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駆け抜ける嵐
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(1)
突然言われた。
ある日の昼食中にグループから追い出された。
いてもいなくてもどうでもよかったので私は黙って立ち去った。
自分の席に戻ると再び弁当を食べる。
頭から水を被った。
弁当も制服も髪の毛も水浸しだ。
振り返るとグループの女子がいた。
「暑いだろうと思って冷やしてやったんだ。感謝しろよ」
弁当は諦めよう。
とりあえず着替えないと。
そんな事を考えているとグループの女子が突然吹き飛んだ。
犯人は高々に宣言した。
「私の前でそんなふざけた真似してイラつかせやがって。お前らまとめて相手してやるよ!」
そのあとちょっとした騒ぎになった。
教師が駆け付けるまで茉里奈は暴れ続けた。
それだけじゃ済まなかった。
騒ぎを嗅ぎ付けたのは教師だけじゃなかった。
茉里奈が所属しているグループSHの首謀者、片桐天音もやって来た。
「面白い真似してくれてるじゃねーか!紗理奈、久々に遊ぼうぜ!」
「もちろんだ天音!お前らに拒否権ねーから」
そうして私達は職員室に呼ばれた。
お互いに自分の正当性を主張する。
「私に文句があるなら聞いてやるぞ?今ここで決着つけてやろうか?」
天音は場所を選ばないらしい。
両者厳重注意で済んだ。
そして職員室をでると茉里奈が言う。
「連絡先教えろよ。SHに入れてやるから」
「別に入りたいと思ってないんだけど?」
「まあ、いいから入っておけ」
茉里奈がしつこく言うのでとりあえず入った。
また面倒事にまきこまれるのか……。
そんな事は無かった。
普通に雑談して帰りに寄り道して遊ぶだけのグループ。
毎日のように喧嘩に明け暮れているような暴力集団ではないらしい。
「で、蒼衣はあのグループで何やったんだ?」
「別に何もしてないけど?……あ!」
「何か心当たりがあるのか?」
「一つだけあった」
それは数日前の事。
雑誌をみて皆で盛り上がっていた。
そしてクラスの女子の悪口になる。
しょうもない話題だった。
「今日体育着に着替える時のあいつの下着みた?超ダサダサだった」
普段からそんなお気に入りの下着をつけるわけがない。
そんな事もわからないのだろうか?
まあ、分からないんだろうな?
彼女達には彼氏がいないんだから。
その後も形状や色について話が盛り上がっていた。
そんな色普段から着ていたらブラウスから透けてしまうじゃないか。
「蒼衣も気をつけろよ。なんか蒼衣地味そうだからさ」
私だって彼氏に会う時くらい気を使ってる。
下着のラインが出ないような下着くらい持ってる。
だけどそんな話題をしてるのが面倒だったので思わず言ってしまった。
「あなた達は見せる人がいないんだから気にする必要ないんじゃない?」
それとも彼氏以外に見せる事あるの?
当然グループの皆は激怒した。
それが原因かも?
その話を聞いた茉里奈達は笑っていた!
雑誌の読み過ぎだ!
高校生がそんな日頃から下着に気合入れてたら男子は引く。
どうせチラ見しかしない程度の下着だ。
堂々と見せる時になったらすぐ脱いでしまう下着に金かける意味などない。
まあ、そうかもしれない。
私の彼も同じような感じだったから。
「下着似合ってるよ」なんて言われた試し一度もない。
それに男子と女子では好みが若干異なる。
男子は「下着は白が一番」と思ってるらしい。
白は制服から透けないから普段良く使う。
結局普段のままでいいんだ。
今日あった事を彼氏の三崎暉斗に話していた。
「女子ってそんな風に考えてるんだな」
「ところで暉斗はどうなの?」
「どういう意味?」
「暉斗の好み聞いたことないから」
あるんだったら今度準備しておく。
だけど暉斗は笑って答える。
「俺の為に準備してくれてる素の蒼衣が一番好きだよ」
「ありがとう」
この日一番うれしい言葉だった。
私の名前は桐原蒼衣。
「あおい」と読む。
蒼っていうくらいだか青色にも挑戦してみようかな?
(2)
なんかおかしい?
