姉妹チート

和希

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里帰り

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「よお、兄貴」

 地元空港に着くと、弟の勝次が出迎えていた。
 それは良いけど、隣にいる少女は誰だ?
 見た感じからして女子高生くらいの年齢だと思うが。

「きーちゃん妹いたの?」

 一緒に地元に来た環奈が尋ねて来た。
 いる事はいるが、妹ではなさそうだ。
 俺が勝次に尋ねると、勝次は答えた。

「ああ、俺の連れ。中村加奈子」
「はじめまして~、加奈子でいいです」

 加奈子がそう言うと俺も自己紹介して環奈を紹介した。

「きーちゃんの妻の環奈です」

 環奈はにこりと笑って言った。
 今までにも環奈はそう名乗っていたが、未だにこそばゆいものがある。
 勝次も驚いていたようだ。

「兄貴が結婚したって親から聞いていたけど本当だったんだな」
「まあな……」

 実際大変だったが。

「どこの馬の骨とも知れない小娘に大事な跡取り息子の嫁がつとまるはずがありません」

 母さんがそう言って大反対した。
 だが、USEは石原グループ……江口グループの系列だ。
 圧力をかけて無理矢理認めさせた。
 今日初めて両親に環奈を紹介する。
 流石に気が重い。

「マジだったんだ。ヤバくない勝次!本物の芸能人だよ」

 加奈子が大声で言うと周りの目を引く。
 帽子を被ったりグラサンをかけた方がいいんじゃないかと、言ってみたけど「そっちの方がかえってあやしいでしょ?」と環奈は笑った。
 しかしここは田舎。
 空港とはいえ、そんなに人がいるわけでもない。
 他人の視線がこっちに集まってくるのが分かった。
 
「勝次、行くぞ」
「ああ……その方がいいみたいだな」

 勝次も異変に気付いたのか、俺達を車に案内する。
 勝次の車はセダンだったがやはり田舎っぽい改造をしていた。
 窓ガラスにもスモークを張っていたので助かったけど。
 俺の隣に座った環奈は初めて見る地元の景色に感動していた。
 その間に勝次に地元の状況を聞く。
 FGの衰退。他の暴走族やギャングの出現。
 勝次たちは雪華団というSH直下の暴走族とやりあってるらしい。
 ギャングの方も協定を結んだ創世神がSHと真っ向からやりあってるらしい。
 馬鹿な真似を……。

「勝次はSHに手を出してないだろうな?」
「言われたとおりにやってるけどよ、竜也が……」

 因縁の相手ってことか。
 俺はため息を吐いた
 そんな勝次とのやりとりをいつの間にか環奈が聞いていた。

「きーちゃん本当にやんちゃやってたんだね」

 やんちゃの一言で済ませる環奈も凄いと思うけど。

「SHさえいなければ喜一先輩の天下だったんだよ」

 加奈子が言う。
 そのSHが一番厄介なんだが。

「そんなに物騒な集団やったの?SHって……」

 そういや環奈にSHについてちゃんと説明したこと無かったな。

「小学校の頃からの因縁の相手だよ」
「ふーん、大変やったんやね」

 あまり関心がないらしい。
 ただ、そんな物騒なグループ抜けて正解だったという。
 地元を知らない環奈だから言えるんだろうな。

「SHは今何してるんだ?」
「俺達を相手にしている場合じゃないらしいぜ」

 勝次が答えた。
 何でも九州最大の組織の九頭竜會に真っ向から対決したらしい。
 先に手を出したのは九頭竜會。
 馬鹿な事を……
 市内に入ると懐かしい光景が見えて来た。
 高速から見下ろす別府の夜景。
 環奈も気に入ったらしい。
 スマホで写真を撮ろうとしていたけど、トンネルが多いからタイミングが難しい。
 困ってる環奈に声をかけてやった。

「何日か滞在する時間はあるんだろ?」
「うん、社長が地元も良い所いっぱいあるからきーちゃんに案内してもらえって」
「それなら俺も冬休みだし、加奈子も暇してるから案内するよ」

 勝次が言う。
 さすがに東京から車を持ってきてるわけじゃない。
 そもそも東京で車を買った事を後悔している。
 夕食は実家で用意してるらしいからそのまま実家に向かう。
 
「おかえり」

 母さんが玄関で出迎えてくれた。
 勝次と加奈子も家による。
 久しく会ってなかったからか、単に俺の嫁に興味があったのか妹の紗奈もやって来た。

「うわ、本物だ。あとでサインもらっていいですか?」

 紗奈が驚いていた。

「なんなら一緒に写真とる?」

 環奈は余裕があるらしい。
 それとも俺の家族だから特別待遇してるのだろうか。

「まあ、まずは皆家に上がって」

 母さんに言われる通り俺は家に上がると、環奈を連れて自分の部屋に戻ると荷物を置いてダイニングにむかう。
 ダイニングには父さんが先に待っていた。
 父さんに環奈を紹介すると席に着く。
 俺の隣に環奈が座る。
 すると環奈が親に見えないところで俺の手を握っていた。
 やはり夫の両親に初対面というのは緊張するらしい。

