姉妹チート

和希

文字の大きさ
237 / 535

愛しい微笑み

しおりを挟む
(1)

「ねえ、誠司。ちょっといいかな?」
「どうした?」

 何となく察してしまったけど聞いてみた。

「冴の事大丈夫なの?」
「大丈夫だろ?前にも言ったろ?」

 どうせ冴と一緒になるんだろうから、今何をしていても一緒だろ?
 しかしいつもと冬吾の様子が違う。

「誠司最近ちゃんと冴を見てるか?」

 冬吾には冴がおかしい様に見えるらしい。

「去年の修学旅行の時にも言ったけど、誠司は少しやり過ぎだ。そんなんじゃ……」
「だから心配しなくても大丈夫だって言ってるだろ!」
「そんな扱いしてたらいくら冴でも取り返しつかなくなるかもしれないよ」
「問題ないって何度も言わせるな!」

 同じ事を何度も言う冬吾に段々腹が立っていた。

「そんなに冴が気になるならお前が冴と付き合えばいいだろ!?」

 すると冬吾が俺に怒鳴りつけた。

「いい加減にしろ!お前冴の事好きじゃないのか!」

 その声はクラス中に響き渡った。

「どうしたの!?冬吾君」

 瞳子が冬吾を宥める。

「……ごめん。熱くなり過ぎた」

 そう言って冬吾は席に戻る。
 一人でイラついて一人で落ち着く冬吾が許せなかった。
 だから気づかなかった。
 そんな騒動を起こしても全く気にもかけてない冴に。
 その日の練習は最悪だった。
 何度冬吾にパスを渡しても冬吾は返してくる。

「今のは隼人がフリーだったろ!?」

 もっときついマークが冬吾についたらどうするんだ?
 俺の選択肢は冬吾だけでいいのか? 
 だけど、冬吾は自分でマーク振り切るだろ?
 俺に対する当てつけかよ!
 そんな気持ちで練習を続けていたら父さんが練習を止める。

「誠司、替われ」

 冬吾のせいだ。
 あのバカ……。

「お前今自分の失態は冬吾のせいだと思ってるだろ?」

 父さんが突然話しかけてきた。
 父さんまで冬吾の味方なのか?

「……冬吾のプレイよく見てみろ」

 父さんに言われて冬吾を見る。
 冬吾に何人もマークがつく。
 それでも冬吾は振り切る。
 そのカバーにさらにDFが入る。
 当然隼人達が手薄になる。

「冬吾一人で同年齢のDFなら軽く振り切るだろう」

 じゃあ、俺のプレイであってるじゃないか。

「冬吾は冬夜に言われたそうだ」

 俺や隼人に頼り過ぎてないか?
 自分で積極的にプレイに参加する意欲を持ちなさい。
 いつでも、冬吾の替わりはいる。
 練習だからって手を抜くな。
 冬吾がこの先サッカーで生きていくなら大切な事だ。
 きつい練習に耐えてこそ試合で勝ち残れるんだ。
 そのプレイで存在意義を示せ。

「お前が冬吾にしかパスを出さないと相手にバレたら、お前は使い物にならない」
 
 現にお前の代わりの選手は他にボールを散らしているだろ。
 冬吾が俺にパスの選択肢を増やしてくれるならお前は冬吾を活かした選択をしろ。
 父さんはそう言った。

「冬吾の父さんの時もそうだったけど、冬吾がボールを保持するのが一番怖いんだ。逆に言うとそれだけ味方も頼りたくなる」

 だけど今は60分。
 いずれは90分。
 フルでそんなプレイをしていたら冬吾の持ち味が消えてしまうかもしれない。
 どういうプレイを冬吾にさせるかが俺のプレイだと言う。

「言ったろ。冬吾を使いこなせるのは誠司だけだ」

 学校で何があったかどうかは知らないけど、冬吾は私情を一切サッカーに持ち込まない。
 気持ちを切り替えて集中してる。
 冬吾の父親に似て「ゾーン」を作り出すのがうまいらしい。
 頃合いを見て俺をまた戻す。

「集中してプレイしなさい」

 父さんが言う。
 その後は父さんの意見を受け入れてプレイした。
 俺から直接冬吾に渡すだけじゃない。
 隼人や他の選手を経由して最後は冬吾につなぐ戦術。
 あれ?
 俺、最初はそうだったじゃないか。
 勝ち進んで調子に乗ってただけなのか。
 冬吾はそれに気づいていた。
 親友だけど、じゃない。
 親友だからこそ冬吾は俺に厳しくあたるんだ。
 納得いくプレイをしないとダメだから。
 上手く連携が取れるようになったころ練習は終った。
 練習が終わると俺は冬吾のそばにいく。

「今日は悪かった……」
「ポストには隼人がいる。両サイドだって必死に走ってくる。選択肢は僕だけじゃないはずだよ」
「それもあるけど……」
「冴の事は僕も悪かった。2人の問題だし僕が口出ししていい事じゃないよね」

