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限界突破
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(1)
「恋!」
「学!」
俺と水奈が病院に駆けつけると恋が待っていた。
泣いている恋に事情を聞きながら病室に向かう。
恋と大原要は合格祈願のために宇佐神宮に行っていた。
その帰りにファミレスに寄った時、年上の男に絡まれたらしい。
「お前らがSHか?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
要が聞くと、男は何も言わずに持っていたジョッキで要を殴り飛ばした。
ガラスを突き破って外までぶっ飛ばされたらしい。
「要!」
なおも要に暴行を加える男を恋は止めようとしたらしい。
すると男は恋を殴り飛ばした。
その証拠に恋の頬に湿布が張られてある。
「お前……何者だ?」
FGの犯行とは思えなかった要は男に聞いたらしい。
この手の輩はそれがまるでステータスかのようにすぐ名乗るそうだ。
「九頭竜會会長、那智八尋だ。SHだか何だか知らんが田舎者が調子に乗ってんじゃねーぞ」
その後も要の意識が気絶しても警官が駆け付けるまで暴行を加えたらしい。
そして今もなお、要の意識は回復していない。
九頭竜會の素性は片桐茜が調べていた。
九州全体にまで及ぶ大規模な暴走族。
いくつかのグループを取りまとめる存在らしい。
「今回だけは報復なんて馬鹿な真似はやめなさい」
看護師の母さんから忠告があった。
しかしそれで片桐天音の気が収まるはずがない。
「天音、どうする?」
遊が天音に聞いていた。
「どうするもこうするもねーだろ」
天音はやる気だった。
「天音、また喧嘩なの?」
恋は不安そうに天音に聞いた。
「喧嘩ですませられるか。そいつらは”SH上等”って啖呵切ったんだ。全員塵に変えてやる」
天音の我慢の限界なんてものがあるのかどうか知らないが本気で怒っているらしい。
SHのグルチャでもほとんどの者がやる気でいた。
俺はそれを抑える役割。
もちろん俺自身九頭竜會とやらを放っておくつもりは無かった。
やりすぎるな。
受験生は手を出すな。
その程度の忠告だった。
さすがに光太も今回は慎重にならざるを得ない。
「まずは、空の判断を待て!」
それが光太の決断だった。
それを見た天音はすぐに叫ぶ。
「空!ここで止めとけなんてふざけた事言ったらお前もぶっ殺すぞ!」
そう言って振り返る天音。
しかし空の姿はない。
「そういえば”ちょっとお手洗い”と言ってから戻ってこない」
美希がそう言った。
俺と水奈が要の病室に来る時にはいなかった。
それが何を意味するのか天音でなくてもすぐに分かった。
天音は慌てて茜に電話する。
「茜!空から電話なかったか?」
「さっき実家に帰ってきて”アレ”を持って出かけたけど……天音達一緒じゃないの?」
空は地元にいる九頭竜會の末端の根城を聞いてきたらしい。
茜はすぐに調べて空に伝えた。
てっきりSH総出で復讐するのだと思っていたらしい。
「茜!それはどこだ!?」
中津の某所をたまり場にしているらしい。
「学、私達も急ごう。ヤバすぎる!」
天音の言う「ヤバすぎる」は空と翼の事じゃない。
先月片桐家は不幸事があってただでさえ不安定だった。
きっと手加減なんてものは置いてきただろう。
文字通りSHの逆鱗に触れた。
天音の処刑ですら生温いと思えるほどの事態になりかねない。
「恋は要の側にいてやれ」
遊が恋に言い聞かせる。
「遊達も気をつけてね。きっとなずなも……」
「わかってるよ」
「学、私達も」
「そのつもりだ」
そうして茜の言った場所に向かった。
しかしもう手遅れだと気づいたのは現地に辿り着いた時だった。
燃え盛る単車や車。
それはまさに地獄絵図だった。
(2)
俺が現地に辿り着くと、いかにもなチンピラが溜まっていた。
父さんから借りた”紅月”を持ってそいつらに近づく。
俺に気付いたチンピラの一人が近づいてきた。
「なんだお前?」
とりあえず聞いてみるか。
「那智八尋っていうのはお前か?」
「うちの会長に用があるのか?」
「お前がそうなのかと聞いてるんだ」
「ちげーよ。会長になんか用があるのか?」
大体お前何者だ?
