姉妹チート

和希

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BOY MEETS GIRL

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(1)

「この馬鹿!!いい加減にしなさい!」

 部屋に戻ってくると冴が怒っている。
 多分誠司が風呂を覗いていたからだろう。
 どうしてこうも馬鹿な事を男子は好むのだろう?
 小学校6年生の私達に何を期待しているのやら。
 まあ、そういうのが趣味の変態もいるらしいけど。
 ちなみに冬吾はそういうのには興味を示さない。
 ただ、瞳子にだけ興味があるらしいけど恥ずかしくて言えないらしい。
 キスをするだけで顔を赤くするんだそうだ。

「あ、冬莉。どうだった?」

 電話を終えた冴が私に気付いて聞いてきた。
 私は風呂を出ると大勢の男子に囲まれていた。
 何となく予測がついてしまった私は、瞳子たちに先に部屋に戻ってるよう伝えた。
 瞳子たちも気づいたのだろう。

「あとで話聞かせてね」
 
 そう言って部屋に戻っていった。

「で、どうだったの?」

 冴だけじゃなく瞳子や泉やりさも興味があるらしい。
 私の前にずらりと並んで私が話すのをまっていた。

「大したことじゃないんだけどね……」

 そう言って私は話を始めた。

(2)

 冴達が去った後、私は男子の顔を見て言った。

「あなた誰?」

 すると全員が自己紹介を始める。
 そこはあまり重要じゃないので割愛する。
 全員の自己紹介を終えると、私は次の質問に入る。

「で、用件は何?」

 すると順番に「前から好きでした。付き合ってください」と一言一句違えることなく全員が言った。
 一人一人返事をするのが正しいのだろうけど面倒なくらい男子がいるので一度にまとめて言った。

「今まで見た事も無い、名前も知らない、話をしたことさえも無い人といきなり付き合えと言われても無理」

 それで肩を落として帰ってくる男子もいた。
 しかしそうでない男子もいる。

「そんなのお互いこれから知っていけばいい」

 そう言って食い下がる男子もいた。
 言う事も理解できる。
 ただそれには前提があるんじゃないのだろうか?

「それは私があなた達の誰かに興味を持てばの話だよね?」

 何の前触れもなく突然告白されて、喜ぶ女子もいるだろうけど、「私も実はあなたの事が好きでした」というような男子は一人もいない。

「お友達からでもダメですか?」

 なおもしぶとく食い下がる男子がいた。

「期待を持たせるような真似はよくないと思うから」

 私の事が好きと言った男子と普通の友達付き合いなんて無理に決まってる。
 それでもしつこい男子がいる。
 余りしつこいと逆効果じゃないの?
 どうしたものかと考えていると、水島先生がやって来た。

「何を騒いでるの?早く部屋に戻りなさい」
「と、いうわけだから」

 ごめんなさいね。
 そう言って立ち尽くす男子をおいて私は部屋に帰って来た。

(3)

「冬莉ちゃんモテるんだね。そんなにいたんだ」

 頼子が驚いている。
 そういえば愛莉も同じような事あったらしい。
 小学校中学校と断るのに苦労したと言っていた。

「でも一人くらい気になる子いなかったの?」

 泉が聞いてきた。

「突然現れた見た事も無いような男子なんて気にもかけた事無い」

 瞳子や冴、りさのように幼稚園から付き合っているなら理解しがたいけど納得はする。
 だけどタケノコが突然生えたかのように現れた男子の事など気に掛ける理由もない。

「じゃあ、逆に聞くけど冬莉は好きな男子いないの?」

 冴が言う。

「考えた事もない」

 きっぱり答えた。
 少なくとも浴場の壁をよじ登って、女子小学生の裸を見ようとする奴は遠慮したい。
 
「私から聞いてもいいかな?」
「どうしたの?」

 瞳子が言うと私は冴に尋ねた。

「見た目は良いけど中味最悪にしか思えない誠司とどうして付き合ってるの?」

 誠司は父親にいい意味でも悪い意味でも似ている。
 見た目はいいから黙っていればイケメンなんだろうけど実際はただの変態じゃない。
 何度も冴を怒らせているみたいだし、よく続いたなと少し興味があった。

「私もつき合い始めてあの馬鹿の中味を知ったんだよね」
「それでも付き合う理由は?」

 私が聞くと冴は悩み始めた。

「そういうところも許せてしまう感情が好きってことじゃないかな」

 冴はそう答えた。
 そういえば愛莉も言ってた。

「冬夜さんは見た目普通だし、無気力だし、食い気ばかりで困った人なの」
「どうして愛莉はパパと結婚したの?」
「それはね……」

 一目惚れだったらしい。
 それからパパのお嫁さんになると一途にずっと付き合って来たらしい。
 うん、よく分からない。

「そうですね……。あ、一ついい話があります」

 それはパパと高校の修学旅行に行った時だった。
 パパは当然札幌ラーメンを食べたがると思った。
 するとラーメンを諦めてオルゴールやガラス細工のお店を見て回ってくれたらしい。
 そういう優しさもあるんだという。
 それだけじゃない。
 東京でもんじゃを2人でつついていた時に「恋人だから楽しいんだ」と言ってくれたらしい。
 そんな些細な事で喜べるのが愛なんだと愛莉は言っていた。

「サッカーをしてる時の誠司はやっぱりかっこいいし」

 すべてを受け入れる器が必要だって事か。
 何となく理解した気がする。

「瞳子はどうなの?」

 妹目線から見ても冬吾は非の打ちどころがない。
 敢えて言うなら、どうでもいい事で悩み始める癖。
 純粋だから何でも吸収しようとしてしまう。
 だから愛莉は「誠司の言う事は気にしてはいけません」と冬吾に注意していた。

