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尊い思い
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(1)
「あー、あー」
「天音、こっちは任せて結莉の相手してあげなさい」
愛莉に言われて私はベッドに寝てる結莉の相手をする。
「結莉、どうした?お腹空いたか?」
「うー、うー」
まだちゃんとした言葉をしゃべれないから親がちゃんと赤ちゃんが何を伝えようとしているのか察してやらないといけない。
抱っこして欲しいのか、お腹空いたのか、構って欲しいだけなのか。
この時期の赤ちゃんだからこそ親子のコミュニケーションが大事なんだそうだ。
そしてそれは結莉だけじゃない。
茉莉も何か言っている。
「悪い大地。茉莉を頼む」
「わかった」
2人で結莉たちの相手をする。
解放されるのは結莉たちが寝てる間だけ。
まだ結莉たちの中では夜と昼の区別がついてない。
間違えると昼夜逆転して生活になってしまう。
だから結莉たちが寝てる時は明かりを消して暗くしてやったりする必要がある。
この時期のコミュニケーションで自分の両親を認識するんだそうだ。
だから大地も時間をとっては結莉たちの相手をしてた。
とてもじゃないけど家事をしてる時間が無い。
私は大地が結莉たちの相手をしてくれるからまだましな方だ。
家事は愛莉に任せていた。
実家の方は茜たちがしてくれてるらしい。
大地も色々手伝ってくれる。
しかし一つだけ大地が苦手な事がある。
それは娘二人を入浴させる事。
「自分の娘の裸くらいどうってことないだろ!それともおまえロリコンなのか!?」
ロリコンって表現も生易しいくらい異常だぞ。
そうまで言って私が食器を洗っている間に結莉たちをお風呂に入れてやる。
結莉はどうやら大地がお気に入りらしい。
大地が抱いてやるだけで泣き止んだり、上機嫌になる。
茉莉はとにかくすぐにお腹を空かせる。
2人が寝るとやっと私達も休むことが出来る。
「話は聞いてたけど育児って大変だな」
「お疲れ様」
「大地も悪いな。大変だろ?」
「輝夜が言ってたんだけど……」
多分木元輝夜の事だろう。
「娘が構って欲しい時に構ってやらないと間違いなく嫌われるってさ」
今は娘が可愛いから毎日が楽しいよ。
結莉にいたっては本当に大地にべったりだしな。
「お前私より結莉の方がいいとか言い出したら殺すぞ」
「そ、そんな父親いるわけないだろ?」
そんな父親がいるから心配なんだよ。
お前も知ってるだろ?
大地は苦笑していた。
「僕にはそんな度胸無いよ」
大地はそう返した。
知ってるよ。
パパ達もたまにやってくる。
授乳中は私は寝室に行くように愛莉に言われる。
「別にパパに見られたって平気だよ」
むしろ少し大きくなったのを見て欲しいくらいだ。
「いけません!」
愛莉が怒りだす。
素直に寝室に行く。
ある日大地が学校に行ってる間に愛莉がやってくる。
恵美さんも一緒だった。
結莉は大地がいないとなかなか大人しく寝てくれない。
3人がかりであやしている。
「本当にパパが好きなのね。結莉は」
「そうみたい。でもさ、今なら愛莉の気持ち少しだけわかったんだ」
「え?」
愛莉が聞き返す。
「娘に旦那を横取りされるって、しょうもないと分かっていても嫌だなって」
私はそう言って笑った。
「苦労はこれからですよ。もっと大きくなったら大変だから」
愛莉だって冬莉に手こずってるらしい。
「瑛大君のところじゃないけど”パパの嫁になる”なんていいださないように気をつけないとね」
恵美さんが笑っていた。
恵美さんはその後美希の所にもいかなきゃいけないと出て行った。
愛莉と2人で静かに寝ている結莉と茉莉を見ていた。
「愛莉も私が小さい時こんなんだったのか?」
「天音は小さい時からやんちゃでしたよ」
水奈と一緒の幼稚園に行くようになってから以降毎日問題を作っていたし。
そんな私を育てるのに必死だったらしい。
「今ならちゃんと言える気がするんだ。ありがとう。愛莉」
「天音も結莉たちにそう言ってもらえる日が必ずきますよ」
愛莉の気持ちをわかるのもいいけどそれよりも大切な事がある。
母親の気持ちを理解した上で、自分が子供だった頃の気持ちを思い出す事。
そうすればちゃんと娘と向き合える時が来るから。
なるほどな。
そして愛莉が夕食を作っている時に大地が帰ってくる。
結莉は大地の「ただいま」という声に反応して「あーあー」と目を覚ましてじたばたする。
大地は嬉しそうに結莉を抱え上げる。
「大人しくしてたかー?」
「あーあー」
大地の言ってる事が分かるのだろうか。
嬉しそうにしている結莉。
茉莉の方はお腹が空くと目を覚まして泣き出す。
お腹が満たされるとすぐに寝る。
茉莉はいくら授乳してもすぐにお腹を減らす。
愛莉がミルクを用意した方がいいかもと言っていた。
この二人がどんな風に育つのだろう?
