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交わす炎よ運命に届け
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(1)
朝、バイクのエンジン音が五月蠅かった。
近所迷惑になるから止めて欲しいとお願いしたのに案の定弄ったようだ。
急いで家を出る。
幸いなことに特攻服なんかは来てなかった。
普通にTシャツの上にジーンズのジャケット、ジーパンを穿いていた。
私もあまり好きじゃないけどジーパンを履いてTシャツの上に上着を羽織っている。
靴もヒールの無いブーツを履いていた。
「ほら、これつけて」
光太がヘルメットを渡す。
結構重い。
ヘルメットをかぶると光太の後ろに跨る。
「どこに行くの?」
「国東半島回ってみようかなと思ってる。どこか行きたいところあった?」
「特にないけど」
「じゃ、いこっか?」
そう言うと光太の青いバイクは走り出す。
真夏の暑い日だったけど長袖だったのは正解のようだ。
肌を露出した服装はいけないといわれていたから暑いのは嫌だなと思っていたけど風が意外と心地よい。
光太は私を乗せてると言う事もあるのか安全運転で走ってくれた。
右手に海を見ながら快適に走っていく。
五月蠅いのさえどうにかなれば言う事無いんだけど。
昼食を取る為に途中寄った店で光太に聞いてみた。
「いやあ、エンジン音が好きでさ。ついやってしまった」
光太らしい解答だった。
「でも違反はしてないから大丈夫」
そう言う問題じゃないんだけど。
昼食を食べ終わると再び走り出す。
気持ちよさそうに走る光太にしがみ付く。
途中でもっとやかましいバイクの集団にあった。
光太のバイクよりデカい。
とても高価なバイクらしい。
光太の免許では乗れないそうだ。
「光太も将来あんなのに乗りたいの?」
私は光太に聞いてみた。
「いや、18になったら普通に車に乗るよ」
乗る車も決めてるそうだ。
無駄に乗れる人数が多いワゴン車。
中が広いからと決めたらしい。
車中泊も楽にできるから。
「麗華は免許取らないの?」
「うん、多分取れないと思う」
私の運動神経の悪さは母さんのが遺伝したようだ。
粋は取るようなこと言ってたけど。
そう言えば粋もバイクに乗ると言ってたな。
もちろん通学には使えないけど。
ただ、粋も花を乗せるとは言ってなかった。
遊と2人でツーリングして遊びたいのだという。
事故らなければいい。
光太も気を付けてくれてるらしい。
とても丁寧に走っていた。
地元に戻る頃には日が暮れていた。
ファミレスに寄って夕食を食べる。
「どうだった?やっぱり怖かった?」
「まあ、こけることを考えると怖いわね」
「そうか、やっぱ危ないかな」
「……でも光太の運転は安心できたよ」
「そっか、今度さ紅葉を見に行かね?」
「いいよ」
「それまでに腕磨いとくからさ」
「気を付けてね」
事故は自分で起こすだけじゃない。巻き込まれることもある。
深夜に走ればよからぬ輩に巻き込まれることだってある。
そうでなくても今地元は堕天使という暴徒がはびこっているのだから。
運転中を襲われたらひとたまりもない。
さすがに病床に横たわる光太は見たくない。
「俺もそういうつもりで中免とったわけじゃないから」
休みの日に気晴らしにどこかに行きたかっただけだという。
夕食を終えると家に送ってもらった。
「今日はありがとう。気を付けて帰ってね」
「ああ、こっちこそありがとうな」
そう言って光太は家に帰った。
私も家に入ると「おかえり」と母さんが言う。
「麗華どうだった?」
弟の粋が聞いてきた。
「悪くはなかった」
「いいな、俺も早く免許取りてえ」
粋は父さんと約束してる。
受験に合格したらバイク買ってやる。
浪人で暴走してるような子供はいらない。
改造も許さない。
それでもいいなら買ってやる。
粋はそれからバイクの雑誌を見て楽しんでる。
まだ気が早いんじゃないかと思うけど。
風呂に入ると部屋に戻る。
SHのグループで女性陣に聞かれた。
「どうだった?彼の後ろに跨った気分は?」
私は答えた
「気分はよかったよ。光太も逞しくなったんだなって実感した」