いつもと教室にいる人が違う。
なんでだろう?
よく分からないけど席に着く。
その席が悪かったようだ。
赤いショートヘアの子が私の前に立つ。
「お前何やってんだ?そこ私の席だぞ」
その女子の名前は片桐天音。
学校で一番関わってはいけない人物。
天音は私の上履きを見て気づいた。
「お前2年だろ?ここ3年の教室だぞ!」
へ?
呆気にとられる私を見て教室が笑い声に包まれる。
「ここ3階だぞ!2年の教室は2階。どうやったら間違えるんだよ」
考え事をしながら歩いていたから階段を上った事すら忘れていたようだ。
「わかったら早く教室に行け!もう予鈴なってるぞ」
天音がそう言うので私は急いで2年の教室に戻った。
昼休みになって弁当を食べ終わった頃同じクラスの茉里奈が気づいたようだ。
「あれ?紗理奈に天音。どうしたんだ?」
「いや、ちょっとおもしろい奴見つけたんだ」
私は目をつけられたらしい。
そして見つかった。
「あ、お前朝笑わしてくれた奴。名前なんて言うんだ?」
「風岡綾姫」
「お前、彼氏いる?」
「いる」
見栄をはったわけじゃない。
ぼーっと生きていても彼氏が出来る世の中。
普通科の男子に告白された。
告白される程度の見た目と性格はもっているらしい。
彼氏の名前は佐野研吾。
その事を聞いた天音達は頷いている。
「じゃ、問題ないな。お前連絡先教えろよ。今日からお前も私の仲間だ」
もう、理由も何もあったもんじゃない。
誰かを殺すのに理由がいるかい?
そんな理屈が通る世界だから普通なのかもしれない。
拒否する権利はなさそうだ。
大人しく連絡先を交換する。
「彼氏も誘っておけよ。じゃあな」
そう言って紗理奈と天音は自分の教室に戻っていった。
メンバーを見るとこのクラスの大体の女子が入ってるようだ。
どうせ一緒に帰るしその時でいいか?
学校が終ると校門で研吾を待つ。
しばらくして研吾がやってくる。
「いつも遅くなって悪い」
「気にしてないからいいよ」
そしてバス停に向かいながら朝あった事を話した。
やっぱり笑われた。
「お前本当にそそっかしい奴だな」
研吾は桜丘に進学しておきながら国公立を目指すという無謀な挑戦をしている。
当然塾にも通っている。
駅前に塾があるのでそこで別れる。
特にやる事が無いので私はバス停に向かう。
すると茉里奈達と会う。
「あれ?綾姫まだ帰ってなかったのか?」
「彼氏待ってたから」
「彼氏ってどこにいるんだ?」
「そこの塾に通ってる」
「ああ、進学コースって言ってたな……お前これから予定ああるのか?」
「特にないけど」
「じゃあ、折角だし付き合えよ少しくらい寄り道してもいいだろ?」
そして茉里奈達と寄り道して帰る。
家に帰ると夕食を食べて風呂に入って部屋に戻って鏡の前で髪を乾かす。
今までの私を捨てる時が来たのだろうか?
想い出す事も悲しむことも許されるときは無く運命と対峙する。
今日で全てが燃え尽きるとしても、それでも人は明日を夢見る。
それが運命なら。
陽炎の中へ二度と戻らない。
振り向いたあなたの横顔の優しい笑顔を消せはしないから。
未来は誰の為にあるのだろうか?
(3)
下校中突然絡まれた。
「お前今ガンくれたろ?」
このご時世でそんなセリフを聞くとは思いもよらなかった。
ちょっと目があっただけなのに。
そしてそんなご時世の服を着ていた。
夏だから暑いのだろう。
短い丈のスカート。
でも熱くないのだろうか?
