102 / 535
言葉ばかりの雨
しおりを挟む
(1)
7月。
私達は夏服に変わっていた。
白いブラウスに黒のプリーツスカート。
制服を着ると鞄を持ってダイニングに向かう。
私が食べ終わる頃に翼が起きてくる。
「おはよう」
挨拶をして準備に取り掛かる。
化粧はしないけど、日焼け止めくらいはする。
昔はわざわざ日焼けサロンなんかに行って日焼けする奴がいたらしい。
翼は日焼けは気にしていない。
もちろん、日焼け止めくらいは塗るらしいけど。
それは日焼けが嫌なんじゃなくて将来シミになるのを防ぐためだ。
翼もまた普段化粧はしない。たかが学校に行くのにそこまで気合を入れる必要はないと思っているそうだ。
そのかわり善明とデートに行くときはしっかり化粧する。
しっかりといっても厚化粧するわけじゃない。
口紅やマスカラをする程度。
ファンデーションなんかは使わない。
この時期は早めに洗面台に行かないと年頃の女子が3人もいる我が家では戦場になる。
皆、洗顔やら日焼け対策に時間を費やす日々。
家に帰った後もそれは続く。
もちろん学校に日焼け止めは持って行く。
体育で汗をかいた後汗をかいた顔を洗って日焼け止めを塗りなおす。
日焼けをしない愛莉が羨ましいと思ったこともある。
そうやって準備をしていると水奈がやってくる。
皆より一足早く家を出る。
まだ誰もいない早朝に2人で歩く。
他の桜丘高生もいるけど前に話した通りわざわざ早めに登校するなんて真似はしない。
そう思っていた。
しかし、その日バス停に着くと同じ制服を着た子がいた。
制服の感じからして多分同い年だろう。
水奈に聞いてみたけど知らないという。
私が話しかけてみた。
「おはよう、こんな朝早くに登校?」
その子はちょっと怯えているようだ。
「心配しなくても危害加えたりしねーよ。ただ見たことない顔だなと思って声かけてみただけ。私片桐天音。名前は?」
「……柳井侑香です。初めまして」
バスが来ると一緒にバスに乗って最後尾の席に座る。
駅前につくまで色々話をしていた。
私と同じクラスみたいだ。
彼氏はいるらしい。
「ひょっとして彼氏って防府?」
「どうしてわかったんですか?」
ただの勘だ。
そうして話しているうちに学校の教室に入る頃にはしっかりSHの一員になっていた。
学校が終ると一緒に帰る。
家に帰ると部屋で着替える。
夕食を食べると風呂にはいって部屋でくつろぐ。
茜はPCを、私はゲームをしている。
そして同じ時間に寝る。
期末テストも終わった。
あとは夏休みを待つばかり。
その前に皆で海で遊ぶのか。
皆はどんな夏休みを過ごすんだろう?
そんな事を考えながら眠りについた。
(2)
調理実習の時間。
まだ1年生、しかもまだ1学期。
包丁の扱い方にようやく慣れてきた者もいる。
皆皮むきくらいは出来るようになってきた。
とはいえ、まだミスをするものもいる。
米を研ぐ時、水を流す際に米まで流してしまうもの。
油を使わずに卵を焼いてフライパンに引っ付いてしまうもの。
味噌汁に出汁を入れずに味噌だけ入れて味が薄くてひたすら味噌を溶かすもの。
幸いうちの班にはそう言う生徒がいなかった。
皆小さい時から料理をしていたそうだ。
そして調理が終ると皆で試食する。
「片桐さん」
斎藤朋香が私に声をかけた。
隣には知らない女子がいた。
「どうしたの?」
「紹介するね、宇佐見梨恵さん」
朋香がそういうと宇佐見さんは頭を下げる。
「宇佐見さんがどうかしたの?」
私が朋香に事情を聴くと朋香が説明しだした。
朋香の彼氏・瀬賀敦也の弟瀬賀悟と交際しているのが宇佐見らしい。
まあ、この世界ではよくある事だ。
事情は察した。
授業が終わると放課後皆集まる。
宇佐見と連絡先を交換するとSHに招待する。
悟とやらも入っていたようだ。
どれだけの数がSHに入っているんだろう?
