。
これからまた新たな選択肢を選ぶことになる。
悔いのない青春を。
だから今は思いっきり遊ぶ。
ボーリングにカラオケにゲーセン。
丸一日遊んでいた。
そしてファミレスで皆で食事。
僕はひたすら食べてた。
美希は友達と写真を撮ったりして忙しかった。
男子から記念に一枚一緒に写真を撮ってと頼まれていたけど断っていた。
「あなたにもちゃんと彼女いるでしょ」
そう言って笑っていた。
本当はがヤキモチを妬くのが嫌だったらしい。
だから僕も断っていた。
「ごめん、今食べてるから」
「お前女子と食い物どっちが大事なんだよ!」
光太に怒られた。
「美希と食べ物なら美希を迷わず選ぶよ。でも彼氏持ちの女子と食べ物を選べと言うなら食べ物を選ぶ」
納得してもらえたようだ。
「じゃあ、彼氏いない女子だったらどっちを選ぶの?」
そんな意地悪な質問を問いかけてくる翼。
「きっと変わらないよ。この世界に美希以上の女子がいるなら考えるけど」
そう返した。
「亀梨君や、これからSHはどうするつもりなんだい?」
善明君が聞いてた。
「当然天下狙うぜ!FGが先に手を伸ばしてるだろうけどそんなの関係ないね」
光太が応える。
「入学早々乱闘なんてやめてくれよ」
学が言う。
高校になったら停学処分がある、出席日数が足りなかったら留年だってあるんだ。ほどほどにしてくれ。
「そんなのFG次第だろ?」
光太が言う。
FGがどこまで勢力を伸ばしてるのかは知らないけど目についたらいつでも潰してやる。
そう宣言している以上簡単にはしかけてこないだろ。
「まあ、面倒事は嫌だけどやられっぱなしは性に合わないですからね」
善明が言う。
「私達の高校。女子しかいないんだけど大丈夫かな?」
山崎姉妹が不安気に言う。
「何かされたらすぐにグルチャで伝えてくれたらいいよ。翌日には喜一は海外旅行だから」
美希が言った。
「みんなもFGに負けないくらいSHに人集めてくれよな」
光太が言う。
そして夕食が終ると、皆別れを言う。
「夏休みに会おうね」
誰かがそんな事を言っている。
でもそれぞれの高校で新しい輪を作っていく。
それがどういう事か誰も口にしなかった。
卒業。
それはただ学校を巣立つだけじゃない。
皆新しい社会へと巣立つんだ。
「みんな頑張ってね。今日の事は忘れないよ」
翼が言う。
「SHは永久に不滅だ!」
光太が言う。
そしてそれぞれ家に帰って行った。
自転車をこいで家に帰る。
上り坂は自転車を押して帰る。
漕いで登れないわけじゃない。
単に息を切らせながらお喋りしながら帰るなんて無理だから。
「SHは永久に不滅か……」
翼が一言もらす。
父さん達の渡辺班もそう言って今も続いている。
あり得る話だとは思う。
大学に行ったらまた会える。
何十年も経ったら同窓会だってやるだろう。
家に帰ると風呂に入って部屋でゆっくりと過ごす。
残り僅かな春休みを過ごす。
僕達は立ち止まってる暇はない。
もうすでに次の舞台が準備されて待っているのだから。
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私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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