私達の年代で中免をとるのは光太だけらしい。
まあ女子も「スカートが捲れるのが気になる」とか「ミニスカ穿けない」とか色々理由をつけていやがっていたけど。
相手さえ間違わなければそんなに怖いものでもないらしい。
光太なら大丈夫。
そう思った。
(2)
今日から盆休み。
一泊二日のキャンプに行く。
山のふもとにあるコンビニに集まると渡辺さんの車を先頭に出発する。
山を登り山道を抜けると高原に出る。
牛とかもいる高原を抜けた先に違和感がひしひしと感じるテーマパークが僕達の目的地。
善明のお母さんの配慮でただでフリーパスを使わせてもらえる。
楽しいアトラクションを沢山楽しむ。
何度も何度も同じアトラクションを乗る。
皆それぞれのカップルで。
茜も純也も冬吾も自分の恋人を連れて来ていた。
冬莉はそういうのはまだ早いと思ってるらしい。
恋人どころか友達すら作るのを面倒に思ってるそうだ。
昼食を挟んで一日じゃ回り切れないほどのアトラクションを楽しむ。
疲れるけど美希が楽しそうにしているのを見ると疲れも吹き飛ぶ。
激しい絶叫系のアトラクションから広大な景色を眺める観覧車までありとあらゆるものが揃っていた。
ゴーカートもあった。
普通のゴーカートじゃない。
コースが設置されていて何人かと競うレース形式のサーキット。
やっぱり日頃から練習しているせいもあるのか。
単純に同じ馬力のマシンだから体重のせいもあるのかもしれない。
多田崇博と歩美の2人には敵わなかった。
射的は大地と善明君の舞台だった。
正確に的を射抜いていく。
2人とも育ち盛りという奴なのだろうか?
日頃からの訓練の賜物なのだろうか?
こういう夏場で薄着になると体格の違いがはっきりとしている。
だからそんな大地に頼ってもいい。
天音は自分から暴れなくなった。
もう自分よりも年上の男性には敵わない。
特別訓練を受けていない天音ならしょうがないだろう。
もちろん戦闘技術はあったが、やはり威力が違う。
それで天音は危険な目にあった。
悔しいけど自分は女子なんだ。まともに男子とやりあえば不利だ。
それを痛感した天音は大人しくなった。
成長するとやっぱり差ってでてくるんだな。
もちろんレスリング等で体を鍛えてる人は別だ。
でも天音は技術はあるけど体は普通の女子。
他人より運動神経は優れているけど特別鍛えてるわけじゃない。
逆に女性らしくなっていく一方だ。
だから大地に頼ることにした。
大地の後をついて行くことにした。
そして今日も大地にコースを任せている。
それでも楽しんでいるようだ。
天音は生まれ変わったんだろう。
その事を僕と翼は実感していた。
僕もいつか美希を守る立場になるんだろうか?
「空はとっくになってるよ。キレたら質が悪い」
美希はそう言って笑う。
「こう見えて空の事頼りにしてるんだよ」
それは翼も同じらしい。あれでも善明を頼りにしてるんだそうだ。
SHの男子は自分の恋人を守る立場にいつの間にか変わっていた。
日が暮れると集合場所に集まる。
そして車に乗ってキャンプ場に向かった。
去年善明のお母さんが言ったように本当に湖が出来ていたのはびっくりした。
テントを設置して母さん達が夕飯の支度をしてる間ボートに乗って遊んだりしてた。
遊び終えるとBBQの準備が整っていた。
それぞれ飲み物をとって宴がはじまろうとしていた
(3)
皆一杯食べていた。
僕はまだ小さいから母さんが取ってくれるのを食べるだけ。
おにぎりなんかも食べた。
渡辺さんの奥さんはハンバーグなんかも作ってくれた。
3歳組は3歳組で楽しんでいた。
食べておしゃべりしてそして夕食が終ると母さん達が片付けてる間に花火をしていた。
こんなに夜遅くまではしゃいでいたのは生まれて初めてだ。
最初は打ち上げ花火をあげて遊んでいたけどそれぞれカップルで花火を楽しんでいる。
大人はみんなお酒を飲んで騒いでいた。
花火が終ると僕と莉子と冬吾兄さんと冬莉姉さんは眠りにつく。
冬吾兄さんはすぐに寝た。
僕もすぐに寝るつもりでいた。
すると莉子が僕を起こす。
「トイレについて来て」
「母さん達が起きてるから一緒に行けば?」
「冬眞じゃないとだめなの」
どうしてだろう?
