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準備期間
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(1)
朝目が覚めたのでテントから出ようとしたら、冬吾と瞳子が気づいたらしい。
外でコーヒーでも飲もうかと2人を誘うと3人で外に出る。
石原君と酒井君が先に起きていたようだ。
毎年のお約束だな。
そろそろ頃合いか。
前もって準備だけでもしておきたいと愛莉と話をしていた。
「2人で散歩でも行っておいて」
「うん、行こう瞳子」
冬吾はそう言って瞳子の手を取り、出かけて行った。
冬吾は瞳子の扱いを分かっているみたいだ。
「仲の良い二人ですね」
石原君がそう言って笑う。
僕も2人に混ざってコーヒーを飲む。
「そういえば片桐君や」
酒井君が話があるみたいだ。
「どうしたの?」
「去年はそれどころじゃなくて聞けなかったんだけどね」
翼と天音の二人も嫁に送り出した気分はどうだい?と酒井君が聞いてきた。
そうだなぁ。
「ちょっと安心したかな」
結婚後の2人の事は愛莉を通して聞いている。
偶に愛莉が監視に行ってるらしいと言うと、恵美さんも行ってるらしいと石原君が言った。
天音に無理させてないかどうか見張ってるらしい。
翼の方は晶さんが見に行ってるそうだ。
「もう孫が見たいと晶ちゃんがいいだしてね」
酒井君は苦笑していた。
翼も善明も大学を卒業する。
翼も就職する意思はないみたいだし問題ないだろうと言ってるんだそうだ。
孫が見たいと言ったら天音も言ってたな。
「大地!さっさと子作りしようぜ!」
「僕はまだ学生だよ!」
「私が働きながら育児するから問題ない」
「天音にそんな真似させたら僕が母さんに殺されるよ」
天音は単に水奈が「天音より先に子供作れ」と親に言われたので相手にしてるらしい。
石原君はもう笑うしかないと言った感じだ。
「まだ、孫を見るのは早い気がするんですけどね」
石原君が言う。
愛莉も天音の育児は手伝うらしい。
天音に任せていたらどんな子供になるか不安で仕方がないらしい。
「まあ、大地には責任もって天音を幸せにさせますから」
「そこまで気を配らなくてもいいよ。2人でなんとかするよ」
だから結婚に踏み切ったんだろ?
結婚か……。
「石原君にお願いしたい事があるんだけど」
「なんなりと」
「実は……」
僕は石原君に伝えた。
「そんなプレゼント考えてたんですね」
さすがに石原君も驚いたらしい。
「そういう事なら特別に手配させるわよ」
振り向くと晶さんと恵美さんと愛莉が起きて来ていた。
「3人とも早いね」
「誠君ほどじゃないけど片桐君達の話も大抵しょうもない事だから」
そのくらいの相談なら私達にしてくれてもいいじゃないかと恵美さんが言う。
まあ、結婚だの色々あったからね。
僕達もようやく少しだけ荷が下りたから思い出話もしたくなる。
「冬夜さんもその話なら私と一緒の時にしてくださいな」
「愛莉はまだ寝てたからね」
「そうね……式場とかは決めてるの?」
「それは愛莉と相談したんだけどね」
多分、あの場所を選ぶだろう。
天音や翼も実際そうだったから。
「日時は決めてあるの?」
「来年の4月19日でいいかなって相談してたの」
愛莉が答えた。
就職してすぐだけど問題ないだろう。
5月の連休に旅行も用意してやろうと思ってる。
「一つだけ問題があるわね」
恵美さんが言った。
それは愛莉とも悩んでいた。
美希には事前に伝えないといけない。
「それなら私が美希に内密に伝えておくから」
恵美さんから伝えるなら問題ないだろう。
「なんだよ。お前等だけで相談か?」
「俺達も仲間に入れてくれよ」
厄介な人間がやって来た。
誠と桐谷君。
昨夜もやらかしてカンナ達に怒られてた。
「冬夜も嫁に出した気分ってどうだ」
「さっき石原君と話をしていたんだけどね。少し気が楽になったよ」
まだ茜や冬莉達がいるからゆっくりとは出来ないけど。
愛莉パパの言ってた”達成感”というやつなんだろうか?
