姉妹チート

和希

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現実に涙

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(1)

「3日間お疲れ様でした」

 僕達は2泊3日の合宿を終えて打ち上げに市内の居酒屋に来ていた。
 天音達がついて来てるのは言うまでもない。

「空や、3日間ご苦労さん」

 そう言って善明が隣に座る。

「そんな大したことしてないよ。大体の段取りは善明達にしてもらったし」
「それでもちゃんとできたのは空の気配りの賜物だよ」

 そう言うのは翼。

「帰ったらちゃんとマッサージしてあげる」

 美希がそう言った。

「で、どうだ?いきなりSHのリーダーという大役を任せられた感想は?」

 学が僕達の話に加わってきた。
 学の妻の水奈は天音達と盛り上がっているのだからいいのだろう。
「あまり羽目を外すなよ」と釘を刺してはきたらしいけど、天音がいる限り無理だろうな。

「あまり実感がないのが実情だね」

 正直今でもピンときていない。
 地元最大規模のグループSH。
 向かうところ敵なしの最恐最悪のグループ。
 そういうイメージを与えたのは多分天音だけでなく僕達の行動にもあったのだろう。

「後半の休みはどうするつもり?」

 美希に尋ねられた。
 後半は美希とゆっくり過ごすつもりだと伝えた。
 まあ、実家にも顔を出すつもりだけど。

「私も実家に帰らないといけないとは思うんだけど……」

 翼は何か悩んでるらしい。
 どうしたのだろう?

「どうしたの?」

 同じ事を思った美希が翼に聞いていた。

「旅行の後に善明の家に挨拶に行ったときなんだけどね……」

 何があったんだろう?
 何かやらかしたの?

「翼や、まだ大学生だというのに”孫の顔はまだ見せてくれないの?”とか言われたら委縮もするよ」

 ビール吹きそうになった。
 美希は笑っている。

「私はいつでも構いんだけど、愛莉が”せめて卒業してからにしなさい”って言うし困ってるんだよね」
「善明の両親はなんて言ってるの?」

 美希は善明に聞いてみた。

「”酒井家の大事な跡とりなんだから育児はいくらでも協力するからさっさと作りなさい!”と言われてね」

 ちなみに善明のお父さんは何も介入しなかったらしい。
 
 僕達はまだ結婚すらしていないし、あとは学と水奈か。

「学は何か言われてるの?」
「言われていると言えば言われてるな」
「なんて?」
「ああ、そうだな……なんて言えば良いのか」

 何か複雑な事情があるのだろうか?

「水奈とは夜の営みはどうだ?俺は娘に何一つ教えてやれなかったから……とな」

 ああ、そういう事か。
 それを聞いていた僕達は言葉を失った。
 話はまだ続く……

「水奈の母さんは東京で色々学んできたからとかなんとか……」
「学!あのバカの事は真に受けなくていい!」

 水奈がやってきた。

「お前らも信じるなよ!母さんはそんな軽い人じゃない。父さんとが初めてだったって言ってた!」

 それなのに水奈の父さんが色々強要していたんだそうだ。
 善明とは違った意味で困惑してるらしい。
 水奈の父さんが学の家に泊まると言った際も「水奈の声を一度聞いてみたい」と言ったそうだ。
 もちろん水奈の母さんが引きずって帰ったらしいけど。