そしていつものケーキ屋でおやつを食べると家に帰る。
宇佐見もまた近所に住んでいるようだった。
帰りのバスで色々話をしていた。
そしてバス停で降りると「またね」と言って別れる。
夕食を食べると風呂に入って部屋でスマホを触っていた。
「なんか果物のジュースやソフトクリームの店が駅にあるみたいだよ。今度行ってみない?」
「行こう行こう」
そんな話題が飛び交っていた。
たかがジュースに400円も出すのか?
ソフトクリームじゃ腹膨れないぞ?
そんな疑問をもちながらチャットを眺めていた。
SHのグループチャットだから当然茜もそれを見る。
「天音はいいな~。色んなお店に行けて」
「茜も壱郎と休日に一緒にいけばいいじゃないか」
「女子だけで行きたいとかあるじゃん」
確かにそれはあるかもな。
それに茜の目指す高校では帰りに寄れる店がそんなにない。
翼はいつも空達と一緒に食べて買い物して帰るだけだから。
女子だけで遊ぶという事は学校内以外ではそんなにないそうだ。
私はいつも善明といられる翼が羨ましいけどな。
女子が3人も集まればちょっとしか騒ぎになる。
それは深夜まで続いた。
そしてそろそろ寝るらしい愛莉が部屋の明かりに気が付いた。
「あなた達いい加減に寝なさい。いくらスキンケアしても睡眠不足だったら意味がありません!」
勉強しろと言わないのがうちの両親。
そして照明を落として眠りにつく。
明日から3連休。
海にキャンプに行く。
渡辺班の皆と遊びに行く日。
今年の水着はおさえてある。
花柄が流行らしい。
露出は極力抑えてある。
多分大地がそうして欲しいと思ってるだろうから。
傍から見たら夏の私服と変わらないような水着
大地が見たらどういう感想をくれるだろう?
そんな楽しみが待っていた。
(3)
子供たちを乗せて車を出す。
今からなら集合場所には余裕で間に合うだろう。
翼たちは車の中でぐっすり眠っていた。
昨日は夜更かししたみたいだ。
天音、茜くらいの歳になったら親と海に遊びに行くとか言わないはず。
それなのに一家の行事となるとついて来てくれる。
ありがたい事だ。
天音や翼は焼肉につられてなんだろうけど。
天音の放課後の事は夕食の時に天音が話題にしてた。
なんでもケーキ食べ放題の店があるんだそうだ。
愛莉は怒っていたけどどうも羨ましいらしい。
「今度2人で行ってみようか?」
「この歳になるとどうしてもお腹が気になってしまって……」
愛莉は元々小食だしな。
ちなみに愛莉は体形は若い頃そのままを維持している。
5人も出産してるのに脅威だ。
冬眞と莉子も自分の部屋で寝るようになったし寝室では2人きり。
仲良く過ごしていた。
集合場所の国道沿いのファミレスに着く。
皆揃うと出発する。
途中スーパーに寄って食材を調達する。
飲み物も忘れない。
そしてファミレスで昼食を食べて海に着くとテントを組み立て始める。
子供たちは水着に着替えて海に遊びに行く。
テントは今年新しく二つ用意した。
空と美希の分。天音と大地の分。
翼は酒井君が善明と一緒にと用意しているらしいから。
さすがにテント一つでは皆入りきれない。
渡辺班の最古参の者しか集まっていないのにそのテントの数は凄い事になっていたけど細かい事は気にしない。
適当に転がっているブロックを集めて来て四角に形作る。
その中に炭を入れて着火する。
火が起こると鉄板を上に置いて油を敷く。
そして渡辺美嘉さんが切った野菜や焼きそばの麺、イカや豚肉を順番に焼いて最後にソースをかけて焼きそばを作る。
「とーや達はどうせ腹空かしてるんだろ?」
子供達より早く0次会を始める。
子供達も僕達の手を離れて飛び立つときが来たんだ。
だけど僕も石原君もまだまだ休んでる暇はない。
小さな子供を養っていかなければならない。
「俺達はいつまで働けばいいんだ」
桐谷君が嘆いている。
「子供が独立したからって、まだ引退できる歳じゃないだろ?」
木元先輩が言う。
僕たち自身の生活も支えて行かなきゃいけない。
老後の貯えもしなきゃいけない。
まだまだ休んでる暇はないんだ。