ローファーの踵が隠れるほどの大きなルーズソックス。
幸いにも肌は白かった。
黒かったらどうしようか悩んだところだ。
笑いをこらえるのに一苦労したことだろう。
そんなことをぼんやり考えていると胸ぐらを掴まれた。
「お前私らなめてんのか!?」
息がタバコ臭い。
一緒に居る男の服装と髪形も似たような感じだった。
こんな暑い日にイライラしてると余計にイライラするだろうに。
「で、お前らにガンとばしたらどうなるか教えて欲しいんだけど」
私に絡んでくる奴等よりもっと質の悪いグループが現れた。
校門という場所が悪かったのだろう。
その集団は……文化遺産でいいか。文化遺産に絡むという行動に出た。
「そんなに暇してるなら私らが相手してやるよ。何すればいいんだ?」
赤髪の女子が積極的に絡んでいる。
赤髪の女子こそ私が通う学校最強の問題児片桐天音。
成績もどうして桜丘を選んだんだというくらいに良い。
運動部に入らないのがもったいないくらい運動能力が高い。
そしてその高い基本性能を無駄な事に惜しむことなく注いでいる。
「お、お前らには関係ないだろ」
この文化遺産達も天音の事は知っていたらしい。
「そうだね関係ないね」で済ませるような人たちじゃない事は知らなかったようだけど。
「私の友達に手を出して関係ないは通用しないね」
私は友達になった覚えはない。
しかし誤解した文化遺産は私を解放する。
天音は関係ないとばかりに文化遺産を睨みつける。
絶対に目をそらさない。
むしろ文化遺産がそらしていた。
「ほら?どうするんだよ?付き合ってやるから続けて見ろよ」
「てめぇ女子だからと思って甘く見てたらつけあがりやがって」
男子が立ち上がり天音を怒鳴りつける。
「女子だから優しいと思ったら大間違いだからな。お前らまとめて袋叩きにしてグラウンドにも埋めてやらぁ!」
本当に遺跡にするつもりらしい。
暑くてイライラしてるのに鬱陶しい真似しやがって。
文化遺産より質の悪い言いがかりをつけている。
男子の天音のにらみ合いは続く。
後にいた渡辺紗理奈と茉里奈。金髪とピンクと緑はやる気全開だった。
しばらくして文化遺産達はどこかへ去って行った。
「ありがとう」
お礼くらい言っておかないと私が標的になりそうだ。
「気にするな、友達助けただけだ」
「あの……」
「あ、そうだな。連絡先教えろよ」
私の主張を聞くつもりはないらしい。
私はだまってスマホを取り出し天音と連絡先を交換する。
そしてSHに招待された。
「よし、じゃあ遊びに行くぞ」
「宇佐、何があったんだ?」
私の彼氏の青崎陽司が来た。
当然のように陽司も巻き込まれてSHに入った。
天音が向かった先はかき氷屋だった。
美味しいと評判の店。
天音の感想は
「やっぱ氷だと食った気しねーな」
味は関係ないらしい。
「で、2人の馴れ初めは?」
天音が聞いてきた。
私達は口をそろえて言う。
「なんとなく」
この世界には数えるのも面倒なほどカップルがいる。
男女が交際するのにいちいち理由がいるのか?と開き直るほどいる。
入学式の日に会って、帰り道が一緒で登下校を一緒に繰り返しているうちに意気投合していた。
ただそれだけの事。
「なるほどな」
自分で聞いておいてあまり興味が無さそうな天音。
他の女子は陽司に興味があったみたいだ。
色々聞いてる。
戸惑いながらもそれに答える陽司。
そんな言わなくても良い事まで言わないで。
陽司のクラスにもSHのメンバーがいるらしい。
話が一通り終わると私達は家に帰る。
先にバスを降りるのは私達だった。
「じゃあ、また明日」
そう言ってバスを降りると家に帰る。
「なんかとんでもない事に巻き込まれた気がするんだけど」
陽司が言う。
そんな気がしなくてもきっと巻き込まれてるよ。
「じゃあ、また明日な」
私の家の前に来ると陽司はそう言って家に帰る。
部屋に戻ると着替える。
夕飯を食べてお風呂に入るとスマホが頭ッと鳴り続けていることに気付く。
SHのグループチャットだ。
朝まで続くのだろうか?
些細な事で大盛り上がりする皆が羨ましく思えた。
そしてそんなグループに入ったことに対する希望が湧いてきた。
今日で全てが崩れ去るとしても、人は明日を夢見る。
人は夢を欲しがる。
信じてるものが心にあればそれだけで人は生きていく。
声を殺し泣いた遠い記憶。
未来は誰の為にある?