まあ、いっか。
テントを出るとまだ騒いでいる父さん達に一言言って懐中電灯を持ってトイレに向かう。
莉子が用を済ませるのを外で待つ。
星空は綺麗だ。
莉子が出てくるとテントに向かう。
莉子の様子がおかしい。
そして莉子は行動に出た。
「冬眞、ちょっと待って」
「どうしたの?」
「少しお話しない?」
「何かあったの?」
「夜空がきれいだから。じゃ理由にならない?」
少し眠いんだけどな。
まあ、彼女の願いを叶えてやるのも男の役目。
父さんが言ってた。
莉子は僕の妹であると同時に僕の彼女。
血は繋がっていない。
僕は父さんの従弟の息子。
莉子は母さんの従兄の娘。
共に実の両親を亡くして父さん達が引き受けてくれた。
あれから結構経つんだな。
父さんも母さんも僕達の事を実の子のように大切にしてくれる。
莉子はその恩返しにと父さんの会社片桐税理士事務所に就職するつもりらしい。
僕は違う事を考えていた。
物を作ることが大好きだ。
仕組みを調べて分解して組み立てるのが大好きだ。
だからそう言う仕事に就こうと思う。
この歳で将来の事を考えるとは思わなかった。
「夢は何?」
そう聞かれたら”飛行機のパイロット”とかそういう答えをするものだと思っていた。
だけど機械やプラモデルが好きだ。
それを知った母さん達はミニ四駆やラジコンを買ってくれた。
工具も買ってくれた。
今はミニ四駆をやラジコンで遊んでる。
近所の玩具屋さんでやってるミニ四駆の大会に父さんに連れて行ってもらって圧倒的な速さを誇っている。
公式の大会じゃないのでやりたい放題やっている。
父さんに頼んで規格外の馬力のあるモーターを使い、ギアも独自に用意してる。
ローラーもより性能の高いベアリングを取り付けている。
マスダンパーの個数なんて関係ない。
サスペンションを取り付けているのだから。
重量が少々重くなるけど関係ない。
ボディの型を作ってFRPでボディを作った。
塗装をすれば見た目市販のミニ四駆と変わりない。
加速はギヤとモーターで強化した。
バウンドもサスをつかって抑えた。
あとはコースアウトしないようにタイヤのグリップを強めるだけ。
もちろん公式ルールを無視したタイヤとホイールを利用している。
公式ルールを守ってるのはシャーシの素材だけ。
シャーシの軽量化はしていない。
ボディを軽量化することでシャーシは剛性を保つために規格の物を使ってる。
あとはローハイトのタイヤを使う事。
そうやって基準を無視したミニ四駆は地元では敵なしの速さを誇っていた。
でもある時父さんが言った。
「みんな平等のレギュレーションの中で工夫して争ってみるのも楽しいかもしれないよ」
究極を極めたらなら決められたルールの中でも一秒でも速く、限界を求めるのも一つの楽しみ。
F1なんかも毎年レギュレーションが変わりその中で工夫して速さを求めるらしい。
地元でも公式大会はある。
父さんと玩具屋さんに新しいコンセプトのミニ四駆を組み立てるべくマシンとパーツを買いに行った。
レギュレーションは父さんがネットで調べてくれた。
それを買うと組み立てていく。
レギュレーションの範囲内で色々と弄っていく。
ボディの素材を変えれないので肉抜きしてシャーシやボディの軽量化を図る必要がある。
そうやって、最高傑作を作りだした。
今はミニ四駆やラジコンで遊んでる。
大きくなったらバイクや車を弄って遊ぶ。
大学を出たらもっと大きな機械を弄る仕事に就きたい。
「人様に迷惑をかけないようにね」
父さんはそう言った。
別に五月蠅いバイクや乗りにくい物を作ろうとは思わない。
自分で時速300キロなんて速さを出そうとも思わない。
ただ弄りたいだけ。
機械を弄ってるだけで楽しいから。
油まみれになって何が楽しいの?と思う人もいるかもしれないけど楽しいんだ。
でもそれを操る事にはあまりこだわりがない。
機械を知り尽くせば限界を知る。
それを超えるようなことはしない。
帰りを待ってる人がいるんだから。
僕の歳でもそういう人がいる。
それが妹の莉子だったというだけ。
色々話をしながらテントに戻る。
「随分遅かったね。もう寝なさい。朝また散歩すると良いから」
母さんの言う通りにテントに入る。
今度は莉子もすぐに寝たらしい。
僕もすぐに寝た。
翌朝早く目が覚めた。
外を見る。
もやがかかっていた。
父さん達も起きていたみたいだ。
莉子が起きてくると父さんと散歩に行く。
莉子は風呂に入れなかったのが残念らしい。
髪がべたついて嫌だと言っている。
そんなに鬱陶しいのなら切ればいいのになんてことは言わない。
莉子は毎日丁寧に髪を手入れしてる。
とても綺麗な黒髪だった。
毎日色んな髪のまとめ方をして遊んでる。
莉子はお洒落好きだ。
だからアパレル関係に進むと思ってた。
なぜ税理士なんだろう?