私と大地は夜すやすやと寝ている二人を温かく見ていた。
(2)
ある日茉莉が泣き出した。
どうしたんだろう?
茉莉を抱きかかえると異変を感じた。
なんか熱っぽい。
慌てて体温を測る。
37度超えてる。
これってやばいんじゃないのか!?
慌てて愛莉に電話する。
「どうしたの?」
「茉莉が熱があるんだ。37度超えてる!病院連れて行った方がいいのかな?」
すると意外と愛莉は冷静だった。
「37度5分を超えていないなら安静にしておきなさい。38度を超えるようなら病院に連れて行きなさい」
赤ちゃんの平均体温は37~37度5分くらいなんだそうだ。
別に下痢とかしてないなら慌てる事はない。
泣いているのはきっと何か他の理由だろう。
愛莉がいうのでチェックしてみる。
おしりの匂いを嗅いでみたけどウンチをしている様子はない。
となると……。
私は乳を与える。
すぐに泣き止み飲みだした。
私が言わなくても生きる為に必要なエネルギーを蓄えようとしているらしい。
赤ちゃんだって成長しようと必死なんだ。
満足するとすぐに茉莉は寝た。
結莉は大地がいるだけで大体済むんだけど、茉莉は大変だった。
風呂に入るのを嫌がる、夜に突然起きて泣き出す、そのくせ朝も寝ている。
昼夜逆転してるんじゃないのか?と不安になる。
「まだ茉莉の中では昼と夜の区別がついていないだけ。心配しなくても大丈夫」
愛莉が言っていた。
大地も大分慣れて来た。
結莉をお風呂に入れるのが上手だ。
まあ、結莉が大地の事を気に入ってるからだけど。
夜泣きをしても大地が抱いてやると安心して寝る。
「仕事もあるのに悪いな」
「娘に好かれるのってそんなに悪い気しないよ」
「今からそんなんで大丈夫なのか?」
結莉だっていずれ結婚するんだぞ。
「多分父さんの時と同じだと思う」
「結婚式に泣くなんて真似すんなよ」
「……頑張るよ」
まあ、泣く気持ちも分からなくもない。
こんなに小さな頃からずっと成長していくのを見守っていくんだ。
きっと感動するんだろうな。
着替えやオムツは美穂達が出産祝いでくれたから大丈夫。
無くても大地が爆買いするから問題ないけど。
何となくだけど大地と分担して育児していた。
結莉が大地を気に入ってるのもあるんだけど、茉莉はなぜか大地に触られると泣き出す。
父親としては悲しいらしい。
私の時はどうだったんだろう?
