姉妹チート

和希

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(1)

 今年も夏がやって来た。
 そして毎年恒例の海でキャンプがある。
 海に着くとテントを設置する。
 そして水着に着替えてそれぞれが遊びだす。
 学もこの時は水奈と楽しんでいるようだ。
 貸し出されたゴムボートに乗ったりしている。
 僕は美希と木陰で皆を眺めていた。
 美希は強い日差しの下にいるとめまいがするんだそうだ。
 冬吾と冬莉と誠司の面倒も見てる
 母さんは冬眞と莉子の面倒を見てる。
 父さん達はテントのそばで話をしている。
「きゃっ!つめた~い」って女子が騒いでる。
 そりゃ海なんだから冷たいでしょ。
 熱かったら問題だよ?
 何をしに海に来たのかわかったもんじゃない。
 砂浜にいると暑いんだけどね。
 日焼けするくらいに。

「空、日焼け止め塗って」

 そんなセリフは美希は言わない。
 美希は日焼けできる体質じゃないから。
 母さんは日焼け止め塗ってパーカーきて防止対策してるらしいけど。
 母さんは日焼けしない。
 全身真っ赤になるらしい。
 でもその後はくっきり残るって父さんが言ってた。
 その事は父さんと僕だけの内緒だ。
 冬吾は何をやらせても凄い。
 砂浜で山を作ったらとてもつもない山を作る。
 そしてトンネルを掘って道も作って。
 貝殻を集めて来て飾りつけをする。
 冬莉は木陰でそれを絵描いていた。
 冬莉は絵の才能があるんだろうか。
 どれもが幼稚園児の描くそれじゃない。
 将来画家にでもなるのかな?
 そんな話を父さんと母さんがしてた。
 ビーチバレーをした。
 日が暮れる頃僕達はシャワーを浴びて着替える。
 その頃には夕飯の支度が出来ていた。
 僕達は今夜も肉を堪能した。

(2)

 子供たちが戻ってくる頃合いを見計らって火を起こし飯盒を火にかける。
 野菜は愛莉たちが準備していた。
 いつも残るんだけど翌朝の焼きそばに入れるから問題ない。
 飲み物が問題だった。
 いつも足りない。
 どれだけ買っても足りない。
 誠と中島君と桐谷君が飲みつくしてしまう。
 ジュースも子供たちが全部飲む。
 かといって徒歩で行ける範囲にコンビニ等は無い。
 諦めてそこで飲み会は終いとなる。

「じゃあ、今年も盛り上がろう」

 渡辺君が言うと宴が始まった。
 渡辺正俊君はよく食べる。
 正俊君ももう10歳。
 体格もずいぶんと渡辺君に似て来た。
 のんびり堂々としている様は渡辺君にそっくりになっている。
 将来の夢は小学校の先生らしい。
 純也と茜はまだ決めてないという。
 でもそれでもいいと思う。
 中学生になるころには自分の進路を決めるだろう。
 空は僕の会社を継いでくれるそうだ。
 僕と同じ失敗をしないように単位をとって大学3年と4年で全分野を網羅するつもりらしい。
 税理士試験はそんな甘いものじゃないけど二人ならやってくれるだろう。
 もしできなくても二人で足りないところを補えばいい。
 冬吾に残してやれるものはないけどサッカーの才能を渡してやることが出来た。
 きっと名選手になるだろう。
 そんな話を誠としている。
 誠は素晴らしい才能の持ち主をさらに二人育てている。
 F1ドライバーを目指すらしい。
 恵美さんの協力もあるんだけど。
 江口家が全力を尽くして世界に挑む。
 きっと表彰台に立てるだろう。
 冬眞は機械いじりが好きらしい。
 だからそっちの方向に進路を勧めてやろうと思う。
 本当は工業大学でも行かせてやりたいんだけど本人のやる気次第だろう。
 大学くらいは行かせてやりたい。
 誠や桐谷君、渡辺君達と子供の進路について話していた。
 学は公務員を目指してるそうだ。
 本当は高校を出たら働くつもりだったらしい。
 だけど亜依さんが「否応なく独立したら社会人になるんだから学生生活くらい楽しんでおきなさい」と進学を勧めたらしい。
 遊も大学くらいは行くそうだ。
 恋はフリーライターになるそうだ。
 大地も善明も大学に行くと聞いた。
 まあ、二人はどこの大学に行っても社長就任は確定してるから問題ないみたい。
 渡辺君の娘さんも美嘉さんの店を継ぐ気でいるそうだ。
 妹の方にも2号店を任せる気でいるらしい。
 木元先輩の娘さんも仕事に就くらしい。
 建築士を目指しているのだそうだ。
 中島君の息子さんは公務員になるらしい。