「趣味を仕事にしない方がいいって聞いたから」
莉子はたった一言で解答した。
僕もそうなんだろうか。
「まだ決めつけるのは早いよ。冬眞達には考える時間がたっぷりあるんだからそれまで考えると良い」
父さんはそう言う。
「父さんはどうして税理士になったの?」
「たまたま書類選考が通ったのが税理士事務所だけだったからだよ」
だから学生時代に税理士の資格とるの忘れて苦労した。
父さんはそう言って笑ってた。
人間何か目標に向かって歩いている。
そして交わった炎を運命と呼ぶ。
ならば僕の運命も炎に届く時が来るのかもしれない。
炎よ運命に届け。
(4)
朝ごはんを食べてテントなどを片付けると僕達は乗馬体験コーナーに向かった。
なんでもありになりつつある。
そのうち牧場を作りそうな勢いだ。
江口グループが最速の車を目指すなら私達は世界最高の競走馬を作る!
母さんなら言いそうだ。
ちなみに今僕達が乗ってる馬はサラブレッドではない。
クォーターホースという種類の馬だ。
馬が出来る事なら何でもできると言われている。
一頭当たり500万くらいしたそうだ。
僕と翼は普通に乗りこなして話しながらコースを回っていた。
まだ小さい子供たちは馬に餌を与えたり頭を撫でたりして遊んでた。
空も最初は大変だったけど今は乗りこなしてる。
天音は習得が早いのはいいけど、呑み込みが早くて駆歩まで覚えてしまった。
大地が慌てて天音の乗る馬を追いかける。
どうして僕達が普通に乗ってるのかって?
乗馬クラブを作った時から僕達は通っていたから。
デートに乗馬。
この世界の高校生なら普通にありなんだろうね。
乗馬を楽しむと隣接するレストランでランチにする。
ボリュームのあるメニューだ。
それを食べると地元に帰る。
「もうすぐ夏休みも終わりだね」
翼が言う。
「2学期もすぐ過ぎるよ」
「何事も無ければいいんだけど」
「そういうことを言っちゃいけないよ」
「どうしてですか?」
「この世界の神はひねくれて居てね。そういうことを言うと問題を起こしたがるんだ」
「善明は神を信じているの?」
「僕は無神論者だけどね、悲しいけど実在するのがこの世界なんだ」
紙切れの上に描かれた運命という名のロードマップ。
僕達はその上を歩いているだけに過ぎない。
奇跡は神の気まぐれで起きるもの。
誰も逆らうことはできない。
「では、私は神に感謝したいかな。善明と出会えたのだから」
今までこうして一緒に歩んできたのだから。
「大丈夫。これからもずっと一緒だよ」
そうでないと色々まずい。
そう言って僕は笑う。
「うん」
翼はそう言って笑顔を作っていた。
地元に帰るとファミレスによって夕食にしてそして帰る。
先に女性陣が風呂を浴びる。
そして僕が風呂を浴びると部屋に戻る。
カレンダーを見る。
夏休みは残り僅か。
また多忙な日々が始まる。
多忙と言っても多分普通に行事をこなしていくだけだろう。
時は早く流れていく。
流されてしまわないように、見逃さないように。
ゆっくりと進んで行こう。
きっとまた来年もこうして同じ時を過ごしているのだろう。
変わっているのは僕達だ。
そして始業式の朝が来た。
制服に着替えて学校に行く。
車で行くなんて目立つ真似はしない。
美希ですら自転車で通学してるのだから。
一月ちょっと離れていた教室に入る。
皆が集まっている。
そして朝礼が始まって体育館で始業式が行われた。
2学期が始まった。
朝、バイクのエンジン音が五月蠅かった。
近所迷惑になるから止めて欲しいとお願いしたのに案の定弄ったようだ。
急いで家を出る。
幸いなことに特攻服なんかは来てなかった。
普通にTシャツの上にジーンズのジャケット、ジーパンを穿いていた。
私もあまり好きじゃないけどジーパンを履いてTシャツの上に上着を羽織っている。
靴もヒールの無いブーツを履いていた。
