姉妹チート

和希

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遥かなる日々

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(1)

 報せを受けてすぐに病院に向かいたかったけど、残務を急いで終わらせる。
 家には寄らずに真っ直ぐに病院に向かう。
 分娩室の前には美穂の両親がきていた。

「まだもう少しかかるみたい」

 美穂のお母さんが言った。
 俺が駆けつけてから3時間くらい経った頃だった。
 鳴き声が聞こえてくる。
 分娩室の扉が開いた。
 
「立派な男の子ですよ」
 
 まだ目も開いてない赤子を見る。
 これが俺の子供か。
 子供も大事だけどそれより気になるのは美穂の状態。
 
「今は少し眠ってます。もう少し様子を見て病室にもどしますので」

 看護師はそう言った。

「瑛一さんは名前は考えているの?」

 美穂のお母さんが聞いてきた。
 多分男の子のような気がしたので一応考えいた。
 ただ俺一人で決めていいのか迷っていた。

「美穂と相談します」
「それもいいかもしれないわね」

 そんな話をしていると美穂が病室に戻る。
 まだ眠っていたけど赤ちゃんが泣きだしたので美穂が起きる。

「あ、瑛一来てたんだ」
「立ち会ってやれなくて済まない」
「仕事なんだからしょうがないよ」

 それより赤ちゃんお腹空いたんでしょ?
 授乳させてあげないと。
 美穂はそう言って隣にあるベビーベッドに寝ている赤ちゃんを抱える。

「大丈夫か?」
「このくらい出来ないと話にならないでしょ」

 美穂はそう言って赤ちゃんに乳をやっていた。
 その間美穂の両親は外で待っていた。

「で、瑛一名前どうしよう?」
「一応考えてはいるんだ」
「じゃ、それでいいよ。なんて名前?」
「いいのか?」
「瑛一の子供でもあるんだから」
「……瑛斗」
「よろしくね……瑛斗」

 美穂は嬉しそうに自分の子を見ていた。
 それからしばらくは母体が回復するまでは安静にしていた方がいいらしいので入院させておいた。
 その間に美穂の友達の美砂と絢香も子供が生まれたらしい。
 出産祝いにと同僚に飲みに誘われたけど、美穂が大変な時期にさすがに無理だ。
 それに、俺も赤ちゃんに会いたい。
 帰りに病院に寄って美穂達と面会して帰る。
 休日は一日美穂に付き合ってやろうと思って朝から病院に行った。
 すると美穂の友達の石原天音達がいた。

「先生おひさー」

 そう言って笑う天音の腕には赤ちゃんが抱えられていた。
 旦那の大地も抱えている。
 まだ首が座っていないらしいけどそれなりに肉はついて来たみたいだ。
 天音が色々美穂に教えていたらしい。

「旦那と2人っきりの方がいいだろうからゆっくり過ごせ」

 そう言って天音達が帰っていく。

「なんか欲しいのあるなら買ってくるけど」
「じゃあ、お菓子とかいいかな」
「わかった」

 美穂が欲しい物を買ってきてやって3人で話をする。
 まだ話すことが出来ない瑛斗はじっと俺を見ている。
 まだ父親だと認識してないらしい。

「瑛一頑張ってね」

 美穂はそう言って笑っていた。
 それからしばらくして医師の許可が出ると退院する。
 瑛斗が初めて我が家に来る。
 美穂の見舞いをしながら瑛斗の部屋の準備をしておいた。
 すると美穂は笑った。

「しばらくはそばに置いておかないと授乳の間隔も短いからって天音が言ってた」
 
 部屋を別にするにはまだ早いようだ。
 慌ててベビーベッドを移動させる。

「あんまり夜泣きはしない子みたいだけど瑛一一緒で大丈夫?」

 寝不足で仕事ができないとかならない?
 美穂はそんな心配をしていた。

「ここで瑛斗に覚えてもらわなかったら、俺は一生他人だぞ」

 そう言って美穂の頭を撫でる。

「それもそうだね」

 俺が仕事に行っている間は美穂の母親が着てくれるらしい。
 俺の母さんも見に来ると言っていた。
 これからは美穂だけじゃなくて瑛斗の人生も背負わなければならないんだな。
 美穂の友達もこれから先どんどん子供を作っていくんだろう。
 悲しみの夜は越えた。
 迎えるのは喜びの朝。
 そう思っていた。