愛莉パパともそんな話をしていた。
「天音ちゃんを泣かせるような真似したら私が黙ってないから」
恵美さんが言う。
「そういえばこの前子供が欲しいと言っていたわね」
「全く……困った娘です」
愛莉も悩んでいるそうだ。
愛莉は孫の世話なら愛莉がするけどそれでいいのか悩んでるらしい。
実際は石原家の子供になるのだから。
「それは私がするから大丈夫」
石原家の子供になるんだから責任もって世話をさせる。
育児をしながら働くなんて真似は絶対にさせない。
その為にまず恵美さんの家の近所に家を建てるそうだ。
「孫か……俺も学が卒業したら作っていいんじゃないかと思ってるんだけどな」
「それはお前が毎週学達の邪魔をしてるからだろうが!」
カンナ達も起きて来たみたいだ。
「学はともかく遊は完全にお前に似てなずなを困らせてるぞ!どうするつもりだ!」
亜依さんが桐谷君に言ってる。
翼たちの世代もやっぱりこの2人の子供が問題を起こすのか。
「2人の話には絶対に関わるな」
空にはそう言っておいた。
だけど5月の連休の合宿でやっぱりやらかしたらしい。
翼はすぐ愛莉に伝えて愛莉が空を叱っていた。
「子供と言えば誠君、いい加減にして!」
「お前はまた誠司に何か吹き込んだのか!?」
確かに誠司に色々吹き込まれて冬吾は色々と聞いてくる。
冬吾に悪意はない。
悪意がないから質が悪い。
頭ごなしに叱るわけにもいかない。
僕も愛莉も困っていた。
愛莉には男兄弟はいないから初めての経験だ。
僕に毎晩のように相談してくる。
「だから注意してるって!冬吾は冬夜に似て真面目だから過激すぎる物は見せるなって」
「全然わかってねーじゃねーかこの馬鹿!この前修学旅行で冴にチャイナドレス買ってたんだぞ!」
チャイナドレスか。
僕は愛莉を見る。
ぽかっ
「さすがにそこまで自信はないので遠慮します」
「そっかぁ、若い時に見とくべきだったんだろうか」
「冬夜さんはあまりそういう趣味は無いと思ったのですが」
「この歳になるとちょっとだけ見たかったなって」
「そんな事言っても駄目ですよ。大体冬夜さん私がボディライン出る服装は好まなかったじゃないですか」
「それは、愛莉の体型は僕だけが知ってればいいと思ったから」
「困った旦那様ですね」
「……亜依」
「神奈、解ってる。帰ったら今度飲みに行こう」
亜依さんとカンナは何か通じるものがあったらしい。
「それはそうと、片桐君。お色直しはどのくらい準備すればいいの?」
あまり沢山あると美希が疲れるだろうと悩んだそうだ。
「愛莉と美希と相談して」
そういうのは僕にはわからないから。
「まあ、帰ったら少しずつ煮詰めていきましょう」
「ごめんね、恵美」
「いいわよ。親に出来る最後のプレゼント。私は良いと思うわよ」
石原君もうなずいてた。
朝食が終るとテントを片付ける。
「じゃあ、いつも通り風呂行って昼食食べて帰ろう」
渡辺君が言って僕達は移動した。
(2)
朝起きると大地君と2人で話していた。
久しぶりだね。
去年はそれどころじゃなかったからね。
大地も怒涛の如く結婚式を終え新婚旅行を終えると、新たな局面を迎えていた。
「子供が欲しい!」
天音が言い出したらしい。
さすがに大学で遊んでる間に、天音が働いて育児なんて真似できない。
実の親に埋められる。
そう言って天音を説得してるが……
「それなら近所に引っ越しなさい。孫の世話くらいするわよ」
大地の母さんが言ってるらしい。
生活費も親が負担する。
それなら問題ない。
「それは大地の立場としてどうなんだい?」
大地のお父さんが言ったらしい。
「どうせ男親なんて育児に何の役にも立たないじゃない。望もそうだった」
「でも大地はまだ仕事すらしてないんだよ」
「望は見たくないの?大地と天音の子供よ。きっと凄い子が産まれるわ」
そりゃすごい子が産まれるだろうね。
親の手にもおえないような滅茶苦茶な補正のかかった子供になるだろうね。
「善明君はどうなんですか?」
大地が聞いてきた。
「来年には子作りが決まってるよ」
「……大変ですね」
大地には僕の気持ちが分かってもらえたようだ。
大変なんてもんじゃない。
一歩間違えたら誰かが首をつる羽目になる。
僕の父さんも言っていたよ。
「善明の命は沢山の人の犠牲の上に成り立っているから大事にしなさい」
大地も同じような事を言われたらしい。
社長なんて肩書もきっと母さん達には通用しない。
出産や育児の手伝いをさせられるだろう。
「そんな雑用下っ端に任せておけばいいんじゃない?」
翼も最近強引になってきた。
僕の子供は間違いなく女性に頭が上がらないね。
「お前達も大変なんだな」
学と空がやってきた。
「善明達は子供欲しくないの?」
空が聞いた。
空達はまだ結婚すらしていない。
でもどうなるか分からない。
空のお父さんは結婚式の日に「子供が出来た」と伝えられたらしい。
次は誰の子供が出来るんだろう?