「ほら、これつけて」
光太がヘルメットを渡す。
結構重い。
ヘルメットをかぶると光太の後ろに跨る。
「どこに行くの?」
「国東半島回ってみようかなと思ってる。どこか行きたいところあった?」
「特にないけど」
「じゃ、いこっか?」
そう言うと光太の青いバイクは走り出す。
真夏の暑い日だったけど長袖だったのは正解のようだ。
肌を露出した服装はいけないといわれていたから暑いのは嫌だなと思っていたけど風が意外と心地よい。
光太は私を乗せてると言う事もあるのか安全運転で走ってくれた。
右手に海を見ながら快適に走っていく。
五月蠅いのさえどうにかなれば言う事無いんだけど。
昼食を取る為に途中寄った店で光太に聞いてみた。
「いやあ、エンジン音が好きでさ。ついやってしまった」
光太らしい解答だった。
「でも違反はしてないから大丈夫」
そう言う問題じゃないんだけど。
昼食を食べ終わると再び走り出す。
気持ちよさそうに走る光太にしがみ付く。
途中でもっとやかましいバイクの集団にあった。
光太のバイクよりデカい。
とても高価なバイクらしい。
光太の免許では乗れないそうだ。
「光太も将来あんなのに乗りたいの?」
私は光太に聞いてみた。
「いや、18になったら普通に車に乗るよ」
乗る車も決めてるそうだ。
無駄に乗れる人数が多いワゴン車。
中が広いからと決めたらしい。
車中泊も楽にできるから。
「麗華は免許取らないの?」
「うん、多分取れないと思う」
私の運動神経の悪さは母さんのが遺伝したようだ。
粋は取るようなこと言ってたけど。
そう言えば粋もバイクに乗ると言ってたな。
もちろん通学には使えないけど。
ただ、粋も花を乗せるとは言ってなかった。
遊と2人でツーリングして遊びたいのだという。
事故らなければいい。
光太も気を付けてくれてるらしい。
とても丁寧に走っていた。
地元に戻る頃には日が暮れていた。
ファミレスに寄って夕食を食べる。
「どうだった?やっぱり怖かった?」
「まあ、こけることを考えると怖いわね」
「そうか、やっぱ危ないかな」
「……でも光太の運転は安心できたよ」
「そっか、今度さ紅葉を見に行かね?」
「いいよ」
「それまでに腕磨いとくからさ」
「気を付けてね」
事故は自分で起こすだけじゃない。巻き込まれることもある。
深夜に走ればよからぬ輩に巻き込まれることだってある。
そうでなくても今地元は堕天使という暴徒がはびこっているのだから。
運転中を襲われたらひとたまりもない。
さすがに病床に横たわる光太は見たくない。
「俺もそういうつもりで中免とったわけじゃないから」
休みの日に気晴らしにどこかに行きたかっただけだという。
夕食を終えると家に送ってもらった。
「今日はありがとう。気を付けて帰ってね」
「ああ、こっちこそありがとうな」
そう言って光太は家に帰った。
私も家に入ると「おかえり」と母さんが言う。
「麗華どうだった?」
弟の粋が聞いてきた。
「悪くはなかった」
「いいな、俺も早く免許取りてえ」
粋は父さんと約束してる。
受験に合格したらバイク買ってやる。
浪人で暴走してるような子供はいらない。
改造も許さない。
それでもいいなら買ってやる。
粋はそれからバイクの雑誌を見て楽しんでる。
まだ気が早いんじゃないかと思うけど。
風呂に入ると部屋に戻る。
SHのグループで女性陣に聞かれた。
「どうだった?彼の後ろに跨った気分は?」
私は答えた
「気分はよかったよ。光太も逞しくなったんだなって実感した」
私達の年代で中免をとるのは光太だけらしい。
まあ女子も「スカートが捲れるのが気になる」とか「ミニスカ穿けない」とか色々理由をつけていやがっていたけど。
相手さえ間違わなければそんなに怖いものでもないらしい。
光太なら大丈夫。
そう思った。
(2)
今日から盆休み。
一泊二日のキャンプに行く。