愛莉に聞いてみた。
「そうね。天音は冬夜さんの事を好きだったみたい」
翼と取り合いをして大変だったそうだ。
「翼はお姉さんなんだから我慢しなさい」
愛莉はそう翼に言い聞かせていたそうだ。
「茉莉も大地が嫌いなわけじゃないと思う。ただ天音の方が安心するってだけ」
大地ももう少し辛抱強く茉莉に接してやればいい。
愛莉はそう言っていた。
まだ寝ているだけの2人。
少しずつだけど心が作られて行ってるのだろう。
大地も茉莉に気に入られるようにと毎日奮闘していた。
(3)
「天音ちゃん何やってるの!?」
恵美さんが叫び声をあげる。
それに気づいた愛莉もこっちを見て叫ぶ。
「天音!止めなさい!2人を殺す気なの!?」
私は不思議に思った。
普通に「高い高い!」ってやつをしてただけなんだけど。
家だと天井があるからそんなに高く出来ない。
だから偶には外出も大丈夫だろと恵美さん達と公園に遊びに来た時に思いっきり放り上げてやった。
茉莉も結莉も楽しそうだったからいいんじゃないのだろうか?
「万が一落としたらどうするの!?」
愛莉がやけに必死だったので止めた。
そして茉莉はすぐにお腹を空かすからミルクも準備しておいた。
別に結莉が食が細いわけじゃない。
結莉だってしっかり飲む。
比較して茉莉が多いだけだ。
今日は翼と美希も来ていた。
翼達も子供を連れて散歩に来ていた。
「結莉と茉莉も可愛い子だね」
翼はそう言った。
すると愛莉が言った。
「翼と天音も小さいときは可愛かったの」
小学生以降も普通にしていれば十分美少女だった。
だから愛莉は不安らしい。
「天音や翼に似てやんちゃしなければいいんだけど……」
だけど恵美さんは違うらしい。
「確かにちょっと悪戯が過ぎるところがあったけど、愛莉ちゃんは一つ忘れてる」
私も翼も間違ったことは何一つしていない。
善悪の区別はついている。
それを曲げようとする輩がいるなら排除してやればいい。
そして私に言った。
「どんな事があっても子供の主張を聞いてあげなさい。間違っていれば正せばいい。そうでないなら子供を信じてあげて」
理不尽な文句をつけて来る大人がいるなら私や大地が守ってやれ。
私は恵美さんの言葉をしっかりと聞いていた。
それは愛莉だってそうしてきたんだと思った。
翼も言う。
「大丈夫、2人ともまだ幼いからかもだけどすごい綺麗な心をしてる」
いい子に恵まれたね。
翼はそう言って笑う。
その日家に帰って大地と話をしていた。
「そうだね、天音の子だから真っ直ぐ育つよ」
「お前の子供でもあるんだぞ?」
「そうだったね」
遊び疲れて静かに寝てると思ったら、茉莉が突然泣き出す。
どうせまたお腹空いたんだろう。
「本当に天音に似てるね」
そう言って大地は笑っていた。
(4)
「あ、今日も真っ直ぐ家に帰るから」
「なんだよ!嫁さんがそんなに怖いのか!?」
「いや、そんなんじゃないって」
天音の出産が終って出産祝いと言う名の飲み会に遊達に頻繁に誘われるようになった。
だけど天音はまだ子供から手を離せない。
そんな天音を置いて飲みにいけない。
それに今最大の楽しみは我が家にある。
今日は玩具屋によっておもちゃを買って帰る。
ただ音が鳴るだけの物とかだけど。
「ただいま~」
家に帰ると天音が出迎えてくれる。
「たまには遊んで帰ってきてもいいんだぞ?」
遊とかに誘われてるみたいだしと天音が言う。
「大丈夫。それより今日はお土産があるんだ」
そう言って買って来たおもちゃを天音に見せた。
「ああ、そういうのいいかもしれないな」
喜んでもらえたようだ。
そろそろ天音も軽い家事くらいは出来るようになったみたいだ。
あくまでも無理はしたらいけないけど。
天音は食事をしながら結莉と茉莉の世話もしている。
結莉は僕の顔を見て嬉しそうにしている。
僕が先にお風呂に入って、そして天音が入ってる間に結莉と茉莉の世話をする。
茉莉は僕が抱くと不満そうに「うぅ……」と唸るような声を出す。
これでもまだましになった方だ。
僕が触るだけで泣き出す時期もあったから。
天音が風呂を出ると二人を寝かしつける。