男がそう言うと俺は無言でそいつを殴り飛ばした。
「俺はSHだ。理解したらさっさとそいつを連れてこい」
そういうと騒いでいた雑魚共も静かになった。
「そのSHさんがうちの会長に何の用だ?」
「いいからさっさと連れてこい」
「お前ら如き田舎者に付き合ってる程会長も暇じゃねーんだよ!」
ここにはいないようだ。
何かお土産でも残しておくか。
俺は紅月を抜くと、雑魚共に向かって叫ぶ。
「お前らの会長とやらがしでかした代償を清算させてやる。無事に生きて帰れると思うなよ!」
すると雑魚共は俺達を取り囲む。
「ただで返してもらえると思ってないだろうな?」
雑魚が言う。
「人の話聞いてないのか?今さら謝っても遅いからな」
すると雑魚が襲い掛かって来た。
一斉に襲ってきたところで精々接触するのは4~5人。
そのくらいどうってことない。
紅月を一振りする度にそのくらいの人数を裁ける。
俺はこいつらを皆殺しにすると言った。
聞こえてくるのはこいつらの悲鳴だけ。
そんな状況を見ていた残りの雑魚は戦意喪失していた。
逃げ出そうと単車や車に乗り込もうとする。
それを引っぱりだして、肩に紅月を突き刺す。
車で逃げ出そうとする奴にむかって雑魚から奪った鉄パイプを投げつける。
鉄パイプが車に突き刺さり爆発して炎上する。
それでも逃げようとするやつらを一睨みすると全員気絶する。
その程度の雑魚しか残っていなかったのか。
俺の怒りはそれだけではとどまらない。
止まっていた連中のバイクや車が勝手に爆発を始める。
「あ、悪魔……」
「八尋とやらはその悪魔を怒らせたんだ。逃げ道は地獄しかない。もう諦めろ」
俺が冷淡に告げた。
何台かの車が駆け付けた。
敵の増援?
車のシルエットが分かるとそれが天音達だと分かった。
その頃には大体片付いていたけど。
車から降りた天音達が俺と翼に言う。
「ふざけんな、空だけでスッキリしようなんてずるいぞ!」
「それなら心配ない」
俺がそう言ったのは別の車とバイクの音が聞こえてきたから。
今度こそ間違いなくこいつらの増援のようだ。
「空は大人しくしてろ!私達にも取り分よこせ!」
「水奈、俺の側から離れるな」
「雑魚ごときどーってことねーよ」
「妻の心配をしてる夫の身にもなってくれ」
「翼も下がってておくれ、美希の顔に返り血でもつこうものなら大事件になる」
きっと地元以外は炎につつまれるだろうな。
そしてのこのこと現れた増援を天音たちが始末した。
最後の一人を取り囲む。
「言い残すことはあるか?」
俺が聞いた。
「てめーらこんなことしてただで済むと思ってんじゃねーだろうな?」
「それだけか?……じゃあ死ね」
手に持っていた紅月を振り降ろそうとすると学が手を掴んだ。
「こちらからの忠告ぐらい伝えた方がいいんじゃないか?」
確かに一々会長とやらを探すのは面倒だ。
「おまえらの頭に伝えろ。俺達に仕掛けたらどうなるとくと教えてやる」
俺が男に伝えると男は逃げ出した。
そしてそのタイミングでパトカーがやって来た。
「空、それ持ってると厄介だから」
翼が言うので紅月を隠す。
パトカーから降りて来た警察の尋問を受ける。
「今夜は寒いから温まりたいと思ったら、キャンプファイアやってたから来てみたらこの有様でした」
そんな天音の言い訳が通用するわけがなく、俺達は署に連行された。
俺達は加害者扱いされた。
まあ、その通りなんだけど。
すると天音が思い出したかのように言った。
「渡瀬新次郎って人と連絡して欲しいんだけど」
刑事は取調室を出ると連絡を取っていた。
そして戻ってくると「もう行っていいぞ」と言った。
それからみんなで地元に帰る。
もちろんこれで終わらせるつもりはなかった。
帰る際に俺と翼と天音は……。
ぽかっ
「もう十分暴れたからいいでしょ?落ち着きなさい」
翼がそう言うと僕は実家に呼び出される。
渡瀬新次郎は県警本部長。
そして母さんの方のお爺さんの元部下。
当然母さん達にこの件は伝えられていた。
「何をしているのですか!翼も天音も女の子でしょ!!」
そんな光景を父さんは笑ってみてた。
(3)
「善明!!あなた何やってるの!!」
僕は母さんに呼び出されて、翼と2人で実家に帰ってきていた。
九頭竜會とやらに仕掛けるより恐怖を覚えたけどね。
そして僕は母さんに怒られた。
戦闘行為自体を怒られたんじゃない。
その場に翼がいた事が問題だった。
極力翼が直接戦闘しないでいいように配慮していたんだけどね。
ただこればっかりはどうにもならなかった。
突然の招集。
しかし今は1月。
当然寒い。
しかし翼は十分な防寒をしていなかった。
「あなた、大事な嫁に風邪でも引かせるつもり!?」
九頭竜會とやらの惨事より翼の体調の方が重要らしい。
大地も言われたそうだ。
「天音ちゃんに何かあったらでは遅いの!そういう事は兵隊を使いなさい!!」
根こそぎ刈り取ってやるから。
UAVの使用も許可された。
SHの、渡辺班の、片桐家の逆鱗に触れたらとんでもない事になるようだ。
家に帰ってゆっくりしている間も今後の方針を相談していた。
「九州を地獄に変えてやる!」
天音が言う。
多分その気になればできるだろう。
しかし空は冷静だった。
戦闘状況の空は何でもありだったらしい。
車に目掛けて投げつけた鉄パイプから稲光が見えたとか。
やはりSH最強の名前は空にふさわしいようだ。
皆は「さすが空の王!」って揶揄っているけど
そのうち時を止めるとかやらかすんでないかい?