山のふもとにあるコンビニに集まると渡辺さんの車を先頭に出発する。
山を登り山道を抜けると高原に出る。
牛とかもいる高原を抜けた先に違和感がひしひしと感じるテーマパークが僕達の目的地。
善明のお母さんの配慮でただでフリーパスを使わせてもらえる。
楽しいアトラクションを沢山楽しむ。
何度も何度も同じアトラクションを乗る。
皆それぞれのカップルで。
茜も純也も冬吾も自分の恋人を連れて来ていた。
冬莉はそういうのはまだ早いと思ってるらしい。
恋人どころか友達すら作るのを面倒に思ってるそうだ。
昼食を挟んで一日じゃ回り切れないほどのアトラクションを楽しむ。
疲れるけど美希が楽しそうにしているのを見ると疲れも吹き飛ぶ。
激しい絶叫系のアトラクションから広大な景色を眺める観覧車までありとあらゆるものが揃っていた。
ゴーカートもあった。
普通のゴーカートじゃない。
コースが設置されていて何人かと競うレース形式のサーキット。
やっぱり日頃から練習しているせいもあるのか。
単純に同じ馬力のマシンだから体重のせいもあるのかもしれない。
多田崇博と歩美の2人には敵わなかった。
射的は大地と善明君の舞台だった。
正確に的を射抜いていく。
2人とも育ち盛りという奴なのだろうか?
日頃からの訓練の賜物なのだろうか?
こういう夏場で薄着になると体格の違いがはっきりとしている。
だからそんな大地に頼ってもいい。
天音は自分から暴れなくなった。
もう自分よりも年上の男性には敵わない。
特別訓練を受けていない天音ならしょうがないだろう。
もちろん戦闘技術はあったが、やはり威力が違う。
それで天音は危険な目にあった。
悔しいけど自分は女子なんだ。まともに男子とやりあえば不利だ。
それを痛感した天音は大人しくなった。
成長するとやっぱり差ってでてくるんだな。
もちろんレスリング等で体を鍛えてる人は別だ。
でも天音は技術はあるけど体は普通の女子。
他人より運動神経は優れているけど特別鍛えてるわけじゃない。
逆に女性らしくなっていく一方だ。
だから大地に頼ることにした。
大地の後をついて行くことにした。
そして今日も大地にコースを任せている。
それでも楽しんでいるようだ。
天音は生まれ変わったんだろう。
その事を僕と翼は実感していた。
僕もいつか美希を守る立場になるんだろうか?
「空はとっくになってるよ。キレたら質が悪い」
美希はそう言って笑う。
「こう見えて空の事頼りにしてるんだよ」
それは翼も同じらしい。あれでも善明を頼りにしてるんだそうだ。
SHの男子は自分の恋人を守る立場にいつの間にか変わっていた。
日が暮れると集合場所に集まる。
そして車に乗ってキャンプ場に向かった。
去年善明のお母さんが言ったように本当に湖が出来ていたのはびっくりした。
テントを設置して母さん達が夕飯の支度をしてる間ボートに乗って遊んだりしてた。
遊び終えるとBBQの準備が整っていた。
それぞれ飲み物をとって宴がはじまろうとしていた
(3)
皆一杯食べていた。
僕はまだ小さいから母さんが取ってくれるのを食べるだけ。
おにぎりなんかも食べた。
渡辺さんの奥さんはハンバーグなんかも作ってくれた。
3歳組は3歳組で楽しんでいた。
食べておしゃべりしてそして夕食が終ると母さん達が片付けてる間に花火をしていた。
こんなに夜遅くまではしゃいでいたのは生まれて初めてだ。
最初は打ち上げ花火をあげて遊んでいたけどそれぞれカップルで花火を楽しんでいる。
大人はみんなお酒を飲んで騒いでいた。
花火が終ると僕と莉子と冬吾兄さんと冬莉姉さんは眠りにつく。
冬吾兄さんはすぐに寝た。
僕もすぐに寝るつもりでいた。
すると莉子が僕を起こす。
「トイレについて来て」
「母さん達が起きてるから一緒に行けば?」
「冬眞じゃないとだめなの」
どうしてだろう?