運命の物語に私達は選ばれた。
突然言われた。
ある日の昼食中にグループから追い出された。
いてもいなくてもどうでもよかったので私は黙って立ち去った。
自分の席に戻ると再び弁当を食べる。
頭から水を被った。
弁当も制服も髪の毛も水浸しだ。
振り返るとグループの女子がいた。
「暑いだろうと思って冷やしてやったんだ。感謝しろよ」
弁当は諦めよう。
とりあえず着替えないと。
そんな事を考えているとグループの女子が突然吹き飛んだ。
犯人は高々に宣言した。
「私の前でそんなふざけた真似してイラつかせやがって。お前らまとめて相手してやるよ!」
そのあとちょっとした騒ぎになった。
教師が駆け付けるまで茉里奈は暴れ続けた。
それだけじゃ済まなかった。
騒ぎを嗅ぎ付けたのは教師だけじゃなかった。
茉里奈が所属しているグループSHの首謀者、片桐天音もやって来た。
「面白い真似してくれてるじゃねーか!紗理奈、久々に遊ぼうぜ!」
「もちろんだ天音!お前らに拒否権ねーから」
そうして私達は職員室に呼ばれた。
お互いに自分の正当性を主張する。
「私に文句があるなら聞いてやるぞ?今ここで決着つけてやろうか?」
天音は場所を選ばないらしい。
両者厳重注意で済んだ。
そして職員室をでると茉里奈が言う。
「連絡先教えろよ。SHに入れてやるから」
「別に入りたいと思ってないんだけど?」
「まあ、いいから入っておけ」
茉里奈がしつこく言うのでとりあえず入った。
また面倒事にまきこまれるのか……。
そんな事は無かった。
普通に雑談して帰りに寄り道して遊ぶだけのグループ。
毎日のように喧嘩に明け暮れているような暴力集団ではないらしい。
「で、蒼衣はあのグループで何やったんだ?」
「別に何もしてないけど?……あ!」
「何か心当たりがあるのか?」
「一つだけあった」
それは数日前の事。
雑誌をみて皆で盛り上がっていた。
そしてクラスの女子の悪口になる。
しょうもない話題だった。
「今日体育着に着替える時のあいつの下着みた?超ダサダサだった」
普段からそんなお気に入りの下着をつけるわけがない。
そんな事もわからないのだろうか?
まあ、分からないんだろうな?
彼女達には彼氏がいないんだから。
その後も形状や色について話が盛り上がっていた。
そんな色普段から着ていたらブラウスから透けてしまうじゃないか。
「蒼衣も気をつけろよ。なんか蒼衣地味そうだからさ」
私だって彼氏に会う時くらい気を使ってる。
下着のラインが出ないような下着くらい持ってる。
だけどそんな話題をしてるのが面倒だったので思わず言ってしまった。
「あなた達は見せる人がいないんだから気にする必要ないんじゃない?」
それとも彼氏以外に見せる事あるの?
当然グループの皆は激怒した。
それが原因かも?
その話を聞いた茉里奈達は笑っていた!
雑誌の読み過ぎだ!
高校生がそんな日頃から下着に気合入れてたら男子は引く。
どうせチラ見しかしない程度の下着だ。
堂々と見せる時になったらすぐ脱いでしまう下着に金かける意味などない。
まあ、そうかもしれない。
私の彼も同じような感じだったから。
「下着似合ってるよ」なんて言われた試し一度もない。
それに男子と女子では好みが若干異なる。
男子は「下着は白が一番」と思ってるらしい。
白は制服から透けないから普段良く使う。
結局普段のままでいいんだ。
今日あった事を彼氏の三崎暉斗に話していた。
「女子ってそんな風に考えてるんだな」
「ところで暉斗はどうなの?」
「どういう意味?」
「暉斗の好み聞いたことないから」
あるんだったら今度準備しておく。
だけど暉斗は笑って答える。
「俺の為に準備してくれてる素の蒼衣が一番好きだよ」
「ありがとう」
この日一番うれしい言葉だった。
私の名前は桐原蒼衣。
「あおい」と読む。
蒼っていうくらいだか青色にも挑戦してみようかな?
(2)
なんかおかしい?
いつもと教室にいる人が違う。
なんでだろう?