言っとくけど、これ恋愛小説だよ。
空がたてた作戦はこうだ。
「しらみつぶしに拠点を潰して、頭をあぶりだす」
九州最強と名乗るくらいの組織だ。
絶対に何らかの反応を示すだろう。
それを二度と逆らう事が出来ないくらいに叩きのめす。
しかし、僕らの人数では一度にいくつも拠点を潰すのは不可能だ。
だから僕と大地の家の兵隊も利用する。
周りに何もないなら爆撃も辞さない。
大学生の発想じゃないよ、空。
問題はその後だ。
誰が八尋を叩きのめすか?
「空は十分暴れたからいいだろ!大将は私の物だ!!」
「SHのリーダーは空。だから頭同士でケリをつけたらいい」
天音と翼の意見が平行線だった。
「どうせ袋にするつもりだからどうでもいいよ」
空はあっさり片付けた。
「まあ、王様がそう言ってるんだからそれでいこうぜ。最初に一発だけ天音が譲ってもらえばいいじゃん」
遊が言うと天音はそれで納得したようだ。
しかしようやく地元でSHに逆らう愚か者がいなくなったと思ったら今度は九州かい。
そのうち日本全土を焼き払ってやるとか天音が言わないよう祈るばかりだよ。
「恋!」
「学!」
俺と水奈が病院に駆けつけると恋が待っていた。
泣いている恋に事情を聞きながら病室に向かう。
恋と大原要は合格祈願のために宇佐神宮に行っていた。
その帰りにファミレスに寄った時、年上の男に絡まれたらしい。
「お前らがSHか?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
要が聞くと、男は何も言わずに持っていたジョッキで要を殴り飛ばした。
ガラスを突き破って外までぶっ飛ばされたらしい。
「要!」
なおも要に暴行を加える男を恋は止めようとしたらしい。
すると男は恋を殴り飛ばした。
その証拠に恋の頬に湿布が張られてある。
「お前……何者だ?」
FGの犯行とは思えなかった要は男に聞いたらしい。
この手の輩はそれがまるでステータスかのようにすぐ名乗るそうだ。
「九頭竜會会長、那智八尋だ。SHだか何だか知らんが田舎者が調子に乗ってんじゃねーぞ」
その後も要の意識が気絶しても警官が駆け付けるまで暴行を加えたらしい。
そして今もなお、要の意識は回復していない。
九頭竜會の素性は片桐茜が調べていた。
九州全体にまで及ぶ大規模な暴走族。
いくつかのグループを取りまとめる存在らしい。
「今回だけは報復なんて馬鹿な真似はやめなさい」
看護師の母さんから忠告があった。
しかしそれで片桐天音の気が収まるはずがない。
「天音、どうする?」
遊が天音に聞いていた。
「どうするもこうするもねーだろ」
天音はやる気だった。
「天音、また喧嘩なの?」
恋は不安そうに天音に聞いた。
「喧嘩ですませられるか。そいつらは”SH上等”って啖呵切ったんだ。全員塵に変えてやる」
天音の我慢の限界なんてものがあるのかどうか知らないが本気で怒っているらしい。
SHのグルチャでもほとんどの者がやる気でいた。
俺はそれを抑える役割。
もちろん俺自身九頭竜會とやらを放っておくつもりは無かった。
やりすぎるな。
受験生は手を出すな。
その程度の忠告だった。
さすがに光太も今回は慎重にならざるを得ない。
「まずは、空の判断を待て!」
それが光太の決断だった。
それを見た天音はすぐに叫ぶ。
「空!ここで止めとけなんてふざけた事言ったらお前もぶっ殺すぞ!」
そう言って振り返る天音。
しかし空の姿はない。