「大地!私もいつだっていいぞ!子作りしようぜ!」

 天音が恋人の大地に言っている。

「天音だって学校あるし、第一結婚だってまだなんだよ!?」
「じゃ、明日結婚しよう!」
「そんな簡単に言わないでよ。僕だってまだ……」
「”まだ”……なんだよ?」

 天音はにやにやしながら聞いていた。
 翼も美希も笑ってる。
 周りにいた仲間達も大地を見ていた。

「……まだ言えない。もう少し待って欲しい」
「何を待つんだ?」
「その時言うから」
「天音、大地だって色々考えてるんだよ。もう少しだけ待ってあげて」

 翼が大地を庇っている。
 どういう事だろう?
 そんな事を考えていると翼が心に語り掛けてきた。

「5月24日」

 あ、そういう事か。
 翼は大地の心を読んだらしい。
 そして翼に出来る事は天音にも出来る。

「まあ、そういうことならしょうがないな。あまり待たせるなよ」

 そう言って話は終わると思った。
 しかし天音はまだ大地に不満があるようだ。

「それにしても大地!お前は私に対する愛情が足りないんじゃないのか!?」
「な、なんでそうなるの?」
「水奈も美希もまだ乳が成長してるのに私はちっとも大きくならない!何かに書いてあったぞ!愛情をこめて揉んでもらわないと大きくならないって!」
「そ、そんなの科学的根拠がないだろ!」
「じゃあ、なにか?私はちっぱいのままだから諦めろといいたいのか!」

 どうやら天音はやはり飲み過ぎてるらしい。
 その後僕と善明と学も加勢して天音を宥めるのに尽力した。
 打ち上げが終るとそのまま次の店に……っていうものは殆どいない。
 疲れてるから帰って寝ようと思っているのだろう。
 僕達も代行で家に帰ると荷物を片付けて風呂に入って寝る事にした。

「ねえ、空」

 ベッドの中で美希が声をかけた。

「どうしたの?」
「空も子供が欲しいと思ったことはないの?」

 いつか言われるだろうなとは思っていた。
 どうすればいいか父さんに聞いていた。

「美希。世の中試用期間っていう物があるらしいんだ」
「私が試されてるって事?」
「そうじゃないよ」

 こうして同棲してお互いの事をよくわかった上で納得すれば結婚すればいい。
 僕だって就職して美希を養うだけの力が欲しい。
 子供を作るとなればなおさらだ。

「だからせめて大学卒業して就職してから自信がついたら美希に伝えるよ」
「翼や天音に先を越されてもいいの?」
「それって競い合う物じゃないだろ?」

 それぞれの幸せがあるんだから。

「父さんもそうやって皆が学生婚する中、最後に卒業してからプロポーズしたらしいよ」
「……あまり待たせないでね」
「分かってる。じゃ、寝ようか。もう疲れたよ」
「そうだね」

 美希は返事をすると明かりを消した。
 どうせ、ゴールは同じところにあるんだ。
 不思議とそんな予感がしていた。

(2)

 彼と付き合い始めてやっとデートに誘ってもらう事が出来た。

「今度の連休に映画を見に行かない?」

 普通のデートだとその時は思った。
 今までただ一緒に登下校して、家でチャットしてるだけの彼にしてみたら大きな前進だ。
 それはもう、私だって嬉しくて仕方なかった。
 私の事そんなに好きじゃないのかな?って思うようになってた頃だから。

「何時にどこで待ち合わせ?」
「ああ、9時に家に迎えに行くよ」

 まあ、そんなに離れてないしそれもありか。
 私は浮かれながらどんな服着ていこうか?お化粧もちゃんとしないとね。とか考えていた。
 当日家の前にテレビでしか見た事無いようないかにも高級車っぽいのが止まった。
 降りて来たのは黒いサングラスをかけたお兄さん。

「江東安津様のお迎えに参りました」

 どうやら彼の使いらしい。
 私は靴を履いて家を出ると、車の後部座席に誘導される。
 車に乗ると隣には私服姿の彼がいた。

「ちょっと早かった?」
「い、いや。そんなこと無いけど……」

 高校生のお出迎えじゃないよこれ。
 車は街のSAPの映画館についた。
 不思議だった。
 スタッフはいるから開いているのだろうけど客が1人もいない。
 皆視聴中?
 それに、入口に「ご予約中」と看板が出ている。
 彼は事情を知っているのか?