それから時々二人の様子を見ながら天音とテレビを見てた。
すると天音が突然話し出した。
「なあ、大地」
「どうしたの?」
「少しは外ではね延ばしてもいいんだぞ?お前が不満を溜め込んでいないか私が心配だ」
夜の相手もしてやれない。
最悪風俗も許すしかないかなと悩んでいたらしい。
そんなところいったら母さんに埋められるよ。
それに……。
「前に光太が言ってた事が分かるんだ」
「光太が?」
天音が聞き返すと僕は頷いた。
どんなに仕事が大変でも家には天音や子供が待ってる。
すやすやと寝ている子供達を見てるとどんな疲れも吹き飛んでしまうんだ。
この子達の為ならどんなことでもしてみせる。
「……大地にも父親の自覚が出て来たってことか?」
「かもしれないね」
だから心配しないでいい。
天音こそたまにはママ友とランチでも行ってきたらいい。
「それは愛莉にも言われたけど、やっぱり大地と同じかな?」
やっぱり今は我が子が一番大事なんだ。と、天音は笑っていた。
「私達上手く親の役目果たせてるかな?」
「まだこれから先が長いんだから考えてる暇ないよ」
「そうだな」
天音は最近笑顔が優しくなった。
子供を見ている表情が愛おしく思えた。
どんな女性でも子供が出来ると変わるんだな。
「男の子の事はもう少し様子を見ようよ」
「いいのか?」
「せめて僕が大学卒業してからでもいいと思う」
「大地がそう言うなら私はそれに従うよ」
「そろそろ僕達も寝ようか」
夜中に子供が起きるかもしれないし。
「分かった」
そう言って天音と寝室に行く。
ベビーベッドには茉莉と結莉が幸せそうに眠っている。
僕達もベッドに入ると天音が抱き着いてきた。
「……少しくらい私にも甘えさせてくれ」
「もちろん」
茉莉と結莉の人生もだけど僕達の親としての生活も始まっていた。
「あー、あー」
「天音、こっちは任せて結莉の相手してあげなさい」
愛莉に言われて私はベッドに寝てる結莉の相手をする。
「結莉、どうした?お腹空いたか?」
「うー、うー」
まだちゃんとした言葉をしゃべれないから親がちゃんと赤ちゃんが何を伝えようとしているのか察してやらないといけない。
抱っこして欲しいのか、お腹空いたのか、構って欲しいだけなのか。
この時期の赤ちゃんだからこそ親子のコミュニケーションが大事なんだそうだ。
そしてそれは結莉だけじゃない。
茉莉も何か言っている。
「悪い大地。茉莉を頼む」
「わかった」
2人で結莉たちの相手をする。
解放されるのは結莉たちが寝てる間だけ。
まだ結莉たちの中では夜と昼の区別がついてない。
間違えると昼夜逆転して生活になってしまう。
だから結莉たちが寝てる時は明かりを消して暗くしてやったりする必要がある。
この時期のコミュニケーションで自分の両親を認識するんだそうだ。
だから大地も時間をとっては結莉たちの相手をしてた。
とてもじゃないけど家事をしてる時間が無い。
私は大地が結莉たちの相手をしてくれるからまだましな方だ。
家事は愛莉に任せていた。
実家の方は茜たちがしてくれてるらしい。
大地も色々手伝ってくれる。
しかし一つだけ大地が苦手な事がある。
それは娘二人を入浴させる事。
「自分の娘の裸くらいどうってことないだろ!それともおまえロリコンなのか!?」
ロリコンって表現も生易しいくらい異常だぞ。
そうまで言って私が食器を洗っている間に結莉たちをお風呂に入れてやる。
結莉はどうやら大地がお気に入りらしい。
大地が抱いてやるだけで泣き止んだり、上機嫌になる。
茉莉はとにかくすぐにお腹を空かせる。
2人が寝るとやっと私達も休むことが出来る。
「話は聞いてたけど育児って大変だな」
「お疲れ様」
「大地も悪いな。大変だろ?」
「輝夜が言ってたんだけど……」
多分木元輝夜の事だろう。
「娘が構って欲しい時に構ってやらないと間違いなく嫌われるってさ」
今は娘が可愛いから毎日が楽しいよ。
結莉にいたっては本当に大地にべったりだしな。
「お前私より結莉の方がいいとか言い出したら殺すぞ」
「そ、そんな父親いるわけないだろ?」
そんな父親がいるから心配なんだよ。
お前も知ってるだろ?
