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何よりの喜び
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(1)
「おはよう、遊。これあげる」
なずなが俺を起こすと小箱を差し出した。
あ、そうか。
今日は2月14日。バレンタインだ。
「ありがとう」
なずなからチョコを受け取ると、すぐに開いて食べようとすると、なずながそれを制した。
「朝ごはんが先!それは家に帰ってからにして」
なずながそう言うのでとりあえずテーブルに置いておくことにした。
「あ、今日は帰り遅くなるから」
雪華団の集会がある。
本当は緊急時の時以外に参加しないようにSH組で決めてたんだけど、今がまさに緊急時だった。
九頭竜會の一件で要がやられて以来、SHの一方的な暴力は一月半ほど続いていた。
そろそろ何か仕掛けてくるはず。
その対象は多分雪華団も含まれるだろう。
相手は誰がSHなのか分からない。
だから雪華団のメンバーだった要を狙った。
俺達の役目は雪華団に九頭竜會が仕掛けてきたときに、すぐに空達に知らせる役目。
「お前らだけでやろうとすんなよ!最初の一発は私って決まってるんだからな!」
天音からも注意されていた。
多分雪華団が先に手を出したら天音の攻撃対象が雪華団に変わるだけ。
「何他人の獲物横取りしてんだ!!ふざけるな!」
そのくらい天音なら言うだろう。
「遊、バイトしてからそのまま行くんだよね?」
「ああ、そのつもりだけど」
「私は天音や翼と違って遊の足手まといになるからついていけない。でも忘れないで」
去年色々あったからなずなは心配で仕方がないらしい。
「ちゃんと帰ってくるから安心して」
「うん」
そう言って朝食を済ませるとバイトに行く。
大学はすでに春休みに突入していた。
今のうちに少しでも稼いでおきたい。
もちろん家の仕送りももらっていたけど今年は特別な年にするつもりだ。
同棲を始めて1年。
俺達も二十歳になる。
形で示してなずなを幸せにしてやりたい。
バイトが終わると雪華団の集会場所に行く。
粋達は先についていた。
真人達とも軽く雑談をしていつも通りに出発しようとすると、見慣れない一団がこっちに来るのに気づいた。
殴り込みか?
勝次達が仕掛ける事は多分ない。
真人は竜也が仕掛けてきたと思ったが、そうでもないようだ。
見慣れない特攻服の集団。
決め手はナンバーが県外の物だった。
やっと来たか。
粋に伝えると、粋はすぐにスマホで空達に連絡する。
その間にその集団に絡もうとする真人達を抑えていた。
「あいつらの狙いは雪華団じゃない」
「あいつらの事知ってるのか?」
真人が聞くと俺は頷いた。
そしてそいつらに向かって叫んだ。
「お前ら九頭竜會だな?」
そう言うと先頭にいた体格のいい男がバイクを降りた。
「片桐空ってのはお前か?」
「違う、今連絡してるところだ。すぐ来るよ」
少し待て。
雪華団には手を出すな。
「ふん、どうだっていい。どうせ生意気な田舎者は皆殺しにしてやる」
今までふざけた真似してきやがって。
「お前が八尋か?」
「ああ、そうだ」
「悪い事は言わない。あまり余計な真似をして、これ以上空達を怒らせるな」
「なんだと?」
これ以上下手に刺激したら後悔するのはお前らだぞ。
やんわりと忠告したつもりだった。
「あまり舐めるなよ。糞ガキ」
そう言うと八尋は突然殴りかかって来た。
俺はそれを躱す。
もちろん手を出さない。
天音より先に手を出したら俺が海に沈められてしまう。
しかし俺の配慮も虚しく、八尋の行動が雪華団に火をつけた。
真人が殴りかかろうとすると他のメンバーも襲い掛かった。