「そういえば”ちょっとお手洗い”と言ってから戻ってこない」
美希がそう言った。
俺と水奈が要の病室に来る時にはいなかった。
それが何を意味するのか天音でなくてもすぐに分かった。
天音は慌てて茜に電話する。
「茜!空から電話なかったか?」
「さっき実家に帰ってきて”アレ”を持って出かけたけど……天音達一緒じゃないの?」
空は地元にいる九頭竜會の末端の根城を聞いてきたらしい。
茜はすぐに調べて空に伝えた。
てっきりSH総出で復讐するのだと思っていたらしい。
「茜!それはどこだ!?」
中津の某所をたまり場にしているらしい。
「学、私達も急ごう。ヤバすぎる!」
天音の言う「ヤバすぎる」は空と翼の事じゃない。
先月片桐家は不幸事があってただでさえ不安定だった。
きっと手加減なんてものは置いてきただろう。
文字通りSHの逆鱗に触れた。
天音の処刑ですら生温いと思えるほどの事態になりかねない。
「恋は要の側にいてやれ」
遊が恋に言い聞かせる。
「遊達も気をつけてね。きっとなずなも……」
「わかってるよ」
「学、私達も」
「そのつもりだ」
そうして茜の言った場所に向かった。
しかしもう手遅れだと気づいたのは現地に辿り着いた時だった。
燃え盛る単車や車。
それはまさに地獄絵図だった。
(2)
俺が現地に辿り着くと、いかにもなチンピラが溜まっていた。
父さんから借りた”紅月”を持ってそいつらに近づく。
俺に気付いたチンピラの一人が近づいてきた。
「なんだお前?」
とりあえず聞いてみるか。
「那智八尋っていうのはお前か?」
「うちの会長に用があるのか?」
「お前がそうなのかと聞いてるんだ」
「ちげーよ。会長になんか用があるのか?」
大体お前何者だ?
男がそう言うと俺は無言でそいつを殴り飛ばした。
「俺はSHだ。理解したらさっさとそいつを連れてこい」
そういうと騒いでいた雑魚共も静かになった。
「そのSHさんがうちの会長に何の用だ?」
「いいからさっさと連れてこい」
「お前ら如き田舎者に付き合ってる程会長も暇じゃねーんだよ!」
ここにはいないようだ。
何かお土産でも残しておくか。
俺は紅月を抜くと、雑魚共に向かって叫ぶ。
「お前らの会長とやらがしでかした代償を清算させてやる。無事に生きて帰れると思うなよ!」
すると雑魚共は俺達を取り囲む。
「ただで返してもらえると思ってないだろうな?」
雑魚が言う。
「人の話聞いてないのか?今さら謝っても遅いからな」
すると雑魚が襲い掛かって来た。
一斉に襲ってきたところで精々接触するのは4~5人。
そのくらいどうってことない。
紅月を一振りする度にそのくらいの人数を裁ける。
俺はこいつらを皆殺しにすると言った。
聞こえてくるのはこいつらの悲鳴だけ。
そんな状況を見ていた残りの雑魚は戦意喪失していた。
逃げ出そうと単車や車に乗り込もうとする。
それを引っぱりだして、肩に紅月を突き刺す。
車で逃げ出そうとする奴にむかって雑魚から奪った鉄パイプを投げつける。
鉄パイプが車に突き刺さり爆発して炎上する。
それでも逃げようとするやつらを一睨みすると全員気絶する。
その程度の雑魚しか残っていなかったのか。
俺の怒りはそれだけではとどまらない。
止まっていた連中のバイクや車が勝手に爆発を始める。
「あ、悪魔……」
「八尋とやらはその悪魔を怒らせたんだ。逃げ道は地獄しかない。もう諦めろ」
俺が冷淡に告げた。
何台かの車が駆け付けた。
敵の増援?
