姉妹チート

和希

文字の大きさ
257 / 535

ショウウィンドウの未来

しおりを挟む
(1)

「おかえり……って大地お前何やってんだ!?」

 私は大地を迎えようと玄関に向かうと結莉に銃を向けている大地を見て慌てて叫んだ。

「あ、ただいま……ごめん」
「お前は娘を射殺する気か!?」

 そんなことしたらお前自分の母親に射殺されるぞ!

「本当にごめん。つい癖で反射的に……」
「結莉の奴何やったんだ?」

 私が大地に聞くと大地が説明した。
 大地が「ただいま~」とドアを開けると、大地の帰る時間を把握していた結莉が待ち構えていた。
 ……水鉄砲を持って。

「がっでむ」

 そう言って結莉が水鉄砲を大地に向けたのでとっさに懐に手がいったらしい。
 石原家の人間ってそういうものなのか。
 まあ、結莉もこういう玩具が好きになったみたいだからな。
 それよりも大地が悩んでいた。

「どうしたんだ?」
「いや、普通僕が銃を向けたら……結莉くらいの歳なら泣くよね?」

 そう言ってきゃっきゃと大地の持っている銃に興味を示している結莉を見ていた。
 
「別にいいんじゃね?」
「本当にいいのかな?」

 大地は悩んでいる。
 でも……

「どうせ小学校に入る前に訓練するんだろ?」

 慣れておくのもいいんじゃないのか?

「それは日本の親の意見としてはどうなんだろうと思ってさ」
「心配するな、ちゃんと普段から見てるよ」

 間違っても一般市民に銃を乱射するような娘には育てない。
 茉莉は暇そうにテレビを見ている。
 多分理解はしてないと思う。
 よく分からない、なんか色々しかけを施して最後のオチが無い番組を見ていた。
 茉莉は私がゲームをしていると喜ぶ。
 もちろん結莉もだけど。
 だって糞詰まらないワイドショー見ててもしょうがないだろ?
 まあ、暇なときは美穂達が遊びにくるけど。
 愛莉が来るときは控えてる。
 そんなもの子供の前でしてたら何を言われるかわかったもんじゃない。
 まあ、結莉の行動と言動を見てたら手遅れな気がしないでもない。
 とりあえず大地が着替えてる間に夕食を仕上げる。
 そして夕食を食べる。
 茉莉達くらいには「後追い」を始めるらしい。
 しかし全くその気がない。
 出かけようとすると玄関までついてくるくらいだ。
 家に置き去りにして出かけるなんて真似はしないけど。
 いろいろな意味で不安があった。
 子供だけ置いておいたら不安で泣き出すとかもあったけど、玄関に何か細工をするくらいの知恵をつけ始めた。
 普通はそんな事全くないらしい。
 いないいないばあっってすると結莉も茉莉も普通に喜ぶ。
 ただしばあって顔を見せた瞬間拳を顔面に当てて来るくらいのことはする。
 それをもろに食らった愛莉は色々ショックだったみたいで落ち込んでいた。

「私にもしてくるから心配するな」
「違う意味で心配してるの」

 愛莉の育児の経験では私や翼でもそんな事はしなかったらしい。
 某映画の”地獄で会おうぜベイベー”ってセリフを聞くと喜んでいる。
 愛莉が来た時に言いださないかヒヤヒヤしていた。
 結莉達の食事も大分変った。
 段階的には”手で掴んで食べる”はずなのだが、二人とも器用にフォークやスプーンを使って食べる。
 さすがにナイフは持たせてない。
 嬉々として振り回して遊びだすから。
 まあ、キレてフォークを腕に刺した父親の娘だからそうなるんだろうな。
 私なら素手で埋めて来るけど。
 好き嫌いもあまりしない。
 私が二人の前で食べてみせると”それは食べ物だ”と理解して食べ始める。
 さすがに固いものはまだ無理みたいだけど一生懸命に噛んでいる。
 それを取って細かく切ってやって食べさせる。

「良いか、好き嫌いしないで一杯食べろよ。おっぱいが大きくならないぞ」

 私は例外だったけど……うぬぬ。
 食事が終ると私が片付けている間に大地が2人を風呂に入れる。
 片付けて私が風呂に入ってる間に大地が2人を寝かしつける。
 大地は寝かしつけるのがうまい。
 茉莉ですら素直に寝るようになった。
 多分大地が読んでる絵本が詰まらないんだろう。
 誰一人死なない、いたって健全な幼児の絵本だから。
 二人には刺激が足りないらしい。
 大地が2人を寝かしつけるとリビングでテレビを見ていた。
 東京のギャングの話。
 最後は主人公がボコボコになってまでして抗争を収める話。
 私だったら言う事を聞かない時点で両者平等に埋めてるけどな。

「暴れ足りない奴がいるなら来い!俺達が相手をしてやる!」

 そんなセリフがあったな。

「ねえ、天音」
「どうした?」

 やっぱ大地もつまらなかったか?

