姉妹チート

和希

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朝が来た

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(1)

「じゃあ、今年もお疲れ様でした~」

 僕がそう言うと皆乾杯して飲み始めた。
 後期も無事試験を終えて後は卒業式までのんびり過ごすだけになった。
 卒業式が終ったら皆で長崎に旅行に行く予定になっている。
 大地達はまだあと2年ある。
 4月になったら善明は社長だ。
 で、あると同時に翼の妊活が始まる事になっている。
 大変そうだな。
 僕も他人事じゃないけど。

「美希ももう妊活するの?」
「まだ式も挙げてないのに早いよ」
「本当にそう思ってる?」

 翼はこういう事はやけに勘が働く。
 だけど僕には教えてくれなかった。

「空も大変なことになったね」
 
 善明がそう言っている。

「それでも決めた事だから」

 ただこれから式の段取りとかどうしよう?と父さんに相談したけど「その心配はしなくていいよ」とだけ返してきた。
 どういう意味だろう。
 今日も天音や遊達が騒いでいる。
 遊達も結婚した割にはあまり変わらない。
 そういう物なのだろうか?

「空は大丈夫なのか?」

 学が聞いてきた。
 水奈は紗理奈達と騒いでいる。
 学が聞きたいのは仕事をしながらSHをまとめていかなければならない事だろう。
 大学生達は大地に、高校生は純也に任せる事にした。
 困ったことがあれば連絡して欲しいとだけ言ってある。

「空も大役を任せられたね」

 今や怒らせたら地元を焼け野原にしかねない勢力を持つSH。
 こういうのを眠れる獅子というらしい。
 誰も怒らせるのを恐れてSHに手出しする愚か者はいなくなった。
 しかし今度はSHの名前を利用して悪だくみをする輩が増えた。
 FGにもちょっかいを出しているらしい。
 茜が絶えずSHのチャットログを監視している。
 何かあれば僕達に教えてくれる。
 後は僕に判断を委ねるらしい。

「王の仰せのままに」

 いい加減そのネタ止めて欲しいんだけど。
 勧誘活動はしなくていいと言っておいた。
 今でも全体を把握できないのにこれ以上大きくなっても困る。
 
「もはやSHに敵なしだな!」

 遊達はそう言って騒いでいる。

「いっそのこと天下狙うか?」

 光太もテンションが高い。
 
「今のままで十分だよ」

 今でも危ういのにこれ以上デカくなったら分裂は避けられないだろう。
 こうして偶に飲み会をして騒いでるくらいのグループで十分だ。

「その割には空は騒いでないじゃないか」

 遊と粋と天が言う。
 
「まあ、2次会はカラオケ行くんだろ?」
「それでいいんじゃないかな」

 また風俗とか行って美希の機嫌を損ねたくない。
 そういっても最近の美希は上機嫌だ。
 
「遊達もやっとなずな達に気づかうようになったんだね」

 美希がそういう。
 僕もそう思っていた。
 けど、2次会のカラオケに行くと早速始まる。
 遊が端末で入力していく。

「やっぱりSHの定番はこれだろ!」

 イントロが流れると曲が中断された。

「遊はいい加減にしないとこの指輪つき返すよ!」

 女子がアイドルグループの曲を歌うと粋達が踊り出す。
 天は懐かしいラブソングを歌って皆から「キモい」と言われる。
 僕と翼は料理を食べていた。

「空はどうなんだ?」

 光太と善明と学が来る。
 美希は翼達と一緒にはしゃいでる。

「何が?」
「お前も婚約したんだろ?色々不満とかないのか?」
「ないよ」

 光太が言うと僕は即答した。
 最近になってますます幸せを感じるようになった。
 美希から溢れて来る幸せが僕に伝わってくる。
 
「美希も幸せってことか?」
「多分そうだと思う」

 不満を聞いたこともないし、なんかいつも嬉しそうにしている。
 たまに一人で実家に帰ってるくらいだ。

「それって本当に実家に行ってるのか?」
「どういう意味?」
「美希が何か隠してるって言ってたろ?ひょっとして……」

 浮気じゃないのか?と光太が言う。
 そういわれると不安になる。
 それを美希が察したらしい。
 いつの間にか隣に来て僕の頭を小突く。

「空は私を信用してくれないの?」
「い、いや。光太に言われて急に不安になってさ」
「そういう事は絶対ない。なんなら母さんに電話で確認すればいいじゃない」

 あ、そっか。

「光太も空に余計な事言わないで!」
「でもさ、美希が隠し事って滅多にないだろ?ちょっと心配になってさ」

 急に海外に一人で行くとか言い出さないだろうかとか色々心配らしい。

「私も空には教えてあげたいんだけど母さんが絶対に言ったらだめって言うから」

 美希の母さんも噛んでるのか?

「空は余計な心配しなくていい。そのうち愛莉から教えてもらえるはずだから」

 忘れたの?卒業したら最後の贈り物があるって。
 翼が言うと思いだした。
 ああ、その事か。

「分かった」

 でもどうして美希には教えて、僕には教えてくれないのか?
 それがどうしても気がかりだった。
 だけど今はそんな事は忘れて楽しむことにした。
 朝まで騒いで始発で帰る。

「空、ごめんね」

 美希がベッドの中で言う。

「何が?」
「私も空に教えてあげたいんだけど、後で教えた方がきっと空が喜ぶと思うから」
「……美希がそう思ってるなら信じるよ」
「ありがとう」

 もう少しで僕達は学生という身分を失う。
 自分たちで稼いで自分たちで生活しなければならない。
 だからもう少しだけ楽しんでおこう。
 美希と最後の春休みの過ごし方を考えながら眠りについた。
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