「子供は欲しいんだけどね」
タイミングってあるでしょ?
出来婚じゃなかったらいいってもんじゃないよ。
ちゃんと育てる事が出来るか?
色々不安だってあるんだ。
「あ、善明もその気になった?」
翼達も起きて来たらしい。
「親が作れって言ってるんだから作ればいいんじゃないの?」
翼が言う。
そんな鶏が卵を産むみたいに気楽に言わないでおくれ。
「大地!お前は私に恥をかかせるつもりなのか!?」
天音も起きて来たらしい。
大地は慌ててる。
「そういうのって勝負とか賭けとかを基準にしちゃいけないと思うんだ」
僕が働くならともかく、天音が育児で苦戦してる中遊んでるみたいじゃないかと大地は主張する。
「パパが持ってた漫画であったぞ!彼女と出来婚して自分は獣医学の勉強するってやつ」
そんな真似したら僕も間違いなく土の中だね。
学はとにかく水奈と学の親をどうにかしないと安心してできないらしい。
「そんなのラブホに行けばいいだろ!」
水奈は解決策を考えたらしい。
きっと昨夜天音と相談したんだろうな。
そうこうしてるうちに皆起きてしまった。
朝食をすませるとテントを片付けて、別府の銭湯に向かう。
汗を流してファミレスで昼食を済ませると、家に帰る。
今日は疲れたから夜まで寝て、夕食は外食で済ませた。
家に帰ると風呂に入って寝室でテレビを見ていた。
「善明、相談があるんだけど」
「突然どうしたんだい?」
「あのさ……私との子供は不安?」
また難しい相談だな。
一歩間違えたら地元が大戦争になるよ。
「翼との子供は楽しみにしてるよ」
「本当に?」
そりゃもうきっととんでもない訓練を仕込まれるんだろうね。
飛行しているヘリから飛び降りても平気な戦士になるんだろうな。
きっと子供の世代でも何かしら事件が起きるだろう。
その時に中心になるのはもちろん片桐家だろうけど、主要戦力は間違いなく大地の子供と僕の子供だろう。
彼女に向かって「お前を殺す」とか言い出さないことを祈るばかりだよ。
「ただね、翼や。育児って僕と翼の共同作業だと思わないかい?」
僕と翼の子供なんだから。
その為の環境を作る必要がある。
そのための準備期間がいる。
翼が一番大変だけど、僕だって父親なんだって自覚する時間が欲しい。
僕の父さんは「今子供を作ったら間違いなく誘拐される」と必死に頭を下げたらしい。
すると翼はくすりと笑った。
「善明はもう父親になった時の事を考えているんだね」
「そりゃね」
親に脅迫されたらそうせざるを得ないと覚悟を決めるよ。
「それなら心配ないじゃない」
「どうしてだい?」
「妊娠が分かってから出産まで十分時間がありますよ」
すぐに出来るかどうかも分からない。
僕がそういう自覚をしてくれるなら翼は安心して子供を産める。
「……とりあえずは、卒業した後の引越し先の手配だね」
「え?」
多分母さんは自分が手伝いしやすい様に近所に住めと言いだす。
大学生活の為に建てた新築の家は4年で役目を終える様だ。
きっと今度はまた地理を無視したでかい家を建てるつもりだろう。
翼に何回出産させる気か知らないけど。
「悩みはそれだけかい?」
「ええ」
「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「早くないですか?」
「……時期が来たら子供が出来る」
だったらそれまでは意地でも子供は出来ないだろう。
「善明も男性なんだね」
そう言って翼とベッドに入る。
光太と克樹とみなみは既に子供を作った。
次に子供を作るのは多分僕だろう。
まだそう思っていた。
しかし僕達の運命をまだ甘く見ていたようだ。
朝目が覚めたのでテントから出ようとしたら、冬吾と瞳子が気づいたらしい。