「娘の入浴を父親がするってどうなの?」
「お前は育児を手伝ってくれないのか?」
「そうじゃなくてさ」

 父親に裸を見られて平気なの?

「お前ロリコンだったのか!?」

 まさか……

「お前が私を選んだのはロリコンだからか!?」

 ぺちゃぱいが好きなのか?

「ち、違うよ!」

 必死に否定する大地。

「そうか、もしお前がそうなら私は毛くらい剃ってやるんだが」

 欧米だと割と普通らしいし。
 まあ、いいや。
 大地も本気で悩んでるみたいだし真面目に答えてやろう。

「いいか大地。そんな感情を抱く頃にはそんな記憶一切ない」

 私だってパパにオムツを変えてもらった事すら覚えてないんだから。

「だからこれだけは守ってくれ」

 絶対に入学式とか節目の時にその話を結莉達にするな。
 そんな事があったと分かると途端に恥ずかしくなる。

「わかった」

 大地は真面目に私の話を聞いていた。
 多分大地なら大丈夫だろう。

「ところで大地、結莉と茉莉は生まれたての頃よりは手がかからなくなった」
「そうだね」
「そろそろ男の子製造しないか?」
「多分そろそろ言うんじゃないかと思ってた」

 作る気があった?

「せめて結莉達が一人で寝れるようになったらにしない?」

 その頃には大地も仕事のコツを覚えてるから
 大地はそう言って笑った。

「仕事で育児の手伝いしてくれないと言ったら殺すぞ?」
「天音にじゃなくて母さんに殺されるよ」

 良くて他の会社がつぶれる事になるのは善明と同じだ。

「分かった」
「じゃあ、そろそろ寝ようか?」
「嫌だ」
「え?」

 本当に私の旦那なのか?
 私の気持ちくらい読んでくれ。

「言ったろ?子供達は生まれたて程手間がかからない」

 不思議なくらいに夜泣きもしない。
 爆睡してる。
 そうなるまで遊ばせてるからな。

「大地は忘れてないか?私はお前の嫁だぞ?」

 私だって女だぞ。
 大地はやっとわかってくれた。

「あまり音立てないでね」
「私の声を聞いても興奮しないのか?」
「まだ結莉達に聞かせていいものじゃないだろ?」

 起こさないようにしないと。

「わかったよ」

「これから皆さんに殺し合いをしてもらいまーす」なんて映画見てる結莉達にどんな意味があるのか分からないけど。

(2)

「善明さんどこに行くの?今日は空達が遊びに来るって言ったはずだよ?」

 玄関で翼に捕まった。
 まずい……
 取りあえず翼に説明した。
 僕はSAPだけでなくリゾートホテルも任されている。
 そこにお偉いさんが宿泊したらしい。
 もっと高級なホテルに泊まればいいのに。
 それなのに会長の僕が挨拶に来ないなんて無礼じゃないのか?
 そう客先から電話がかかって来た。
 で、慌てて今から行くところだ。

「今日は休日だよ!そんな時に自分だけ久住まで行くつもりだったの!?」

 遊びに行くわけじゃないんだよ。わかっておくれ。
 ただでさえ20代の若造程度がって言われてるからね。
 しかしそんな僕の事情など翼には関係なかった。
 佐瀬さんに電話する。

「佐瀬さん!主人に休日出勤させるってどういうつもり!?」
「え!?」

 佐瀬さんも知らなかったらしい。
 客先は僕に直接電話したそうだ。
 無謀な事をしてくれるよ。
 佐瀬さんは僕に出向く必要は無いと言った。
 後は穏便に任せてくれるだろう。
 だけど客は余程自殺願望があるようだった。

「お宅は息子さんにどういう躾をしてるんですか!?」

 そんな事を父さんに怒鳴りつけようとしたらしい。 
 しかし間が悪かった。
 休日の日は父さんのスマホはプライベート用のだけ持たされて仕事用のは母さんが持っている。
 母さんの逆鱗に触れた。

「あなた程度の雑魚に息子の休日を邪魔する権利はない!」

 逆に母さんが客先を怒鳴りつけたらしい。
 そして僕に母さんから電話がかかってくる。

「この程度の雑魚におたおたするような息子に育てた覚えはないわよ!」

 父さんも必死に宥めたらしい。
 いつの間にか僕の肩書は社長から会長に変わっていたようだ。
 恐ろしい世の中だね。

「善明もしっかりして!」

 翼にも怒られた。
 落ち着いたころに呼び鈴が鳴る。
 相手が誰か分かっていたので翼はすぐに出た。
 大地と天音が子供を抱えていた。
 空と美希も子供を抱えている。

「いらっしゃい」

 翼が家に招く。
 大地が抱えていた結莉ちゃんが僕の顔を見て言う。

「ガッデム」

 間違いなく天音の教育のたまものだね。
 慌てて謝る大地。
 僕は笑うしかなかった。
 翼と天音と美希は子供達を見ながら話をしていた。
 意味が分かっているのだろうか?
 結莉と茉莉はじっと聞いていた。
 そうかと思ったら面白くなかったのだろう。
 床にごろ寝しだした。