大地は苦笑していた。
「僕にはそんな度胸無いよ」
大地はそう返した。
知ってるよ。
パパ達もたまにやってくる。
授乳中は私は寝室に行くように愛莉に言われる。
「別にパパに見られたって平気だよ」
むしろ少し大きくなったのを見て欲しいくらいだ。
「いけません!」
愛莉が怒りだす。
素直に寝室に行く。
ある日大地が学校に行ってる間に愛莉がやってくる。
恵美さんも一緒だった。
結莉は大地がいないとなかなか大人しく寝てくれない。
3人がかりであやしている。
「本当にパパが好きなのね。結莉は」
「そうみたい。でもさ、今なら愛莉の気持ち少しだけわかったんだ」
「え?」
愛莉が聞き返す。
「娘に旦那を横取りされるって、しょうもないと分かっていても嫌だなって」
私はそう言って笑った。
「苦労はこれからですよ。もっと大きくなったら大変だから」
愛莉だって冬莉に手こずってるらしい。
「瑛大君のところじゃないけど”パパの嫁になる”なんていいださないように気をつけないとね」
恵美さんが笑っていた。
恵美さんはその後美希の所にもいかなきゃいけないと出て行った。
愛莉と2人で静かに寝ている結莉と茉莉を見ていた。
「愛莉も私が小さい時こんなんだったのか?」
「天音は小さい時からやんちゃでしたよ」
水奈と一緒の幼稚園に行くようになってから以降毎日問題を作っていたし。
そんな私を育てるのに必死だったらしい。
「今ならちゃんと言える気がするんだ。ありがとう。愛莉」
「天音も結莉たちにそう言ってもらえる日が必ずきますよ」
愛莉の気持ちをわかるのもいいけどそれよりも大切な事がある。
母親の気持ちを理解した上で、自分が子供だった頃の気持ちを思い出す事。
そうすればちゃんと娘と向き合える時が来るから。
なるほどな。
そして愛莉が夕食を作っている時に大地が帰ってくる。
結莉は大地の「ただいま」という声に反応して「あーあー」と目を覚ましてじたばたする。
大地は嬉しそうに結莉を抱え上げる。
「大人しくしてたかー?」
「あーあー」
大地の言ってる事が分かるのだろうか。
嬉しそうにしている結莉。
茉莉の方はお腹が空くと目を覚まして泣き出す。
お腹が満たされるとすぐに寝る。
茉莉はいくら授乳してもすぐにお腹を減らす。
愛莉がミルクを用意した方がいいかもと言っていた。
この二人がどんな風に育つのだろう?
私と大地は夜すやすやと寝ている二人を温かく見ていた。
(2)
ある日茉莉が泣き出した。
どうしたんだろう?
茉莉を抱きかかえると異変を感じた。
なんか熱っぽい。
慌てて体温を測る。
37度超えてる。
これってやばいんじゃないのか!?