まずい事になった。
これだけの人数差があるのに乱闘になったら無傷ではすまない。
覚悟を決めるか。
粋の顔を見ると頷く。
だが、間に合ったようだ。
車の集団がたまり場に入って来た。
その場にいた九頭竜會も雪華団も動きがとまる。
車から降りて来たのは空と翼と天音と大地。他のSHのメンバーも揃っていた。
天音は九頭竜會の集団を見て言う。
「八尋って野郎はどいつだ?」
(2)
のこのこと釣られてきたと粋から連絡があった。
僕達は雪華団のたまり場の埠頭の側にあるファミレスで待機していた。
そして、メッセージを受けるとすぐに移動する。
「翼や、今回だけは大人しく車の中で待っていておくれ」
「私だって片桐家の娘だよ。善明は心配しすぎ」
少しは嫁のストレス解消を手伝ってよ。
本当に翼がストレスをためていたら僕が母さんに消されるけどね。
ストレス解消法としても随分間違っていると思うんだけど。
「それでも嫁が危険な真似をするのを容認できるほど薄情者じゃないんだ」
そんなのを許して、万が一翼がケガでもしたら地元が崩壊する。
「大丈夫。善明の背中を守るだけにしとくから」
そう言って翼は笑っている。
本当に面倒臭い状況になった。
埠頭に着くとにらみ合ってる二つの勢力。
今にも始まりそうな状況だ。
僕達は車を止めて車を降りる。
最初に発言したのは天音だった。
「八尋ってのはどいつだ?」
「俺だけど何か用があるのか?お嬢ちゃん」
するとすぐに八尋に向かって突進して殴り飛ばした。
「ふざけた真似しやがって!てめーら生きて帰れると思うなよ!」
「ふざけてるのはてめーらだろ……」
八尋が何か言おうとすると見た目はローファーな安全靴で顔を踏みつける。
「誰が喋っていいと許可した!?屑だかなんだか知らないけどてめーら全員ゴミクズにしてやる!」
「天音、最初の一発だけって約束しただろ?」
「その後は大人しくしてるなんて言ってないぞ!」
「ミニスカートでそういう行為は止めて欲しいんだけど」
「大地と一緒にいる時は見られても恥ずかしく無いようにちゃんとしたの穿いてるよ」
「そう言う問題じゃなくてね」
物騒なシーンに似合わないやり取りをしながらも、天音に近づく敵を片っ端から殴り飛ばす大地。
そこに粋や遊、水奈に祈、学が加わり乱闘が始まる。
もちろん雪華団も混ざっていた。
混乱した中で常にSHが優位に立っていられるのは片桐姉妹の能力のお蔭。
ライド・ギグ。
どんな戦況の集団戦闘であっても互いの情報をまとめて効率的に戦闘が出来るように指示を出すAWACSのような物。
それは指示を出すわけでもなく、脳に直接情報が送られてくる。
加えてなずなや花のような非力な者でも目の前の暴走族くらいなら軽くあしらうほどの戦闘能力を付与するまさにチート能力。
そんな理由で、どんな乱闘も一方的な虐殺に変わってしまう。
だから翼と空は冷静に戦況を見ていた。
空に至っては欠伸までしている。
しかしやる気ではあるようなのは手に持っている物騒な武器が物語っている。
「空の王はどんと構えてるだけでいいんだよ!」
天音の主張に従っているだけなのだろうか?
「空や、参加しなくていいのかい?」
僕が聞いてみると、少し考えていた。
「あの2人を生け捕りにしろ!」
そんな無謀な指示を九頭竜會が出していた。
特攻隊が生ぬるく感じるくらい無謀な挑戦だよ?
すると空は翼に何か言っている。
翼はただうなずいて集団に向かって手をかざす。
全力で嫌な予感がする。
そして予感は当たった。
翼の手のひらから何か光線のような物が射出され集団はもろに吹き飛ばされる。
空気の塊を生成して飛ばしているらしい。
言っとくけどこれラブストーリーだよ?
大人しくしてると思ったらこんなネタ考えていたのかい?