 冬吾はあまり気にかけていないらしい。
 家に帰ると夕食を済ませて風呂に入る。
 部屋に戻るとスマホを手にする。
 冬吾の言う通り偶には冴と話をするか。
 しかし冴のスマホは通話中だった。
 何か立て込んでいるのだろうか?
 そのくらいにしか考えていなかった。
 俺は運命というにも時に逃げていただけだった。
 そう気づいた時にはもう戻る事の出来ない状況に立っていた。

(2)

「善明、今日は早く帰ってきて欲しいんだけど」

 翼からの呼び出し。
 会社中が慌てる。
 僕に残業させられない。
 なんかの漫画であったね。
 コールをしたらその島ごと焼きつくしてしまう禁断の要請。
 それに近い恐怖が翼の呼び出しにはあった。
 しかしおかしい。
 今日の献立は別に普通だった。
 まあ、献立関係なく今は緊急事態宣言みたいなものだけど。
 何かあったのは間違いないようだ。
 それがどうでもいい事かどうかは僕が決める事じゃない。
 翼が決める事だ。
 とりあえず定時を過ぎると真っ先に帰った。
 家に帰ると翼が待っていた。

「善明の実家に行きたいんだけど」
「何かあったのかい?」
「うん、先に晶さんに伝えるのが筋だろうし」

 翼は嬉しそうにしている。
 まさか……
 慎重に運転して実家に帰る。
 翼は前もって母さんに話をしていたらしい。
 家には母さんの他に翼の母親も着ていた。
 この流れは多分間違いないだろう。
 僕達はリビングでソファに腰かける。

「で、何があったの?翼」

 母さんが話した。
 翼はにこりと笑って答えた。

「ちょうど3ヶ月になるそうです」
「よく頑張ったわね。翼」

 翼の母さんは言った。
 翼の話によると三つ子らしい。
 男の子と女の子が2人。
 最近食欲なさそうだったし、家に帰っても気だるそうだった。
 もしかして……とは思っていたんだけど。
 
「晶に任せるのが道理なのかな?」
「初産だし愛莉の方が翼も安心するんじゃないの?」

 僕がいない間誰が翼の世話をするかで相談していた。
 結果二人で時間が空いた時に様子を見に行くと言う事で話がついた。
 父さんは「翼は一時実家に帰っておいた方がいいんじゃないかい?」とは言わなかった。

「善明は妊娠中の嫁の世話をする気がないの!?」
 
 そう言われることを悟っていたのだろう。
 なぜなら自分がその経験をしているだろうから。
 下手をすればまた地元の失業率を上げることになる。
 
「じゃあ、今夜はお祝いね」

 もちろん翼は飲まなかったけど、僕もジュースにしておいた。
 翼が出産するまでは控えておこうと決めておいた。
 夕食を終えると家に帰る。

「今どんな気持ち?」
 
 翼が聞いてきた。

「複雑な気持ちだよ」

 間違っても「勝手に子供作るな」とは思わない。
 折角子供が出来たのに顔も見ることなくあのアニメより悲惨な死を迎えるだろうから。
 しかし、それはこれからも続く。
 身重の翼を放って仕事なんて真似したらただじゃ済まないだろう。

「翼も頑張ったね」
「私だけじゃないよ」

 僕の協力があったから舞い降りた奇跡だという。

「子供の名前も決めないとですね」
「そうだね」
「男の子は善明に似た素敵な子になるといいね」

 きっと女性に頭の上がらない子が出来るよ。
 間違っても恋人にむかって「お前を殺す」なんて言い出さないことを祈るよ。
 そんな事を母さんに知られたら僕は子供を失ってしまう。

「女の子も翼に似てきっと素敵な子が産まれるよ」

 色んな意味で凄い子になるだろうね。
 タバコだけは吸わないように気をつけないと。

「でもよかった。善明に喜んでもらえて」

 喜ばないと僕が亡き者になってしまう。
 とりあえず僕の命は首の皮一枚でつながったとホッとしてるよ。
 しかし問題はこれからだ。
 色々準備をしないといけない。
 僕も翼に付き合わなければならない。
 会社としては大変な事になるだろう。

「お前の命はあらゆる意味で貴重なのだから大事にしなさい」

 僕が父さんに言われた事をそのまま伝えるんだろうな。

「いつ頃生まれるんだい?」

 翼に聞いてみた。

「来年の4月頃だそうです」
「気をつけておくれ」
「わかってます。母さんも見に来てくれるみたいだから」
 
 翼に子供が出来た。
 天音は悔しがっているみたいだ。

「大地!あなたなにやってるの!?」
「大地は悪くないんです。私に付き合ってくれてるし」

 予想とは裏腹に落ち込んでいる天音。
 そんな天音を支えるのが大地の役目でしょ!と大地の母親から怒られたそうだ。
 すこしでも地元経済の被害が減るといいな。
 そんな事を考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...