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もう一度あの場所で
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(1)
体育大会が中止になった。
原因はFGだった。
FGが各科の総務・応援団長等を潰して体育大会を取りやめるように脅迫した。
もちろん喜ぶものもいた。
しごきがなくなるのだから。
しかし落胆する者も少なからずいる。
大区工業高校の体育大会は競技が特殊だ。
普通に徒競走等もあるが少し特殊な競技がある。
俵上げなどがそうだ。
舞踊などもある。
また各科の応援席の後ろにはバックボードとよばっるデカい看板に、運動能力に自信がない生徒が毎晩遅くまで絵を描いてそれに採点するというものもある。
舞踊も毎晩遅くまで練習する。
それが水の泡になる。
高校のOBも中止を取り下げるように求めていた。
しかし生徒を危険な目に合わせられないと学校は中止を取り下げることは無かった。
麗華はバックボードを書いていた。
建築科のバックボードは毎年見事なイラストを描く。
ちなみに俺は俵上げだった。
力だけは自信があったから。
憤りを持つ者はいた。
だけどFGという強大な暴力に立ち向かえる者はいなかった。
俺や麗華はいい。
絶対に手を出されることは無い。
しかし沢木兄弟は問題を起こせない。
全日本の代表選手に選ばれている。
不祥事を起こすわけにはいかない。
もちろん沢木兄弟の夢を潰すような真似は許されない。
このままだと未来永劫に体育大会は開かれないだろう。
体育大会当日は休みになった。
麗華と遊びに行く。
映画でもみて気晴らしをしていた。
麗華がカラオケを希望していたのでカラオケに行った。
その間も俺は考えていた。
どうやってFGの暴挙を止めるか?
そんな俺を見て麗華は言う。
「いい加減忘れなよ」
「麗華は悔しくないのか?折角のバックボードが台無しになったんだぞ」
「皆で描いたって思い出は残る。それで十分じゃない」
「しかしこのままだと3年間体育大会を経験できないまま終わってしまうぞ」
「だからって光太を危険な目に合わせるのは容認できない」
麗華はすました顔で言っているけど本当は心配してくれてるんだな。
それに俺が暴れたら麗華が報復にあう可能性も否定できない。
「そうだな……ごめん」
「大丈夫。光太の気持ちくらい、私にも分かる」
「これからどうすればいいと思う?」
「みんなに相談してみたら?」
「そうだな……」
それから俺と麗華はメッセージで皆に連絡していた。
「それは厄介だな」
学がそう言った。
「難しく考える事ないんじゃない?」
翼は解決策を持っているようだ。
「何かいい手があるのか?」
「次何かやらかしたら喜一が責任をとる。そう断言したんだから実行してもらおうじゃない」
翼はそう言う。
しかし高校生が中坊を処刑するなんてみっともない真似できるか?
「この件、私に任せてもらえないかな?」
美希が言う。
麗華と相談した末任せることにした。
すると次の週末に事件は勃発した。
うちの高校のFGの連中が所属する暴走族の支部が壊滅したそうだ。
全員重傷を負って病院に搬送された。
燃え盛る単車と車。
意識不明のままの者もいたらしい。
事件は県警によって事故と断定された。
月曜になると別の支部の者が俺達の高校にやって来た。
お礼参りというやつだ。
だが、俺が出る幕は無かった。
その事を粗方予想していた謎の集団が乱入。
乱闘になりやはりその支部も壊滅。
謎の集団が逮捕されることは無かった。
警察も学校も動くことは無かった。
来年からは体育大会は行われるだろう。
美希はそう言った。
SHの目の届くところではFGの好きにさせない。
美希はそう断言した。
しかしSHがいない高校ではFGが暴れている。
地元全体で事件は起こっている。
そこまでは手が出せない。
ただの小学校内の抗争は地元全土に広がっていた。
(2)
「ちょっと来てもらえないかな?」
「な、何の用だ?」
「いいから来い」
俺は昼休みに喜一の胸ぐらを掴み屋上に引きずっていく。
もちろん天音や粋達も一緒だ。
喜一を屋上に引っ張ると喜一に上履きを脱ぐように告げる。
最近FGが調子に乗っている。