「まあ、どっちにしろ俺達はまだあと20年は頑張らないとだめだろ」

 渡辺君はそういう。
 引退なんてまだ早い。まだアラフォーだ。
 男はこれから頑張らなきゃいけない時期だ。
 そう言って笑いあう。

「女だって頑張ってる事忘れるなよ」

 カンナが言う。
 カンナも専業主婦だけどまだまだこれからだ。
 現役引退なんて優しい事を言ってる場合じゃない。
 そんな話をしながら肉を食っていると肉が無くなった。
 女性陣が片づけをしてる間に子供達は花火を始める。
 学や空達、高校生がいるからもう大人が面倒を見なくてもいい。
 僕達はビールを片手に語りあう。
 桐谷君や中島君が昇格したことを祝う。
 女性陣が戻ってくると穂乃果さんや亜依さんが出世したことを祝う。

「出世しても良い事無いけどね」

 亜依さんはそう言って笑う。
 余計な仕事が増えるだけ。
 それは僕にも分かる。

「木元先輩や瑛大にはもっと出世してもらえるように口添えしてあげるから」

 恵美さんや晶さんが言う。
 2人の親の企業なんだ。そんなこと簡単な事だろう。
 実は木元先輩は栄転の話があったらしい。
 福岡支社の社長にという話があったらしんだが晶さんの独断で断ったそうだ。

「だって、一人暮らしなんて可哀想でしょ?」
「でも娘も成長したし……」
「まだ高校生じゃない。それとも一人暮らししたい理由があるとでもいうの?」
「いや、ないです」

 仕事より家庭が大事。
 渡辺班で徹底されていること。
 それを無視した桐谷君や木元先輩は憐れなことになっている。

「パパ嫌い」

 その一言がどれだけ傷つく事か。
 子供たちの花火が終ると戻って来た。
 夜食の支度にとりかかる。
 愛莉は冬眞と莉子を寝かしつける。
 他の3歳児をもつ母親も同様だった。
 夜食を食べると子供たちは寝る。
 大人も少し話をして火を消すと眠りについた。

(3)

 朝、まだ日が昇らないうちから僕と石原君は目を覚ましていた。
 外に出ると火を起こしてお湯を沸かしてインスタントコーヒーを飲みながら石原君と話をしている。

「石原君も大変だね」
「酒井君も大変じゃない」

 お互いに去年新たな子供が増えた。
 晶ちゃんは子供たちの為に未来を用意した。
 それはまだ幼い子供達にはとても大きな未来。
 あの子たちが大人になったら会社をプレゼントするらしい。
 大学卒業したら社長。
 この物語では割と普通な事らしい。
 それは石原君も同じだった。
 石原君の養女、石原杏采も服飾や小物づくりが趣味なのを恵美さんが知ると、杏采ちゃんの為にとファッションブランドを準備するそうだ。
 大地君と善明が起きてくる。
 善明が起きると翼も起きてくる。
 善明と翼は仲良く散歩に出かける。
 そのあとに空と美希も散歩に出かけた。
 大地はこの数年で逞しくなった。
 見た目もどんどん成長している。
 日頃から鍛えているんだそうだ。
 どんな苦難が天音を待ち構えていても払いのけられるようにと己を鍛えている。
 大地君は大丈夫だろう。
 4人が戻ってくる頃女性陣が目を覚ます。
 そして朝食が出来上がる頃皆を起こす。
 朝食を済ませると、片づけを始める。
 テントをたたみ、骨組みを仕舞って車に積み込む。
 女性陣が食器を洗ってくるとそれも車に積み込む。