(2)

「うぅ……」

 私はいつものメンバーで久々に美嘉の家にランチに来ていた。

「どうした?愛莉またなんか悩みか?」

 神奈が聞いてきた。

「ひょっとして茉莉と結莉の事?」
 
 恵美が聞くと私は頷いた。

「あの二人なら順調に育ってるじゃない」
「そうなんだけど……」
「その様子だと天音が原因か?」

 神奈が言うと私は頷いて話を始めた。
 それはある日の事。
 いつものように天音の家に手伝いに行っていた。
 大分家事もやれるようになったから、天音に任せても大丈夫かなと思っていたころだった。
 天音はリビングで絵本を読んで茉莉と結莉に聞かせているようだった。
 そこまでは普通だった。
 話を聞いていると嫌な予感がしてきた。

「今から殺し合いをしてもらいます」

 食器を洗っている手が止まった。
 天音の話を聞いていた。
 ボウガンで人を撃ったり、鉈をもった人間ともつれ合いになって自分の頭に鉈が刺さったり、鎌で首を切ったり。
 これはまずいと思って天音に声をかけた。

「天音は何を読んでるの!?」
 
 天音はこっちを見ると平然と答えた。

「本だけど?本の話を聞かせて眠らせた方がいいんだろ?」
「その本を貸しなさい」
「いいけど」

 天音にまったく悪意はなかったようだ。
 だから余計に質が悪い。
 天音の持っていた本は黒くて分厚い文庫本。
 こんな内容の物が絵本になるわけがない。
 孤島に閉じ込められたとある中学校の一クラスが最後の一人になるまで殺し合いを続けるゲーム。
 
「あなた自分の子供に何て本を読ませてるの!?」

 普通に絵本を買ってあげたでしょ!?

「だってあれ読んでると私の方が先に眠くなるんだ」

 それに私の買った絵本だってアンパン男が自分の頭をもいで「僕の顔をあげるよ」って文章にしたらただのホラーじゃないか。
 少しくらい過激な本の方がいいんじゃないのか?
 その証拠に茉莉も結莉も喜んでるだろ?
 天音は悪びれも無くそう反論する。
 天音は胎教と言ってデスメタルを聞かせたり、自分が詰まらないからと女の子が鉈を振り回すアニメを見たりしていた。
 この程度なら普通なんだろう。
 天音はそういう子だ。
 そこはもう仕方ないけど、問題は茉莉も結莉もそれに興味を示して目を輝かせている事。
 どういう子になるか不安で仕方ない。

「やっぱり天音だとそうなるのか……」

 神奈が言う。

「愛莉ちゃんもそういう事があったのね」
「って事は恵美が行った時もなんかあったの?」

 私が恵美に聞いていた。
 それは恵美が様子を見に行っていた時の事だった。
 寝室から銃声が聞こえる。
 何があった!?と恵美が寝室に行くと天音がバトロワ系と言われるゲームをやっていた。
 銃などを拾って殺しあいながら一位を競う対人ゲーム。
 茉莉と結莉が寝てる間に天音が遊んでいたらしい。
 しかし茉莉と結莉はその音に反応して目を覚ました。
 そしてそれを気にしているみたいで一生懸命に体を傾けようとしていた。
 寝返りはまだできないけどじたばたする頃だ。

「ぱーぱー」

 そんな風に喜んで聞いていたらしい。
 恵美は慌てて天音に報せる。
 すぐにゲームを止めたらしい。

「2人ともこういうの好きなんだな」

 それが天音の感想だった。
 そう言えば天音も冬夜さんのゲームを見ながら育って来た。
 翼はあまり興味を示さなかったけど。
 やはり天音の血が強いのだろうか?
 恵美はもう少し大きくなったら護身術を2人に仕込むつもりだったらしい。
 恵美の家も大きい反面敵も多い。
 大地も誘拐されたそうだ。
 美希の時はSPを常につけていたけど、護身術くらいは習わせていた。
 しかし茉莉と結莉にそれをするのは危険じゃないか?
 でも今しなかったからと言って問題が解決するわけじゃない。
 天音達は男の子が欲しいらしい。
 石原家の男子だ。
 相応の特訓を受ける。
 そうなった時に茉莉と結莉が興味を示す可能性は大いにある。