「まあ、さすがにもう水着は恥ずかしくて着れないけどね」
亜依さんがそう言って笑う。
「お、俺はまだ亜依の水着姿見たいぜ!」
「瑛大は私を晒し物にするつもりか?」
まあ、世界には50台でもビキニを着る女性もいるんだ。
自分が着れると思ったらいいんだろう。
「俺はすでに無理だけどな」
渡辺君がそう言って笑う。
「正志は少しは痩せろ!正俊もお前みたいな体形になったじゃねーか!」
美嘉さんが言うと皆が笑っていた。
「誠!お前も人の事言えねーぞ!最近だらしない生活してるから現役時代と雲泥の差じゃねーか!」
カンナが言う。
「俺だって41だぞ!衰えもするさ」
「年齢を言い訳にするな!トーヤは同じ歳でも全然変わってねーぞ!」
「冬夜と一緒にするな。あんだけ食ってて太らないインチキみたいな体質なんだぞ!」
確かに、太ったって感覚はない。
それでも筋力はわずかに衰えを感じている。
多分冬吾が高校生になる頃にはもう冬吾にはついていけないだろう。
日が暮れてくると女性陣が動き出す。
男性陣もご飯を炊く準備を始める。
僕は子供たちを呼びに行く。
空達は冬眞達の世話をしっかりしててくれたみたいだ。
「そろそろ夕食の時間にするから着替えておいで」
僕がそう言うと子供たちはテントに戻り、着替えを撮るとシャワー室に向かう。
太陽が沈み、月が姿を見せる。
そしてまた月が姿を隠して太陽が顔を出す。
それを繰り返して一年という時間が経つ。
同じ時間は二度と来ない。
だけどそれを憂いてる時間もない。
動けなくなるまで僕達は歩き続ける。
7月。
私達は夏服に変わっていた。
白いブラウスに黒のプリーツスカート。
制服を着ると鞄を持ってダイニングに向かう。
私が食べ終わる頃に翼が起きてくる。
「おはよう」
挨拶をして準備に取り掛かる。
化粧はしないけど、日焼け止めくらいはする。
昔はわざわざ日焼けサロンなんかに行って日焼けする奴がいたらしい。
翼は日焼けは気にしていない。
もちろん、日焼け止めくらいは塗るらしいけど。
それは日焼けが嫌なんじゃなくて将来シミになるのを防ぐためだ。
翼もまた普段化粧はしない。たかが学校に行くのにそこまで気合を入れる必要はないと思っているそうだ。
そのかわり善明とデートに行くときはしっかり化粧する。
しっかりといっても厚化粧するわけじゃない。
口紅やマスカラをする程度。
ファンデーションなんかは使わない。
この時期は早めに洗面台に行かないと年頃の女子が3人もいる我が家では戦場になる。
皆、洗顔やら日焼け対策に時間を費やす日々。
家に帰った後もそれは続く。
もちろん学校に日焼け止めは持って行く。
体育で汗をかいた後汗をかいた顔を洗って日焼け止めを塗りなおす。
日焼けをしない愛莉が羨ましいと思ったこともある。
そうやって準備をしていると水奈がやってくる。
皆より一足早く家を出る。
まだ誰もいない早朝に2人で歩く。
他の桜丘高生もいるけど前に話した通りわざわざ早めに登校するなんて真似はしない。
そう思っていた。
しかし、その日バス停に着くと同じ制服を着た子がいた。
制服の感じからして多分同い年だろう。
水奈に聞いてみたけど知らないという。
私が話しかけてみた。
「おはよう、こんな朝早くに登校?」
その子はちょっと怯えているようだ。
「心配しなくても危害加えたりしねーよ。ただ見たことない顔だなと思って声かけてみただけ。私片桐天音。名前は?」
「……柳井侑香です。初めまして」
バスが来ると一緒にバスに乗って最後尾の席に座る。
駅前につくまで色々話をしていた。
私と同じクラスみたいだ。
彼氏はいるらしい。
「ひょっとして彼氏って防府?」
「どうしてわかったんですか?」
ただの勘だ。
そうして話しているうちに学校の教室に入る頃にはしっかりSHの一員になっていた。
学校が終ると一緒に帰る。
家に帰ると部屋で着替える。
夕食を食べると風呂にはいって部屋でくつろぐ。
茜はPCを、私はゲームをしている。
そして同じ時間に寝る。
期末テストも終わった。
あとは夏休みを待つばかり。
その前に皆で海で遊ぶのか。
皆はどんな夏休みを過ごすんだろう?