すると別の暴走族が乱入してきた。
その恰好からして勝次の暴走族の威堕天だという事は分かった。
「そんなに自殺したいならもろとも、皆殺しにしてやる」
すでに息の根が止まってそうな八尋をさらに痛めつけながら、天音が叫ぶ。
だが、勝次の目的は違っていたらしい。
バイクを降りると仲間に合図をして九頭竜會の連中に攻撃する。
「地元上等って言ってたららしいじゃねーか。クズ?上等だ馬鹿野郎!」
分かり合えるはずのない威堕天と手を組んで九頭竜會を私刑する。
逃げ出そうとバイクにまたがると、翼の攻撃が容赦なく飛ぶ。
それでも自分の足で逃走しようとする九頭竜會。
大勢が決まった頃、空は翼から離れてもう生きてるかどうかわからない八尋の側に行く。
「まあ、とどめくらい王様にさせてやるか」
天音がそう言って引く。
空は八尋を見おろすと一言告げる。
「何か言い残す事ある?」
当然気絶してる八尋が答えるはずがない。
それが天音の勘に触ったらしい。
「空の質問に返事しろ!気絶してましたなんて言い訳聞かねーぞ!」
天音がそう言って八尋の頭を蹴りつける。
「てめーら、このままで済むと思ってるんじゃねーだろうな」
代弁者がいた。
すぐに天音に処理されたけど。
「誰が勝手に喋って良いと許可した!?」
一向に意識を取り戻す気配のない八尋。
「……まあいいや。大地あと任せる」
空が言うと、大地の合図でがあらかじめ手配しておいた兵隊が入ってくる。
兵隊は八尋を含む九頭竜會のメンバーを全員普通に停泊していた輸送船に乗せる。
全員乗せたのを確認した輸送船は沖へと向かう。
明日の今頃には北の国にいるんじゃないかな?
やることを済ませると雪華団はドライブに、威堕天は何も言わずに去っていった。
「今日はお疲れ様。次の週末にでも打上やろう」
空が言うとSHも皆家に帰っていった。
(3)
スマホを見ていた。
遊の奴無茶しなければいいけど。
SHは前もって準備してるから間に合うと思うけど。
翼の能力は凄い。
戦況を把握して自分たちが優位に立てるように指示を出す。
その間に私達のような参加しても足手まといになるようなメンバーに戦況を報告している。
そして敵味方誰一人負傷者0という状況にして戦闘は終った。
遊も真っ直ぐ帰ってくるらしい。
夕飯は準備しておいた。
一人で食べるのは寂しいだろうと私も待っていた。
その間花や恋と話をしていた。
戦闘終了から30分くらいしてからドアのカギを開ける音が聞こえた。
私は玄関に向かった。
「ただいま……ってうわっ!」
私は遊を抱きしめていた。
「おかえりなさい」
遊が幻じゃないことをしっかりと確かめる。
「大丈夫だって言ったろ?」
そう言って遊が頭を撫でてくれる。
「ご飯まだでしょ?すぐに温めるから」
「待ってたの?」
「うん」
「遅くなって悪いな」
大丈夫。
今なら分かる気がするんだ。
ちゃんと帰ってきてくれることが何よりも喜び。
遊は約束をちゃんと守ってくれた。
夕飯を温めなおすと遊の話を聞きながらご飯を食べる。
「それにしても、空達どんどん規格外になってるな」
遊から聞いた話。
翼は大軍を謎の力で吹き飛ばしたらしい。
片桐家だから出来る技なのだろうか?
「あ、恋にも伝えておかないと」
「それは私がやっておくから早くお風呂入って来てよ」
「どうして?」
最後まで言わせないで。
私は寂しいんだよ?
そんな風に遊を見ていると遊は分かってくれたらしい。
「なずなから求めてくるなんて珍しいな」
「急いで入ってくる」と言って遊は着替えを準備して風呂に入る。
そして風呂を出るとすぐにベッドに入ろうとするが、動きが止まった。
「どうしたの?」
「いや、まだやる事あった」
何?