「じゃあ、いつも通り銭湯寄ってファミレスで昼食取って解散しよう」

 渡辺君が言うと皆車に乗り込み銭湯にむかった。

(4)

「ふぅ~」

 サウナに入って汗をかきながらテレビを見ていると男性陣が入って来た。
 もちろん小学生以下は入ってこないけど。
 大人が面倒を見ているらしい。
 僕達だけでサウナを占拠していた。
 ここなら誰に話を聞かれる事もない。

「しかし不気味なくらい何事もない一学期だったね」
 
 善明が言う。

「ああ、水奈も生徒会役員という役職に興味を持ったらしくてな」

 学が言う。今年は生徒会長に就任したらしい。
 天音と大地が学級委員。
 小学生の頃を考えたら信じ難い事だ。
 小学校の方も去年に比べたら大人しい方だという。
 とにかくSHが仕掛ける口実を減らすように喜一が指示を出してるらしい。
 しかし僕達の目の届かないところでは相変わらずFGは暴れているそうだ。
 彼等はただの暴走族なのか、それとも非行集団なのか分からない行動をとっているらしい。
 週末の夜になると非行集団が街を徘徊し、そして田舎では暴走族「堕天使」が徘徊しているという。
 彼等の年齢層は下は13歳、上は18歳以上と幅広く、彼等は支部を沢山持っている。
 地元の敵対組織と常に抗争をしている。
 週末の深夜の商店街は迂闊に一人で出歩けないほどだ。
 あまりにも規模がデカくなり過ぎた為県警も対策にでた。
 だがそのリーダーに君臨する山本喜一に手が出せないため決定打が見出せないでいる
 そこまで大きくなっても喜一はSHを恐れている。
 僕達が中学生だった時、毎日のように来ていた暴走族が来なくなったそうだ。
 そしてFGの対象は中学生以上に広がった。
 もちろん小学生にもいるけど夜の行動は中学生以上に限られているそうだ。
 僕がそんな情報を手に入れたのは遠坂のお爺さんから聞いたから。
 お爺さんの管轄である南署の範囲をこえ地元全体に君臨するらしい。
 そんな暴徒の集団の頂点にいる喜一はさぞ気分がいいことだろう。
 しかし喜一はSHに怯えているらしい。
 だからこそ天音のいる中学校には手を出さない。
 SHのいる高校では問題を起こさないようだ。
 例え高校が違っても天音の耳に入れば、天音は喜んで喜一の首を刈り取りに行くだろう。
 人数差なんて天音達には関係ないのだから。
 そんな物騒な話題ばかりしていてもせっかくの遊びがしらけるだけだ。
 光太が言っていた。
 夏休みの間に自動二輪の免許を取るらしい。
 とったら麗華とふたりでツーリングを楽しむつもりだと聞いた。
 本当はアメリカンなのに乗りたかったらしいのだけど、ストレートの長い道に適しているらしくて日本の狭く険しい道には向かないらしい。
 ストリートバイクというのもあるそうだが、やはり麗華とタンデムしたいらしい。
 麗華も「あまりパンツ穿くのすきじゃないんだけどな」といいつつも乗ることを承諾したらしい。
 翼はパンツスタイルなこともあるけどバイクに良いイメージがない。
 僕もバイクに乗りたいとは思わない。
 転んだら痛いじゃすまないだろうから。
 多分SH組でバイクに乗るのは光太だけだろう。
 学は夏休みだけでもバイトを入れようかと思ったらしいが親の反対にあったそうだ。