「ああ、こうなったら起こすまで寝てるから大丈夫」

 天音が言う。
 比呂は初めてくるこの家の光景に興味を持って、うろうろ見て回ってる。
 ただし、美希から離れてはいけないことは理解しているみたいだった。
 結は結莉達と同じように眠っている。
 双子なのにやけに極端な二人だな。
 陽葵と菫は結莉と茉莉に興味をしめしたようだ。
 ちょっかいを出して二人を起こし、機嫌を損ねた結莉や茉莉と揉みあいをしている。
 秋久はそんな4人から距離を置いて眺めていた。
 僕も大地と空と話をしていた。
 結莉と茉莉は大地の事はちゃんと父親として慕っているけど行動が過激らしい。
 鎌で首を切る映画とかを見てたらそうもなるだろうね。
 末は天音をも超える問題児になるんじゃないか?
 
「善明の方はどう?」
「小さい頃の僕を見ているようだよ」

 姉二人にいいように玩具にされる秋久。
 抵抗せずになすがままにされている秋久。
 すでに”諦め”という言葉を覚えてしまったようだ。
 さすがにまだ「ガッデム」は無いよ。
 翼はそれが気になるらしいけど。
 そんな様子を父さんが見て苦笑してたよ。
 僕は当時どうだったか父さんに聞いてみた。

「お前は一人息子だったからね」

 それでも祈が生まれると祈に逆らえなかったらしい。
 そう言えば祈は今どうしてるんだろうか?

「僕は姉さんの玩具だったみたいです」

 大地がぼそりと呟く。
 それは見てれば何となく分かってたけど敢えて言わなかった。
 結莉は大地から聞いた話だと銃を向けてもはしゃいでいたらしいからね。
 その話は美希にはしないようにしてたけど、天音が教えたらしい。
 美希が大地を叱っていた。

「あなた自分の娘に何やってるの!?母さんが知ったら大事よ!」

 多分どこぞの国で銃殺されかねないね。
 さすがに自分の弟の訃報を聞きたくなかったから母親には言わなかったそうだ。

「で、天音はやっぱり男の子出来るまで頑張るの?」
「ああ、そのつもり。きっとすごい男の子になるぜ」

 天音の性質を持って大地の能力を継いだら大事だね。
 一人で軍隊を潰しかねない。

「そういえば似非SHの件はどうなったの?」

 翼が聞いていた。

「私もそれ気になった。純也が忙しいみたいだけど」

 天音も気になったそうだ。
 純也はセイクリッドハート狩りに忙しいようだ。
 SHと口にしたやつを片っ端から半殺しにしてるらしい。
 そりゃ大変だろうね。
 しかし美希はそうじゃなかった。

「大地!あなた純也に任せっきりで何やってるの!?」

 年上のあなたが協力してあげなくてどうするの?
 一人ずつやっててもらちが開かないでしょ!?
 美希は大学の構内に私兵を派遣するつもりらしい。

「そんなの兵隊使えばいいじゃないですか?」

 あっさり言うけどここ日本だよ?
 決して異世界転生とかじゃないんだよ?
 そんな異世界転生のような状態を父さん達は体験したみたいだけど。

「そう言う事なら私も混ぜてくれ」

 一番混ざっちゃいけないような気がする天音が言い出した。
 子供は天音の母さんに預けるらしい。
 一回だけでいいからRPG撃ちたいんだそうだ。
 大学はそういう場所じゃないんだよ?
 大地も何もしてないわけじゃないらしい。
 大事になったらもみ消しを図っているそうだ。
 事件を無かったことにするんじゃない。
 事件の被害者が存在しなかったことにするんだそうだ。
 もうやりたい放題だね。
 茉莉と結莉達が「お腹空いた~」という頃大地達は帰っていった。
 二人の将来がとても不安だけど……。

「ねえ、善明」

 翼が何か気がかりな事があるようだ。

「どうしたんだい?」
「美希の息子の結だけど……」

 翼の父親が聞いてもないのに名前を当てたという話を聞いて、気になって様子を見ていたらしい。

「それでどうだったんだい?」
「あの子……心がない」

 へ?
 普通なら見慣れないこの家に来たら警戒するか興味を持つかのどちらか。
 だけど結はどちらでもなかった。
 しかも寝ているように見せかけているだけど常に僕達の話を聞いていた。
 興味とか言う優しい言葉じゃない。
 ここがどういう場所で僕達が何者なのか?
 そういう情報を常に集めている。
 部屋でただ寝ているだけじゃなかった。
 どこが死角なのか?その死角の向こう側を何かを使って偵察している。
 生まれて間もないのにすでに無数の能力を開花させている。
 美希の育て方一つでは、空でも手に負えない存在になるかもしれない。
 さすがは空の子供ってところか。

「私達も負けてられないね」

 そう言ってにこりと笑う翼。
 
「僕は無事に育ってくれたらいいよ」
 
 お願いだから無茶苦茶な能力をつけないでおくれ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...