だから今日喜一に責任を取らせることにした。
「天音、遺書用意してる?」
「ああ、昨夜のうちに偽造しておいた」
天音はそういって遺書を取りだした。
もちろん天音の遺書じゃない。
喜一の遺書だ。
未来に絶望しました。父さん母さんごめんなさい。来世に期待しています。
そんな内容の遺書。
喜一は一人で勝手に将来を憂いて自殺した。
思春期なら良くあることだ。
その遺書と喜一の上履きを屋上の端に置く。
「理由は分かってるな?約束だ。もう会うことは無いだろう。さようなら」
そう言って逃げようとする喜一の襟を掴んで屋上から下に放り投げようとする。
「ま、待て!話し合おう!」
「言ったはずだ。次に目障りな行動をしたらお前が責任を取ると」
これ以上お前の存在価値はない。策者はそう判断した。
だから死ね。
「何やってんだお前ら!」
勝次達FGの連中が来た。
「約束を守ってもらう為に連れて来た。お前らの存在がもう面倒だ。ここで決着をつけてやる」
「こんな真似をしてタダで済むと思ってるのか?」
「堕天使とか言う連中は全員病院送りらしいぞ」
「お前らも同じ目にあいたいっていうなら望みを叶えてやるぜ!」
粋と遊が言う。
祈もやる気になってる。
「天音も我慢する事無いよ。大丈夫。天音は俺が守るから」
いつもの天音でいいんだよ
そう言う。
「そうだな……これ以上目障りだし、読者もいい加減飽きたことだろうから決着つけてやるか。大地、やれ。邪魔する奴は私が皆殺しにしてやる」
いつもの天音にもどったようだ。
俺はにこりと笑うと喜一を投げる構えに入る。
「待ってください!」
そう言ったのは山本紗奈。喜一の妹だ。
「全部兄の自業自得なのは承知してます。でも実の兄が死ぬのを黙ってみてるなんてできない。今回だけは私に免じて見逃してもらえないでしょうか!?」
紗奈はそういって土下座する。
「勝次も突っ立ってないで謝りなさい!」
紗奈が言うと勝次も同じように土下座する。
俺は皆と相談した。
結果、判断は天音に委ねることにした。
「……紗奈に感謝しろ。次はないからな」
天音は許すことにしたようだ。
「お前らがどこで何をしようが知った事じゃないが私達の目障りだと判断したら次は容赦なく放り投げるからな」
天音が喜一を解放するように俺に言うと俺は喜一を放した。
「ありがとうございます」
紗奈は泣いていた。
こんな奴でもやはり家族なんだろう。見殺しには出来なかった。
喜一達FGは屋上から立ち去っていった。
「大地、お前本気でやるつもりだったのか?」
遊が聞いてきた。
「約束は約束だからね。俺達が気分を害したら処刑だって」
遺書も用意した。
後始末もちゃんと用意してある。
「でもこれからどうするんだ?」
粋が言う。
俺達が卒業した後、高校が別になったら好き放題するんじゃないか?
「目の届かないところで何しようが勝手だけど、目障りに思ったらどこにいようと必ず報復するよ」
国外に逃げようが知った事じゃない。
むしろ国外の方が都合がいい。
国外で行方不明のままの邦人なんていくらでもいる。
ぽかっ
「大地、いい加減頭を冷やせ」
天音がそう言って僕の頭を小突く。
「僕でもイライラすることができたみたいだ」
僕はそう言って笑う。
それから中学の間は大人しくしていた。
高校のFGの連中も大人しくなった。
大区工業高校のFGの連中はもれなく病院のベッドに横たわってるそうだ。
未だに意識不明の人間もいると聞いた。
それは事故と断定された。
喜一は気づいてると思うが常に誰かに狙われている。
そいつは天音や僕の指示一つで行動に移すように打ち合わせしてある。
もう喜一に自由はない。
そして堕天使とか言う輩も僕達が目障りだと判断したら必ず事故に遭う。
その事を見せしめにした。
FGを潰すことは簡単だ。
だが潰してもまた新しいグループを作るだろう。
だからFGの自由を奪った。
死神の鎌はいつでもお前らの喉元にあるぞ。
そう脅しをかけた。
それははったりじゃないことも証明してみせた。
僕達の前で目立つような行動をすることはもうないだろう。
それは喜一の死刑宣告なのだから。
「それにしても天音も元の天音にもどってよかった」
学校が終わってコンビニに寄るとからあげとおにぎりとジュースを手にしている天音にそう言った。