遊はテーブルに置いてあったチョコを食べ始める。
「……美味しいよ。ありがとう」
「お返し期待してるね」
「ああ、とりあえずは……」
そう言って私をベッドに招く。
これで私達SHに手を出す愚か者は全て排除した。
これ以上行方不明者が出ないことを祈りながら今は遊に甘えていた。
「おはよう、遊。これあげる」
なずなが俺を起こすと小箱を差し出した。
あ、そうか。
今日は2月14日。バレンタインだ。
「ありがとう」
なずなからチョコを受け取ると、すぐに開いて食べようとすると、なずながそれを制した。
「朝ごはんが先!それは家に帰ってからにして」
なずながそう言うのでとりあえずテーブルに置いておくことにした。
「あ、今日は帰り遅くなるから」
雪華団の集会がある。
本当は緊急時の時以外に参加しないようにSH組で決めてたんだけど、今がまさに緊急時だった。
九頭竜會の一件で要がやられて以来、SHの一方的な暴力は一月半ほど続いていた。
そろそろ何か仕掛けてくるはず。
その対象は多分雪華団も含まれるだろう。
相手は誰がSHなのか分からない。
だから雪華団のメンバーだった要を狙った。
俺達の役目は雪華団に九頭竜會が仕掛けてきたときに、すぐに空達に知らせる役目。
「お前らだけでやろうとすんなよ!最初の一発は私って決まってるんだからな!」
天音からも注意されていた。
多分雪華団が先に手を出したら天音の攻撃対象が雪華団に変わるだけ。
「何他人の獲物横取りしてんだ!!ふざけるな!」
そのくらい天音なら言うだろう。
「遊、バイトしてからそのまま行くんだよね?」
「ああ、そのつもりだけど」
「私は天音や翼と違って遊の足手まといになるからついていけない。でも忘れないで」
去年色々あったからなずなは心配で仕方がないらしい。
「ちゃんと帰ってくるから安心して」
「うん」
そう言って朝食を済ませるとバイトに行く。
大学はすでに春休みに突入していた。
今のうちに少しでも稼いでおきたい。
もちろん家の仕送りももらっていたけど今年は特別な年にするつもりだ。
同棲を始めて1年。
俺達も二十歳になる。
形で示してなずなを幸せにしてやりたい。
バイトが終わると雪華団の集会場所に行く。
粋達は先についていた。
真人達とも軽く雑談をしていつも通りに出発しようとすると、見慣れない一団がこっちに来るのに気づいた。
殴り込みか?
勝次達が仕掛ける事は多分ない。
真人は竜也が仕掛けてきたと思ったが、そうでもないようだ。
見慣れない特攻服の集団。
決め手はナンバーが県外の物だった。
やっと来たか。
粋に伝えると、粋はすぐにスマホで空達に連絡する。
その間にその集団に絡もうとする真人達を抑えていた。
「あいつらの狙いは雪華団じゃない」
「あいつらの事知ってるのか?」
真人が聞くと俺は頷いた。
そしてそいつらに向かって叫んだ。
「お前ら九頭竜會だな?」
そう言うと先頭にいた体格のいい男がバイクを降りた。
「片桐空ってのはお前か?」
「違う、今連絡してるところだ。すぐ来るよ」
少し待て。
雪華団には手を出すな。
「ふん、どうだっていい。どうせ生意気な田舎者は皆殺しにしてやる」
今までふざけた真似してきやがって。
「お前が八尋か?」
「ああ、そうだ」
「悪い事は言わない。あまり余計な真似をして、これ以上空達を怒らせるな」
「なんだと?」
これ以上下手に刺激したら後悔するのはお前らだぞ。
やんわりと忠告したつもりだった。
「あまり舐めるなよ。糞ガキ」
そう言うと八尋は突然殴りかかって来た。
俺はそれを躱す。
もちろん手を出さない。
天音より先に手を出したら俺が海に沈められてしまう。
しかし俺の配慮も虚しく、八尋の行動が雪華団に火をつけた。
真人が殴りかかろうとすると他のメンバーも襲い掛かった。
まずい事になった。