「うーん。冬吾君は確かにとても素敵なんだけどやっぱり不満はあるかな?」
「え?何か隠してるの?」

 冴も気になったらしい。

「誠司君が持ってるDVDを見てる時なんだけど……」

 DVDと同じ事を瞳子に要求はしない。
 ただ「何でこんなことしてるんだろう?」とずっと考え込むらしい。

「冬吾君にもしてあげようか?」
「僕はまだ小学生だからダメって母さんに言われてるんだ」

 そう言うらしい。
 そういえば、偶にパパに質問して困らせてるな。
 愛莉は誠司の母さんに電話して、誠司を叱ってもらってるらしい。
 しかし誠司の父さんが新しい教材とやらを次から次へと渡すんだそうだ。
 いつか性犯罪を冒すんじゃないかと誠司の母さんもヒヤヒヤしてるらしい。

「私に魅力ないのかな?」

 瞳子はそう受け取ったらしい。
 
「それは多分ない」

 私はきっぱり答えた。

「どうしてそう言えるの?」

 瞳子が聞いてきた。

「冬吾は愛莉から男女のメカニズムについて説明受けてる」

 だから恋人とそういう行為をする事は冬吾は理解している。
 だけど愛莉から注意を受けている。
 未熟な体で行為をすると女子を傷つける事になる。
 きっとそのリスクを考えて瞳子の事を大事にしているんだろう。

「冬吾は私の下着姿を見ても何とも思ってないくらいだから」

 きっと瞳子にだけ特別なフィルターがかかっているんだろう。
 パパもそうだったらしい。
 もっとも片桐家の人間は色気より食い気だけど。

「冬莉が言うんだったらそうなんだろうね」
  
 瞳子はそう言って納得していた。
 話が詰まらないと感じたのか泉はもう寝ていた。
 
「りさは隼人とどうなの?」
「あいつはそういう変な趣味は無いけど、あまり構ってくれないんだよね」

 コミュニケーションがとれていないのが不満なんだそうだ。

「中学生になれば変わると思うよ」

 多分中学生になったら私達にも相応の相手が決まるのだろう。
 運命という物があるんだとすれば、そのうちいい人に出会えるだろう。
 だから焦る事は無い。
 頼子とそんな話をして私達も眠ることにした。

(4)

「ねえ冬吾君」
「どうしたの?」
「それ全部食べるの?」

 僕の目の前にはチャンポンと皿うどんと佐世保バーガーとラーメンが並んでいた。

「そうだよ」
「よく食べられるね……」

 瞳子は驚いていた。
 よく見ると瞳子はそんなに食欲無いようだ。

「瞳子は食べないの?」
「うん」

 女子は体重を気にするらしいって母さんが聞いてたな。
 冬莉とかは全く気にもとめてないようだけど。

「あ、ちゃんとデザートの美味しい店も聞いてるから」

 茜が言ってた。

「冬吾君は食べ物の事になると夢中だね」

 瞳子はそう言って笑っていた。
 旅行に来たらご当地グルメを楽しむ。
 それは片桐家の鉄則。
 もちろん色々見て回ったよ。
 瞳子に付き合うのも大事だと母さんから聞いたから。
 瞳子は花が好きなんだろうか?
 いっぱい写真を撮っていた。
 そして集合時間前に集合場所に着いた。
 後になって冴達もやって来た。
 冴は凄い不機嫌そうだった。
 また誠司がやらかしたらしい。
 後はバスで学校に帰るだけ。
 誠司に何をやらかしたのか聞いてみた。
 誠司も隼人も別に何もやってない。
 何もしないのが問題だったらしい。
 どこに行ってもつまらなさそうにしていたそうだ。
 誠司に至っては欠伸をする始末。
 
「私と一緒にいるのがそんなにつまらないわけ!?」

 そう言ってりさや冴は怒り出したそうだ。
 冬莉は適当に見て回って僕と同じ様にチャンポンとかを食べていた。

「なんで冬吾はあんなクソ詰まらない場所で楽しめるんだよ」

 だって食べ物があるから。
 父さんが言ってた通りにしてただけ。

「冬吾は食べ物で楽しむんだ。瞳子の楽しみにも付き合ってやらないと不公平だろ?」

 冴達は瞳子に愚痴ってるらしい。
 それも日が暮れる頃には終わり、皆疲れて眠っていた。

「あっという間だったね」

 瞳子は起きていたらしい。

「瞳子はどこが楽しかった?」
「どこも楽しかったよ」

 普段滅多に2人で観光なんてできないから。
 まあ、小学生なら当たり前だね。
 僕もサッカーで瞳子に構ってやれない。
 何か考えた方がいいのかな?
 あ、そうだ。

「瞳子、7月の連休は空いてる?」
「特に予定はないけどどうしたの?」

 天音達もいなくなって車の座席もいくらか余裕があった。
 よかったら瞳子でも招待してあげなさい。
 父さんが言ってた。

「行く!」

 瞳子は嬉しそうだ。

「じゃあ、その前に準備しないとね」
「何を?」
「水着、冬吾君と一緒に選びたいな」
「わかった」

 バスが学校に着くと解散した。
 冬莉達と一緒に帰る。
 家に着くと父さん達が「お帰り、どうだった?」と聞いてくる。

「パパはカステラ嫌いって言ってたから」

 冬莉はそう言ってチャンポンと皿うどんの冷凍物と明太子を渡す。

「ありがとう」
 
 父さんがそう言って受け取る。
 夕食を済ませると風呂に入って部屋で瞳子とメッセージを交わしながら気づいたら眠っていた。
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