外でコーヒーでも飲もうかと2人を誘うと3人で外に出る。
石原君と酒井君が先に起きていたようだ。
毎年のお約束だな。
そろそろ頃合いか。
前もって準備だけでもしておきたいと愛莉と話をしていた。
「2人で散歩でも行っておいて」
「うん、行こう瞳子」
冬吾はそう言って瞳子の手を取り、出かけて行った。
冬吾は瞳子の扱いを分かっているみたいだ。
「仲の良い二人ですね」
石原君がそう言って笑う。
僕も2人に混ざってコーヒーを飲む。
「そういえば片桐君や」
酒井君が話があるみたいだ。
「どうしたの?」
「去年はそれどころじゃなくて聞けなかったんだけどね」
翼と天音の二人も嫁に送り出した気分はどうだい?と酒井君が聞いてきた。
そうだなぁ。
「ちょっと安心したかな」
結婚後の2人の事は愛莉を通して聞いている。
偶に愛莉が監視に行ってるらしいと言うと、恵美さんも行ってるらしいと石原君が言った。
天音に無理させてないかどうか見張ってるらしい。
翼の方は晶さんが見に行ってるそうだ。
「もう孫が見たいと晶ちゃんがいいだしてね」
酒井君は苦笑していた。
翼も善明も大学を卒業する。
翼も就職する意思はないみたいだし問題ないだろうと言ってるんだそうだ。
孫が見たいと言ったら天音も言ってたな。
「大地!さっさと子作りしようぜ!」
「僕はまだ学生だよ!」
「私が働きながら育児するから問題ない」
「天音にそんな真似させたら僕が母さんに殺されるよ」
天音は単に水奈が「天音より先に子供作れ」と親に言われたので相手にしてるらしい。
石原君はもう笑うしかないと言った感じだ。
「まだ、孫を見るのは早い気がするんですけどね」
石原君が言う。
愛莉も天音の育児は手伝うらしい。
天音に任せていたらどんな子供になるか不安で仕方がないらしい。
「まあ、大地には責任もって天音を幸せにさせますから」
「そこまで気を配らなくてもいいよ。2人でなんとかするよ」
だから結婚に踏み切ったんだろ?
結婚か……。
「石原君にお願いしたい事があるんだけど」
「なんなりと」
「実は……」
僕は石原君に伝えた。
「そんなプレゼント考えてたんですね」
さすがに石原君も驚いたらしい。
「そういう事なら特別に手配させるわよ」
振り向くと晶さんと恵美さんと愛莉が起きて来ていた。
「3人とも早いね」
「誠君ほどじゃないけど片桐君達の話も大抵しょうもない事だから」
そのくらいの相談なら私達にしてくれてもいいじゃないかと恵美さんが言う。
まあ、結婚だの色々あったからね。
僕達もようやく少しだけ荷が下りたから思い出話もしたくなる。
「冬夜さんもその話なら私と一緒の時にしてくださいな」
「愛莉はまだ寝てたからね」
「そうね……式場とかは決めてるの?」
「それは愛莉と相談したんだけどね」
多分、あの場所を選ぶだろう。
天音や翼も実際そうだったから。
「日時は決めてあるの?」
「来年の4月19日でいいかなって相談してたの」
愛莉が答えた。
就職してすぐだけど問題ないだろう。
5月の連休に旅行も用意してやろうと思ってる。
「一つだけ問題があるわね」
恵美さんが言った。
それは愛莉とも悩んでいた。
美希には事前に伝えないといけない。
「それなら私が美希に内密に伝えておくから」
恵美さんから伝えるなら問題ないだろう。
「なんだよ。お前等だけで相談か?」
「俺達も仲間に入れてくれよ」
厄介な人間がやって来た。
誠と桐谷君。
昨夜もやらかしてカンナ達に怒られてた。
「冬夜も嫁に出した気分ってどうだ」
「さっき石原君と話をしていたんだけどね。少し気が楽になったよ」
まだ茜や冬莉達がいるからゆっくりとは出来ないけど。
愛莉パパの言ってた”達成感”というやつなんだろうか?