「やっぱり小さいときの教育って苦労するよな」

 神奈が言う。
 神奈が油断していた結果が今の誠司だ。
 その分崇博達には十分注意したらしい。
 だから今のところ問題はない。
 子供は何を見て成長するかで全然変わってくる。
 その証拠に何も特に問題なかったと思えた冬眞まで怒らせると手の付けられない性格になってしまった。
 冬夜さんに相談しても「あの子達は石原君の家の子だろ?」と色々口出しするつもりはないらしい。
 私が心配し過ぎなのだろうか?

「大地も心配してたの。やっぱり天音ちゃんがゲームをしてる時やアニメを見てる時、茉莉達の目が輝いてるって」

 大地は注意してるらしい。
 銃のメンテをしてる時は茉莉達が見えないところでやってるそうだ。
 そもそもそんな事をする必要があるのかが疑問だけど。

「愛莉考え過ぎだ。そういうのが好きなだけって話だろ?」

 美嘉さんが来た。
 美嘉さんだって高校生の時にCQCを友達と遊んでいて学んだらしい。
 でもそれを誰彼構わず使うわけじゃなかった。
 そういう物に興味があるってだけで判断したらいけない。
 問題はそれを誰に向けて使うかが問題。
 その善悪の判断をしっかり教えてやれば問題ない。
 美嘉さんはそう言った。

「気に入らない奴は海に沈めてやる!」

 そんな事を言ってた天音の善悪の基準が凄く恐ろしいけど。

「私からも大地に注意するように言っておくから」

 恵美が言う。
 本来なら恵美が教えるべきだと思うから私はそれ以上言わなかった。

「孫の世話も大変なんだな」

 神奈はそう言った。
 家に帰ると夕飯等を済ませて冬夜さんと二人きりになると相談する。
 冬夜さんは笑っていた。

「天音の小学生時代を覚えている?」
「ええ、とても手のかかる子でした」

 毎日の様に学校に呼び出されていた。

「だけどその中に今愛莉が危惧するような事件はあったかい?」

 FGとやらが出来るまでにそんな問題起こしたかい?
 天音にも善悪の判断は出来ている。
 天音の体にはしっかりと片桐家のルールが仕込まれている。
 それを破るような子には育たないはずだよ。と、冬夜さんは言った。

「それにしてもあの本を子供に読んで聞かせるとは天音らしいね」
「他人事じゃありません!冬夜さんの孫なのですよ」
「そうだね」

 過激な子になるだろうけど、人として間違ったことは絶対にしないはず。
 それくらいは天音にだって分かっているからしっかり教育するはず。

「冬夜さんがそう言うなら私も様子を見ます」
「初孫だから愛莉が心配するのも分かるけど、天音と大地の子なんだ。あの二人の思うように育てさせるべきだ」
「……そうですね」

 冬夜さんの両親は偶に冬夜さんの判断を試していた。
 自分の息子がその子供にどういう判断をするか?
 
「それにしても子供って成長が早いね」
「え?」
「産まれた時はただ泣いて何も無いときはボーっとしていてよく分からないけど、徐々に感情を覚えて来る」
 
 それは愛莉でも分かるくらいに。

「もう愛莉が色々手を貸す必要は無いかもしれない。ここからはあの二人が試行錯誤するべきだ」
「そうですね」

 すると冬夜さんは私を抱きしめる。

「する事無くて寂しいなら僕に甘えていいんだよ」
「……はい」

 あの二人をどう育てて行くか私達は見守るだけ。
 困ってる時だけ助けてやればいい。
 冬夜さんはそう言った。
 私もそうあるべきだと思った。
 天音が完全に私の手から離れた時。
 少し寂しい思いをするけど、その分冬夜さんと一緒に過ごそう。
 そんな事を考えていた。
 だけど私達にそんな休息するにはまだ早いと運命は笑っていた。
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