「いいのか?大人しい女子のままの方が大地には都合がいいんじゃないのか?」
「小学生の頃から天音が好きだったんだ。自由に暴れてる天音のの方がいい」
だから自分らしく生きて。
そうできるように僕が天音を守るから。
「わかった。じゃ、帰ろうか?」
「うん」
そう言って僕たちは家に帰る。
今まで言葉を見つけられずにいた。
天音は何も言わない。
ほんの些細な出来事で幼い愛が崩れていく。
でも、そんな悲しい顔はみたくない。
何があっても夢さえ失くしてもその微笑みだけは捨てないで。
いつか誓うだろう。
必ずこの場所で君がどこにいたって出逢えることを信じて。
空の向こうでここらが描く明日。
もう一度あの場所で君の隣にいよう。
きっと僕ら2人がこれから駆け抜けていく日々に意味があるから。
今は2人切なく瞳をそらそうとも出会えることを信じてる。
(3)
私と光太は湯布院に来ていた。
紅葉を見に行きたいというから。
途中鶴見山に寄った。
湯布院の紅葉はとても綺麗だった。
ただでさえ、温泉街、観光町としてにぎわっているのに今日は異常に人が集まっていた。
紅葉だけ見に来ただけじゃ寂しいからお店にも寄った。
光太は退屈そうだったけど買い物に付き合ってくれた。
買い物を終えると昼食を食べて、来た道を帰る。
別府湾が見える光景はとても綺麗だった。
文化祭は無事行われた。
FGの連中は未だに入院しているそうだ。
これからは私達の周りでうろちょろすることはないだろうとSHのメッセージで告げられた。
中学生組がしでかしたらしい。
美希も実力行使に出たみたいだ。
私達の周りをうろちょろするな。
そんな圧力をかけたそうだ。
策者がいい加減飽きたというのもあるのだろう?
次の標的は何になるのか?
そんなのは神の気まぐれ。
今は紅葉が綺麗だ。
それだけでいい。
「ねえ光太。一つ聞いてもいい?」
「どうした?」
「どうして湯布院だったの?」
紅葉ならもっと見頃のスポットあったんじゃないか?
せっかく足を手に入れたのに。
そんな質問に光太は振り向くと笑って答えた。
もちろん、信号で停止中に。
「あるけど、渋滞で混んでるしそれしかないだろ?」
「まあ、そうだけど二輪なら抜けられるでしょ?」
「麗華を乗せてるのにそんな真似できねーよ」
煽られたりしたら面倒だと光太は言う。
「それに、やっぱり彼女と行くデートスポットって言ったら湯布院だろ?」
まあ、地元ならそうなるだろう?
破局したいなら別府という手もあるが。
「あそこには車の免許取ったら行くよ」
「わかった」
地元に帰るといつものファミレスによって夕食にして家に送ってもらう。
「あのさ、前から気になってたんだけど」
「どうしたの?」
「本当に大区でよかったのか?麗華なら大学行くって選択肢もあったんじゃないのか?」
そんなことか。
「特に目的も夢もないのに大学行ってもしょうがないじゃん」
就職先も決まってる事だし、それなら迷う必要もない。
「それでももっと制服の可愛い高校とかあったんじゃないのか?」
大区の制服もブレザーに代わって大分マシになったんだけど。
「わたしに城科の制服着て欲しかった?」
「……まあ、着てほしくないって言ったら嘘になるな」
「残念でした。私短い丈のスカート嫌いなの」
「そっか」
「じゃ、また明日ね」
「ああ、またな。冬の間は寒いからバイクは辞めとくよ」
「そうね」
今日も大分冷えたし。
「またイルミでも見に行こうぜ、イブに」
「ええ、楽しみにしてる」
光太はそう言うと「じゃあ、また」と言って帰って行った。
「まだ高校生の娘があまり遅くまで遊んでるのは感心しないぞ」
「別にいいじゃない、どうせ来月も遅くなるんでしょ」
父さんとお母さんが言ってる。
父さんは遊ぶのが悪いと言ってるわけじゃない。
単に私が変なのに絡まれないか心配してるだけ。
光太がいるから大丈夫。
そういうと大体納得する。
母さんも別に子供に関心がないわけじゃない。
年頃なんだから好きに恋愛させてやれ。
取り戻す事が出来ない思い出になるから。
風呂に入ると部屋にもどる。
数学の嫌いな私が測量なんて面倒な科目がある建築科に入ったのが不思議なくらい恋愛という感情は不思議なものだ。
でもここまで一緒に来たんだ。
最後まで一緒にいよう。