「そんなゆとりあるなら水奈の相手してあげなさい」

 だから夏休みは水奈と二人で遊びに行くそうだ。
 僕達は例年通りの夏休みを過ごすだろう。
 家族とゆっくり過ごすつもりだ。
 僕も高校を卒業したら1人で暮らそうと思っている。
 バイトして生活費は自分で稼ぐつもりだ。
 車はお爺さん達が買ってくれるらしい。
 学費は親に頼ることになるけど。

「父さん達もお爺さんに言われたよ。将来に対する投資だってね」

 父さんはそう言ってくれた。
 そういえば無事に大学に合格したらプレゼントがあるって言ってたな。
 なんだろう?
 色々話しているとそろそろ限界がきた。
 サウナから出て汗を流して湯舟に浸かる。

「そろそろ行くよ」

 父さんが言うから僕達は銭湯を出る。
 そしてコーヒー牛乳を飲んでアイスを食べる。
 冬眞達も食べたいらしいから買ってあげた。
 女性陣が出てくるとファミレスに向かう。
 ファミレスで精いっぱい食べる。
 冬吾と冬莉も鉄板の料理を許された。
 誠司はまだお子様ランチの玩具が気になる年頃らしい。
 そして食べるのに集中しない。
 水奈のお母さんに怒られていた。

「この性格は誰に似たんだ?」

 水奈の父さんが不思議そうに言う。
 デザートのパフェまで堪能するとファミレスをでて解散する。

「次はどっちがいい?」

 渡辺さんが聞いていた。
 別府のテーマパークか久住にするか?

「久住でいいんじゃない?」

 父さんが言う。

「是非そうしてちょうだい、乗馬体験もできるようになったのよ!」

 善明のお母さんが言う。
 地元で出来ないことがないような気がしてきた。
 さすがに気候までは弄れないらしいけど。
 次の予定が決まると僕達は解散した。

「随分サウナで長話してたけど何話してたんだい?」

 父さんが聞いてきた。
 別に隠す事じゃないので話した。

「物騒な集団がいるのね」

 母さんの感想だ。

「ま、私達には歯向かえない」

 翼たちも同じことを話していたらしい。

「ええ、私達に手をだしたら兵隊が出てくるだけだから」

 美希がそう言ったらしい。
 兵隊とは文字通り兵隊。
 完全武装した江口家の私兵。
 その脅しを先日したそうだ。
 彼等の集会に突然乱入する四駆の集団。
 彼等はブラックジャックを使って徹底的にぶちのめしたらしい。

「SHには手を出すな」

 警告の一言を言い放って燃え盛るバイクの残骸を後にしたらしい。
 その後喜一から天音に頭を下げにきたそうだ。

「絶対にSHには手を出さない」

 天音は相手にしなかったらしい。

「お前らが鬱陶しいことして来たら、いつでも処刑していいと光太に言われてる」

 天音は警告した。
 だから手を出すはずがない。と、天音は言う。
 それだけでかい勢力を誇っていながらSHを恐れる理由は美希の挨拶があったからか。
 美希も過激な事するようになったんだな。
 家に帰ると、母さんから今夜は疲れたから出前にするから何がいい?と聞かれた。
 皆口をそろえて言う。

「チャーシュー麺大盛り、餃子、チャーハン」

 夕食を食べると風呂に入ってゆっくり美希とチャットをする。

「次は花火だね」

 美希が言う。

「私達も高校生、見た目は大人と変わらない。ラブホに寄ることだってできるよ」

 そういう事か。

「わざわざ行く理由が分からない。大人になった時にその理由が分かるかもしれないから今は家でいいよ」
「て、事は泊りに来てくれるの?」
「僕だって男子だよ。美希に興味がまったくないわけじゃない」
「どういう事?」
「美希、また大きくなったでしょ?」

 パーカーを着ていてはっきりとは分からなかったけど一緒に銭湯に入った翼がそう言ってたから間違いないだろう?

「今度確かめてみる?」
「そうさせてもらうよ」
「うん、私も準備してるね」

 じゃあ、おやすみなさい。
 そして僕達はベッドに入る。
 一学期もあとわずかになっていた。
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