よく分からないけど席に着く。
その席が悪かったようだ。
赤いショートヘアの子が私の前に立つ。
「お前何やってんだ?そこ私の席だぞ」
その女子の名前は片桐天音。
学校で一番関わってはいけない人物。
天音は私の上履きを見て気づいた。
「お前2年だろ?ここ3年の教室だぞ!」
へ?
呆気にとられる私を見て教室が笑い声に包まれる。
「ここ3階だぞ!2年の教室は2階。どうやったら間違えるんだよ」
考え事をしながら歩いていたから階段を上った事すら忘れていたようだ。
「わかったら早く教室に行け!もう予鈴なってるぞ」
天音がそう言うので私は急いで2年の教室に戻った。
昼休みになって弁当を食べ終わった頃同じクラスの茉里奈が気づいたようだ。
「あれ?紗理奈に天音。どうしたんだ?」
「いや、ちょっとおもしろい奴見つけたんだ」
私は目をつけられたらしい。
そして見つかった。
「あ、お前朝笑わしてくれた奴。名前なんて言うんだ?」
「風岡綾姫」
「お前、彼氏いる?」
「いる」
見栄をはったわけじゃない。
ぼーっと生きていても彼氏が出来る世の中。
普通科の男子に告白された。
告白される程度の見た目と性格はもっているらしい。
彼氏の名前は佐野研吾。
その事を聞いた天音達は頷いている。
「じゃ、問題ないな。お前連絡先教えろよ。今日からお前も私の仲間だ」
もう、理由も何もあったもんじゃない。
誰かを殺すのに理由がいるかい?
そんな理屈が通る世界だから普通なのかもしれない。
拒否する権利はなさそうだ。
大人しく連絡先を交換する。
「彼氏も誘っておけよ。じゃあな」
そう言って紗理奈と天音は自分の教室に戻っていった。
メンバーを見るとこのクラスの大体の女子が入ってるようだ。
どうせ一緒に帰るしその時でいいか?
学校が終ると校門で研吾を待つ。
しばらくして研吾がやってくる。
「いつも遅くなって悪い」
「気にしてないからいいよ」
そしてバス停に向かいながら朝あった事を話した。
やっぱり笑われた。
「お前本当にそそっかしい奴だな」
研吾は桜丘に進学しておきながら国公立を目指すという無謀な挑戦をしている。
当然塾にも通っている。
駅前に塾があるのでそこで別れる。
特にやる事が無いので私はバス停に向かう。
すると茉里奈達と会う。
「あれ?綾姫まだ帰ってなかったのか?」
「彼氏待ってたから」
「彼氏ってどこにいるんだ?」
「そこの塾に通ってる」
「ああ、進学コースって言ってたな……お前これから予定ああるのか?」
「特にないけど」
「じゃあ、折角だし付き合えよ少しくらい寄り道してもいいだろ?」
そして茉里奈達と寄り道して帰る。
家に帰ると夕食を食べて風呂に入って部屋に戻って鏡の前で髪を乾かす。
今までの私を捨てる時が来たのだろうか?
想い出す事も悲しむことも許されるときは無く運命と対峙する。
今日で全てが燃え尽きるとしても、それでも人は明日を夢見る。
それが運命なら。
陽炎の中へ二度と戻らない。
振り向いたあなたの横顔の優しい笑顔を消せはしないから。
未来は誰の為にあるのだろうか?
(3)
下校中突然絡まれた。
「お前今ガンくれたろ?」
このご時世でそんなセリフを聞くとは思いもよらなかった。
ちょっと目があっただけなのに。
そしてそんなご時世の服を着ていた。
夏だから暑いのだろう。
短い丈のスカート。
でも熱くないのだろうか?