車のシルエットが分かるとそれが天音達だと分かった。
その頃には大体片付いていたけど。
車から降りた天音達が俺と翼に言う。
「ふざけんな、空だけでスッキリしようなんてずるいぞ!」
「それなら心配ない」
俺がそう言ったのは別の車とバイクの音が聞こえてきたから。
今度こそ間違いなくこいつらの増援のようだ。
「空は大人しくしてろ!私達にも取り分よこせ!」
「水奈、俺の側から離れるな」
「雑魚ごときどーってことねーよ」
「妻の心配をしてる夫の身にもなってくれ」
「翼も下がってておくれ、美希の顔に返り血でもつこうものなら大事件になる」
きっと地元以外は炎につつまれるだろうな。
そしてのこのこと現れた増援を天音たちが始末した。
最後の一人を取り囲む。
「言い残すことはあるか?」
俺が聞いた。
「てめーらこんなことしてただで済むと思ってんじゃねーだろうな?」
「それだけか?……じゃあ死ね」
手に持っていた紅月を振り降ろそうとすると学が手を掴んだ。
「こちらからの忠告ぐらい伝えた方がいいんじゃないか?」
確かに一々会長とやらを探すのは面倒だ。
「おまえらの頭に伝えろ。俺達に仕掛けたらどうなるとくと教えてやる」
俺が男に伝えると男は逃げ出した。
そしてそのタイミングでパトカーがやって来た。
「空、それ持ってると厄介だから」
翼が言うので紅月を隠す。
パトカーから降りて来た警察の尋問を受ける。
「今夜は寒いから温まりたいと思ったら、キャンプファイアやってたから来てみたらこの有様でした」
そんな天音の言い訳が通用するわけがなく、俺達は署に連行された。
俺達は加害者扱いされた。
まあ、その通りなんだけど。
すると天音が思い出したかのように言った。
「渡瀬新次郎って人と連絡して欲しいんだけど」
刑事は取調室を出ると連絡を取っていた。
そして戻ってくると「もう行っていいぞ」と言った。
それからみんなで地元に帰る。
もちろんこれで終わらせるつもりはなかった。
帰る際に俺と翼と天音は……。
ぽかっ
「もう十分暴れたからいいでしょ?落ち着きなさい」
翼がそう言うと僕は実家に呼び出される。
渡瀬新次郎は県警本部長。
そして母さんの方のお爺さんの元部下。
当然母さん達にこの件は伝えられていた。
「何をしているのですか!翼も天音も女の子でしょ!!」
そんな光景を父さんは笑ってみてた。
(3)
「善明!!あなた何やってるの!!」
僕は母さんに呼び出されて、翼と2人で実家に帰ってきていた。
九頭竜會とやらに仕掛けるより恐怖を覚えたけどね。
そして僕は母さんに怒られた。
戦闘行為自体を怒られたんじゃない。
その場に翼がいた事が問題だった。
極力翼が直接戦闘しないでいいように配慮していたんだけどね。
ただこればっかりはどうにもならなかった。
突然の招集。
しかし今は1月。
当然寒い。
しかし翼は十分な防寒をしていなかった。
「あなた、大事な嫁に風邪でも引かせるつもり!?」
九頭竜會とやらの惨事より翼の体調の方が重要らしい。
大地も言われたそうだ。
「天音ちゃんに何かあったらでは遅いの!そういう事は兵隊を使いなさい!!」
根こそぎ刈り取ってやるから。
UAVの使用も許可された。
SHの、渡辺班の、片桐家の逆鱗に触れたらとんでもない事になるようだ。
家に帰ってゆっくりしている間も今後の方針を相談していた。
「九州を地獄に変えてやる!」
天音が言う。
多分その気になればできるだろう。
しかし空は冷静だった。
戦闘状況の空は何でもありだったらしい。
車に目掛けて投げつけた鉄パイプから稲光が見えたとか。
やはりSH最強の名前は空にふさわしいようだ。
皆は「さすが空の王!」って揶揄っているけど
そのうち時を止めるとかやらかすんでないかい?
言っとくけど、これ恋愛小説だよ。
空がたてた作戦はこうだ。
「しらみつぶしに拠点を潰して、頭をあぶりだす」
九州最強と名乗るくらいの組織だ。
絶対に何らかの反応を示すだろう。
それを二度と逆らう事が出来ないくらいに叩きのめす。
しかし、僕らの人数では一度にいくつも拠点を潰すのは不可能だ。
だから僕と大地の家の兵隊も利用する。
周りに何もないなら爆撃も辞さない。
大学生の発想じゃないよ、空。
問題はその後だ。
誰が八尋を叩きのめすか?
「空は十分暴れたからいいだろ!大将は私の物だ!!」
「SHのリーダーは空。だから頭同士でケリをつけたらいい」
天音と翼の意見が平行線だった。
「どうせ袋にするつもりだからどうでもいいよ」
空はあっさり片付けた。
「まあ、王様がそう言ってるんだからそれでいこうぜ。最初に一発だけ天音が譲ってもらえばいいじゃん」
遊が言うと天音はそれで納得したようだ。
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