まあ、いっか。
テントを出るとまだ騒いでいる父さん達に一言言って懐中電灯を持ってトイレに向かう。
莉子が用を済ませるのを外で待つ。
星空は綺麗だ。
莉子が出てくるとテントに向かう。
莉子の様子がおかしい。
そして莉子は行動に出た。
「冬眞、ちょっと待って」
「どうしたの?」
「少しお話しない?」
「何かあったの?」
「夜空がきれいだから。じゃ理由にならない?」
少し眠いんだけどな。
まあ、彼女の願いを叶えてやるのも男の役目。
父さんが言ってた。
莉子は僕の妹であると同時に僕の彼女。
血は繋がっていない。
僕は父さんの従弟の息子。
莉子は母さんの従兄の娘。
共に実の両親を亡くして父さん達が引き受けてくれた。
あれから結構経つんだな。
父さんも母さんも僕達の事を実の子のように大切にしてくれる。
莉子はその恩返しにと父さんの会社片桐税理士事務所に就職するつもりらしい。
僕は違う事を考えていた。
物を作ることが大好きだ。
仕組みを調べて分解して組み立てるのが大好きだ。
だからそう言う仕事に就こうと思う。
この歳で将来の事を考えるとは思わなかった。
「夢は何?」
そう聞かれたら”飛行機のパイロット”とかそういう答えをするものだと思っていた。
だけど機械やプラモデルが好きだ。
それを知った母さん達はミニ四駆やラジコンを買ってくれた。
工具も買ってくれた。
今はミニ四駆をやラジコンで遊んでる。
近所の玩具屋さんでやってるミニ四駆の大会に父さんに連れて行ってもらって圧倒的な速さを誇っている。
公式の大会じゃないのでやりたい放題やっている。
父さんに頼んで規格外の馬力のあるモーターを使い、ギアも独自に用意してる。
ローラーもより性能の高いベアリングを取り付けている。
マスダンパーの個数なんて関係ない。
サスペンションを取り付けているのだから。
重量が少々重くなるけど関係ない。
ボディの型を作ってFRPでボディを作った。
塗装をすれば見た目市販のミニ四駆と変わりない。
加速はギヤとモーターで強化した。
バウンドもサスをつかって抑えた。
あとはコースアウトしないようにタイヤのグリップを強めるだけ。
もちろん公式ルールを無視したタイヤとホイールを利用している。
公式ルールを守ってるのはシャーシの素材だけ。
シャーシの軽量化はしていない。
ボディを軽量化することでシャーシは剛性を保つために規格の物を使ってる。
あとはローハイトのタイヤを使う事。
そうやって基準を無視したミニ四駆は地元では敵なしの速さを誇っていた。
でもある時父さんが言った。
「みんな平等のレギュレーションの中で工夫して争ってみるのも楽しいかもしれないよ」
究極を極めたらなら決められたルールの中でも一秒でも速く、限界を求めるのも一つの楽しみ。
F1なんかも毎年レギュレーションが変わりその中で工夫して速さを求めるらしい。
地元でも公式大会はある。
父さんと玩具屋さんに新しいコンセプトのミニ四駆を組み立てるべくマシンとパーツを買いに行った。
レギュレーションは父さんがネットで調べてくれた。
それを買うと組み立てていく。
レギュレーションの範囲内で色々と弄っていく。
ボディの素材を変えれないので肉抜きしてシャーシやボディの軽量化を図る必要がある。
そうやって、最高傑作を作りだした。
今はミニ四駆やラジコンで遊んでる。
大きくなったらバイクや車を弄って遊ぶ。
大学を出たらもっと大きな機械を弄る仕事に就きたい。
「人様に迷惑をかけないようにね」
父さんはそう言った。
別に五月蠅いバイクや乗りにくい物を作ろうとは思わない。
自分で時速300キロなんて速さを出そうとも思わない。
ただ弄りたいだけ。
機械を弄ってるだけで楽しいから。
油まみれになって何が楽しいの?と思う人もいるかもしれないけど楽しいんだ。
でもそれを操る事にはあまりこだわりがない。
機械を知り尽くせば限界を知る。
それを超えるようなことはしない。
帰りを待ってる人がいるんだから。
僕の歳でもそういう人がいる。
それが妹の莉子だったというだけ。
色々話をしながらテントに戻る。
「随分遅かったね。もう寝なさい。朝また散歩すると良いから」
母さんの言う通りにテントに入る。
今度は莉子もすぐに寝たらしい。
僕もすぐに寝た。
翌朝早く目が覚めた。
外を見る。
もやがかかっていた。
父さん達も起きていたみたいだ。
莉子が起きてくると父さんと散歩に行く。
莉子は風呂に入れなかったのが残念らしい。
髪がべたついて嫌だと言っている。
そんなに鬱陶しいのなら切ればいいのになんてことは言わない。
莉子は毎日丁寧に髪を手入れしてる。
とても綺麗な黒髪だった。
毎日色んな髪のまとめ方をして遊んでる。
莉子はお洒落好きだ。
だからアパレル関係に進むと思ってた。
なぜ税理士なんだろう?