これだけの人数差があるのに乱闘になったら無傷ではすまない。
覚悟を決めるか。
粋の顔を見ると頷く。
だが、間に合ったようだ。
車の集団がたまり場に入って来た。
その場にいた九頭竜會も雪華団も動きがとまる。
車から降りて来たのは空と翼と天音と大地。他のSHのメンバーも揃っていた。
天音は九頭竜會の集団を見て言う。
「八尋って野郎はどいつだ?」
(2)
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僕達は雪華団のたまり場の埠頭の側にあるファミレスで待機していた。
そして、メッセージを受けるとすぐに移動する。
「翼や、今回だけは大人しく車の中で待っていておくれ」
「私だって片桐家の娘だよ。善明は心配しすぎ」
少しは嫁のストレス解消を手伝ってよ。
本当に翼がストレスをためていたら僕が母さんに消されるけどね。
ストレス解消法としても随分間違っていると思うんだけど。
「それでも嫁が危険な真似をするのを容認できるほど薄情者じゃないんだ」
そんなのを許して、万が一翼がケガでもしたら地元が崩壊する。
「大丈夫。善明の背中を守るだけにしとくから」
そう言って翼は笑っている。
本当に面倒臭い状況になった。
埠頭に着くとにらみ合ってる二つの勢力。
今にも始まりそうな状況だ。
僕達は車を止めて車を降りる。
最初に発言したのは天音だった。
「八尋ってのはどいつだ?」
「俺だけど何か用があるのか?お嬢ちゃん」
するとすぐに八尋に向かって突進して殴り飛ばした。
「ふざけた真似しやがって!てめーら生きて帰れると思うなよ!」
「ふざけてるのはてめーらだろ……」
八尋が何か言おうとすると見た目はローファーな安全靴で顔を踏みつける。
「誰が喋っていいと許可した!?屑だかなんだか知らないけどてめーら全員ゴミクズにしてやる!」
「天音、最初の一発だけって約束しただろ?」
「その後は大人しくしてるなんて言ってないぞ!」
「ミニスカートでそういう行為は止めて欲しいんだけど」
「大地と一緒にいる時は見られても恥ずかしく無いようにちゃんとしたの穿いてるよ」
「そう言う問題じゃなくてね」
物騒なシーンに似合わないやり取りをしながらも、天音に近づく敵を片っ端から殴り飛ばす大地。
そこに粋や遊、水奈に祈、学が加わり乱闘が始まる。
もちろん雪華団も混ざっていた。
混乱した中で常にSHが優位に立っていられるのは片桐姉妹の能力のお蔭。
ライド・ギグ。
どんな戦況の集団戦闘であっても互いの情報をまとめて効率的に戦闘が出来るように指示を出すAWACSのような物。
それは指示を出すわけでもなく、脳に直接情報が送られてくる。
加えてなずなや花のような非力な者でも目の前の暴走族くらいなら軽くあしらうほどの戦闘能力を付与するまさにチート能力。
そんな理由で、どんな乱闘も一方的な虐殺に変わってしまう。
だから翼と空は冷静に戦況を見ていた。
空に至っては欠伸までしている。
しかしやる気ではあるようなのは手に持っている物騒な武器が物語っている。
「空の王はどんと構えてるだけでいいんだよ!」
天音の主張に従っているだけなのだろうか?
「空や、参加しなくていいのかい?」
僕が聞いてみると、少し考えていた。
「あの2人を生け捕りにしろ!」
そんな無謀な指示を九頭竜會が出していた。
特攻隊が生ぬるく感じるくらい無謀な挑戦だよ?
すると空は翼に何か言っている。
翼はただうなずいて集団に向かって手をかざす。
全力で嫌な予感がする。
そして予感は当たった。
翼の手のひらから何か光線のような物が射出され集団はもろに吹き飛ばされる。
空気の塊を生成して飛ばしているらしい。
言っとくけどこれラブストーリーだよ?
大人しくしてると思ったらこんなネタ考えていたのかい?