愛莉パパともそんな話をしていた。
「天音ちゃんを泣かせるような真似したら私が黙ってないから」
恵美さんが言う。
「そういえばこの前子供が欲しいと言っていたわね」
「全く……困った娘です」
愛莉も悩んでいるそうだ。
愛莉は孫の世話なら愛莉がするけどそれでいいのか悩んでるらしい。
実際は石原家の子供になるのだから。
「それは私がするから大丈夫」
石原家の子供になるんだから責任もって世話をさせる。
育児をしながら働くなんて真似は絶対にさせない。
その為にまず恵美さんの家の近所に家を建てるそうだ。
「孫か……俺も学が卒業したら作っていいんじゃないかと思ってるんだけどな」
「それはお前が毎週学達の邪魔をしてるからだろうが!」
カンナ達も起きて来たみたいだ。
「学はともかく遊は完全にお前に似てなずなを困らせてるぞ!どうするつもりだ!」
亜依さんが桐谷君に言ってる。
翼たちの世代もやっぱりこの2人の子供が問題を起こすのか。
「2人の話には絶対に関わるな」
空にはそう言っておいた。
だけど5月の連休の合宿でやっぱりやらかしたらしい。
翼はすぐ愛莉に伝えて愛莉が空を叱っていた。
「子供と言えば誠君、いい加減にして!」
「お前はまた誠司に何か吹き込んだのか!?」
確かに誠司に色々吹き込まれて冬吾は色々と聞いてくる。
冬吾に悪意はない。
悪意がないから質が悪い。
頭ごなしに叱るわけにもいかない。
僕も愛莉も困っていた。
愛莉には男兄弟はいないから初めての経験だ。
僕に毎晩のように相談してくる。
「だから注意してるって!冬吾は冬夜に似て真面目だから過激すぎる物は見せるなって」
「全然わかってねーじゃねーかこの馬鹿!この前修学旅行で冴にチャイナドレス買ってたんだぞ!」
チャイナドレスか。
僕は愛莉を見る。
ぽかっ
「さすがにそこまで自信はないので遠慮します」
「そっかぁ、若い時に見とくべきだったんだろうか」
「冬夜さんはあまりそういう趣味は無いと思ったのですが」
「この歳になるとちょっとだけ見たかったなって」
「そんな事言っても駄目ですよ。大体冬夜さん私がボディライン出る服装は好まなかったじゃないですか」
「それは、愛莉の体型は僕だけが知ってればいいと思ったから」
「困った旦那様ですね」
「……亜依」
「神奈、解ってる。帰ったら今度飲みに行こう」
亜依さんとカンナは何か通じるものがあったらしい。
「それはそうと、片桐君。お色直しはどのくらい準備すればいいの?」
あまり沢山あると美希が疲れるだろうと悩んだそうだ。
「愛莉と美希と相談して」
そういうのは僕にはわからないから。
「まあ、帰ったら少しずつ煮詰めていきましょう」
「ごめんね、恵美」
「いいわよ。親に出来る最後のプレゼント。私は良いと思うわよ」
石原君もうなずいてた。
朝食が終るとテントを片付ける。
「じゃあ、いつも通り風呂行って昼食食べて帰ろう」
渡辺君が言って僕達は移動した。
(2)
朝起きると大地君と2人で話していた。
久しぶりだね。
去年はそれどころじゃなかったからね。
大地も怒涛の如く結婚式を終え新婚旅行を終えると、新たな局面を迎えていた。
「子供が欲しい!」
天音が言い出したらしい。
さすがに大学で遊んでる間に、天音が働いて育児なんて真似できない。
実の親に埋められる。
そう言って天音を説得してるが……
「それなら近所に引っ越しなさい。孫の世話くらいするわよ」
大地の母さんが言ってるらしい。
生活費も親が負担する。
それなら問題ない。
「それは大地の立場としてどうなんだい?」
大地のお父さんが言ったらしい。
「どうせ男親なんて育児に何の役にも立たないじゃない。望もそうだった」
「でも大地はまだ仕事すらしてないんだよ」
「望は見たくないの?大地と天音の子供よ。きっと凄い子が産まれるわ」
そりゃすごい子が産まれるだろうね。
親の手にもおえないような滅茶苦茶な補正のかかった子供になるだろうね。
「善明君はどうなんですか?」
大地が聞いてきた。
「来年には子作りが決まってるよ」
「……大変ですね」
大地には僕の気持ちが分かってもらえたようだ。
大変なんてもんじゃない。
一歩間違えたら誰かが首をつる羽目になる。
僕の父さんも言っていたよ。
「善明の命は沢山の人の犠牲の上に成り立っているから大事にしなさい」
大地も同じような事を言われたらしい。
社長なんて肩書もきっと母さん達には通用しない。