慌てて愛莉に電話する。
「どうしたの?」
「茉莉が熱があるんだ。37度超えてる!病院連れて行った方がいいのかな?」
すると意外と愛莉は冷静だった。
「37度5分を超えていないなら安静にしておきなさい。38度を超えるようなら病院に連れて行きなさい」
赤ちゃんの平均体温は37~37度5分くらいなんだそうだ。
別に下痢とかしてないなら慌てる事はない。
泣いているのはきっと何か他の理由だろう。
愛莉がいうのでチェックしてみる。
おしりの匂いを嗅いでみたけどウンチをしている様子はない。
となると……。
私は乳を与える。
すぐに泣き止み飲みだした。
私が言わなくても生きる為に必要なエネルギーを蓄えようとしているらしい。
赤ちゃんだって成長しようと必死なんだ。
満足するとすぐに茉莉は寝た。
結莉は大地がいるだけで大体済むんだけど、茉莉は大変だった。
風呂に入るのを嫌がる、夜に突然起きて泣き出す、そのくせ朝も寝ている。
昼夜逆転してるんじゃないのか?と不安になる。
「まだ茉莉の中では昼と夜の区別がついていないだけ。心配しなくても大丈夫」
愛莉が言っていた。
大地も大分慣れて来た。
結莉をお風呂に入れるのが上手だ。
まあ、結莉が大地の事を気に入ってるからだけど。
夜泣きをしても大地が抱いてやると安心して寝る。
「仕事もあるのに悪いな」
「娘に好かれるのってそんなに悪い気しないよ」
「今からそんなんで大丈夫なのか?」
結莉だっていずれ結婚するんだぞ。
「多分父さんの時と同じだと思う」
「結婚式に泣くなんて真似すんなよ」
「……頑張るよ」
まあ、泣く気持ちも分からなくもない。
こんなに小さな頃からずっと成長していくのを見守っていくんだ。
きっと感動するんだろうな。
着替えやオムツは美穂達が出産祝いでくれたから大丈夫。
無くても大地が爆買いするから問題ないけど。
何となくだけど大地と分担して育児していた。
結莉が大地を気に入ってるのもあるんだけど、茉莉はなぜか大地に触られると泣き出す。
父親としては悲しいらしい。
私の時はどうだったんだろう?
愛莉に聞いてみた。
「そうね。天音は冬夜さんの事を好きだったみたい」
翼と取り合いをして大変だったそうだ。
「翼はお姉さんなんだから我慢しなさい」
愛莉はそう翼に言い聞かせていたそうだ。
「茉莉も大地が嫌いなわけじゃないと思う。ただ天音の方が安心するってだけ」
大地ももう少し辛抱強く茉莉に接してやればいい。
愛莉はそう言っていた。
まだ寝ているだけの2人。
少しずつだけど心が作られて行ってるのだろう。
大地も茉莉に気に入られるようにと毎日奮闘していた。
(3)
「天音ちゃん何やってるの!?」
恵美さんが叫び声をあげる。
それに気づいた愛莉もこっちを見て叫ぶ。
「天音!止めなさい!2人を殺す気なの!?」
私は不思議に思った。
普通に「高い高い!」ってやつをしてただけなんだけど。
家だと天井があるからそんなに高く出来ない。
だから偶には外出も大丈夫だろと恵美さん達と公園に遊びに来た時に思いっきり放り上げてやった。
茉莉も結莉も楽しそうだったからいいんじゃないのだろうか?