すると別の暴走族が乱入してきた。
その恰好からして勝次の暴走族の威堕天だという事は分かった。
「そんなに自殺したいならもろとも、皆殺しにしてやる」
すでに息の根が止まってそうな八尋をさらに痛めつけながら、天音が叫ぶ。
だが、勝次の目的は違っていたらしい。
バイクを降りると仲間に合図をして九頭竜會の連中に攻撃する。
「地元上等って言ってたららしいじゃねーか。クズ?上等だ馬鹿野郎!」
分かり合えるはずのない威堕天と手を組んで九頭竜會を私刑する。
逃げ出そうとバイクにまたがると、翼の攻撃が容赦なく飛ぶ。
それでも自分の足で逃走しようとする九頭竜會。
大勢が決まった頃、空は翼から離れてもう生きてるかどうかわからない八尋の側に行く。
「まあ、とどめくらい王様にさせてやるか」
天音がそう言って引く。
空は八尋を見おろすと一言告げる。
「何か言い残す事ある?」
当然気絶してる八尋が答えるはずがない。
それが天音の勘に触ったらしい。
「空の質問に返事しろ!気絶してましたなんて言い訳聞かねーぞ!」
天音がそう言って八尋の頭を蹴りつける。
「てめーら、このままで済むと思ってるんじゃねーだろうな」
代弁者がいた。
すぐに天音に処理されたけど。
「誰が勝手に喋って良いと許可した!?」
一向に意識を取り戻す気配のない八尋。
「……まあいいや。大地あと任せる」
空が言うと、大地の合図でがあらかじめ手配しておいた兵隊が入ってくる。
兵隊は八尋を含む九頭竜會のメンバーを全員普通に停泊していた輸送船に乗せる。
全員乗せたのを確認した輸送船は沖へと向かう。
明日の今頃には北の国にいるんじゃないかな?
やることを済ませると雪華団はドライブに、威堕天は何も言わずに去っていった。
「今日はお疲れ様。次の週末にでも打上やろう」
空が言うとSHも皆家に帰っていった。
(3)
スマホを見ていた。
遊の奴無茶しなければいいけど。
SHは前もって準備してるから間に合うと思うけど。
翼の能力は凄い。
戦況を把握して自分たちが優位に立てるように指示を出す。
その間に私達のような参加しても足手まといになるようなメンバーに戦況を報告している。
そして敵味方誰一人負傷者0という状況にして戦闘は終った。
遊も真っ直ぐ帰ってくるらしい。
夕飯は準備しておいた。
一人で食べるのは寂しいだろうと私も待っていた。
その間花や恋と話をしていた。
戦闘終了から30分くらいしてからドアのカギを開ける音が聞こえた。
私は玄関に向かった。
「ただいま……ってうわっ!」
私は遊を抱きしめていた。
「おかえりなさい」
遊が幻じゃないことをしっかりと確かめる。
「大丈夫だって言ったろ?」
そう言って遊が頭を撫でてくれる。
「ご飯まだでしょ?すぐに温めるから」
「待ってたの?」
「うん」
「遅くなって悪いな」
大丈夫。
今なら分かる気がするんだ。
ちゃんと帰ってきてくれることが何よりも喜び。
遊は約束をちゃんと守ってくれた。
夕飯を温めなおすと遊の話を聞きながらご飯を食べる。
「それにしても、空達どんどん規格外になってるな」
遊から聞いた話。
翼は大軍を謎の力で吹き飛ばしたらしい。
片桐家だから出来る技なのだろうか?
「あ、恋にも伝えておかないと」
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「どうして?」
最後まで言わせないで。
私は寂しいんだよ?
そんな風に遊を見ていると遊は分かってくれたらしい。
「なずなから求めてくるなんて珍しいな」
「急いで入ってくる」と言って遊は着替えを準備して風呂に入る。
そして風呂を出るとすぐにベッドに入ろうとするが、動きが止まった。
「どうしたの?」
「いや、まだやる事あった」
何?
遊はテーブルに置いてあったチョコを食べ始める。
「……美味しいよ。ありがとう」
「お返し期待してるね」
「ああ、とりあえずは……」
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