「心配するな」

 婚姻届を出したのに今さら覆すことはないだろう。

「うん」

 そんな不安気な環奈に気付いた父さんは環奈に声をかけていた。

「地元は初めてなのかい?」
「はい」
「東北はもう雪がすごいんだろう?」
「そうですね……」
「そんなに緊張することはない。ざっくばらんに話したいから家にしたんだ」

 そうして初めての夕食が始まった。
 最初は戸惑っていた環奈だけど、紗奈や加奈子と打ち解けて行ったらしい。
 年頃の女性のように明るく振舞っていた。
 そういや友達が少なかったんだっけ。
 食事が済むと先に環奈達から風呂に入るように言った。

「きーちゃん、今夜紗奈達と寝てもいいかな?」

 余程気に入ったらしい。

「いいよ。長旅で疲れてるだろうから、あまり遅くなるなよ」
「うん」
「じゃあ、喜一の事を一から十まで教えてあげる」
「……あまり変な事吹き込まないでくれ」
「身から出た錆だから観念しなよ」

 そう言って女性陣は部屋に行った。
 
「兄貴……、風呂の後にちょっといいか?」
 
 どうしたんだろうか?
 何かもめ事か?

「わかった……」

 風呂に入ると勝次の部屋に行く。
 どこから持って来たのか分からない標識とか三角コーンとかが転がっているわけのわからない部屋。
 どこで入手したのか分からない日本刀とかもある。

「SHと揉めたのか?」
「それはない、あいつら今九頭竜會の頭をあぶりだそうと躍起になってるから」

 空達が出向いたり、石原家とかの兵隊を動員したり、無人爆撃機であぶり出したりやりたい放題やってるらしい。
 報復してくるのを待っているのだそうだ。
 
「下手に手を出すなよ。矛先がこっちにむかったらひとたまりもない」
「それは兄貴に言われたとおりにやってる」

 他に問題があるのだろうか?

「同じ男として兄貴に質問する。……彼女とキスってどうやってするんだ?」

 は?

「いや、加奈子から迫ってくるんだけど、流石にカッコつかないからこっちからしてやりたいんだが……」

 お前は小学生か。
 地元最大の組織の頭にしては随分と幼稚な悩みだな。

「勝次は自分から迫れば男が立つと思ってるのか?」
「違うのか?」

 勝次が聞いてくると俺は首を振った。

「お前がするべきことは加奈子がそういう気分になるような雰囲気を作ることだ」
「どうやって?」

 お前も地元の人間ならそういう場所くらい知ってるだろ?

「そうすればきっと加奈子の方から動いてくる。そしたらお前は黙って受け止めてやれ」
「な、なるほどな……」

 勝次は納得したらしい。
 キスもまだだったとはな。

「兄貴は環奈とどこまでいったんだ?」

 何を言い出すかと思えば。

「俺と環奈は夫婦だ。やることはやってるよ」

 USEの社長からも言われたしな。
 ちゃんとクリスマスイブの記念に済ませた。

「って事は俺は来年まで待った方がいいのか?」
「……別にバレンタインとか誕生日とかいくらでもあるだろ?」
「そうか……それにしても兄貴変わったな」

 東京に行って何があったのか気になったらしい。
 俺はあったことを話しているうちに日付が変わる頃になった。
 流石に疲れたので今日は寝ると言った。

「何日かいるんだろ?俺が足になるよ」
「悪いな……」
 
 そう言って自分の部屋に戻ると着替えている最中の環奈がいた。
 環奈は俺に気付いてちょっと恥ずかしがっていた。

「なんで環奈が俺の部屋にいるんだ?」
「……紗奈のベッドじゃ2人が限度だったから。きーちゃんは私と寝るの嫌?」
「今更そんな事聞いてどうするんだ?」
「それもそうだね」
 
 環奈が笑ってベッドに入る。
 俺もその後にベッドに入ると、環奈が抱き着いてくる。

「皆いい人だね」
「そう言うのは多分環奈だけだぞ」
「そうなの?」

 環奈は不思議そうにしている。
 そんな環奈の頭を撫でてやる。

「そろそろ寝よう。明日勝次が色々案内してくれるらしい」
「やった~」

 USEの本社にも挨拶しておかないとな。
 そうして俺の故郷での休息は始まった。
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