出産や育児の手伝いをさせられるだろう。
「そんな雑用下っ端に任せておけばいいんじゃない?」
翼も最近強引になってきた。
僕の子供は間違いなく女性に頭が上がらないね。
「お前達も大変なんだな」
学と空がやってきた。
「善明達は子供欲しくないの?」
空が聞いた。
空達はまだ結婚すらしていない。
でもどうなるか分からない。
空のお父さんは結婚式の日に「子供が出来た」と伝えられたらしい。
次は誰の子供が出来るんだろう?
「子供は欲しいんだけどね」
タイミングってあるでしょ?
出来婚じゃなかったらいいってもんじゃないよ。
ちゃんと育てる事が出来るか?
色々不安だってあるんだ。
「あ、善明もその気になった?」
翼達も起きて来たらしい。
「親が作れって言ってるんだから作ればいいんじゃないの?」
翼が言う。
そんな鶏が卵を産むみたいに気楽に言わないでおくれ。
「大地!お前は私に恥をかかせるつもりなのか!?」
天音も起きて来たらしい。
大地は慌ててる。
「そういうのって勝負とか賭けとかを基準にしちゃいけないと思うんだ」
僕が働くならともかく、天音が育児で苦戦してる中遊んでるみたいじゃないかと大地は主張する。
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「そんなのラブホに行けばいいだろ!」
水奈は解決策を考えたらしい。
きっと昨夜天音と相談したんだろうな。
そうこうしてるうちに皆起きてしまった。
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家に帰ると風呂に入って寝室でテレビを見ていた。
「善明、相談があるんだけど」
「突然どうしたんだい?」
「あのさ……私との子供は不安?」
また難しい相談だな。
一歩間違えたら地元が大戦争になるよ。
「翼との子供は楽しみにしてるよ」
「本当に?」
そりゃもうきっととんでもない訓練を仕込まれるんだろうね。
飛行しているヘリから飛び降りても平気な戦士になるんだろうな。
きっと子供の世代でも何かしら事件が起きるだろう。
その時に中心になるのはもちろん片桐家だろうけど、主要戦力は間違いなく大地の子供と僕の子供だろう。
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「ただね、翼や。育児って僕と翼の共同作業だと思わないかい?」
僕と翼の子供なんだから。
その為の環境を作る必要がある。
そのための準備期間がいる。
翼が一番大変だけど、僕だって父親なんだって自覚する時間が欲しい。
僕の父さんは「今子供を作ったら間違いなく誘拐される」と必死に頭を下げたらしい。
すると翼はくすりと笑った。
「善明はもう父親になった時の事を考えているんだね」
「そりゃね」
親に脅迫されたらそうせざるを得ないと覚悟を決めるよ。
「それなら心配ないじゃない」
「どうしてだい?」
「妊娠が分かってから出産まで十分時間がありますよ」
すぐに出来るかどうかも分からない。
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「悩みはそれだけかい?」
「ええ」
「じゃあ、そろそろ寝ようか」
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だったらそれまでは意地でも子供は出来ないだろう。
「善明も男性なんだね」
そう言って翼とベッドに入る。
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次に子供を作るのは多分僕だろう。
まだそう思っていた。
しかし僕達の運命をまだ甘く見ていたようだ。
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神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
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彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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