「ああ、僕達の為だけに予約しておいた」

 はい?
 ちなみに彼の家は如月家。
 地元では名家の一つだ。
 最近やたらと勢力を伸ばしている。
 まあ、彼の家なら映画館を丸ごと予約くらいわけないのだろうな。
 映画を見た後はランチを食べて……ランチからフレンチですか?
 後はデパートを回って買い物を……高校生が着るようなものじゃないパーティドレスなんかを買ってもらえた。
 年末にどうせパーティに出席するから持っておいて損はない。
 そう説得された。
 そして夜になるとディナー。
 高級ホテルの最上階を予約していた。
 それも店ごと。
 何だろう、この違和感。
 確かに丁重にもてなしてくれてはいるけど、何か違う。
 私が求めていたデートはこんなものじゃない。
 それに彼の言動も気になる。
 どことなく見下されている感じがする。
 そして食事が終ると彼がテーブルの上に小箱を置いた。

「はい、指のサイズ違ってたら交換させるから」

 はい?
 指のサイズって事はひょっとしなくても……指輪?

「ほら、俺達付き合ってるって事は来年は結婚でしょ?一応求婚くらいしとけって親に言われてさ」

 求婚くらい?
 親にしとけって言われた?

「この物語にバッドエンドはない。だから安津の返事も聞くまでもないだろ?後は親に結婚までの段取りを……」

 バン!

 私は両手でテーブルを叩きつけて立ち上がると、グラスに入っていた水を彼にかけた。

「ふざけるな!こんな真似すればすぐ靡くとでも思った!?今日一日あんたといて気になっていたけどやっとわかった!あんた私の事馬鹿にしてるでしょ!?」
「どうしたんだよ。そんなに怒ることないだろ?これでも精一杯もてなしてやったつもりだぞ?」

 もてなしてやった?

「その上から目線がムカつく!もういい!私帰る!金輪際私に関わらないで!」
「ちょ、ちょっと落ち着けよ!?」
「バッドエンドがない?今作ってあげる!初めてのデートだから期待してたのに!理解できる?あんたは失敗したの!」

 こんな屈辱初めてだ。
 だけど、せめてこいつの前から去るまでは泣いてやるもんか!

「ま、待てよ。せめて送るよ」
「結構です!構わないで!」

 そのまま私はホテルを出てバス停に向かってバスを待つ。
 既に涙が滲んでいた。
 初めての彼氏があいつだったことが私のミス。

「……最低」

 私は一人バスに乗り込むと家に帰った。

(3)

 ある時、つまらない事で宏伸と衝突し、もう一ヶ月も口を聞いてない。こんな時、どうすれば良い?
 と、言う相談を江口憂花から受けていた。

「あきらめたら?」

 そう言う他にないでしょ。
 他に手立てある?
 しょうもない事で喧嘩して一月も放っておいた挙句今は連休。
 打つ手なしだね。

「そこをなんとかならないかな?」
「……電話はしたの?」
「したけどつながらない」

 どうやら着信拒否をされているらしい。
 ……全く面倒事を持って来る。
 しかたないから私のつてを使って憂花の彼氏の如月宏伸と連絡を試みる。
 すると宏伸の親戚の天から返事が来た。

「あいつ今デート中らしいぞ」
「え?」

 だって憂花は今私に相談してるんだけど。

「なんか彼女と喧嘩したって機嫌悪かったし、新しい女でも作ったんじゃね?」

 すごく他人事のように言う天。
 まあ、天を責めてもしょうがない。
 残酷な現実を憂花に通告した。

「嘘だよね!?嘘でしょ!?」

 なかなか現実を受け止められられない憂花。
 まあ、私も他人事だけど一高校生にしか過ぎない私が憂花にかけてあげられる言葉はそんなにない。

「またいい人に出会えるよ」

 その後憂花は連休中ずっと落ち込んでいたらしい。
 悲惨な連休をすごしたようだ。
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