「趣味を仕事にしない方がいいって聞いたから」
莉子はたった一言で解答した。
僕もそうなんだろうか。
「まだ決めつけるのは早いよ。冬眞達には考える時間がたっぷりあるんだからそれまで考えると良い」
父さんはそう言う。
「父さんはどうして税理士になったの?」
「たまたま書類選考が通ったのが税理士事務所だけだったからだよ」
だから学生時代に税理士の資格とるの忘れて苦労した。
父さんはそう言って笑ってた。
人間何か目標に向かって歩いている。
そして交わった炎を運命と呼ぶ。
ならば僕の運命も炎に届く時が来るのかもしれない。
炎よ運命に届け。
(4)
朝ごはんを食べてテントなどを片付けると僕達は乗馬体験コーナーに向かった。
なんでもありになりつつある。
そのうち牧場を作りそうな勢いだ。
江口グループが最速の車を目指すなら私達は世界最高の競走馬を作る!
母さんなら言いそうだ。
ちなみに今僕達が乗ってる馬はサラブレッドではない。
クォーターホースという種類の馬だ。
馬が出来る事なら何でもできると言われている。
一頭当たり500万くらいしたそうだ。
僕と翼は普通に乗りこなして話しながらコースを回っていた。
まだ小さい子供たちは馬に餌を与えたり頭を撫でたりして遊んでた。
空も最初は大変だったけど今は乗りこなしてる。
天音は習得が早いのはいいけど、呑み込みが早くて駆歩まで覚えてしまった。
大地が慌てて天音の乗る馬を追いかける。
どうして僕達が普通に乗ってるのかって?
乗馬クラブを作った時から僕達は通っていたから。
デートに乗馬。
この世界の高校生なら普通にありなんだろうね。
乗馬を楽しむと隣接するレストランでランチにする。
ボリュームのあるメニューだ。
それを食べると地元に帰る。
「もうすぐ夏休みも終わりだね」
翼が言う。
「2学期もすぐ過ぎるよ」
「何事も無ければいいんだけど」
「そういうことを言っちゃいけないよ」
「どうしてですか?」
「この世界の神はひねくれて居てね。そういうことを言うと問題を起こしたがるんだ」
「善明は神を信じているの?」
「僕は無神論者だけどね、悲しいけど実在するのがこの世界なんだ」
紙切れの上に描かれた運命という名のロードマップ。
僕達はその上を歩いているだけに過ぎない。
奇跡は神の気まぐれで起きるもの。
誰も逆らうことはできない。
「では、私は神に感謝したいかな。善明と出会えたのだから」
今までこうして一緒に歩んできたのだから。
「大丈夫。これからもずっと一緒だよ」
そうでないと色々まずい。
そう言って僕は笑う。
「うん」
翼はそう言って笑顔を作っていた。
地元に帰るとファミレスによって夕食にしてそして帰る。
先に女性陣が風呂を浴びる。
そして僕が風呂を浴びると部屋に戻る。
カレンダーを見る。
夏休みは残り僅か。
また多忙な日々が始まる。
多忙と言っても多分普通に行事をこなしていくだけだろう。
時は早く流れていく。
流されてしまわないように、見逃さないように。
ゆっくりと進んで行こう。
きっとまた来年もこうして同じ時を過ごしているのだろう。
変わっているのは僕達だ。
そして始業式の朝が来た。
制服に着替えて学校に行く。
車で行くなんて目立つ真似はしない。
美希ですら自転車で通学してるのだから。
一月ちょっと離れていた教室に入る。
皆が集まっている。
そして朝礼が始まって体育館で始業式が行われた。
2学期が始まった。
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