「万が一落としたらどうするの!?」
愛莉がやけに必死だったので止めた。
そして茉莉はすぐにお腹を空かすからミルクも準備しておいた。
別に結莉が食が細いわけじゃない。
結莉だってしっかり飲む。
比較して茉莉が多いだけだ。
今日は翼と美希も来ていた。
翼達も子供を連れて散歩に来ていた。
「結莉と茉莉も可愛い子だね」
翼はそう言った。
すると愛莉が言った。
「翼と天音も小さいときは可愛かったの」
小学生以降も普通にしていれば十分美少女だった。
だから愛莉は不安らしい。
「天音や翼に似てやんちゃしなければいいんだけど……」
だけど恵美さんは違うらしい。
「確かにちょっと悪戯が過ぎるところがあったけど、愛莉ちゃんは一つ忘れてる」
私も翼も間違ったことは何一つしていない。
善悪の区別はついている。
それを曲げようとする輩がいるなら排除してやればいい。
そして私に言った。
「どんな事があっても子供の主張を聞いてあげなさい。間違っていれば正せばいい。そうでないなら子供を信じてあげて」
理不尽な文句をつけて来る大人がいるなら私や大地が守ってやれ。
私は恵美さんの言葉をしっかりと聞いていた。
それは愛莉だってそうしてきたんだと思った。
翼も言う。
「大丈夫、2人ともまだ幼いからかもだけどすごい綺麗な心をしてる」
いい子に恵まれたね。
翼はそう言って笑う。
その日家に帰って大地と話をしていた。
「そうだね、天音の子だから真っ直ぐ育つよ」
「お前の子供でもあるんだぞ?」
「そうだったね」
遊び疲れて静かに寝てると思ったら、茉莉が突然泣き出す。
どうせまたお腹空いたんだろう。
「本当に天音に似てるね」
そう言って大地は笑っていた。
(4)
「あ、今日も真っ直ぐ家に帰るから」
「なんだよ!嫁さんがそんなに怖いのか!?」
「いや、そんなんじゃないって」
天音の出産が終って出産祝いと言う名の飲み会に遊達に頻繁に誘われるようになった。
だけど天音はまだ子供から手を離せない。
そんな天音を置いて飲みにいけない。
それに今最大の楽しみは我が家にある。
今日は玩具屋によっておもちゃを買って帰る。
ただ音が鳴るだけの物とかだけど。
「ただいま~」
家に帰ると天音が出迎えてくれる。
「たまには遊んで帰ってきてもいいんだぞ?」
遊とかに誘われてるみたいだしと天音が言う。
「大丈夫。それより今日はお土産があるんだ」
そう言って買って来たおもちゃを天音に見せた。
「ああ、そういうのいいかもしれないな」
喜んでもらえたようだ。
そろそろ天音も軽い家事くらいは出来るようになったみたいだ。
あくまでも無理はしたらいけないけど。
天音は食事をしながら結莉と茉莉の世話もしている。
結莉は僕の顔を見て嬉しそうにしている。
僕が先にお風呂に入って、そして天音が入ってる間に結莉と茉莉の世話をする。
茉莉は僕が抱くと不満そうに「うぅ……」と唸るような声を出す。
これでもまだましになった方だ。
僕が触るだけで泣き出す時期もあったから。
天音が風呂を出ると二人を寝かしつける。
それから時々二人の様子を見ながら天音とテレビを見てた。
すると天音が突然話し出した。
「なあ、大地」
「どうしたの?」
「少しは外ではね延ばしてもいいんだぞ?お前が不満を溜め込んでいないか私が心配だ」
夜の相手もしてやれない。
最悪風俗も許すしかないかなと悩んでいたらしい。
そんなところいったら母さんに埋められるよ。
それに……。
「前に光太が言ってた事が分かるんだ」
「光太が?」
天音が聞き返すと僕は頷いた。
どんなに仕事が大変でも家には天音や子供が待ってる。
すやすやと寝ている子供達を見てるとどんな疲れも吹き飛んでしまうんだ。
この子達の為ならどんなことでもしてみせる。
「……大地にも父親の自覚が出て来たってことか?」
「かもしれないね」
だから心配しないでいい。
天音こそたまにはママ友とランチでも行ってきたらいい。
「それは愛莉にも言われたけど、やっぱり大地と同じかな?」
やっぱり今は我が子が一番大事なんだ。と、天音は笑っていた。
「私達上手く親の役目果たせてるかな?」
「まだこれから先が長いんだから考えてる暇ないよ」
「そうだな」
天音は最近笑顔が優しくなった。
子供を見ている表情が愛おしく思えた。
どんな女性でも子供が出来ると変わるんだな。
「男の子の事はもう少し様子を見ようよ」
「いいのか?」
「せめて僕が大学卒業してからでもいいと思う」
「大地がそう言うなら私はそれに従うよ」
「そろそろ僕達も寝ようか」
夜中に子供が起きるかもしれないし。
「分かった」
そう言って天音と寝室に行く。
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僕達もベッドに入ると天音が抱き着いてきた。
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カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
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