きっと私達2人これから駆け抜けていく日々に意味があるのだから。
体育大会が中止になった。
原因はFGだった。
FGが各科の総務・応援団長等を潰して体育大会を取りやめるように脅迫した。
もちろん喜ぶものもいた。
しごきがなくなるのだから。
しかし落胆する者も少なからずいる。
大区工業高校の体育大会は競技が特殊だ。
普通に徒競走等もあるが少し特殊な競技がある。
俵上げなどがそうだ。
舞踊などもある。
また各科の応援席の後ろにはバックボードとよばっるデカい看板に、運動能力に自信がない生徒が毎晩遅くまで絵を描いてそれに採点するというものもある。
舞踊も毎晩遅くまで練習する。
それが水の泡になる。
高校のOBも中止を取り下げるように求めていた。
しかし生徒を危険な目に合わせられないと学校は中止を取り下げることは無かった。
麗華はバックボードを書いていた。
建築科のバックボードは毎年見事なイラストを描く。
ちなみに俺は俵上げだった。
力だけは自信があったから。
憤りを持つ者はいた。
だけどFGという強大な暴力に立ち向かえる者はいなかった。
俺や麗華はいい。
絶対に手を出されることは無い。
しかし沢木兄弟は問題を起こせない。
全日本の代表選手に選ばれている。
不祥事を起こすわけにはいかない。
もちろん沢木兄弟の夢を潰すような真似は許されない。
このままだと未来永劫に体育大会は開かれないだろう。
体育大会当日は休みになった。
麗華と遊びに行く。
映画でもみて気晴らしをしていた。
麗華がカラオケを希望していたのでカラオケに行った。
その間も俺は考えていた。
どうやってFGの暴挙を止めるか?
そんな俺を見て麗華は言う。
「いい加減忘れなよ」
「麗華は悔しくないのか?折角のバックボードが台無しになったんだぞ」
「皆で描いたって思い出は残る。それで十分じゃない」
「しかしこのままだと3年間体育大会を経験できないまま終わってしまうぞ」
「だからって光太を危険な目に合わせるのは容認できない」
麗華はすました顔で言っているけど本当は心配してくれてるんだな。
それに俺が暴れたら麗華が報復にあう可能性も否定できない。
「そうだな……ごめん」
「大丈夫。光太の気持ちくらい、私にも分かる」
「これからどうすればいいと思う?」
「みんなに相談してみたら?」
「そうだな……」
それから俺と麗華はメッセージで皆に連絡していた。
「それは厄介だな」
学がそう言った。
「難しく考える事ないんじゃない?」
翼は解決策を持っているようだ。
「何かいい手があるのか?」
「次何かやらかしたら喜一が責任をとる。そう断言したんだから実行してもらおうじゃない」
翼はそう言う。
しかし高校生が中坊を処刑するなんてみっともない真似できるか?
「この件、私に任せてもらえないかな?」
美希が言う。
麗華と相談した末任せることにした。
すると次の週末に事件は勃発した。
うちの高校のFGの連中が所属する暴走族の支部が壊滅したそうだ。
全員重傷を負って病院に搬送された。
燃え盛る単車と車。
意識不明のままの者もいたらしい。
事件は県警によって事故と断定された。
月曜になると別の支部の者が俺達の高校にやって来た。
お礼参りというやつだ。
だが、俺が出る幕は無かった。
その事を粗方予想していた謎の集団が乱入。
乱闘になりやはりその支部も壊滅。
謎の集団が逮捕されることは無かった。
警察も学校も動くことは無かった。
来年からは体育大会は行われるだろう。
美希はそう言った。
SHの目の届くところではFGの好きにさせない。
美希はそう断言した。
しかしSHがいない高校ではFGが暴れている。
地元全体で事件は起こっている。
そこまでは手が出せない。
ただの小学校内の抗争は地元全土に広がっていた。
(2)
「ちょっと来てもらえないかな?」
「な、何の用だ?」
「いいから来い」
俺は昼休みに喜一の胸ぐらを掴み屋上に引きずっていく。
もちろん天音や粋達も一緒だ。
喜一を屋上に引っ張ると喜一に上履きを脱ぐように告げる。
最近FGが調子に乗っている。
だから今日喜一に責任を取らせることにした。
「天音、遺書用意してる?」
「ああ、昨夜のうちに偽造しておいた」
天音はそういって遺書を取りだした。
もちろん天音の遺書じゃない。
喜一の遺書だ。
未来に絶望しました。父さん母さんごめんなさい。来世に期待しています。
そんな内容の遺書。
喜一は一人で勝手に将来を憂いて自殺した。
思春期なら良くあることだ。
その遺書と喜一の上履きを屋上の端に置く。
「理由は分かってるな?約束だ。もう会うことは無いだろう。さようなら」
そう言って逃げようとする喜一の襟を掴んで屋上から下に放り投げようとする。
「ま、待て!話し合おう!」
「言ったはずだ。次に目障りな行動をしたらお前が責任を取ると」
これ以上お前の存在価値はない。策者はそう判断した。
だから死ね。
「何やってんだお前ら!」
勝次達FGの連中が来た。
「約束を守ってもらう為に連れて来た。お前らの存在がもう面倒だ。ここで決着をつけてやる」
「こんな真似をしてタダで済むと思ってるのか?」
「堕天使とか言う連中は全員病院送りらしいぞ」
「お前らも同じ目にあいたいっていうなら望みを叶えてやるぜ!」
粋と遊が言う。
祈もやる気になってる。
「天音も我慢する事無いよ。大丈夫。天音は俺が守るから」
いつもの天音でいいんだよ
そう言う。
「そうだな……これ以上目障りだし、読者もいい加減飽きたことだろうから決着つけてやるか。大地、やれ。邪魔する奴は私が皆殺しにしてやる」
いつもの天音にもどったようだ。
俺はにこりと笑うと喜一を投げる構えに入る。
「待ってください!」
そう言ったのは山本紗奈。喜一の妹だ。
「全部兄の自業自得なのは承知してます。でも実の兄が死ぬのを黙ってみてるなんてできない。今回だけは私に免じて見逃してもらえないでしょうか!?」
紗奈はそういって土下座する。
「勝次も突っ立ってないで謝りなさい!」
紗奈が言うと勝次も同じように土下座する。
俺は皆と相談した。
結果、判断は天音に委ねることにした。
「……紗奈に感謝しろ。次はないからな」
天音は許すことにしたようだ。
「お前らがどこで何をしようが知った事じゃないが私達の目障りだと判断したら次は容赦なく放り投げるからな」
天音が喜一を解放するように俺に言うと俺は喜一を放した。
「ありがとうございます」
紗奈は泣いていた。
こんな奴でもやはり家族なんだろう。見殺しには出来なかった。
喜一達FGは屋上から立ち去っていった。
「大地、お前本気でやるつもりだったのか?」
遊が聞いてきた。
「約束は約束だからね。俺達が気分を害したら処刑だって」
遺書も用意した。
後始末もちゃんと用意してある。
「でもこれからどうするんだ?」
粋が言う。
俺達が卒業した後、高校が別になったら好き放題するんじゃないか?
「目の届かないところで何しようが勝手だけど、目障りに思ったらどこにいようと必ず報復するよ」
国外に逃げようが知った事じゃない。
むしろ国外の方が都合がいい。
国外で行方不明のままの邦人なんていくらでもいる。
ぽかっ
「大地、いい加減頭を冷やせ」
天音がそう言って僕の頭を小突く。
「僕でもイライラすることができたみたいだ」
僕はそう言って笑う。
それから中学の間は大人しくしていた。
高校のFGの連中も大人しくなった。
大区工業高校のFGの連中はもれなく病院のベッドに横たわってるそうだ。
未だに意識不明の人間もいると聞いた。
それは事故と断定された。
喜一は気づいてると思うが常に誰かに狙われている。
そいつは天音や僕の指示一つで行動に移すように打ち合わせしてある。
もう喜一に自由はない。
そして堕天使とか言う輩も僕達が目障りだと判断したら必ず事故に遭う。
その事を見せしめにした。
FGを潰すことは簡単だ。
だが潰してもまた新しいグループを作るだろう。
だからFGの自由を奪った。
死神の鎌はいつでもお前らの喉元にあるぞ。
そう脅しをかけた。
それははったりじゃないことも証明してみせた。
僕達の前で目立つような行動をすることはもうないだろう。
それは喜一の死刑宣告なのだから。
「それにしても天音も元の天音にもどってよかった」
学校が終わってコンビニに寄るとからあげとおにぎりとジュースを手にしている天音にそう言った。
「いいのか?大人しい女子のままの方が大地には都合がいいんじゃないのか?」
「小学生の頃から天音が好きだったんだ。自由に暴れてる天音のの方がいい」
だから自分らしく生きて。