そんな事を考えながら眠りについた。
(2)
調理実習の時間。
まだ1年生、しかもまだ1学期。
包丁の扱い方にようやく慣れてきた者もいる。
皆皮むきくらいは出来るようになってきた。
とはいえ、まだミスをするものもいる。
米を研ぐ時、水を流す際に米まで流してしまうもの。
油を使わずに卵を焼いてフライパンに引っ付いてしまうもの。
味噌汁に出汁を入れずに味噌だけ入れて味が薄くてひたすら味噌を溶かすもの。
幸いうちの班にはそう言う生徒がいなかった。
皆小さい時から料理をしていたそうだ。
そして調理が終ると皆で試食する。
「片桐さん」
斎藤朋香が私に声をかけた。
隣には知らない女子がいた。
「どうしたの?」
「紹介するね、宇佐見梨恵さん」
朋香がそういうと宇佐見さんは頭を下げる。
「宇佐見さんがどうかしたの?」
私が朋香に事情を聴くと朋香が説明しだした。
朋香の彼氏・瀬賀敦也の弟瀬賀悟と交際しているのが宇佐見らしい。
まあ、この世界ではよくある事だ。
事情は察した。
授業が終わると放課後皆集まる。
宇佐見と連絡先を交換するとSHに招待する。
悟とやらも入っていたようだ。
どれだけの数がSHに入っているんだろう?
そしていつものケーキ屋でおやつを食べると家に帰る。
宇佐見もまた近所に住んでいるようだった。
帰りのバスで色々話をしていた。
そしてバス停で降りると「またね」と言って別れる。
夕食を食べると風呂に入って部屋でスマホを触っていた。
「なんか果物のジュースやソフトクリームの店が駅にあるみたいだよ。今度行ってみない?」
「行こう行こう」
そんな話題が飛び交っていた。
たかがジュースに400円も出すのか?
ソフトクリームじゃ腹膨れないぞ?
そんな疑問をもちながらチャットを眺めていた。
SHのグループチャットだから当然茜もそれを見る。
「天音はいいな~。色んなお店に行けて」
「茜も壱郎と休日に一緒にいけばいいじゃないか」
「女子だけで行きたいとかあるじゃん」
確かにそれはあるかもな。
それに茜の目指す高校では帰りに寄れる店がそんなにない。
翼はいつも空達と一緒に食べて買い物して帰るだけだから。
女子だけで遊ぶという事は学校内以外ではそんなにないそうだ。
私はいつも善明といられる翼が羨ましいけどな。
女子が3人も集まればちょっとしか騒ぎになる。
それは深夜まで続いた。
そしてそろそろ寝るらしい愛莉が部屋の明かりに気が付いた。
「あなた達いい加減に寝なさい。いくらスキンケアしても睡眠不足だったら意味がありません!」
勉強しろと言わないのがうちの両親。
そして照明を落として眠りにつく。
明日から3連休。
海にキャンプに行く。
渡辺班の皆と遊びに行く日。
今年の水着はおさえてある。
花柄が流行らしい。
露出は極力抑えてある。
多分大地がそうして欲しいと思ってるだろうから。
傍から見たら夏の私服と変わらないような水着
大地が見たらどういう感想をくれるだろう?