ローファーの踵が隠れるほどの大きなルーズソックス。
幸いにも肌は白かった。
黒かったらどうしようか悩んだところだ。
笑いをこらえるのに一苦労したことだろう。
そんなことをぼんやり考えていると胸ぐらを掴まれた。
「お前私らなめてんのか!?」
息がタバコ臭い。
一緒に居る男の服装と髪形も似たような感じだった。
こんな暑い日にイライラしてると余計にイライラするだろうに。
「で、お前らにガンとばしたらどうなるか教えて欲しいんだけど」
私に絡んでくる奴等よりもっと質の悪いグループが現れた。
校門という場所が悪かったのだろう。
その集団は……文化遺産でいいか。文化遺産に絡むという行動に出た。
「そんなに暇してるなら私らが相手してやるよ。何すればいいんだ?」
赤髪の女子が積極的に絡んでいる。
赤髪の女子こそ私が通う学校最強の問題児片桐天音。
成績もどうして桜丘を選んだんだというくらいに良い。
運動部に入らないのがもったいないくらい運動能力が高い。
そしてその高い基本性能を無駄な事に惜しむことなく注いでいる。
「お、お前らには関係ないだろ」
この文化遺産達も天音の事は知っていたらしい。
「そうだね関係ないね」で済ませるような人たちじゃない事は知らなかったようだけど。
「私の友達に手を出して関係ないは通用しないね」
私は友達になった覚えはない。
しかし誤解した文化遺産は私を解放する。
天音は関係ないとばかりに文化遺産を睨みつける。
絶対に目をそらさない。
むしろ文化遺産がそらしていた。
「ほら?どうするんだよ?付き合ってやるから続けて見ろよ」
「てめぇ女子だからと思って甘く見てたらつけあがりやがって」
男子が立ち上がり天音を怒鳴りつける。
「女子だから優しいと思ったら大間違いだからな。お前らまとめて袋叩きにしてグラウンドにも埋めてやらぁ!」
本当に遺跡にするつもりらしい。
暑くてイライラしてるのに鬱陶しい真似しやがって。
文化遺産より質の悪い言いがかりをつけている。
男子の天音のにらみ合いは続く。
後にいた渡辺紗理奈と茉里奈。金髪とピンクと緑はやる気全開だった。
しばらくして文化遺産達はどこかへ去って行った。
「ありがとう」
お礼くらい言っておかないと私が標的になりそうだ。
「気にするな、友達助けただけだ」
「あの……」
「あ、そうだな。連絡先教えろよ」
私の主張を聞くつもりはないらしい。
私はだまってスマホを取り出し天音と連絡先を交換する。
そしてSHに招待された。
「よし、じゃあ遊びに行くぞ」
「宇佐、何があったんだ?」
私の彼氏の青崎陽司が来た。
当然のように陽司も巻き込まれてSHに入った。
天音が向かった先はかき氷屋だった。
美味しいと評判の店。
天音の感想は
「やっぱ氷だと食った気しねーな」
味は関係ないらしい。
「で、2人の馴れ初めは?」
天音が聞いてきた。
私達は口をそろえて言う。
「なんとなく」
この世界には数えるのも面倒なほどカップルがいる。
男女が交際するのにいちいち理由がいるのか?と開き直るほどいる。
入学式の日に会って、帰り道が一緒で登下校を一緒に繰り返しているうちに意気投合していた。
ただそれだけの事。
「なるほどな」
自分で聞いておいてあまり興味が無さそうな天音。
他の女子は陽司に興味があったみたいだ。
色々聞いてる。
戸惑いながらもそれに答える陽司。
そんな言わなくても良い事まで言わないで。
陽司のクラスにもSHのメンバーがいるらしい。
話が一通り終わると私達は家に帰る。
先にバスを降りるのは私達だった。
「じゃあ、また明日」
そう言ってバスを降りると家に帰る。
「なんかとんでもない事に巻き込まれた気がするんだけど」
陽司が言う。
そんな気がしなくてもきっと巻き込まれてるよ。
「じゃあ、また明日な」
私の家の前に来ると陽司はそう言って家に帰る。
部屋に戻ると着替える。
夕飯を食べてお風呂に入るとスマホが頭ッと鳴り続けていることに気付く。
SHのグループチャットだ。
朝まで続くのだろうか?
些細な事で大盛り上がりする皆が羨ましく思えた。
そしてそんなグループに入ったことに対する希望が湧いてきた。
今日で全てが崩れ去るとしても、人は明日を夢見る。
人は夢を欲しがる。
信じてるものが心にあればそれだけで人は生きていく。
声を殺し泣いた遠い記憶。
未来は誰の為にある?
運命の物語に私達は選ばれた。
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穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
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