そうできるように僕が天音を守るから。
「わかった。じゃ、帰ろうか?」
「うん」
そう言って僕たちは家に帰る。
今まで言葉を見つけられずにいた。
天音は何も言わない。
ほんの些細な出来事で幼い愛が崩れていく。
でも、そんな悲しい顔はみたくない。
何があっても夢さえ失くしてもその微笑みだけは捨てないで。
いつか誓うだろう。
必ずこの場所で君がどこにいたって出逢えることを信じて。
空の向こうでここらが描く明日。
もう一度あの場所で君の隣にいよう。
きっと僕ら2人がこれから駆け抜けていく日々に意味があるから。
今は2人切なく瞳をそらそうとも出会えることを信じてる。
(3)
私と光太は湯布院に来ていた。
紅葉を見に行きたいというから。
途中鶴見山に寄った。
湯布院の紅葉はとても綺麗だった。
ただでさえ、温泉街、観光町としてにぎわっているのに今日は異常に人が集まっていた。
紅葉だけ見に来ただけじゃ寂しいからお店にも寄った。
光太は退屈そうだったけど買い物に付き合ってくれた。
買い物を終えると昼食を食べて、来た道を帰る。
別府湾が見える光景はとても綺麗だった。
文化祭は無事行われた。
FGの連中は未だに入院しているそうだ。
これからは私達の周りでうろちょろすることはないだろうとSHのメッセージで告げられた。
中学生組がしでかしたらしい。
美希も実力行使に出たみたいだ。
私達の周りをうろちょろするな。
そんな圧力をかけたそうだ。
策者がいい加減飽きたというのもあるのだろう?
次の標的は何になるのか?
そんなのは神の気まぐれ。
今は紅葉が綺麗だ。
それだけでいい。
「ねえ光太。一つ聞いてもいい?」
「どうした?」
「どうして湯布院だったの?」
紅葉ならもっと見頃のスポットあったんじゃないか?
せっかく足を手に入れたのに。
そんな質問に光太は振り向くと笑って答えた。
もちろん、信号で停止中に。
「あるけど、渋滞で混んでるしそれしかないだろ?」
「まあ、そうだけど二輪なら抜けられるでしょ?」
「麗華を乗せてるのにそんな真似できねーよ」
煽られたりしたら面倒だと光太は言う。
「それに、やっぱり彼女と行くデートスポットって言ったら湯布院だろ?」
まあ、地元ならそうなるだろう?
破局したいなら別府という手もあるが。
「あそこには車の免許取ったら行くよ」
「わかった」
地元に帰るといつものファミレスによって夕食にして家に送ってもらう。
「あのさ、前から気になってたんだけど」
「どうしたの?」
「本当に大区でよかったのか?麗華なら大学行くって選択肢もあったんじゃないのか?」
そんなことか。
「特に目的も夢もないのに大学行ってもしょうがないじゃん」
就職先も決まってる事だし、それなら迷う必要もない。
「それでももっと制服の可愛い高校とかあったんじゃないのか?」
大区の制服もブレザーに代わって大分マシになったんだけど。
「わたしに城科の制服着て欲しかった?」
「……まあ、着てほしくないって言ったら嘘になるな」
「残念でした。私短い丈のスカート嫌いなの」
「そっか」
「じゃ、また明日ね」
「ああ、またな。冬の間は寒いからバイクは辞めとくよ」
「そうね」
今日も大分冷えたし。
「またイルミでも見に行こうぜ、イブに」
「ええ、楽しみにしてる」
光太はそう言うと「じゃあ、また」と言って帰って行った。
「まだ高校生の娘があまり遅くまで遊んでるのは感心しないぞ」
「別にいいじゃない、どうせ来月も遅くなるんでしょ」
父さんとお母さんが言ってる。
父さんは遊ぶのが悪いと言ってるわけじゃない。
単に私が変なのに絡まれないか心配してるだけ。
光太がいるから大丈夫。
そういうと大体納得する。
母さんも別に子供に関心がないわけじゃない。
年頃なんだから好きに恋愛させてやれ。
取り戻す事が出来ない思い出になるから。
風呂に入ると部屋にもどる。
数学の嫌いな私が測量なんて面倒な科目がある建築科に入ったのが不思議なくらい恋愛という感情は不思議なものだ。
でもここまで一緒に来たんだ。
最後まで一緒にいよう。
きっと私達2人これから駆け抜けていく日々に意味があるのだから。
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