そんな楽しみが待っていた。
(3)
子供たちを乗せて車を出す。
今からなら集合場所には余裕で間に合うだろう。
翼たちは車の中でぐっすり眠っていた。
昨日は夜更かししたみたいだ。
天音、茜くらいの歳になったら親と海に遊びに行くとか言わないはず。
それなのに一家の行事となるとついて来てくれる。
ありがたい事だ。
天音や翼は焼肉につられてなんだろうけど。
天音の放課後の事は夕食の時に天音が話題にしてた。
なんでもケーキ食べ放題の店があるんだそうだ。
愛莉は怒っていたけどどうも羨ましいらしい。
「今度2人で行ってみようか?」
「この歳になるとどうしてもお腹が気になってしまって……」
愛莉は元々小食だしな。
ちなみに愛莉は体形は若い頃そのままを維持している。
5人も出産してるのに脅威だ。
冬眞と莉子も自分の部屋で寝るようになったし寝室では2人きり。
仲良く過ごしていた。
集合場所の国道沿いのファミレスに着く。
皆揃うと出発する。
途中スーパーに寄って食材を調達する。
飲み物も忘れない。
そしてファミレスで昼食を食べて海に着くとテントを組み立て始める。
子供たちは水着に着替えて海に遊びに行く。
テントは今年新しく二つ用意した。
空と美希の分。天音と大地の分。
翼は酒井君が善明と一緒にと用意しているらしいから。
さすがにテント一つでは皆入りきれない。
渡辺班の最古参の者しか集まっていないのにそのテントの数は凄い事になっていたけど細かい事は気にしない。
適当に転がっているブロックを集めて来て四角に形作る。
その中に炭を入れて着火する。
火が起こると鉄板を上に置いて油を敷く。
そして渡辺美嘉さんが切った野菜や焼きそばの麺、イカや豚肉を順番に焼いて最後にソースをかけて焼きそばを作る。
「とーや達はどうせ腹空かしてるんだろ?」
子供達より早く0次会を始める。
子供達も僕達の手を離れて飛び立つときが来たんだ。
だけど僕も石原君もまだまだ休んでる暇はない。
小さな子供を養っていかなければならない。
「俺達はいつまで働けばいいんだ」
桐谷君が嘆いている。
「子供が独立したからって、まだ引退できる歳じゃないだろ?」
木元先輩が言う。
僕たち自身の生活も支えて行かなきゃいけない。
老後の貯えもしなきゃいけない。
まだまだ休んでる暇はないんだ。
「まあ、さすがにもう水着は恥ずかしくて着れないけどね」
亜依さんがそう言って笑う。
「お、俺はまだ亜依の水着姿見たいぜ!」
「瑛大は私を晒し物にするつもりか?」
まあ、世界には50台でもビキニを着る女性もいるんだ。
自分が着れると思ったらいいんだろう。
「俺はすでに無理だけどな」
渡辺君がそう言って笑う。
「正志は少しは痩せろ!正俊もお前みたいな体形になったじゃねーか!」
美嘉さんが言うと皆が笑っていた。
「誠!お前も人の事言えねーぞ!最近だらしない生活してるから現役時代と雲泥の差じゃねーか!」
カンナが言う。
「俺だって41だぞ!衰えもするさ」
「年齢を言い訳にするな!トーヤは同じ歳でも全然変わってねーぞ!」
「冬夜と一緒にするな。あんだけ食ってて太らないインチキみたいな体質なんだぞ!」
確かに、太ったって感覚はない。
それでも筋力はわずかに衰えを感じている。
多分冬吾が高校生になる頃にはもう冬吾にはついていけないだろう。
日が暮れてくると女性陣が動き出す。
男性陣もご飯を炊く準備を始める。
僕は子供たちを呼びに行く。
空達は冬眞達の世話をしっかりしててくれたみたいだ。
「そろそろ夕食の時間にするから着替えておいで」
僕がそう言うと子供たちはテントに戻り、着替えを撮るとシャワー室に向かう。
太陽が沈み、月が姿を見せる。
そしてまた月が姿を隠して太陽が顔を出す。
それを繰り返して一年という時間が経つ。
同じ時間は二度と来ない。
だけどそれを憂いてる時間もない。
動けなくなるまで僕達は歩き続ける。
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる